東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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赤く染まっては、僕は君に会うことができない






もう会えなくなるから



















Lycoris albiflora

 

卯月Side

 

「え?....金木さんが?」

 

「.....うんっ、文香ちゃんから聞いたよ。大学で行方不明のお知らせを見たって」

 

「........」

 

「卯月ちゃん?」

 

「....嘘ですよね?」

 

「いや、嘘じゃないよ」

 

「嘘に決まってますよっ!」

 

信じたくない。

私は志希さんの言葉に信じきれなかった。

 

「金木さんが急にいなくなるなんて、ありえませんよ!」

 

「........」

 

壊れ始めた、私。

自我が不安定になっていた。

なぜって"金木さんを一人にさせない”と私と約束をしたのだから。

それなのになんで"行方不明"?

約束をしたのにどうして?

私は志希さんの言葉に混乱していた。

 

「どうしたの...しまむー?」

 

ふと我に帰ると未央ちゃんと凛ちゃんが私の横にいました。

あまりに焦って、周りが見えなかった。

 

「....金木さんが...行方不明なんです」

 

「え....!?金木さんが!?」

 

「金木が!?」

 

二人は目をはっとし、私が伝えたことに驚いた。

 

「金木さんが行方不明って....?」

 

「...志希さんがそう言ってました」

 

私は持っていた携帯を凛さんに渡した。

もしかしたら嘘かもしれない。

志希さんならありえる。

いつも私をからかってきます。

これもきっとからかいです。

 

「....もしもし?」

 

凛ちゃんは私の携帯を受け取り、電話にでました。

金木さんは今頃、自分の住んでいるところにいるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、私が望んでいたことは起こらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....卯月」

 

凛ちゃんが私に携帯の画面を見せました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

携帯の画面に写っていたのは、金木さんが"行方不明"と書かれていたポスターでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、あいつ(金木)は行方不明だよ」

 

「........っ!!」

 

はっきりと写し出されたポスターに私は言葉がでなかった。

真実をすぐに受け入れることができない。

 

「金木さんが急にいなくなるわけないですよ....」

 

「しまむー....私だって金木さんが行方不明だってことは信じられないよ。でもしきにゃんが言ってることは」

 

「嘘ですよ!!だって金木さんは、私が最後に会った時、何もなか.......っ!!」

 

感情的になった私に、ある記憶がふと浮かんだ。

金木さんの最後に出会った出来事。

その時の金木さんの様子は"普通”じゃなかった。

溜め込んだ悩み、不安、寂しさを表し、涙を流したんだ。

 

「う、卯月...?」

 

「なんで...なんで....なんでいなくなったんですか.....」

 

 

徐々に震えだす私の手

 

 

目に自然と流れる涙

 

 

しゃくり始めた、私

 

 

あの時の金木さんは、今の私のように泣いたんだ

 

 

一人になるのが怖かったんだ

 

 

「....ぅ.....っ...」

 

 

私の目から流れる涙は、より大粒になって止まらない

 

 

先ほど涙を流したのに、止まることなく多く流れてくる

 

 

私はこの真実に受け入れられず、泣いていた

 

 

 

凛ちゃんと未央ちゃんは私の横に寄り添ってくれたました

また先ほどと同じく寄り添ってくれるなんて嬉しかったです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金木さんと同じく、私も泣くなんて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金木さん

 

 

 

 

 

 

 

なんで一人でどこか行ったの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金木さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時、約束したのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしていなくなってしまったの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金木さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お願い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちを置いてかないで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

12月20日 0時

 

 

一歩一歩ゆっくりと歩き出す、僕

 

 

 

 

じゃりじゃりと聞こえる足首についた鎖の音

 

 

 

 

荒れ果てた鉄筋コンクリートの建物の隙間から感じる冬の夜の寒い風

 

 

 

 

素足に伝わる冷たい床

 

 

 

 

そして鼻から感じる、血の匂い

 

 

 

 

床に横たわっているのはいくつもある人と喰種の死体

 

 

 

 

前の僕ならこの光景と匂いで今すぐ嘔吐をしてしまうかもしれない

 

 

 

 

でも今の僕は無残に倒れる死体と血の匂いで吐くこともない

 

 

 

 

もう慣れてしまったから

 

 

 

 

あの終わりのないと考えていた苦しみのおかげでね

 

 

 

 

 

 

 

ボロボロのコンクリートの建物から見える時計を見た、僕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時計の針はもう12時を過ぎていたんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕にあった"魔法"は解けていったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間(ヒト)と言う魔法が終わったんだ

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

僕は人間(ヒト)ではなく、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は、喰種だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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