東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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早く覚めたい


この絶望に満ちた悪夢から






dream

文香Side

 

 

『わ......私と......お付き合いしませんか?』

 

 

その一言を口にした、私。

一瞬周りの音が消え去り、まるで無の世界にいるように聞こえなくなった。

時計の針の音、外の風の音、その風で揺れる窓の音が一瞬にして消え去った。

衝動に似た状態で言ったあまり、周りの状況がかさついてしまい、見えなかった。

 

「........」

 

金木さんは驚いてしまったのか何も言葉を発せずに、ハッとした目で私の瞳をじっと見つめてました。

夢と現実が見分けがつかない言葉だと感じていると思います。

 

「.......えっと」

 

まるで二人だけいる喫茶店の静かさが現実から離れ、

喫茶店がまるで夢にいるような状況を作っているように感じた。

自分が何か話さなければならない無気力さを感じたせいか、再び口を開きました。

 

 

「私は金木さんの悲しむところをもう見たくないです..」

 

 

アイドルになったきっかけは金木さんの言葉でした。

プロデューサーさんからスカウトをもらい、

受けようか迷っていた時に金木さんに伝えたところ、

アイドルになった方がいいと私に伝えました。

それは私に後押しをしてくれました。

 

 

 

でもなったことで金木さんに寂しい思いを作ってしまいました。

 

 

 

 

それは志希さんからの言葉からわかりました。

私はそのことを耳にして以降、本当にアイドルをやっていいのか心の奥で潜むようにありました。

 

「私は金木さんのそばに居たいんです......もう寂しい思いをさせないために」

 

手を震わせながら、金木さんに胸に思いを告げました。

ここ最近金木さんの元に来るのは卯月さんしかおらず、

今後もしかすると本当に“一人”になってしまうかもしれません。

 

 

本当に

 

 

彼のそばに居たいのです。

 

 

「...なのでっ!」

 

「文香さん..」

 

さらに言葉を伝えよう我を忘れていた私に、

金木さんは止めるかのように、

優しい声で私の名前を口にしました。

 

「........僕はありがたいです」

 

金木さんは笑顔で伝えました。

それはあの"どこか寂しそうな顔"をし、

手で顎をこするように触りました。

 

(.....っ!)

 

私は金木さんの表情に嫌な予感を感じました。

なぜならその顔は一度目にした顔。

 

私が"アイドルをやることを伝えた時に現れた表情"でした。

 

 

 

 

『.....でも、お断りします』

 

 

 

「....え?」

 

嫌な予感を感じたはずなのに、

私はどうして金木さんは断ったのか整理が追いつかず、

混乱をしてました。

 

 

「ど....どうしてでしょうか....」

 

 

わからない

 

 

どうして私の思いを断ったのか

 

 

わからない

 

 

なんで寂しいはずの金木さんが断るのか

 

 

わからない

 

 

わからない

 

 

「どうしてなら....」

 

 

金木さんはこう言いました。

 

 

 

 

 

『文香さんは“アイドル”ですから』

 

 

 

 

どこか寂しそうに理由を伝えた金木さん。

 

私はまるで死刑宣告を言い渡された囚人のように衝撃が走りました。

 

 

 

 

ああ、そうだった

 

 

 

 

私は"アイドル"

 

 

 

 

アイドルになっていたんだ

 

 

 

 

なんであの時、私は

 

 

 

 

「そ...そうですよね....」

 

私は偽った笑顔を作り、言葉を返しました。

あまりにも衝撃が走ったせいか顔が上げられませんでした。

何かが私にのしかかったような状態にいるように

 

 

 

その後金木さんとの会話はなく、口にしたのは帰りの挨拶だけでした。

言いたいことがたくさんあったにも関わらず、

一瞬にして砂のように消え去ったように消えました。

 

 

 

 

ああ、なんでだろう

 

 

 

私が得たのは"彼の思い"ではなく、

 

 

 

“後悔”でした。

 

 

 

どうして自分は打ち明けてしまったのか

 

 

 

悲しい 悲しい

 

 

 

なんで大事なライブの前にこんなことをしてしまったのだろうか

 

 

 

まるで博打をするようなことを

 

 

 

 

「......なんで.....なんで......」

 

 

 

 

その夜、私は眠れませんでした。

明日ライブがあるのにも関わらず、

ただ時計の鉢の音を聞き、寂しく輝く月を枕元で見ながら泣いてました。

枕を強く抱きしめ、独り言のようにただ泣いていた、私。

それは声を上げて泣いていたのではなく、

周りに気づかれなよう静かに泣いていた。

 

 

 

何でしょうか、私

 

 

 

まるで私は手にしてはならない禁断の果実を、

"蛇"の言葉に耳を傾け、その果実を手にした“エヴァ”のように思えたのです。

 

 

 

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金木Side

 

 

 

 

辛い

 

 

 

 

真っ暗な夜にベットの中で呟いた言葉

 

 

 

断ってしまった辛さと罪悪感

 

 

 

喰種であることの辛さ

 

 

 

それと喰種になって増してしまった孤独感

 

 

 

そして出会うたびに現れる“失う恐怖”

 

 

 

それを考えるほど、目に涙が溢れ出した。

 

 

 

僕はとても辛く感じていた。

 

 

 

 

「......ごめんなさい.....文香さん...」

 

 

 

 

僕は最低だ。

 

 

 

彼女を傷つけてしまった。

 

 

 

それは簡単に治ることのない傷を負わせてしまった。

 

 

 

 

 

文香さん

 

 

 

今日はごめんなさい

 

 

 

今の僕には“断る”という選択肢しかありません。

 

 

 

それは僕の身のためでもあり、文香さんの身を守るための選択です。

 

 

 

 

早く"終わり"を知りたい

 

 

 

時間がわからない中で過ごすのが

 

 

 

 

 

僕は辛いんだ

 

 

 

 

 


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