東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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雨が降る。


そう言った彼女は夢に向かっていく。


でも僕は、


"悲劇"を見ることになるんだ。





Sudden Shower

未央Side

 

 

「ソロデビュー...?」

 

「そう、ソロデビューっ!」

 

今日金木さんが働いているにやって来たのは、

報告しに来たのと久しぶりに会話したくなったから。

この前は新宿駅で出会ったのだけど、

その時は金木さんとは長く話せなかった。

だから、今日ここに来た!!

 

「そ、そうなんだね...」

 

「すごいでしょ〜?」

 

金木さんは私の突然の報告に、少し戸惑いを見せた。

確かに急に驚くのはわかる。

だってこの報告をし始めたのは"今日"だから。

私は午前中にシンデレラプロジェクトのメンバーの前で、ソロ活動の発表した。

みんなも私の言葉に驚いた。

 

「明日から私は舞台のオーディションをやるよ!」

 

「オーディション..っ!?」

 

「そう!『秘密の花園』という舞台のオーディション!」

 

私がやるソロ活動は"舞台"だ。

持ち前の元気と明るさを活かすため、私は『秘密の花園』のオーディションをする。

確か明日の天気は、"途中から急に雨が降る"と言う予報があった。

 

「『秘密の花園』.....確か小説で読んだことあるよ」

 

「本当にですか!?」

 

「うん、結構いい作品だよ」

 

「金木さんはなんでも詳しいんですね〜」

 

「いや...ただ本を読むのが好きなだけだよ....」

 

金木さんは私が知らないことばかり知って、私にとっていい刺激を与えてくれる。

 

 

 

 

"そんな時だった"

 

 

 

 

「...ねぇ、未央ちゃん?」

 

「ん?」

 

それは不安そうな顔に変えた金木さんの一言だった。

 

「"....またみんなと一緒にやれるよね?"」

 

「え?」

 

突然金木さんの言葉に、私は呆然してしまった。

 

「それは....」

 

簡単に『できる』と言えるはずなのに、

なぜか口には出なかった。

 

「...ああ、ごめんね。変なこと言って...」

 

金木さんはそう言うと、気まずそうに少し視線をそらした。

 

「い、いや、大丈夫だよ?......金木さんも、もしかして...しぶりんから聞いた?」

 

「....まぁ..そうだね...」

 

金木さんは少しぎこちなく返した。

金木さんが言おうとしたのは、今の"ニュージェネ"のことだと思う。

"ニュージェネ"は、私としぶりん(渋谷凛)しまむー(島村卯月)三人のユニットの名前。

金木さんがそう言ったのは間違ってはなかった。

今しぶりんはプロジェクトクローネの問題を抱えていたからだ。

きっとしぶりんはプロジェクトクローネに入れば、ニュージェネはバラバラになってしまうと考えてる。

 

「...金木さんも考えてくれてるんだね」

 

「うん、凛ちゃんがとても不安そうに僕に伝えたんだ」

 

今のところ、しぶりんはプロジェクトクローネに参加はしていないけれど、きっと今も悩んでると思う。

 

「そういえばさ金木さん、私ね...こう見えて小心者でさ....なんていうか...」

 

「小心者..?」

 

しぶりんがプロジェクトクローネのことを私としまむーに伝えた時、

私は"とても怖かった"。

まるで今のニュージェネを否定されているかのように怖かった。

私はニュージェネのことはとても好き。

そのニュージェネが消えるとなったしまえば、

 

 

 

“とても嫌だ”

 

 

 

「僕には...見えないけど?」

 

「そうだよね...いつもの私は明るくて元気な子だよね...」

 

気がつくと私は笑えなくなっていた。

元気をなくしてしまった。

 

「それで...未央ちゃんがソロ活動をするのは...?」

 

「....しぶりんの気持ちを考えてたらね...」

 

私がそう考えたきっかけの言葉があった。

 

 

『わからない....』

 

 

しぶりんがプロジェクトクローネを話した時に言った言葉

あの時のしぶりんは何か断れない理由を持っていた。

受けたくてもすぐには受け入れず、

かといってすぐ断れない状況に立たされているように見えた。

 

「しぶりんもきっと...言葉にならないものを得たと思う。だから私はニュージェネのリーダとして先に進もうと思うんだ」

 

だから、ニュージェネレーションズのリーダとして先に進む。

 

 

 

 

また"3人"一緒に前に進めるように....

 

 

 

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

 

今までみんな一緒だった私が

 

 

 

 

 

 

"一人"になるのは怖い

 

 

 

 

 

見えない恐怖が私の目の前にあって、

 

 

 

 

 

光の見えない暗い森林のように、

 

 

 

 

 

 

 

“とても怖いんだ”

 

 

 

 

 

 

「....大丈夫」

 

「っ?」

 

「....未央ちゃんも新しいことに挑戦するのがいいよ」

 

金木さんはそう言うと微笑んだ。

 

「凛ちゃんが迷っているのは、"今の状況"が崩壊するのは怖いと思う」

 

「....うん」

 

「でも今よりもっと良くするには"必然"かもしれない..」

 

「"必然"...?」

 

「うん。だから未央ちゃんも新しいことをやるのを恐れずに、挑めばいいと思う」

 

それを聞いた時の私は、

金木さんの言葉がまるで"暗闇を灯す明かり"のように思ったんだ。

それは不安ばかりあった私の心にそっとやってきた"希望"のように感じたんだ。

 

「金木さん...ありがとう」

 

私は金木さん言葉を聞いて、

なんだか心にあったモヤモヤが晴れた気がした。

安心感というものを得たのだ。

 

「金木さんって"優しいね"」

 

金木さんはとても優しい人だ。

私たちの悩みを一緒に考えてくれるし、

応援してくれる。

 

「い、いや.....あ、ありがとう...」

 

金木さんは私の言葉に照れていた。

その照れは嬉しさと恥ずかしさが混じったものに見えた。

私はその姿に自然と笑った。

先ほど笑顔ができなかった私に、

気がつけば私の顔に笑顔が元に戻った。

 

「じゃあ、金木さん。未央ちゃんの活躍に応援よろしく〜」

 

「うん、応援するよ。ところで...何か飲む?」

 

「あ、そうだったね!」

 

相談したせいか、今いるところが喫茶店にいたことをすっかり忘れていた。

流石に何も頼まずに帰るのは失礼だから、私は何か頼むことにした。

 

「えーとカプチーノで、あと何かイラストつけてくれたらいいな〜」

 

「イラスト付きね....なにがいいかな?」

 

「それは金木さんセレクトで!!」

 

私がそう言うと金木さんは少し微笑みながら「わかったよ」と答えて、カプチーノを作り始めた。

その時に金木さんがカプチーノに描いたのは、可愛い猫。

それを見た私は嬉し感じ、じっくりそのイラストを見てカプチーノを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

私は、前に出る。

 

 

 

 

 

 

"新たな自分"と"みんなと一緒にやっていく方法"を発見するために、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソロデビューという"新しい道"を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

 

 

のちに苦しむ人が

 

 

 

 

 

 

 

 

"二人"現れることを知らずに

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金木Side

 

 

(未央ちゃんがソロデビュー....)

 

僕は昨日の言葉が頭から離れられなかった。

今日は彼女がやる舞台『秘密の花園』のオーディションの日だからだ。

彼女が受かるかどうか僕は不安だった。

まさで自分の子供を心配する親の気持ちだ。

 

(......"新しいこと")

 

 

 

 

 

最近凛ちゃんや文香さん、未央ちゃんに美嘉ちゃんが"新しいこと"をやり始めている。

 

 

 

 

 

 

確かにそれは彼女たちにとって"必然"かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも僕はまるで普通の日常が崩れて行くように感じてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

"元の場所から離れていくように"

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーあのお兄ちゃん?」

 

「...え?」

 

ふと気がつくと、"ヒナミちゃん"の何度も呼ぶ声が耳にした。

 

「ああ...ごめんね」

 

隣にいたヒナミちゃんは心配そうに僕を見ていた。

 

 

考えすぎだ、"僕"。

 

 

ヒナミちゃんは女の子の喰種だ。

先ほどヒナミちゃんの食事する姿を見てしまった。

本当に人間(ヒト)の肉を食っている光景を。

それを見た僕はびっくりしてしまい、

すぐに出て行ってしまった。

その後、謝るついでにコーヒーをヒナミちゃんのいる部屋に届けたところ、

ヒナミちゃんは"ある本"を読んでいた。

その読んでいた本は高槻作品の『虹のモノクロ』だ。

僕が好きな高槻作品の本だった。

その本をきっかけにヒナミちゃんと仲良くなった。

 

「そういえば、お兄ちゃん?」

 

「ん?」

 

「この前お兄ちゃんが話してたお姉ちゃんって?」

 

「ああ、"卯月ちゃん"ね」

 

ヒナミちゃんが気になっていたのは、僕の友達"卯月ちゃん"だ。

ヒナミちゃんはこの前はドアの隙間からこっそりと卯月ちゃんを見ていた。

 

「うづき...ちゃん?」

 

「彼女は僕の友達だよ」

 

「友達.......喰種(グール)って言うことは知らない?」

 

「....うん、そうだね」

 

僕は少し間を空けて答えてしまった。

辛く感じたからだ。

 

「どうして卯月ちゃんが人間(ヒト)だとわかるの?」

 

「ヒナミわかるよ。匂いが違うもん」

 

喰種(グール)人間(ヒト)とは違い、嗅覚が非常に優れいている。

だからお互い一体誰なのかわかるらしい。

ちなみに僕の場合は喰種(グール)人間(ヒト)の匂いが混じっているとヒナミちゃんが言っていた。

僕は卯月ちゃんに"嘘"をついている。

そう思うと胸がより苦しく感じてしまう。

 

「卯月ちゃんとは僕が喰種になる前に会っているから...言える状況じゃないよ」

 

「さっきお兄ちゃんは“元人間”と言ってたよね...」

 

突然僕に降りかかった喰種と言う名の”不幸“

しかもその不幸は一歩間違えれば全てが崩れる不幸

僕は“その時”を来ることを恐れながら暮らしている

 

「...ヒナミ、人間(ヒト)と話すのが...苦手...」

 

「そうなんだ...」

 

確かにヒナミちゃんのお母さんリョーコさんとトーカちゃん以外誰も話しているところを見たことがない。

きっとリョーコさんはヒナミちゃんに"細い綱”を渡らせないためだと思う。

 

「...でも卯月ちゃんはいい(ヒト)

 

「いい(ヒト)?」

 

「うん、彼女はとても優しい(ヒト)だよ」

 

卯月ちゃんは僕にとって数少ない大切な存在の一つ

あの時に出会った時、

まるで天使のように感じたんだ。

暗い檻の中にいた僕に、

光を射してくれたのように。

それがきっかけで僕はヒデ以外にも友達ができたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女たちと会うたび

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"いつか失う怖さが大きくなってくんだ”

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうなんだ...今度会えるかな?」

 

「んーそれはわからないな...」

 

「じゃあお姉ちゃんが来る時、ヒナミに言ってくれる?」

 

ヒナミちゃんは僕が卯月ちゃんの事を言ったせいか、

とても会いたがっていた。

僕の胸の中は会わせたい気持ちはあるが、

会わせたくない気持ちもあった。

"矛盾のある心情"がかすかに生まれてた。

 

「...いいよ」

 

「ありがとう!お兄ちゃん!」

 

ヒナミちゃんはとても満足に笑顔になった。

彼女にとって卯月ちゃんはどう映るだろうか

 

「あ、そういえばお兄ちゃん!時雨に似たこれって....?」

 

ヒナミちゃんは高槻泉の作品『虹のモノクロ』を開き、

ある文字を指で指した。

 

 

「これは”驟雨"(しゅうう)っていうんだ」

 

「しゅーう?」

 

「うん、それは」

 

 

 

 

 

 

 

『"急に降り出す、雨のことだよ"』

 

 

 

 

 

 

 

その言葉はこの後、僕たちにやってくる

 

 

 

 

 

 

 

 

その同時に"悲劇"も来ることを知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





お知らせです。


いつも読んでいただきありがとうございます。

大変申し訳ございませんですが、

今後の方針で月山編を書くのをやめ、次に行こうか検討してます。
(もしくは省略してやるか)

理由としてはシンデレラガールズのストーリに沿ってやると、
時間が足りないのではないかと考えたからです。

月山がお好きな方はもうしわけございませんですが(月山がアイドルたちと会ったら...というのは考えてませんが)、ご了承ください。

なにかご質問かもしくは感想がありましたら書いてくださいましたらありがたいです。






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