東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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愛する人の失う悲しみ



僕は彼女の心に植え付けてしまった






Mother and Daughter

未央Side

 

 

 

(やっぱり、雨が降ってきたー)

 

 

 

 

それは今日、天気予報で耳にした。

今日の東京は午前中は曇りで、午後には雨が降るという予報だった。

私は家から出る時に傘をもってきたので、ビショ濡れになる心配はなかった。

 

(さてと、金木さんに報告しないと...)

 

私はポケットからスマホを取り、

金木さんの連絡先をタッチした。

今日はオーディションをして、

後は結果を待つだけ。

私はオーディションが終わったことを、

金木さんに報告することにした。

 

 

 

今は夕方ごろだから、

金木さんはバイトしているかも

 

 

 

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志希Side

 

 

(あーなんで雨降ったんだろう?)

 

あたしは今日のお仕事をやり終わり、

今、家がある20区に向かっていた。

あたしは少々不満を持ちながら、傘を差していた。

今日の天気予報では雨は降るということは知っていたけど、

髪が乱れるから雨は好きじゃない。

私は少し濡れた髪を指でくるくるしながら、

雨が降る街に歩く。

 

(最近、カネケンさんに会ってないなー)

 

お仕事の関係もあるし高校三年生というせいか、とても忙しい。

教室に来ても周りが誰も話さずに静かだし、

先生から『お前は受験生だろ』とか『もっと受験生らしくしろ』などガミガミうるさい。

これこそが"THE 受験生シーズン"というものだね。

 

(まぁ、そんなだったら明日カネケンさんと会おうかな?)

 

そんなつまらない状況だったら、"朝から"楽しいことしよう。

あの"あんていく"と言う場所ではなく、別の場所で会おうか考えた。

"あんていく"で会うのはいいかもしれないが、

それだったら視線を感じて、カネケンさんは緊張をするかもしれない。

だから私は、明日カネケンさんを呼び寄せようと思う。

 

(どれだったら、たくさんお話ができるからいいや♪)

 

 

 

 

 

そう感じたその時、

 

 

 

 

(...ん?)

 

するとあたしの横に、"誰か"が走り去っていた。

濡れたアスファルトをびしゃびしゃと踏み出す音が私の耳に響き、傘も差さずに雨が降る街に走っていった。

 

(なんだろ..?"あの子"?)

 

走り去っていったのは、"女の子"。

身長と顔つきだとだいたい"中学生"に見えた。

あの走り方だと誰か探しているには見えず、

むしろ"何か"から逃げているように見えた。

 

(....なんだろ?)

 

 

 

 

雨のせいで鼻がが鈍く感じるけど、

あたしはふと何かに気づいた。

 

 

 

 

(..."変な匂い"がした)

 

 

 

あの子から

 

 

普通の人とは違う"匂い"がしたんだ

 

 

 

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金木Side

 

 

僕はバイトが終わり、

雨の降る帰り道に僕は歩いていた。

夕方ごろに雨が降ると未央ちゃんが言ったおかげで、

僕は傘を差し、ずぶ濡れになることを防いだ。

 

(トーカちゃんが来るんだね...)

 

僕があんていくに出る時、

店長から『明日からトーカちゃんがあんていくにやって来るよ』と僕に伝えた。

しばらくテスト勉強期間であんていくに来なかった。

あの当たりの強い日々が帰って来るのは少々辛い。

 

(精神的には"コマさん"の方がいいんだけど...)

 

コマさんはあんていくで一緒に働いている男性で、

時々自分を『魔猿』と自ら言うが、

温和の性格が中々想像が結びにくい。

 

僕が歩むに連れて、雨が強くなっていた。

空は暗い雲に覆われ、なぜか少し不安になった。

僕にとって雨のイメージは“誰かの涙”に見えてしまう。

 

(ん?誰だろう)

 

そう感じていると僕の携帯から着信音がした。

だいたいこの時間に着信がくるのは、

おそらく"あれ" しか考えられなかった。

 

(あ、やっぱり"未央ちゃん"からだ..)

 

携帯を開くと、その届いたメールの返信者は未央ちゃんからだった。

おそらく未央ちゃんが受けていたオーディションが終わったと思う。

いい出来なのか悪い出来かと思うと少々開くのに躊躇してしまう。

だんだんと強くなって来る雨がまるで僕に急かしているように聞こえる。

 

(...よしっ!開こう!)

 

僕は気持ちを改め、メールを開くことにした。

 

 

 

 

それを開こうとした瞬間

 

 

 

「いやー俺、"喰種"(グール)って初めて見たよ」

 

「!!」

 

それは隣に通りかかった人の会話に耳を傾けてしまった。

二人の男性が話している会話は、普通の会話で上げることない話題だった。

 

「見た目はまんま人間だったなー」

 

「バケモンになってからはヤバかったけど...」

 

「どうせならもっと見たかったよな」

 

僕はそれを耳にして、

胸の中に"嫌な予感"を生み出してしまった。

それは現実になってほしくない"予感"。

 

(..?)

 

そして道端にあるものが落ちていた。

それは濡れてしまったノート。

ノートに書いてあった名前に僕は、

さらにその嫌な予感が胸の中に大きくなってしまった。

 

(...."ヒナミちゃん")

 

それはヒナミちゃんが持っていたノートだった。

先ほどお母さんのリョーコさんと一緒にあんていくに出た様子が頭に重なった。

 

 

 

 

 

 

まさか...

 

 

 

 

 

 

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卯月Side

 

 

346プロダクションのトレーニングルーム前、

私は一人いました。

外が雨のせいか、室内はいつもより暗かったです。

 

(凛ちゃん...未央ちゃん......)

 

先ほど私は凛ちゃんとここで話していました。

その会話した話題は、プロジェクトクローネに関することでした。

凛ちゃんは昨日、私と未央ちゃんにプロジェクトクローネのついて話しました。

それを聞いた私はどうすればいいのかわからず、明確な答えが出ませんでした。

 

(..........未央ちゃんは確かオーディションでしたね)

 

その凛ちゃんの話を耳をした未央ちゃんは、

不安に駆られたのか私と凛ちゃんの元を飛び出しました。

未央ちゃんは私たちと一緒に進みたかったという思いを持っていたからです。

後日、未央ちゃんから出た言葉は、“ソロデビュー”をすることでした。

私たちと一緒に進むため、自分の成長が必要というものでした。

未央ちゃんは今日はオーディションで事務所にいません。

 

 

(凛ちゃんも新しいことやってる...)

 

 

先ほどの凛ちゃんの様子は、

“いつもの感じ”じゃないと思いました。

いつもなら不安がるようなことをしない凛ちゃんが、

迷いを抱えてました。

新しい事をやれば、

“今”を壊してしまうという恐れを抱えていました。

 

 

 

 

(.......“新しいこと”)

 

 

 

 

 

 

二人の共通していること

 

 

 

 

 

それは

 

 

 

"新しいこと挑んでいる"

 

 

 

 

なぜかその言葉は自然を消えず、

胸の中に留まっていました。

 

(.........)

 

そう考えると、私は"暗く"感じてしまいます。

心から嬉しくなるっという感情がなぜか生まれませんでした。

 

 

(.....私は)

 

 

自分の手のひらに視線を向けた私

どうしてそこに視線を向けたのわからない

その時、外の雨が強くなっているように聞こえた

 

 

無数に降る雨の音が、今の自分の心を写しているように

 

 

 

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金木Side

 

 

 

 

思わず叫びそうになった

 

 

 

 

僕がヒナミちゃんとリョーコさんの元にたどり着いた時

 

 

 

 

 

もう遅かった

 

 

 

 

 

 

ヒナミちゃんのお母さんリョーコさんはもう力が尽きてしまい

 

 

 

 

 

捜査官にトドメを喰らおうとしていた

 

 

 

 

 

 

僕はヒナミちゃんをお母さんの元に行かせないように

 

 

 

 

 

 

彼女を抑えていた

 

 

 

 

 

 

 

でもその時の僕は

 

 

 

 

 

何もすることができず

 

 

 

 

 

ただその光景を見ていたんだ

 

 

 

 

無力の僕は、なにすればいいか焦って考えた

 

 

 

 

 

店長もトーカちゃんが来ない状況どうすればいいか

 

 

 

 

 

 

だが時間は

 

 

 

 

 

待ってはくれなかった

 

 

 

 

 

 

 

リョーコさんはこの後

 

 

 

 

 

捜査官の手によって

 

 

 

 

 

 

殺された

 

 

 

 

 

 

 

飛び散った赤い雫が雨に混じり

 

 

 

 

 

 

濡れたアスファルトに染み付いた

 

 

 

 

 

その光景を見たヒナミちゃんは

 

 

 

 

 

 

その悲しみは、愛する人を亡くした悲しみ

 

 

 

 

 

 

僕に出来ることは

 

 

 

 

 

 

この光景を

 

 

 

 

 

 

彼女に見せないようにすることぐらいだった

 

 

 

 

 

僕は

 

 

 

 

 

 

"何もできなかった"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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