東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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苦味



あの一夜が終わった時から僕は離れて行ったんだ。



彼女たちとは





Bitter Taste

金木Side

 

 

あの一夜からしばらくたった。

僕の体にできた傷はなくなり、いつもの生活へと戻っていた。

いつもの生活と言っても変化はあった。

ニュースでは喰種捜査官が一名殉職したと大きく取り上げられ、

20区で喰種捜査官が亡くなるのは数十年ぶりらしい。

今後20区に捜査官が送られることは間違いなかった。

 

ちなみその喰種捜査官が殉職したニュースがテレビに流れた同じ日、

凛ちゃんたちが出ていた346プロの秋の定例ライブの特集が同じく流れた。

今回のライブは文香さんと凛ちゃんが所属しているプロジェクトクローネは好評だったと。

二つの出来事が同じ時間帯に起きるだなんて、なんだか気分がよくない。

 

「おーいカネキ?」

 

「.....え?」

 

「さっきから覚束ない顔しやがって」

 

「ああ、ごめんね....」

 

気がつくとヒデが僕の名をなんども読んでいたことにハッと気がついた。

考えすぎたせいか周りの音など耳に入っていなかった。

今、僕はヒデと大学の敷地内のベンチで会話をしていたんだ。

 

 

 

普通は考えられるだろう?

前に起きた喰種捜査官殺害事件の関係者が、この目の前にいるだなんて?

 

 

 

「それでさ、最近卯月ちゃんとはどうなんだ?」

 

「そ、それは....」

 

「まさか...全く連絡してねぇのか?」

 

「あ、ある程度してるよっ!」

 

あの一夜の後、卯月ちゃんに電話に出なかったのは"充電が切れてしまった"とメールで伝えた。

もちろん充電が切れたのは嘘だけれど。

 

急にヒデの口から卯月ちゃんの話題が出たことに僕は戸惑った。

先ほどのヒデの口から出た話題とはギャップが違うからだ。

最近ヒデは喰種について興味を持っている。

昔から急に何かを始めるのがヒデなのだが、僕は今それに恐れを抱いている。

理由はもちろん、僕は"喰種"だ。

ヒデはあの喰種捜査官の殉職した事件を自分なりに調べている。

その調べた内容はどれも正解と言っていいほど合っていて、とても恐れを持った。

もしヒデがその殉職した事件に、僕が関わっていると知ってしまえば....

 

「それで最近どんな会話したんだ?」

 

「...え?」

 

突然と言われるとすぐに答えが浮かばなかった。

 

「え...と....」

 

「........」

 

一体何を言えばいいのか考えてると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒデはとんでもないことを口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カネキ、今度卯月ちゃんとデートしろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...はっ!?」

 

しかもヒデの顔はふざけた顔ではなく、真顔で言ったのだ。

 

「さ、さすがにそれはまずいだろ!」

 

一体どれだけリスクが高い行動なのか理解しているとは考えにくかった。

もし本当にやったら、ファンに殺されかねない。

 

「いや、デートというか二人でどっか遊びに行けと言えばいいか。デートとなったら他のファンにぶっ殺されるな」

 

「ど、どうして僕が卯月ちゃんと!?」

 

「だってトーカちゃんから聞いたぞ。よく卯月ちゃんがカネキと話してるとな」

 

「トーカちゃんが言った!?」

 

まさかトーカちゃんがそんなことを言っていたなんて驚いてしまった。

いつも卯月ちゃんが来るたびにトーカちゃんは冷ややかな目で僕と卯月ちゃんの会話を見るのだけど.....

もちろん卯月ちゃんは僕だけじゃなくてトーカちゃんにも声をかける。その時はトーカちゃんは冷ややかな目はせず、笑顔で会話をする。

 

「まぁ、安心しろ。流石にカネキが卯月ちゃんと一緒に遊びに行った話なんて、俺は他の人に伝える気はねェからな!」

 

ヒデは僕にいつも揶揄うけど、告げ口をいう人ではない。

昔からヒデのことは知っているから、僕は信じることした。

僕が喰種だということを知ってもらうのは知って欲しくはないけど。

僕たちがそんな会話した時、ヒデは何かあるものを見つけたような仕草に出た。

 

「あ、あれって....文香さんじゃん!」

 

ヒデが指をさした先に彼女がいた。

 

「確か文香さんってカネキとは仲よかったよな?」

 

「....そうだね 」

 

ヒデは何度もその光景を見ていたため、僕と文香さんは交流があることは知っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも僕は文香さんが現れたことに喜ばなかった。

 

 

 

 

 

 

「......離れよう」

 

「え?どうしてだよ?」

 

僕はヒデに答えを言わなかった。

どうして言わなかったのかと言うと、答えは言わなくてもすぐに現れた。

 

「あ!もしかして鷺沢文香さんですか?」

 

「やっぱりあたしと同じ大学だ!」

 

答えは目の前に現れた。

彼女の周りに多くの人が寄って来たのだ。

秋の定期ライブ以降文香さんの名は世間に知られ、いろんなメディアで紹介されている。

なので最近では大学内の多くの人から声がかけれれている。

 

「話しかけないのか?」

 

「.....変な目をつけられるから」

 

「え?.....あ、ああ....」

 

僕は座っていたベンチから立ち上がり、その場から立ち去った。

ヒデも僕の言葉に従い、文香さんから離れた。

 

 

あのライブ以降、僕と文香さんの間に見えない溝が生まれていた。

それは僕が作った深い溝だ。

でも今の僕たちの関係は最善なことかもしれない。

もし僕が彼女に声をかけてしまえば、周りに誤解を生んでしまう。

誤解を生んでしまえば今後の彼女の道に悪影響が出てしまう。

 

 

 

 

 

 

 

彼女が傷つけられるより、僕が傷つけらた方が影響が少ない。

 

 

 

 

 

 

 

あのいつも彼女と気軽に話し合えた日々は、もう戻らないんだ。

 

 

 

 

 

 

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文香Side

 

 

(.....落ち着きました)

 

一人、大学の図書室で一息をしてました。

今日は授業がなくお仕事がなかったため、私は大学に訪れました。

 

(最近は色々な方に声をかけられ、どこに行っても疲れてしまいます...)

 

秋の定例ライブ以降私はテレビに出演したり、雑誌の取材も受けたり、ラジオに出演したりなどいろいろなメディアに出てます。

そのおかげで多くの方から声がかかり、自分は世間では有名人になっていると自覚できます。

 

 

 

 

 

 

(........金木さん)

 

 

 

 

 

私には心の隅で寂しさがありました。

今日お久しぶりに金木さんとお話をしたかった。

でも今日もできませんでした。

 

 

(......嫌ってませんよね?)

 

 

金木さんは私に配慮をしてくださっていると思います。

もし二人で一緒にいてしまえば、今後の道に影響がしかねない。

 

 

 

 

 

 

(.......)

 

 

 

 

 

私は持っていたマフラーをぎゅっと抱きしめました。

 

 

 

 

 

最近私は何かを抱きしめたいという感情が芽生えてました。

 

 

 

寝るときも枕を抱きしめ、事務所にあるソファーにおいてある柔らかいクッションを抱きしめる日々が最近増えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは金木さんと出会っていない日々の数と同じく増えていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも私は何かに抱きしめるだけでは完全に満たされるとは限りません。

 

 

 

 

 

 

 

 

つらい

 

 

 

 

 

 

 

 

彼と離れるだなんて

 

 

 

 

 

 

 

最近朝ベットから目覚めたとき、なぜか目元に涙を流した後が感じられます。

 

 

 

 

 

 

 

その時流した涙はほとんどは、冷たい悲しい涙。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(.........)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正しいだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

本当にこの道(アイドル)をやっていいのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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金木Side

 

 

 

ヒデと共にした僕はその後バイトで別れ、現在あんていくにいる。

今日同じく僕と働いているのは古間さん、入見さんに店長でトーカちゃんはいなかった。

 

 

(.....僕が殺したわけないんだ)

 

 

先ほど喰種のお客さんたちから声がかけられた。

 

 

 

 

"これからも捜査官(ハト)をぶっ殺してくれ”と

 

 

 

 

それは僕が関わっている20区内の夜に起こった喰種捜査官殉職した事件だ。

今日あんていくに来たお客さんの中に、僕が捜査官(ハト)と戦っているところを目撃したらしく、

僕がその捜査官(ハト)を殺したと誤解していたらしい。

 

 

 

 

 

僕は彼を殺してはない。

 

 

 

 

 

僕は彼の命を救ったんだ。

 

 

 

 

 

喰種なのに人の命を救うだなんて、ありえない話だ。

 

 

 

 

 

「そういえばカネキくん?」

 

「はい?」

 

「今日"特別な人"が来るって聞いたかい?」

 

「"特別な人"?」

 

古間さんから初めて耳にした。

一体なんだろうかと聞こうとすると入見さんが反応し、

 

「今日はカネキくんに"会ってもらいたい人"が来るの」

 

「会ってもらいたい人?」

 

「ええ、店長と私たちは結構仲良しな子でね」

 

一体誰なのか僕は隣にいた店長に聞いたのだけど、

『もうそろそろ来るよ』としか言ってくれなかった。

 

僕はその店長の言葉に気になりつつ、

各テーブルを布巾で拭いていた。

今の時間帯は昼下がりで人が来ない。

僕があんていくに来た時は人はいたのだけど、今は妙に人はやって来ない。

まさか扉の看板をCloseとしているのかと考えていると、

しばらく開くことがなかったお店のドアが開いた。

 

 

「いらっしゃ....」

 

 

開いたドアに顔を向けた僕は、言葉を途中で止め、驚いてしまった。

 

それはお店の扉が開いた時だ。

 

ふんわりとしたショートカットに、僕と同じ身長の美しい女性だ。

 

この人を僕は知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、みなさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"高垣楓"(たかがきかえで)さんがあんていくにやって来たんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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