東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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蝕まわれる体



それは{私・僕}だけじゃないことを知る











Myself

卯月Side

 

 

時計の針が12時に指す前

私は一人、事務所から退出しました。

事務所から出る時、廊下や玄関には誰も人はおらず、一人も私の目には映っていませんでした。

 

「.......」

 

今日は美穂ちゃんと撮影がありましたが、私は途中抜けました。

その時の私は頭の整理が追いつかず、何度も撮影を取り直しました。

しかしカメラスタッフさんは私の出来の悪さに、プロデューサーさんに相談していました。

一体何を話していたのかわかりませんでしたが、プロデューサーさんは謝っていました。

 

 

 

 

 

 

それを見た私は、"無力"を感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

美穂ちゃんに迷惑をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は他の人より何もできてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......?」

 

すると私の携帯から着信が来ました。

この時間帯にメールが来るなんて不思議に感じました。

 

(....誰だろう?)

 

携帯を開いてみるとその送られた人に驚きました。

その人は凛ちゃんや未央ちゃんでもなく、プロデューサーさんでもありませんでした。

 

その人は、"金木さん"からでした。

 

(...金木さん...!?......な、なんだろう?)

 

金木さんとは直接会っていますが、携帯などの連絡は基本私が多くやっています。

でも今回は金木さんから連絡が来ましたので珍しかったです。

それでは私は金木さんからのメールを開きました。

 

(.......え?)

 

私はそのメールに驚きました。

 

 

 

 

そのメールの内容は.....

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金木Side

 

 

時計の針が3時の頃。

都内にある遊園地の入り口前に僕はいた。

僕はベンチに座り、複雑な気持ちで"ある人物"を待っていた。

 

(.....一体何考えているんだ、ヒデは..)

 

僕は後悔をしていいのか、それとも喜んでいいのかわからないかった。

それは一昨日の出来事の話だ。

ヒデが『卯月ちゃんとどっかで遊ばないのか?』という話題だった。

さすがに僕は彼女のことを思い、『無理だろ』と何度も言ったがヒデは全く納得はせず、

僕がいじっていた携帯をぱっと取ったのだ。

そしてすぐに卯月ちゃんの連絡先を見つけ出し、

メールをパッパッパッとものすごい速さで文章と打ち、卯月ちゃんにメールを送った。

そのヒデが入力したメールの内容が問題だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『卯月ちゃん 明日どこか遊びに行かない?』

 

 

 

 

 

 

 

それを見た時はもう慌ててしまった。

書いてはならない文を卯月ちゃんに送ったのだ。

まさにラブレターと同類のものを送ったのと同じものだった。

でも運良くヒデは凛ちゃんや未央ちゃんの連絡先を見なかったことはよかったけど

 

(あの時の僕は絶望に近い感覚だったな...)

 

いくら卯月ちゃんでも間違いなく心の底から嫌うような行動だと

あと流石に明日どこか遊ばないかとなれば難しいだろ....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だと考えてたのだけど.......

 

 

 

 

 

 

 

「こ、こんにちは..金木さん...」

 

「!」

 

卯月ちゃんの呼ぶ声が真っ先に耳に入った。

振り向いたら、本当に卯月ちゃんが僕の元にやって来たのだ。

制服で茶色のコート、水色と白の縞模様のマフラーをしていた。

 

「こ..こんにちは.....卯月ちゃん。制服って....」

 

「あ、い、いや、これは学校終わりで....そのまま、来ました」

 

今日は土曜日であるため、おそらく午前中で学校が終わっただろう。

 

「一昨日のメール驚きましたよ.....まさか金木さんが...」

 

「そ、そうだよね...きゅ、急にあのメールを送ってごめんね...」

 

僕が入力した内容ではない。ヒデがやったんだ。

見ての通り、僕は卯月ちゃんと遊園地で遊びに来ているのだ。

普通なら断るであろう誘いを卯月ちゃんはOKをしてくれたのだ。

今でも信じがたいことだ。

 

「い、いえ、ちょうど私にお時間がありましたから大丈夫です...!」

 

卯月ちゃんも僕と同じく緊張をしていた。

気を使っているのか本当に時間が空いていたのかわからない。

ただ僕は彼女の言葉に信じるしかない。

 

「じゃあ...行こうか」

 

「い、行きましょうか...」

 

僕はベンチから立ち上がり、卯月ちゃんと歩き始めた。

お互い緊張いるせいか中々顔を合わせられず、気まずい空気が漂う。

 

(.......いつも通り卯月ちゃんと過ごしているのに、なぜか新鮮だ...)

 

見慣れているはずの卯月ちゃんの姿は、どこか新鮮に感じた。

いつもより彼女から甘い香りがする。

綺麗な髪からする甘い香りはどこか心地がよく、気分がいい。

それに卯月ちゃんのマフラー姿は可愛い。

今は緊張して照れている。

その顔はとても可愛く見える。

チラチラと卯月ちゃんを見てると、緊張していて目をそらしていた卯月ちゃんは目を動かし、僕と合ってしまった。

 

「...どうしましたか?金木さん?」

 

「え?い、い、いや....なんでもないよ...?」

 

僕はしばらく彼女を見ていたことに少し照れてしまし、目をそらした。

ただいつもより可愛く見えてて仕方がない。

 

「...ゆ、遊園地ですか。なんだか来るの久しぶりです」

 

「久しぶり?」

 

「はい。昔はパパとママと一緒によく行ってました。今はお仕事で行く時間はありませんが、今度はお友達と行きたいです」

 

「そうなんだね....」

 

「金木さんはどうですか?」

 

「僕?.....最後に行った記憶はあんまりないな..」

 

「記憶がない?」

 

「うん。だいぶ小さい時だったから覚えてないよ」

 

「そうなんですか....」

 

僕が遊園地に訪れた記憶はあんまりない。

最後に行ったのは母さんと行った時しか思い出せない。

でもその時一体何をやったかは全く記憶にない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というか思い出したくないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その記憶を探す途中に思い出す"嫌な記憶"を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、チケット買いますか?」

 

「そうだね。まずはチケットを買わないとね」

 

僕たちはまだ遊園地の前にいて、園内には入ってない。

 

「あ、少し待ってください」

 

「ん?」

 

卯月ちゃんはそう言うとカバンからメガネとキャスケットを取り出し、顔に身につけた。

 

「バレてしまうとまずいので...伊達眼鏡をします」

 

「あ、そうだったね。卯月ちゃんは有名人だからね....」

 

決して忘れてはならないこと。

卯月ちゃんはアイドルだ。

もしバレてしまえば一貫の終わり。

それに僕は喰種であるため、346プロが彼女が喰種と知り合えば大変だ。

 

(....メガネ姿も珍しいな)

 

別に卯月ちゃんがメガネをかける姿は嫌いではないが、

これも可愛いと感じる。

僕たちは遊園地のチケット売り場に向かった。

受付には女性の方がいた。

 

「いらっしゃいませ。大人二枚でよろしいですか?」

 

「...はい」

 

「お、おねがい.....します」

 

僕と卯月ちゃんはお互い気恥ずかしそうに受付の人に答えた。

本当に二人で遊園地にやって来たと改めて思う。

きっと受付の人は"カップル”と考えたのだろう。

幸いにもその人から何も聞かれることもなく、チケットを受け取ることができた。

 

「よかったですね...気づかれてなくて..」

 

「なんか言われるかなと怖かったよ..」

 

僕はそう言うと胸を撫で下ろした。

 

「あの方、何か気がついた仕草がありませんでしたね」

 

「まぁ...そうだね....卯月ちゃんは有名人でもあるけど....」

 

「...ん?」

 

「あ、い、いや....なんでもないよ」

 

「は、はぁ....」

 

卯月ちゃんは少し頭を傾けた。

変に見られてしまった。

それは僕もわかっていた。

さすがに彼女に"お互いまるでカップル"と言うわけにはいかなかった。

そして僕たちは遊園地の中へと入って行った。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

卯月Side

 

 

(ど、どうしよう....)

 

今、私は金木さんと遊園地にいます。

ちょうど今日は養成所がお休みだったせいか、

私は一昨日金木さんのお誘いを受けました。

 

(なんだか本当に現実なのかわからない....)

 

自分でも驚いています。

そのおかげで中々話しかけづらいです。

いつもなら同性のお友達といるのが普通なのですが、今は異性のお友達といます。

プライベートでは異性のお友達と言えば金木さんしかいません。

 

「あ、卯月ちゃん..」

 

「え?....あ、はい!」

 

緊張のせいか、いつもより反応が鈍く感じました。

それは私だけではなく金木さんも同じくです。

 

「せっかく遊園地に来たから...何かに乗らない?」

 

「そ、そうですよね....」

 

せっかく遊園地に来たのだから、何か遊ばないといけません。

しかも買ったチケットは1日乗り放題です。

でもまず何をやろうか迷ってしまいます。

 

「あ、あれは良さそうじゃない?」

 

「ん?」

 

金木さんが指をさしたのは観覧車でした。

今日の天気は晴れで、景色を見るなら絶好です。

 

「観覧車ですか....」

 

「園内にあまり回ると...まずいじゃないかなと思って」

 

確かに園内を見渡すと、ある程度訪れている人がちらほらといます。

もし誰かが私を気づいてしまうと、厄介なことは免れません。

 

「じゃあ、乗りましょうか」

 

「...うん、乗ろう」

 

私たちは観覧車に乗ることに決めました。

それから係員の方に私の正体に気づくことなく、観覧車に入ることができました。

私は観覧車の中に入った瞬間、被っていたキャスネットを取り、つけていた伊達眼鏡を外しました。

観覧車の中に入ったのはいいのですが....

 

「「.........」」

 

景色は綺麗だけれど、お互いは静かなままでした。

観覧車の中は私たちだけではどこか広く感じました。

お互い正面に向き合うよう座っていました。

 

(何か話さないと....)

 

さすがに何も話さないまま観覧車を乗り過ごすのを止めるため、固く閉ざした口を開きました。

 

「き、綺麗ですね....」

 

「....うん」

 

「........」

 

「........」

 

しかし会話はすぐ途切れてしまいます。

やはり密室だから話しづらいかもしれません。

 

(あ...そうだ!)

 

私はあることを閃きました。

それはもちろん静かな空気を変えることでもあり、

金木さんに関係することでした。

 

「か、金木さん」

 

「...ん?」

 

「.....一緒に写真を撮りませんか?」

 

「え!?しゃ、写真?」

 

「はい!思い出として撮りませんか?」

 

「...本当に...一緒に撮っていいの...?」

 

「あ...えっと....」

 

今更かもしれませんが、私は何を言ったのか今気づきました。

確かに私と一緒に撮るのはいきなりですし、驚くことです。

でも私はただ緊張をほぐすだけで言った訳ではありません。

 

「さ...先ほど金木さんは言ったじゃないですか....遊園地の思い出はあまりないと...」

 

「....思い出がない?...ああ確かに、僕は言っていたね」

 

観覧車に乗る前、金木さんが言っていたこと。

あんまり遊園地に行った記憶がないってそんなことをいいました。

その思い出の一つとしていいんじゃないかなと私は写真と言う方法を思いつきました。

 

「...じゃあ、撮ろうかな?」

 

金木さんは気恥ずかしそうに答えました。

恥ずかしいのは私だけではないことに改めて安心しました

 

「少し移動しますね...」

 

「え?」

 

「ん?」

 

「卯月ちゃん?もしかして僕の隣に...?」

 

「あ.....そ、そうです....」

 

今私たちは観覧車の中にいます。

一緒に写真を撮るなら、どちらかが隣に座らないといけません。

 

「なら...僕が卯月ちゃんの隣に座った方がいいかな?」

 

「え?そ、それは....」

 

「せっかく卯月ちゃんが考えてくれたことだし....その....僕が隣に座っていいかな?」

 

「.....お、お願いします」

 

私がこくりっと頷くと金木さんは私の隣に座りました。

金木さんとはいつも喫茶店で出会っているはずなのに、

なぜかもっと身近に感じていたせいか、緊張がさらに生まれてました。

温度が感じるほど近くだから。

 

「えっと....撮りますね」

 

私はスマホを取り出し、カメラモードにしました。

それからスマホを私たちの方に向けました。

 

「もう少し寄った方がいいんじゃない?」

 

「え?あ、そ、そうですよね...」

 

緊張いたせいか、金木さんがカメラの中に入っていませんでした。

 

「ぼ、僕が寄った方がいいね...」

 

「っ!!」

 

不意に金木さんは私に寄りました。

金木さんの顔が私の顔の隣にわずかな距離しかありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに私たちの距離が縮まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、卯月ちゃん...」

 

「...え?」

 

気がつくと金木さんが私のことを何度も呼んでいたことに気がつきました。

まるで周りが時が止まったかのように私は呆然としてました。

 

「シャ、シャッターを押して...」

 

「あ、はい!」

 

私はすぐにニコリと笑顔をし、カメラのボタンを押しました。

写真を撮った後、私はその撮った写真を見ましたが...

 

(ちょっと笑顔が....よくないかな...)

 

唐突だったためかその写真はどこかよくありませんでした。

 

「どうだった?」

 

「...もう一度撮ってもよろしいですか?」

 

「え?だ、ダメだった?」

 

「ちょっと緊張したせいか....」

 

「....なら、お願いね...」

 

もう一度再チャレンジです。

私は右手に持っていたスマホを私たちの方に向けました。

 

(さっきよりは変なことが起きないはず...)

 

そして金木さんは再び私の方に顔を寄りました。

 

(....やっぱり来ちゃった!!)

 

先ほどよりも驚きませんが、やはり少しは驚いてしまします。

でも私は忘れずにパシャりと撮りました。

今度こそはいい写真が撮れたはず....

 

「い、良い写真が撮れましたよ」

 

いつも友達と自撮りをするのに、今回は特別な感じに思えました。

 

「...うん、いいね」

 

「ありがとうございます」

 

金木さんは少し微笑みました。

きっと新しい思い出に嬉しく感じたのでしょう。

 

「ありがとうね。卯月ちゃん」

 

金木さんがそう言うと、元にいた席に戻ろうとしました。

その瞬間でした。

 

「あ、待って」

 

「ん?」

 

私は金木さん声をかけました。

無意識に近い感覚で私はその行動を起こしました。

 

「も、もう少し....隣に座ってくれませんか?」

 

 

なんだか離れられると寂しくなるんじゃないかなって心の中に生まれてました。

 

 

 

「....いいよ」

 

金木さんは何一つ嫌とは言わず、私の隣にいてくれました。

 

「....ありがとうございます」

 

「....うん」

 

「..........」

 

「..........」

 

隣になったとはいえ、結局お互い黙ったままでした。

でもその状況は嫌かと言われますと、全部が嫌とは言えません。

横に居ているくれることが安心感と言うか...幸せと感じるのと言えばいいのでしょうか。

でも隣に居てくれることが嬉しかったです。

 

「あ、卯月ちゃん」

 

「....はい?」

 

「もうそろそろ着くよ」

 

気がつくと観覧車はもうそろそろ一周を回ろうとしていました。

 

「あ、はい!わかりました」

 

私はキャスネットと伊達眼鏡を身につけました。

私と金木さんが観覧車の中で過ごした時間は長いようで、短い時間でした。

でも私はとても充実した時間です。

金木さんと隣にいたこと、一緒に写真を撮ったこと、

それは私にとって嬉しい一時でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その写真が金木さんだけじゃなくて、私にも重要なものになるなんて思いもしませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重要になる時が心寂しいときだなんて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おもしろかったですね」

 

「面白かったね.....」

 

私たちはベンチに座り、少し休んでいました。

園内に一回りし、疲れたからです。

メリーゴーランドやお化け屋敷、それにコーヒーカップなど金木さんと一緒に行きました。

 

「お化け屋敷は怖かったよ...」

 

「そうですよね...私も怖かったです...」

 

私の希望でお化け屋敷に行きましたが...

予想以上に怖くて、一体何を見たかわかりません。

その時の私は金木さんの背中で隠れていました。

金木さんも私と同じく怖がっていましたが、止まることなく進んでくれました。

 

「少しお腹が空きましたから、クレープ食べませんか?」

 

園内に回ったせいか私のお腹は空いていました。

私はちょうど売店を見て、クレープでも頂こうと思いました。

 

「え!?」

 

すると金木さんは"なぜか"私の言葉に驚きました。

 

「え...?どうしました?」

 

「え....と...僕もお腹空いたけど、コーヒーだけで十分だよ」

 

「コーヒーだけですか?」

 

「そ、そうだね。今寒いし....」

 

「そうですか....確かに寒いですよね...」

 

さすがにないと思いますが、体重のことを気にしていたかもしれません。

でもなぜクレープで驚いたのか不思議に感じました。

 

「じゃあ、私か買って来ます」

 

「え?買ってくれるの?」

 

「今日は金木さんが誘ってくれたお返しと言うことで」

 

「さすがに奢らせるのは....」

 

「大丈夫ですよ?金木さんにお世話になったのもそうですし、いつもの感謝と言うことで」

 

「...わかったよ。缶コーヒーをお願いね」

 

「わかりました!」

 

私が金木さんに何か買うことにしたのは、今日金木さんが楽しませてくれたからです。

もちろん私も金木さんを楽しませたことあると思いますが...

 

「あ、ちょっと待って」

 

「ん?」

 

「コーヒーはブラックでね?」

 

「ブラックですか?」

 

「うん...最近甘いのは好きじゃないからね...」

 

「は、はい....」

 

そう言うと私は自動販売機に向かいました。

そこまでコーヒーをこだわるのかな?と疑問を抱えたままでしたが、

別にそういうこともあると思い、気分を切り替えました。

私は自動販売機にコーヒーのブラックを選び、

私はホットのミルクティーを選びました。

 

「金木さん、コーヒーです」

 

「ああ...ありがとね」

 

買った缶コーヒーを金木さんに渡しました。

金木さんは受け取ったコーヒで両手を温めました。

私は金木さんに缶コーヒーを渡した後、隣に座りました。

冬に入ったせいかいつもより日が沈むのが早く、

園内はライトアップし始まりました。

 

「綺麗ですね」

 

「...うん」

 

冬の肌寒さがより冬を感じさせてくれます。

それは決して嫌な寒さではなく、どこかいい空気を作ってくれます。

 

「金木さんって兄弟はいますか?」

 

「....いないよ」

 

「そうなんですか、私も同じなんですよ」

 

「そうなんだ...」

 

「はい。一人っ子なのかわかりませんが、どこか寂しいと感じる時があります」

 

「まぁ、確かに美嘉ちゃんと未央ちゃんを見るとわかるよ...楽しそうだしね」

 

「金木さんも兄弟が欲しいと感じたことありますか?」

 

「....どうだろうね」

 

「え?」

 

私は驚きました。

その瞬間、金木さんの顔が暗くなったからでした。

 

「....僕、親と呼べる人はもういないんだ」

 

「え?じゃあ...」

 

「うん。父さんは僕が物心が着く前に亡くなって、母さんは小学校5年生で亡くなったんだ」

 

「.......」

 

「...卯月ちゃん?」

 

「あ、いえ.....聞いてしまってすみません...」

 

「いや、大丈夫だよ....別に謝ることないよ...」

 

金木さんは私にそう伝えてくれましたが、申し訳ないと言う感情は離れてくれませんでした。

金木さんの顔は今まで見た中でどこか寂しく、悲しい顔になったからでした。

こんな話をさせた私は何一つ悪くないだなんて、ありません。

 

「...そういえば、卯月ちゃん」

 

「ん?」

 

「これから卯月ちゃん何して行くのかな?」

 

「私ですか?」

 

「うん....」

 

「...私はもっと頑張っていきたいんです」

 

「...うん」

 

「もっと練習をして、他の子と一緒に立てるようにいっぱい練習をして」

 

「.........」

 

「体力もつけて、みんなに置いてかれないように頑張って」

 

「.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで私は..........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は口を止めてしまいました。

 

 

 

 

 

 

それはある光景を見たからでした。

 

 

 

 

「....金木さん?」

 

 

 

輝く綺麗なイルミネーションの光よりも、私はある場面に目を向けてました。

金木さんから異変を身に感じたからでした。

 

 

 

 

 

「そ......なんだ......そうなん....だね.....」

 

 

 

 

 

金木さんは泣いていました。

 

 

 

それはとても悲しそうに頭を下げ、左手で目を塞ぎ、右手は缶コーヒーを強く握っていました。

 

 

 

ただ悲しくないてるだけではなく、何かを恐れているように震えてました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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