東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

48 / 84


あの時の出会い




その次は思いがけないところで再び出会うのだ。









repeat

金木Side

 

 

昼下がり

出来事は突然、僕の目の前に起こった。

 

 

「.....え.....と....」

 

驚いてしまったせいで、僕は口が止まってしまった。

その理由は僕の目に映っていた。

あんていくにあの346プロのアイドル"高垣楓"がやって来たのだ。

楓さんがあんていくにやってきた時、店内は他のお客さんはおらず、

古間さんと入見さん、店長がいるはずなのだが変に店内は静まり返っていた。

僕はこの静まり返った空気をなんとか変えないかと考えていると、

僕は楓さんと目が合ってしまった。

そしたら楓さんは僕を見た瞬間、なぜか嬉しそうな反応をした。

 

「もしかしてあなたが看板娘さんですか?」

 

「.....え?」

 

僕は再び驚いてしまった。

それは別の驚きで固まった。

何も違和感もなく楓さんは僕を看板娘と言ったのだ。

 

「ああ、楓ちゃん。違うよ」

 

この静まった空気を店長は何も気にせずに楓さんに声をかけた。

 

「この子はカネキくんだよ」

 

「あ、じゃあ、この人はあの看板娘さんじゃないんですね」

 

「そ、そうです....」

 

楓さんは『すみません』と少し頭を下げた。

もしかして楓さんが言う看板娘さんはトーカちゃんのことだろうか?

 

「では座らせていただきます」

 

楓さんは笑顔でそう言うとカウンター席に座った。

楓さんが確か僕が働く前にあんていくで働いていたと以前店長から耳にした。

 

(まさかここに楓さんが来るなんて.....)

 

卯月ちゃんや美嘉ちゃんなど出会っているはずの僕でも、

同じく346プロ所属している楓さんになると存在感が違う。

身長は僕よりも2cm高く、171cmだ。

僕よりも少し大きい。

普段こんな近くで会うことはないため尋常じゃないほど緊張が僕を襲う。

もしヒデに楓さんがここに来ていると言ってしまえば食いついて来るのは間違いない。

ちなみに今は楓さんは入見さんと古間さんと話している。

やはりここにあまりこないためかとても嬉しそうに話している。

 

「そうだ、カネキくん」

 

「はい?」

 

「楓ちゃんがあんていくに来ていることは誰にも言っちゃだめだからね?」

 

「え?」

 

「もちろん金木くんのお友達やあの346プロのアイドルの子たちが来ていると言うこともね」

 

「それって...卯月ちゃんとか来ていることも?」

 

「そうだね。誰にも楓さんがここあんていくに来ていることを伝えてはだめだよ。楓ちゃんはあんていくを"隠れ家"として楽しみに来てるからね」

 

世間で知られるほど日常でゆったり過ごせれるのは家でしかないと考えてみれば、

あんていくもその数少ない場所と言うことになる。

 

「芳村さん、何話してたんですか?」

 

すると、ちょうどいいタイミングで楓さんが僕と店長の方に顔を向けた。

 

「いや、ちょっと金木くんが楓ちゃんが来たことに驚いちゃったみたいなようで」

 

「は、はい...まさかここに訪れるとは思いはしなかったので....」

 

驚いたことは事実だけど、話していた話は違う。

すると楓さんは僕に視線を向け、興味を持ったような顔つきになった。

 

「ところでお名前はなんて言いますか?」

 

「ぼ、僕ですか?...か、金木研です」

 

「金木研くんですか....」

 

楓さんはそう言うと、顎に右手を当て、考える仕草をし始めた。

 

(...一体何考えているのだろう...?)

 

楓さんは僕をじっと見つめ、何も話さない。

先ほど店にやって来た時と同じく、店内は静かな空気に包まれた。

 

(さ、さすがに....卯月ちゃんが来ているとか言っちゃダメだ....)

 

何か話題を出そうと考えていたのだが、

第一に上がってしまったのは僕の友達に卯月ちゃんなどの楓さんが所属する346プロのアイドルが、あんていくに訪れているという話題だ。

もちろん流石に僕はその話題には口にはせず、

彼女に伝えない。

そんな風に僕は話題を考えていると、楓さんは口を動かし始めた。

 

「もしかして、女の子になれますか?」

 

「え」

 

僕は彼女の言葉に固まった。

一体何を言っているのか、この方は。

 

「お、女の子ですか!?」

 

「ええ、メイクと女装したらいけるんじゃないかなって。金木くんなら問題ないじゃないかなと思いますが...?」

 

楓さんはそう言うとふふふっと笑い、店長も古間さん、入見さんに笑いを誘った。

本気なのか、この人は。

 

「さ、さすがに僕は男のままでいいですよっ!」

 

「えー別にこのままよりはいいんじゃない?」

 

「さすがに男の方が暮らしやすいと言うとか....」

 

「いや、女の子の金木くんなら可愛く日常を過ごせると思いますよ。普通に」

 

「過ごせませんよ!!というか日常は無理ですよ!!」

 

楓さんは僕にからかうと言うか.....

むしろ意図はなく僕に伝えているように見える。

 

 

 

 

 

 

なんだろう。

 

 

 

 

 

 

気がつけば楓さんに対して抱えていた緊張はなくなっていた。

いつもの卯月ちゃんや凛ちゃんのように普通に接しているように感じたんだ。

まぁでも、僕は楓さんのその天然に翻弄されているようになっているけど。

 

「金木くんですか....」

 

「....そうですよ?」

 

「またお会いできたら嬉しいです」

 

「っ!」

 

まさかこの言葉をもらうなんて考えもしなかった。

 

「こ、こちらも同じくそう思います...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は楓さんにそう伝えた時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつ会えるのか、ふと感じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

卯月ちゃんとは違い、世間で名が知られている楓さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きっと会うのは長くなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その次は僕が寝ている時に出会うだなんて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

プロデューサーSide

 

夕方頃

私は一人事務所で今日の仕事の報告書を作成していました。

その報告書の内容は私がプロデュースする各アイドルのテレビの収録の内容です。

感想はもちろん、現場の様子や今後改善すべき点など書類に書きます。

 

(......)

 

ふと私は秋の定例ライブを思い出してしまった。

秋の定期ライブが成功したのは悪くはないが、

ライブ終了後、喰種の事件が私の耳に多く聞くように感じる。

 

(....定期ライブの時に20区で喰種の事件か)

 

なんだか偶然に重なったせいか気分が悪く感じる。

それだけではなく11区では支局がとある喰種集団によって乗っ取られてしまい、

346プロでも11区周辺の会場を使用をしないことを決定した。

妙にここ最近喰種のニュースが目や耳に入るようになった。

 

「あの、プロデューサーさん」

 

すると私を呼ぶ声が聞こえ、

振り向くと島村さんが立っていました。

 

「少し険しそうな顔でしたけど大丈夫ですか...?」

 

「い、いえ..大丈夫ですが?」

 

考えすぎだ。

今は自分の仕事に戻らねばならない。

 

「そうですか。少しお話がありまして...」

 

「お話ですか?」

 

卯月さんは「はい」とにこやかに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこか、ぎこちない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもの島村さんとは、どこか違うような空気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『養成場に戻ってもよろしいでしょうか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは間違った選択だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは彼女に養成場に戻ることを許可した後に、

胸の中に現れた疑問。

 

 

 

 

 

 

そう思い始めたのは時間が経ち続けたころだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。