東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

40 / 84
かすかに震えがくる

それは秘密が明かされる恐怖と離れてしまう怖さが、

震えを生み出しているんだ





Condolences

美嘉Side

 

 

アタシは電車から降りると、早速腕を伸ばした。

電車内の曇った空気に少しうんざりしていた、私。

電車から出た時の秋の空気が心地よく感じられた。

 

(あー今日もレッスン疲れたな〜)

 

秋の定例ライブに向けて周りは忙しいし、

心も体も疲れが感じつつあった。

それに他の仕事が混ざっていて、

倍に疲れがのしかかる。

 

(というか....来年どうしようかな?)

 

今秋というのだが、今後の進路にまだ迷っていた。

今後の進路表で書いた第一志望は、そのまま芸能界で活躍すると書いた。

でもそれでも本当にいいのかっと頭の片隅に留まっていた。

別にアタシの学校は結構自由なところがあって、

進学校のように大学重視というのはない。

 

 

 

でもなぜか心のどこかにぽっかりと穴が空いているように満たされてはいなかった。

 

 

 

(まぁ、そういうわけで"ここ"に来ちゃった)

 

ストレスが感じつつあったから、アタシは20区にやってきた。

その理由は簡単、金木さんに会いに行くのだ。

何せ事務所はプロデューサー以外じっくり話す男性はいない。

というかアタシは男性とは付き合ったことがない女の子....

みんなから付き合った経験がありそうと言われるけど..

 

 

 

そんなことは"一度"もない

 

 

 

やはりある程度”経験”積まないと....

 

 

 

 

 

 

「あれ?美嘉姉?」

 

すると聞いたことのある声がした。

 

「あ、"未央"じゃん」

 

アタシは振り向くと、そこにいたのは"未央"だった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

未央Side

 

 

私が20区駅に着いて数分後、とある人に出会った。

その人は"美嘉姉"だ。

私の憧れの人の一人で、

あのセクシーさに私は参考している。

 

「どう?舞台の稽古いけてる?」

 

「うん!いけてるよ!」

 

監督に怒られることはあるけど、

"あーちゃん”(高森藍子)とか支えてくれる仲間ができたから、

乗り越えられる力が身についた。

 

「それで...なんで未央はここにいるの?」

 

「それはね、金木さんに会いに来たんだよね!」

 

「そうなんだ。アタシもちょうどその理由で来たんだよね」

 

偶然にも美嘉姉も金木さんと会いにここ(20区)に来たのだ

私は来た理由は稽古の疲れが現れたから、その気分転換に来たのだ。

 

「もうそろそろ秋のライブに向けてレッスンが激しくなってね...」

 

今回の秋のライブは私としまむー(島村卯月)は出ない。

なぜなら今回はプロジェクトクローネに参加するのだ。

その中の"トライアドプリムス"に入る。

メンバーはかれん(北条加蓮)かみやん(神谷奈緒)がいる。

 

「それで一息しようかなって思ってここに来たんだよね」

 

「私と同じじゃん!美嘉姉!」

 

美嘉姉は「たしかに同じね☆」と言うとえへへっと笑った。

私と同じ理由を持ってここに来るのはなんだか運命のように感じた。

もしかすると金木さんはそれを引き寄せる存在かもしれない?

そんな時、美嘉姉があることに気がついた。

 

「...あれ?」

 

「どうしたの?美嘉姉?」

 

「あそこの人ってもしかして...?」

 

美嘉姉が指を指した先を見ると、

よく事務所で見る人が同じくここ(20区)にいたのだ。

灰色のコートを着て、私たちよりずっと高い身長の男性。

プロデューサーのコートを着た姿を見たことはないけど、

 

 

 

もしかすると、"プロデューサー"かも?

 

 

 

「じゃあ、声かけて来るね!」

 

「え!?ちょっと未央!」

 

私は真っ先にその人の肩を叩くことを決め、走り出した。

プロデューサーだったらどうして20区に来たか聞いて見る!

 

 

そしてその人の肩を叩き、

 

 

「こんちは!!プロデュー.........サ?」

 

私はそう呼ぶと、プロデューサーだと思われる人が振り向いた。

その時、私は言葉を失った。

 

 

 

それは、"違う人"だったから。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

亜門side

 

 

「...え?」

 

突然誰かが俺の肩に叩かれ振り向くと、

二人の女子高生が立っていた。

急に肩を叩いてきたのだ。

 

「え......と....」

 

その一人のショートカットの女子高生が俺の肩を叩いて来たのだ。

なぜか驚いて、なにすればいいのかわからない顔つきになっていた。

 

「「ご、ごめんなさい!!!」」

 

二人の顔色は青くなり、真っ先に頭を下げた。

 

「は....はい?」

 

俺はなんと答えればいいのかわからなかった。

あまりにも一瞬のことで、状況が整理できない。

 

(.....ん?どっかで見たことがあるような?)

 

ふと単なる女子高生の悪戯かと感じたが、

俺はあることに気づいた。

それは彼女たち一体誰なのかと

 

「もしかして、"346のアイドル"か?」

 

「...え?」

 

俺がそう言うと二人とも顔をあげた。

その二人はあの346プロのアイドルであった。

一人はシンデレラガールズの"城ヶ崎美嘉"と、

あのプロデューサーが担当しているアイドル"本田未央"だった。

 

「そ、そうです!」

 

本田未央は嬉しそうに答え、目がキラキラと輝いていた。

 

「本田未央です!アイドルやってます!!」

 

「そ、そうか....」

 

あまりの元気さにこんな俺でもついて来れない。

まだ若いはずなのだが、負けてる自覚が出てきている。

 

「どうして名前を知っていますか?」

 

「それは...君が所属しているシンデレラプロジェクトのプロデューサーとは知り合いだからだ」

 

「え!?本当ですか!?」

 

本田未央はそれを聞いてとても驚いた。

テンションがかなり高く、明るい子だと言える。

俺は346プロダクションのアイドルの名を少々だが、知っている。

特にあのプロデューサーが担当しているアイドルの名前は特にわかる。

決して俺はアイドルが好きだからと 知っているのではなくだが...

 

 

しかし本田未央とは裏腹に、城ヶ崎美嘉の表情はあまりよくなかった。

 

 

「あの...」

 

「ん?」

 

「もしかして、"あの事件"にプロデューサーに事情聴取をした人ですか?」

 

「...そうだな」

 

俺は少し間を開けて彼女に答えた。

そうした理由は、事件が発生した時に会ったことがあるからだ。

"あの事件"は2年前に起こった喰種によるアイドル捕食事件だ。

当時の城ヶ崎美嘉はあのプロデューサーの担当アイドルであり、

被害者のアイドルとは同期であった。

 

「え?"あの事件"って?」

 

「2年前に346プロダクションのアイドルが喰種に襲われ、死亡した事件のことだ」

 

「...えっ!?それは本当ですか!?」

 

彼女が知らないのは"当たり前"と言ってもいいだろ。

"あの事件"に関することは世間ではあまり知られてはいない。

その理由は二つある。

まず当時346プロダクションのアイドル部門はできたばかりで、あまり知られていなかったこと。

二つ目はメディアがあまり報道されていなかったからだ。

喰種の情報は制限されていることが多く、報道ができるのはほんの一部しかない。

 

「当時のこと明確に覚えてるよ..」

 

唯一その喰種の事件を知ることができるのは喰種捜査官か事件の"被害者"、あとは被害者の関係者ぐらいしかない。

城ヶ崎美嘉はあのプロデューサーの元担当のアイドルであるため、事件については耳にしていた。

 

「本当に...喰種はいやだよ...」

 

城ヶ崎美嘉はそういうと目を逸らし、

どこか悲しそうに何かを見つめた。

同期が喰種によって殺されるのは悲しいことだ。

 

 

 

 

 

 

 

俺も同じく味わった

 

 

 

 

 

それは何度もあり、

 

 

 

 

 

 

"先週"に起こってしまった

 

 

 

 

 

 

「あの...?」

 

「....ん?」

 

ふと気がつくと本田未央が俺に声をかけていた。

あの"悲劇"が頭に浮かんだせいか気づくのが遅かった。

 

「えっと......"おまわりさん"っと呼べばいいですか?」

 

「いや...喰種捜査官だからおまわりさんと言われても...」

 

俺はその呼び方に否定はしたが、

その代わりと言える呼び名はすぐには答えが出なかった。

 

(でも...なんて呼ばれればいいのだろうか?)

 

喰種捜査官は警察に似ているが、実際は違う。

なんて呼ばれてもいいか悩んでしまう。

そんな時、"城ヶ崎美嘉"からある提案が出た。

 

「じゃあ、名前で呼びません?」

 

「名前?」

 

「ある程度、アタシとは会ってますからいいんじゃないですか?」

 

「い、いや...それはさすがに...」

 

「もしかするとプロデューサーに会いに行く時、私と会うかも!」

 

本田未央が発言した後、俺はさすがに否定はできなくなった。

あの輝かしい瞳に負けてしまったのだ。

確かにそれもなくもないが....

 

「それで....お名前はなんですか?」

 

本田未央はそう言うと頭を少し傾け、俺の答えを待つ仕草をした。

確か俺の名前はプロデューサしか伝えておらず、"城ヶ崎美嘉"には一言も言ってはいない。

 

「俺の名は亜門鋼太朗(あもんこうたろう)だ」

 

「亜門さんですか!いい名前ですね!」

 

「亜門さんなんだ....」

 

二人は俺の名前を聞いてとても興味な顔つきをした。

結局、おまわりさんの代わりに人の名前になるとは...

 

「あ!私、亜門さんに聞きたいことがありました!」

 

「なんだ?」

 

「亜門さんは本当にプロデューサーに似てますね!」

 

「....に、似てる?」

 

「特に身長と髪型が似てます!」

 

本田未央の発言に、あの3人のアイドルが頭に浮かぶ。

確か、"諸星きらり"と"城ヶ崎莉嘉"、"赤城みりあ"が以前、同じく俺に言ったのだ。

あの時にちょうどあのプロデューサーに事件以来、久しぶりに出会った。

ちなみに346プロの事務の"千川さん"から『プロデューサーさんに似てますね』と言われた。

 

「そうか...やっぱりそのぐらい似てるか...」

 

「んーでも、顔を見たら違うとわかりますよ」

 

そう言うと城ヶ崎美嘉は「特に目つきが」といい、目を指に指した。

 

「二人とも20区によく来るのか?」

 

「はい。友達がバイトしているので、そのお邪魔に!」

 

「友達のところにか...」

 

アイドルであるとは言え、

それを外せば普通の女子高生であることは変わりがない。

そう思うと二人はまだ子供じみたところがある。

 

「じゃあ、私たち行きますので!」

 

「ありがとうございました、亜門さん」

 

「あ、ああ...」

 

二人はそう言うと背を向けて、立ち去ろうとした。

 

 

 

 

そんな時、俺はふと"あること"を思い出した。

 

 

 

 

「あ、ちょっと待ってくれ」

 

「はい?」

 

俺はあることを思い出し、二人を止めた。

 

「最近20区は危ないから、なるべく早めに帰った方がいい」

 

「え?どうしてですか?」

 

「先週に喰種による殺人事件があった」

 

それは俺が目の前に起こった事件。

鮮明に俺の目に映ったことを覚えている。

 

「え...!?ここ(20区)に!?」

 

「そうだ。その事件を起こした"喰種"は20区に潜んでいる」

 

二人は俺の言葉に驚いた。

この情報はつい最近出たもので、

世間ではあまり知られてはない。

被害者は共に捜査をしていた喰種捜査官で、

おそらくあの"親子の喰種復讐だと思われる。

 

 

「だから君たちも気をつけるように」

 

 

俺はそう言うと二人の前に立ち去った。

二人が"喰種の事件"に巻き込まれないように願いながら

 

(.....さすがに彼女たちが所属している346には被害は出ないと思うが...)

 

そういえば最近346では"新たな対策"を出した。

それは今度の秋の定例ライブで”Rc検査ゲート”を試験的に設置するということだ。

Rc検査ゲートは簡単に言えば喰種だと反応するゲートだ。

喰種は人間とは違い"Rc因子"が数十倍高く、検査すればすぐに出る。

現在設置しているのは各CCG支局と346プロダクションしかない。

何せまだ開発途中であり、設置には高額だからだ。

 

(なのに今度のライブに設置するのか...)

 

CCG以外唯一設置してある346がさらに設置を増加させると聞くと、

こっち側としてはありがたいのだが、

346内の職員から見ればどうなることやら....

 

 

 

(...."ラビット")

 

 

 

俺が心の中で呟いた名前

 

 

それはこの前同じく捜査をしてた草場さんを殺した"喰種"だ。

名前の由来は兎の仮面をしてたからだ。

おそらく多くの捜査官を相手にしていた経験のある凶悪な喰種だ。

 

 

 

 

 

罪なき人が喰種に殺されるなんて理由はない。

 

 

 

 

 

 

なぜ彼らはそのような運命を辿らなければならない?

 

 

 

 

 

(....変えてみせるっ!!)

 

 

 

 

俺はこの"間違った世界"を変えなければならない

 

 

 

 

 

 

その"負の連鎖"を断ち切るために

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金木Side

 

 

今日もあんていくに働いていた、僕。

昨日は本当に命が消えそうな事態があった。

 

(さすがにトーカちゃんやりすぎじゃないかな...?)

 

それは昨日の夜頃であった。

僕はあんていくの前でトーカちゃんを待ち、

出会って中に入っていった。

その時僕たちが向かったのは"地下"であった。

その地下は昔喰種が作ったとされる場所で、

地上に住めなくなった喰種が向かう所であると言われる。

 

 

 

そこで僕たちが行ったのは"トレーニング"だった

 

 

その時の僕は何をやるかわからず

中指を折られ、僕を殺そうとした。

 

 

 

 

その時であった

 

 

 

危険を察知したのか勝手に僕の体に赫子(かぐね)が現れた

 

それはあのヒデを助けて以来初めて出したのだ。

 

(さすが腹筋100回は辛いよ...)

 

そんなことを考えていた時、

お店のドアがタイミングよく開いた。

 

「あ、こんにちは」

 

僕はそのお店に訪れた人に『いらっしゃいませ』ではなく挨拶をした。

その人は僕の知っている人で、

今日は“一人”ではなく、“二人”であった。

 

「お久しぶりです!金木さん!」

 

「久しぶり、金木さん」

 

やって来たのは未央ちゃんと美嘉ちゃんだ。

相変わらず明るい二人で、僕もそう明るくなりたい。

二人は僕に挨拶をした後、

カウンター席に座った。

 

「二人が来るなんて珍しいね」

 

「今日は金木さんの所に行こうと思ったら、未央と出会ったんだよね」

 

「美嘉姉と一緒にここで一息しようかなと思って!」

 

「ははは、そうなんだ」

 

その後二人から出る会話は止まることはなかった。

美嘉ちゃんからはもうそろそろやる秋のライブについてのことや、

最近の仕事のこと、あと妹の莉嘉ちゃんとみりあちゃんのことが話題に出た。

その話を耳にした僕は、美嘉ちゃんは本当に妹思いだなぁと感じた。

未央ちゃんから出た話題は、やはり舞台のことであった。

『秘密の花園』にオーディションは受かったことは耳にしたものの、

レッスンはどうなのかは僕は不安だった。

ついて来れてるか不安だったが、

未央ちゃんかは『練習はがんばってますよ!』と言葉が出て、

僕は安心感を得た。

未央ちゃんは舞台に向いていることが改めてわかる。

 

「二人とも楽しんでるね」

 

「もちろん!やっぱ今を楽しまなきゃ!」

 

「うん!辛いことはあるけど、未央ちゃんは十分に楽しいよ!!」

 

二人は同じく口を揃えて、楽しんでいると言った。

僕はなんだか二人がとても羨ましく感じるんだ。

 

 

 

 

 

僕と違って

 

 

 

 

「あ!金木さん!」

 

すると未央ちゃんが何かを思い出した仕草をし、

僕に声をかけた。

 

「ん?」

 

「金木さんは今度のライブに来ますか?」

 

未央ちゃんが言ったこと。

それは秋のライブのことであった。

 

「今度のライブ...?」

 

「そう、アタシたちの活躍するライブに来ます?」

 

 

でも行けるような状態じゃない。

 

 

「ごめん..........今度のライブは僕はいけないよ....」

 

「「え!?」

 

二人は僕の言葉に驚き、とても残念そうな顔になった。

 

「せっかくみんなが頑張ってるのに...」

 

特に未央ちゃんは本当に残念そうだった。

 

「ごめんね..体調が優れないよ」

 

「体調?もしかして事故の?」

 

「うん....あんまり大勢のところは行きたくない」

 

「そっか、なら仕方ないね。体調悪い時は寝てた方がいいよね」

 

「金木さんはアタシたちが活躍している時に休んでてね★」

 

「ありがとう...二人とも...」

 

僕は彼女たちの言葉に申し訳なさとありがたさを感じた。

 

 

 

 

でも僕は彼女たちに”嘘“をついてしまった。

 

 

 

事故に巻き込まれたおかげで、体調が悪いという言い訳を使ってしまった。

 

 

本当はライブに行けるような体調であった。

 

 

 

 

僕は正直彼女たちが活躍するライブに行きたい

 

 

 

でもそれは“無理”な話だ。

 

 

 

何せ“店長”から警告を耳にしていた。

 

今度のライブには“喰種捜査官”がいる情報を得たのだ。

この情報は喰種の中では有名になっていた。

僕が彼女たちの活躍を見て死ぬなら、

活躍するところを見ずに、

生きていていた方が僕と彼女たちにとってメリットは大きい。

 

「僕が言うのはあれだけど...注文は」

 

「注文?ああ、そうだったね。アタシはカプチーノで、未央は?」

 

「私もカプチーノで!」

 

「ありがとね」

 

伝票に書き、早速カプチーノを作る準備に入る、僕。

 

 

 

 

そんな時、未央ちゃんの口に“ある話題”が出た。

 

 

 

「最近、"20区"は危ないらしいですよね」

 

 

「え?」

 

僕はその言葉を耳にした瞬間、腕がぴたりと止まってしまった。

それは耳にしたくない話題であった。

 

「ど、どういうことかな...?」

 

僕は恐る恐る未央ちゃんに聞いた。

だいたい予想はついてしまうものであった。

 

「先ほどプロデューサーに似ている"喰種捜査官"の人に言われたんですよ」

 

「未央がそう思って声をかけたら、プロデューサーに似ている喰種捜査官の人だったんですよね」

 

美嘉ちゃんがそう言うとえへへっと笑った。

 

「そ、そうなんだ...ははは...」

 

僕は不快に思われないよう作り笑いをした。

彼女たちにとって笑い話に思うかもしれない。

 

 

 

 

でも僕にとって決して笑えるようなものではない。

 

 

 

「あ、金木さん!手止まってますよ!」

 

すると未央ちゃんが僕の姿を見て、それに指摘をした。

 

「あ...ごめん未央ちゃん」

 

僕はそういうと固まっていた体を再び動かした。

 

「ラテアートは可愛い猫ちゃんをおねがしますね!」

 

「わかったよ...未央ちゃん」

 

 

二人が来てくれることに嬉しく感じる。

 

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

 

やってくるたびに感じることがある。

 

 

 

 

 

 

なんだか影が濃くなっているように思えるんだ。

 

 

 

 

彼女たちの輝きが大きくなるにつれて、

 

 

 

 

 

僕の方は暗くなっていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

(.........もうそろそろライブか....)

 

日が流れ、僕は今日もあんていくに働いていた。

今はお客さんがこない時間帯であり、

店内は僕だけであった。

トーカちゃんはヒナミちゃんの様子を見に上に行ってしまい、

今の所、店内は僕だけだ。

今日は卯月ちゃんは来ることはない。

それはメールが来ていないと言うわけでもない。

明日は"秋のライブ"をやるのだ。

前日にここに来るわけない。

 

 

 

 

まるで店内の様子が今の僕の心情を写しているように感じる。

 

 

 

 

 

 

喰種になったことで隠さなければならないことが生まれ、

 

 

 

 

卯月ちゃんたちなどの人間(ヒト)を失いかねないリスクを背負った。

 

 

 

 

 

 

だから今日卯月ちゃんが来ないことは寂しいだけではなく、

 

 

 

 

 

 

 

喰種であることを明かされない恐怖がない"安心感"を得ていることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、僕のその予測が外れる出来事が起きた。

 

 

 

 

 

 

それはお店のドアが開いた時であった。

 

 

 

「こんにちは、金木さん」

 

ドアを開いた先を見た僕は驚いてしまった。

あんていくにやって来たのは、文香さんであった。

 

「ど、どうも...文香さん...」

 

あまりにも驚いたせいか口がとても硬くなり、

普通に言葉が返せてなかった。

文香さんはカウンター席に座り、

メニュー表を手に取った。

 

「元気でした?文香さん?」

 

「.......」

 

僕は文香さんに声をかけたのだが、

なぜかこちらを向けようとはせず、

ただメニュー表に目を向けていた。

一体何があったのかと胸の中に感じたら、

文香さんははっと気づき、

 

「あ、げ、元気でしたよ....金木さん」

 

文香さんは慌てて言葉を返し、

顔を少し赤く染まっていた。

 

(どうしたんだろう...?)

 

僕は文香さんの行動に少し変に感じた。

いつもなら普通に言葉を返すはずなのだが....

 

「今日は何を注文しますか?」

 

「この前に志希さんが注文したカプチーノでお願いします....」

 

「わ、わかりました....」

 

なんだかとても違和感に感じる会話であった。

どうしたのだろうと言う気持ちを抱え、僕はカプチーノを作り出す。

 

(.....何があったんだろう)

 

ライブ前日にここに来るのは予想はしなかった。

文香さんはあのプロジェクトクローネのメンバーの一人で、

ライブのメインでもある。

それなのになぜ僕の元にきたのだろうか不思議で仕方なかった。

 

 

「「........」」

 

 

お互いの会話なく、ただ静かな店内。

まるで誰もいないかのように静かだった。

 

(....何か言わないと)

 

カプチーノを作っている段階なのだが、

僕の胸には行動を起こさなければと言う意欲みたいのが生まれていた。

でもこんな静かな空気を壊すのが怖いと抑制にしてくる。

 

 

そんな時であった。

 

 

 

 

「あ、あの...金木さん!」

 

 

僕が文香さんが口を開いた。

 

 

 

「そ、その...... 」

 

文香さんの顔は赤く、何か言おうとしていた。

それは恥ずかしさと悲しみが混じった顔に見えた。

 

 

「.......っ!!」

 

 

文香さんは決意をしたのか手を握り、

驚くことを僕に言ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『わ......私と......お付き合いしませんか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。