東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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正しさ



この世界はどちらかが悪でどちらかが正義だなんて、


はっきり言えないんだ。






Savage

 

卯月Side

 

 

お仕事が終わった昼下がり、

私は金木さんが働いているあんていくに足を運んでいました。

最近の事務所内では秋の定例ライブが近づいているせいか他のお仕事が終わるのが早いです。

 

(今日はトーカさんもいるかな...?)

 

そういえば、つい最近まではトーカさんとは出会っていませんでした。

その時のトーカさんは定期テストの勉強でお店にいかなったでした。

ですので、今日はおそらくいらっしゃると思います!....多分!

そう思っていると、金木さんが働いているあんていくに着きました。

 

 

 

 

できれば"あの女の子"にも会いたいです。

 

 

 

 

(よしっ!今回も話しましょっ!)

 

私は少し息を吸いこみ、お店のドアを開きました。

 

 

 

 

 

 

ドアを開いた先にいたのは....

 

 

 

 

「え?」

 

私はそれの先を見て、驚いてしまいました。

ドア開けて最初に目を向けたのは、金木さんとお話ししていた人。

 

 

その人は一度私と会話をしたことのある方でした。

 

 

「おっ!やっぱり来たね〜卯月ちゃん♪」

 

 

 

そこにいましたのは、"一ノ瀬志希”(いちのせしき)さんでした。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「いやー卯月ちゃんが本当にここにくるとはね〜」

 

「は、はい....そうですね...」

 

志希さんが座る隣のカウンター席に座りました。

というかそれは志希さんの強制でした。

接する機会が少なかったせいか緊張がありました。

 

「あの..金木さん」

 

「ん?」

 

「どうして志希さんがここに来ると言わなかったのですか?」

 

「え?」

 

金木さんは私の言葉に少し慌てた顔になりました。

私は”事前に誰かが来たら伝えてください”と一言も言ってませんですが、

せめて誰かが来ることに伝えて欲しかったです。

 

「えっと...志希ちゃんが勝手にやってきたんだよね...」

 

「勝手に...ですか?」

 

「うん....志希ちゃんはそう言う性格だからどうしよもできないんだよ....」

 

「そうっ!あたしは結構適当だし〜」

 

志希さんはそう言うとにゃははっと笑いました。

確かに初めて会った時は結構絡みが強いかったです.....

 

「それで...どうして志希さんがここに?」

 

前回は金木さんが事故に巻き込まれたことをご報告してくださいましたが、

今回は何か言うことはあるのでしょうか?

 

「志希ちゃんが卯月ちゃんに"会いたい"って言ってね」

 

「私にですか?」

 

それを耳にした時、私は不思議に感じました。

私に思い当たることはありませんし...

 

「...あの金木さん」

 

「ん?」

 

「少しお手洗いに行っていいですか?」

 

「お手洗い?....うん、いいけど...?」

 

私は事務所からそのままあんていくに向かったので、

トイレに行く暇はなかったです。

あまりにもあんていくに行きたかったせいかすっかりそれを忘れていたかもしれません。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金木Side

 

 

卯月ちゃんはそう言うと席から離れた。

なんだか志希ちゃんがいることで不慣れな感じに見えた。

 

「あやや、あたしのせいで緊張しちゃったかも」

 

「そうかもね...」

 

「カネケンさんひど〜い」

 

「あ、ごめん...」

 

志希ちゃんを少し怒らせてしまった。

....と言っても半分ふざけているような怒り方だけど。

そんな時、二階から誰かが降りて来た。

 

「あ、"トーカちゃん"」

 

「........」

 

二階からやって来たのはトーカちゃんだった。

僕の返事を返さず、店内を見渡していた。

相変わらず冷たい態度が空気で伝わる。

 

「他の客が来たらちゃんと接客しろよ」

 

「わかったよ」

 

そう言うとトーカちゃんは上に上がって行った。

そういえば今日トーカちゃんはなぜか上にいる時間が長いように思えた。

お客さんがあまり来ないからいるのかな?

 

「.......」

 

その時、志希ちゃんはトーカちゃんに目つきを変えた。

それはまるで何か気づいたような感じに

 

「カネケンさん、カネケンさん」

 

「ん?」

 

「ちょっと耳貸して」

 

「え?」

 

僕は志希ちゃんに言われた通り、片方の耳を前に向けた。

彼女から聞いた言葉

 

 

 

 

 

 

 

それは驚くものだった

 

 

 

 

 

 

 

『...え?"ヘモグロビン"?』

 

 

 

 

 

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志希Side

 

 

「うんっ、あの子からその匂いがしたよ?」

 

あたしはカネケンさんに気づいたことを言った。

名前は知らないけどあのショートの子から妙に"そのような匂い"がしたのだ。

柔軟剤のいい香りの中に、あの"鉄臭い"においがしたのだ。

 

「え?どうしてそれを?」

 

カネケンさんは本当に驚いたような顔であたしの聞いた。

その顔は何か恐れたような顔にも似ていた。

 

「なんか志希ちゃんのお鼻から感じたんだよね〜」

 

あたしはそういうと砂糖を"三杯"入れたカプチーノを飲んだ。

とても甘くて、コーヒーの味を壊しかけていた。

 

「.....そ、そうだなんだ」

 

金木さんはそう言ったのだけれど、

なぜか顔色は変わることはなかった。

どこか不安そうな顔つきが変わることなかった。

 

(.....行かせてみようかな?)

 

取り敢えずあたしの予想を言うことにした。

さすがにこの状況だと変わることなさそうだから。

 

「多分、その子は怪我してるんじゃない?」

 

「怪我?」

 

匂いはほんのりした程度で、おそらくガーゼか何かで傷口を塞いでいるかも。

 

「だからカネケンさんも上に上がったら?」

 

ちょうど店内はお客さんはあたしと卯月ちゃんしかいないため、

今上がった方がよさそうかも。

と言うかじっくりと卯月ちゃんと会話できる機会を作れるし。

 

「...わ、わかったよ」

 

カネケンさんはそう言うとさっきのショートカットの子と同じく上に上がった。

カネケンさんが一体どういった感じにその血液のことを話にあげるか想像するだけで面白い。

 

(それにしても....どうしてあの香りがしたんだろう?)

 

ヘモグロビンに似た香り、いや血。

あたしは疑問に感じていた。

普通なら嗅げないほどのものなのだが、

もしかすると大きな傷を負ったかそれとも手当の仕方が悪いのかもしれない。

 

(まぁ、もしかすると運動が好きな子だったりして〜)

 

あたしの予想だけど、あの子の見た目は運動好きっぽく見える。

きっと何か"ミス"をして怪我したかも?

 

そう考えていると、トイレの水が流れる音がした。

もうそろそろ卯月ちゃんが戻って来る。

 

 

 

 

そして、あたしと卯月ちゃんの時間が始まる。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

卯月Side

 

 

「あれ?金木さんは?」

 

私がお手洗いから出た時、店内は志希さんと私だけでした。

金木さんの姿はありませんでした。

 

「カネケンさんはどっか行っちゃったね〜」

 

「え!?どっかにですか!?」

 

「大丈夫〜コーヒーに使う豆を切らしちゃたから上に行っただけだよ」

 

志希さんはそう言うとにゃははっ!と笑いました。

 

「そ、そうですか.....」

 

私は少しぎこちなく返し、席に座りました。

今店内にいるのは私と志希さんだけで、

一方的に絡まれると察しました。

 

「まぁ、緊張しないしな〜い」

 

志希さんが私の両肩をポンポンと軽く叩きました。

中々馴染めないです。

 

「えっと...志希さん?」

 

「ん?」

 

「どうして私に会いに来たのですか?」

 

志希さんが私に会いたかったその理由が一番知りたかったです。

きっと何か重要なことだと思いますが.....

 

「それはね....今あたしとお話できる人がいなんだよね〜」

 

「お話できる人がいない?」

 

「例えば"フレちゃん”と"シューコちゃん"、"奏ちゃん”に"文香ちゃん"はプロジェクト・クローネで忙しいし、"美嘉ちゃん"はクローネと同じく秋の定例ライブに向けて忙しいんだよね〜」

 

「は、はぁ...」

 

志希さんはぼそっと「文香ちゃんと美嘉ちゃんと遊べないのはつらい」と言いました。

 

「それで今暇な人と言うと、カネケンさんと卯月ちゃんぐらいかな〜って思ってここに来たの!」

 

「そ、そうですか....」

 

確かに私も自分でも言うのはあれですが暇なことはあります。

今の所、美穂ちゃんとお仕事をしていて、

ニュージェネレーションズでお仕事は今の所停止している感じです。

凛ちゃんはプロジェクト・クローネで、未央ちゃんは舞台の練習をしています。

 

「あの...」

 

「ん?」

 

「志希さんって文香さんと美嘉さんとは仲いいのですか?」

 

「うんっ、結構いい友達なんだよね〜」

 

志希さんはそう言うとにゃははっと笑いました。

先ほどぼそっと言ったので、私はそれについて聞きました。

 

「だって、カネケンさん関連で仲良くなったからね♪」

 

「...え?金木さん関連...?」

 

私はそれを耳にして驚きました。

確かに美嘉さんは金木さんとは知り合ってます。

文香さんに関しては会ったことありませんでよくわからないです。

 

「そーそー、文香ちゃんはカネケンさんとは同じ大学で出会って、美嘉ちゃんは卯月ちゃんの初ライブ後に出会い、あたしはカネケンさんを追いかけてたら出会ったんだよね〜」

 

「そうな....え?追いかけてた?」

 

「そう!いわゆるストーカーってやつっ!」

 

志希さんは堂々と言いました。

やはり志希さんは不思議な方だとますます感じます。

 

「それで....金木さんとはお友達関係ですよね?」

 

「まぁ、友達以上恋人未満ってやつかな?」

 

「え!?」

 

その発言に思わず驚いてしまいました。

 

「あっ、言い方が悪かったね。ふつーに仲が良いお友達同士みたいなものだよ」

 

「そ、そうですか...」

 

「例えるなら..."カネケンさんと卯月ちゃん"っみたいな?」

 

「”私と金木さん”...?」

 

その言葉に私は疑問を持ちました。

一体どう言うことですか?と聞きましたが、

志希さんは『ご察しを〜』と答えてくれませんでした。

取り敢えず..."仲がいい"と言う意味に捉えることにします....

 

「卯月ちゃんはカネケンさんとはいつから知り合ったの?」

 

「えっと...四月頃ですね...」

 

「四月頃?結構長いね〜♪あたしは五月だよ」

 

「一ヶ月違いですか...」

 

しかし、志希さんの質問攻めは止まりません。

 

「それで...卯月ちゃんは何がきっかけで出会ったの?」

 

「金木さんと出会ったのは、凛ちゃんの両親がやってるお花屋さんなんですよ」

 

「凛ちゃんの家ってお花屋さんなんだ〜いいな〜」

 

「え?どうしてですか?」

 

「あたし匂いを吸うのが好きなんだよね〜♪」

 

志希さんはそう言うと『特にいい匂いが好き』とにゃははっと笑いました。

 

「そのお店でなんかお花を買った?」

 

「はい。アネモネを買いました」

 

「アネモネ?」

 

あのお花はとても綺麗なお花でした。

紫に白のお花で、凛ちゃんから聞いた花言葉が素敵でした。

 

「そのアネモネの花言葉は...期待と希望...だと思います」

 

「ふーん、結構いい花だね♪」

 

それはあの時アイドルになれた私にとってぴったりな言葉、

まさにその花言葉でした。

 

 

 

 

 

しかし志希さんは驚くことを言いました。

 

 

 

 

 

「それで....そのアネモネの花言葉は"それだけ"かな?」

 

「え?」

 

「志希ちゃん的には、その花のことをもっと知りたいという欲求がまだ残ってるんだよね〜」

 

志希さんはそう言うとにゃはははっと笑いました。

なんだか少し変に感じました。

普通ならそこまで調べる必要がないのに、なぜか志希さんは調べたがっていました。

 

「とりあえず、スマホでパッパッと調べてみようか」

 

志希さんはそう言うとスマホを人差し指で動かす仕草をしました

スマホを開き、そのアネモネの意味を調べました。

 

 

 

 

 

そこに出てきた、もう一つの意味は....

 

 

 

 

 

 

『"見捨てられる"....?』

 

 

 

 

 

 

 

 

それは他の意味とはかけ離れた悪い言葉でした。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

金木Side

 

 

僕は志希ちゃんに言われ、トーカちゃんの元に向かった

 

 

 

 

 

 

そしたらあることが発覚した

 

 

 

 

 

 

 

それはトーカちゃんが怪我したことがわかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

その傷は捜査官と戦った時に負った傷だと

 

 

 

 

 

 

ヒナミちゃんのお母さん"リョーコさん"を殺した捜査官を殺害しようしたが、

 

 

 

 

 

 

 

"ある捜査官"が入ったことにより一人しか殺せなかったと

 

 

 

 

 

 

ヒナミちゃんとリョーコさんみたいな喰種が殺されるなんて間違ってはない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも喰種は反社会的生き物

 

 

 

 

 

生きる資格はない

 

 

 

 

 

 

 

 

でもそれは人間であった僕の考え方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の僕の考え方は変わった

 

 

 

 

 

 

 

 

喰種の世界に入ったことで喰種の気持ちがわかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喰種は人間と同じく意思を持っている

 

 

 

 

 

 

 

 

だから喰種みんなが悪いと言うのはない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はある言葉をトーカちゃんに伝えた

 

 

 

 

 

 

 

それはあの悲劇を見た僕が言える言葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何も出来ないのは、もう嫌なんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの悲劇を再び起こさないよう、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"僕"が止めないと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言えば僕はあることを疑問に感じていた

 

 

 

 

 

 

それはトーカちゃんの傷を知るきっかけになった志希ちゃんだ

 

 

 

 

 

 

志希ちゃんの言葉が普通なことではないことに疑問に感じたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

普通の人間が血の匂いを服を越して感じることなんて考えにくい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思うと僕は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女のことが

 

 

 

 

 

 

 

怖く感じてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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