東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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「あなたがたのうちに、百匹の羊を持っている者がいたとする。その一匹がいなくなったら、九十九匹を野原に残しておいて、いなくなった一匹を見つけるまでは捜し歩かないであろうか。そして見つけたら、喜んでそれを自分の肩に乗せ、家に帰ってきて友人や隣り人を呼び集め、『わたしと一緒に喜んでください。いなくなった羊を見つけましたから』と言うであろう」

ルカによる福音書 15:6


friend

未央Side

 

 

しまむーとの約束を交わした次の日、

私は舞台のレッスン終わりにカフェに寄った。

そのカフェは金木さんが働いている所とは違い私みたいな若い女子に人気なコーヒのチェーン店で、

メニューも店内もおしゃれなところだ。

クラス男子からは『呪文みたいな注文だな』とよく言われている。

 

(なんで金木さんが行方不明なんだ...?)

 

私はそこの定番メニューのコーヒーを片手にで金木さんがいなくなったことをノートにまとめていた。

いつもみんなと一緒にいるのが当たり前の私がこうしてい一人、外が眺めれるカウンター席にいる。

もし今、しまむーたちが見たら驚くに違いない。

そうしてしまった理由は、金木さんが行方不明が一番大きい。

急にいなくなってしまったから。

 

(.....何か身にあったとかはないかも)

 

別に金木さん自身が行動を起こすのは考えられない。

だとしたら、もしかして誰かによって行方不明に?

その理由もあるはず。

何もないわけない。

 

「あの....?」

 

「ん?」

 

すると後ろから誰かが私に声をかけてきた。

声的には男性で、年齢はだいたい私とはちょい上くらい。

一体誰だろうと思い、私は振り向いた。

 

「もしかして...本田未央ちゃん?」

 

「あ、はい!そうです!」

 

声をかけてきたのは、金髪に赤い帽子を被った男性だった。

見た目的には大学生かも?

 

「やっぱりだよな!ショートヘアに制服の上にパーカーを来ているのを見て、気づいたよ!」

 

「私のことを知ってくれてありがとうございますっ!」

 

普段は変装もせずに街中に歩いているのだけど、ファンの人から声をかけられることはなく、

SNSでは『街中で未央を見た!』と言う人が多い。

もしかするとみんなは恥ずかしいかもしれないけど、こうして目の前にファンに触れ合えたことに私は嬉しかった。

 

「もしかして、よくここに来る?」

 

「いえ、今日はたまたま訪れてたので」

 

「そうなんだなァ!。まさかここで未央ちゃんに........ん?」

 

するとその男性は何かに気がついたような目になった。

 

「あれ...?もしかして"カネキ"と知り合ってる?」

 

「え?」

 

数秒、私は固まってしまった。

驚いてしまった。

その人の口からまさかの『金木』と言う名が出たのだ。

 

「え、な、なんで...金木さんを?」

 

「ああ、そうだったな。......実は俺、カネキの友達でね」

 

「え!?ほ、本当ですか!?」

 

「ああ、本当だ。確か....卯月ちゃんか凛ちゃんに"ヒデ"と言う金木の友達知ってる?っと言ったらわかるかも」

 

その人は『今、どちらかにメールしてみて』と言い、

私は言われた通りにしぶりんに『金木さんの男友達のヒデって知ってる?』とメールで伝えた。

そしたらしぶりんが『あの金髪の人でしょ』と返信を返してくれた。

 

「本当に金木さんのお友達なんですね....」

 

「だろ?」

 

流石にその後に来た『あのチャラチャラしている人』と言うメールは伝えなかった。

その人は私のお隣の席に座った。

 

「俺、永近英良(ながちか ひでよし)。みんなから"ヒデ"と言われてるよ」

 

永近英良(ながちか ひでよし)...ヒデさんと呼んでいいですか?」

 

「いいよ?」 

 

「それで...なんでしまむーとしぶりんのことを知ってるのですか?」

 

「卯月ちゃんのこと?ああ、そうだったな」

 

しぶりんが金木さんのことを知っているのはわかるが、

なぜヒデさんを知っていたのか不思議に感じていた。

 

「確か春頃だったな。カネキが俺を凛ちゃんの家の花屋さんに連れてったら、シンデレラプロジェクトのプロデューサーさんと卯月ちゃんとばったり会って、その後俺は凛ちゃんに出会ったんだよ!」

 

「それって、しぶりんのスカウトの時ですか?」

 

「うん、そうだな。その時のカネキは結構役に立って、凛ちゃんをアイドルと言う道に進ませてくれたな」

 

「しぶりんをアイドルにさせた一つに金木さんが!?」

 

「結構あいつはいろんなとこで活躍してるんだよな。もしかして、俺が見ていないところでもそうだった?」

 

「そうですよ!私もそうですし、色々な方が金木さんにお世話になってますよ!」

 

「お!それはあいつの友人としてありがたいわ!」

 

ヒデさんが話す感じは。なんだか私みたいにハキハキしている。

なんだかとても似ている気がする。

金木さんの話題だけでも長く話せて、意気投合だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、良い話だけじゃないけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで金木さんは.......あ、そうだった」

 

「ん?」

 

「金木さんは行方不明ですよね」

 

「え?どうしてそれを知ってるんだ?」

 

「実は、ふーみんから聞いたんですよ」

 

「ふーみん?もしかして、鷺沢文香のことか?」

 

「あ、そうです!」

 

私は誰にでも愛称をつけたくなる人だ。

でも考えてみると金木さんには愛称はつけてはない。

 

「文香ちゃんか.....」

 

「ん?どうしたんですか?」

 

「結構文香ちゃん落ち込んでいたさ。他の人に聞いたら一人で泣いているところを見たって」

 

「え?泣いていたって...?」

 

「今、大学の掲示板でカネキが行方不明だと知らせるポスターが貼ってあってな。それを見たんだと思う」

 

しまむーの携帯にはっきりと映っていたあの画像が頭に焼きつくほど覚えている。

それと同時に衝撃もはっきりと覚えている。

ふーみんが泣きたくなるのもわからなくもない。

 

「それで...警察に伝えたのですか?」

 

「もちろん警察に捜索願を出した。まぁ、いつ見つかるかどうかは知らないけどな...」

 

何かあった時は警察に相談すればいいと耳にするけど、行方不明だと発見されるまで時間がかかってしまい、

あまり期待できないのは現実。

 

「金木さんはどうしていなくなったんですかね....」

 

「俺もなぜカネキがいなくなったかわからん...」

 

ヒデさんはそう言うと頰に手を置いた。

 

「特に変な奴とは繋がりはなかったし....何かに巻き込まれたのは間違いない」

 

「そうですよね....」

 

私にもわからない。

考えても可能性があるのは、誰かによってぐらいしかない。

"自殺"という可能性は全くないと言ってもいいぐらいにない。

 

「....とりあえず俺、帰るよ」

 

「え?帰るのですか?」

 

「未央ちゃんと長く隣に座ってたら、まずいだろ?」

 

確かに言われてみればまずいのは間違いない。

今は誰も見ていないのはいい。

だけどこの後誰かが来たら、めんどくさいことが起きかねない。

ヒデさんはそのままこの場から離れようとした瞬間...

 

「あのヒデさん!」

 

「ん?」

 

私はヒデさんを呼び止めた。

 

「あ、あの....ヒデさんの連絡先教えてくれませんか?」

 

「え?俺の?」

 

「私、金木さんを見つけたいんです!」

 

 

 

 

私は忘れてはならない。

金木さんは私にとって決して"ただの友達"じゃない。

しまむーに言った『もう一度友達になろう』を金木さんにも同じく伝えないといけない。

それはあの時のしまむーが『金木さんも凛ちゃんや未央ちゃんと同じく大切な友達です....同じく伝えないと』と言ったからだ。

そう言われたならやるしかない。

だから私は、同じく金木さんを探しているヒデさんと一緒に探したい。

 

 

 

 

 

 

「未央ちゃん、ありがとう.....だけど、流石に俺が未央ちゃんの連絡先を知ってたらダメだ」

 

「...え?どうして?」

 

「それにあんまりカネキを探してますと大きくアピールはしてはダメだ。未央ちゃんはアイドルだ。『カネキを探してます!』と大きく言ったら、仕事に影響が出るだろ?」

 

私は忘れていた。

金木さんは友達っと言うのはあくまでごくわずかな人が知ることであり、

表向きはファンとアイドルと言う関係だ。

考えてみれば、今後の道に影響が出てしまう。

 

「あ....そうでした...ね」

 

「だから卯月ちゃんと凛ちゃんに伝えてくれよ?"カネキを探している"と多くの人に伝えるのを控えたほうがいい」

 

金木さんをすぐに見つけたいと言う欲求があるのだけど、

私たちには"アイドル"と言うものを手にしていた。

そう考えてしまうと、私はどこか落ち込んでしまった。

まるでもう戻らない過去の出来事を悔やむように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それじゃあ、金木さんに再び会うことができない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなの嫌だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....大丈夫だ、未央ちゃん」

 

呆然していた私に、ヒデさんは私の肩に手を置いた。

 

「絶対カネキは"生きてる"!死んだと考えたら、あいつは間違いなく死んでる。だから"死んだ"と考えるじゃなくて、"どこかで生きてる"と考えな!」

 

「っ!!」

 

そうだった。

もしかしたら死んでいるっと考えたらダメだ。

行方不明=死と考えちゃだめだ。

金木さんは今どこかにいて、生きている。

 

「わかりました...!私、金木さんが生きてると絶対に信じますっ!!」

 

「よしっ!これであいつは、生きてると間違いない!」

 

ヒデさんはそう言うと「いつも見る元気な未央ちゃんに戻った!」と喜んだ。

私は金木さんは"幸せだなぁ"と胸の中にに思ったんだ。

ヒデさんと言ういい友達を持っていてることを。

 

「あの....ヒデさん?」

 

「ん?」

 

「また会えます?」

 

「会えるさ、お互い”生きているうちにな”」

 

ヒデさんは「じゃあな」と言うと、私がいるカフェから姿を消した。

私は気が付いてしまった。

一瞬ヒデさんの"どこか寂しそうな顔"が私の目に写ったことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、思うんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はいっぱい友達を持っているけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その"一人"が消えたなら、私は探し出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たかが一人の友達っと思うかもしれないけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たった一人の友達を探すのは、決して無駄じゃないと私は思うんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互い、その"一人の友達"を心配していたんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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