東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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今は見なくても、


そこに見えない別れが徐々に現れてくる。






disunion

 

文香Side

 

 

 

「プロジェクト....クローネ?」

 

「はい!私はそのプロジェクトに参加することになりました!」

 

私はそのプロジェクトに参加することを決め、

早速金木さんにご報告しにあんていくに訪れました。

 

「そうなんですか...おめでとうございます」

 

「ありがとうございます」

 

それを聞いた金木さんは驚いた後、私に嬉しく祝ってくれました。

そういえば私が金木さんにプロジェクトクローネに入ると言う報告だけではなく、

他に言うことがありました。

それはプロジェクトクローネに関係することでもあり、

金木さんのお知り合いのことです。

 

「他に凛さんが入る予定なんですよ」

 

「え?凛ちゃんも入るんですか!?」

 

金木さんはnew generationsの皆さんとはお友達ですので、

私はその凛さんが入ることを伝えました。

でも凛さんに関してのことで、少し"疑問"がありました。

 

「でも今の所、"正式には"入っていないんですよ」

 

「入ってない?」

 

凛さんはプロジェクトクローネ"参加する予定"ということになってます。

 

「なぜ凛ちゃんは入らないだろう...?」

 

金木さんは腕を組み、考えました。

長く関わっているなら理由はわかると思います。

 

 

 

なぜすぐに入らないんでしょうか...?

 

 

とても"良き機会"なのに

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金木Side

 

 

文香さんがあんていくにやって来て週明け、

僕は今日もあんていくで働いている。

今日は卯月ちゃんからメールが来てないため、やってこない。

 

(文香さんが大きなプロジェクトに参加か....)

 

彼女から喜ばしい知らせを聞いた時の僕は、

なんだか幸せに感じた。

彼女も表舞台に立ち上がれたこともあってか、

とても嬉しそうに僕に話してくれた。

 

 

 

 

 

 

彼女が幸せなら、

 

 

 

 

 

"僕も幸せだ"

 

 

 

 

 

 

ふとそう思っていると、お店のドアがガチャっと開く音がした。

お客さんがやってきたのだ。

 

「やぁ、金木」

 

「あ、凛ちゃん」

 

やって来たのは凛ちゃん一人だった。

彼女は少し微笑み、僕に挨拶をした。

凛ちゃんは僕が目の前にいるカウンター席に座った。

 

「.........」

 

彼女は注文もせず、ただ机に視線を向けていた。

 

「...調子どうかな?」

 

「..........」

 

とりあえず聞いて見たけど、

彼女は何も返事はせず視線を向けなかった。

どうしたのだろうか?

 

(....あのことでも話してみよう)

 

流石に何も行動を起こさない限り状況が変わらないので、

僕は再び凛ちゃんに声をかけた。

 

「えっと....凛ちゃん?」

 

「....ん?」

 

少し睨みに似た目つきで、僕を見た。

僕は凛ちゃんの視線に怯えてしまった。

未だに凛ちゃんの性格に慣れない僕は、

文香さんが話した"あのこと"を話してみる。

 

「その..."プロジェクトクローネ"に入るんだよね?」

 

 

文香さんは嬉しそうに返してくれた。

 

 

きっと彼女も同じく嬉しそうに言うかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

でも、凛ちゃんは"違った"。

 

 

 

 

 

 

「....は?」

 

 

それを聞いた彼女は、決して喜ばしい顔に変わらず、

 

 

 

 

現れたのは"怒り"だった。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

凛Side

 

 

「なんで金木が知ってんの?」

 

突然、あいつ(金木)が"あのこと"を口に出した。

それは私が迷うきっかけを作ったプロジェクトだ。

 

「え..?」

 

金木は私の言葉に驚いた。

まるで何もわかっていないような顔つきで見てくる。

 

「だから、なんであんた(金木)がそのことを知ってるの?」

 

本来普通の人が知るはずもないことをなぜか金木は知っていた。

私の怒りは治らなかった。

その時の私は感情に囚われていた。

 

「い、いや...それは」

 

「私は!.......っ!!」

 

なにかが私の怒りを止めたような気がした。

ふと私は気づいた。

怒りによって目が曇ってしまっていたのだと。

 

「....ごめん、金木」

 

「い、いや.....僕も悪いから..」

 

いつもより怒りが強すぎた。

強く当たることに迷いがなかった私が、

今回はなぜかそう感じてしまった。

今の私の感情は不安定だった。

 

「それで...なんで金木は知ってるの」

 

「文香さんから聞いたんだ」

 

「文香...?」

 

「同じくプロジェクトクローネをやる人だよ」

 

「...そうなんだ」

 

心が不安定なんせいか、返す言葉が頭に現れなかった。

何かが私を縛っているように感じる。 

 

「それで....なんで"プロジェクトクローネ"がダメなの?」

 

「.......」

 

理由はわかっているのに、口には出せなかった。

"いつもの私"ではないと自覚している。

まるで重い何かが口を閉ざしているように感じたんだ。

 

「......話を聞くよ。凛ちゃん」

 

「.......」

 

いつもならこんな状況ではムカついて当たりたいのだが、

今日はそうではない。

 

 

 

 

 

 

"こっちはこっちで辛いんだから"

 

 

 

 

 

 

「....裏切るかもしれない」

 

「裏切る?」

 

私は固く閉ざした口を動かした。

そのプロジェクトクローネに入ることに迷ってしまう原因の一つは、

今私が参加しているユニットのメンバーを裏切ってしまうことが恐れている。

 

「この前に来た二人覚えてる?」

 

「えっと...加蓮ちゃんと奈緒ちゃんだよね?」

 

「うん。二人もプロジェクトクローネをやるの」

 

私は加蓮と奈緒にそのプロジェクトに言われた。

でもそれに参加すれば卯月と未央に裏切るかもしれない。

もし二人がこのことを知ってしまったら......

 

「...でも凛ちゃん、僕は自らの意思でやったほうがいいと思うよ」

 

「...え?」

 

金木から意外な言葉を耳にした。

それは自らの意思でやれと言うものだ。

 

「でも、未央たちが」

 

「大丈夫だよ、凛ちゃん」

 

 

 

 

 

 

『二人ははきっと、凛ちゃんの答えに受け入れてくれるよ』

 

 

 

 

「....っ!」

 

「...それが友達だと思うよ」

 

私は金木の言葉に心が打たれたよな感覚を感じた。

それは今の迷いがある私にとって心強い言葉。

 

「僕も凛ちゃんが新しいことやっても受け入れるよ」

 

金木はそう言うと寂しそうに笑った。

 

「...ありがとう、金木」

 

なんだか私、金木の言葉に心が晴れた気がした。

何かを縛りつけたものが消えたような感覚が心地よかった。

私は自然と笑顔が戻った。

 

「それで今言うのはあれだと思うけど......何か注文あるかな?」

 

「注文?...ああ、何か頼もうかな」

 

せっかくここに来たのに何も頼まなかったら失礼だね。

うちのお店で同じことされたら少しイラつく。

 

「....."前回頼んだやつ"で」

 

「..え?前回頼んだ....やつ?」

 

それを聞いた私は、プツンと怒りが込み上がった。

 

「...ココアだよっ!バカネキっ!」

 

 

 

 

いつも金木に強く当たってしまう私

 

 

 

 

金木のドジさは怒ってしまう

 

 

 

 

 

あの頼りなさが少々気に入らない

 

 

 

 

 

 

でも金木のことは嫌いになれない

 

 

 

 

 

 

というか心の底から嫌いになれないと気づいてしまった

 

 

 

 

 

 

ほんと

 

 

 

 

 

金木はよくわからないやつ

 

 

 

 

 

 

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金木Side

 

 

凛ちゃんがあんていくにやって来て数日後のこと

僕は今日もあんていくで働いていた。

今日は卯月ちゃんはこない。

 

(....みんなに迷惑か)

 

僕は凛ちゃんの迷いを耳にして、

頭の中に残っていた。

 

 

 

 

それは"新しくやっていくことの不安"

 

 

 

 

新しくやればそれを犠牲にして何かが消えてしまう。

かと言ってその新しいことをやめれば、

それを捨てることになる。

 

 

 

 

 

 

 

"まるで今の僕みたいじゃないか"

 

 

 

 

 

 

僕がそう思っていると、

お店のドアが開く音がした。

僕はドアの方に視線を向けた時、驚いてしまった。

 

「未央ちゃん...?」

 

「金木さん!やっほー!」

 

未央ちゃんが笑顔でやってきたのだ。

それは実に彼女らしい笑顔だった。

僕は以前新宿駅で会って以来、少しだけど久しぶりに出会った。

 

「未央ちゃんが来て驚いてますな〜」

 

「ま、まぁね...」

 

もちろん僕は未央ちゃんが急に来たことに驚いているが、

先ほどの凛ちゃんのことが離れられないせいか、

気持ちがまとまらない。

 

「それで...今日は何かお話しに来たのかな?」

 

「おっ!いいこと言いますね〜!」

 

僕の予想がどうやら当たりらしい。

 

「金木さんに"報告"しに来たんだ!」

 

「"報告"?」

 

そう言った未央ちゃんは一度息を吸って気分を落ちつかせた。

 

 

 

そして口を開いた。

 

 

 

 

 

「本田未央、本日ソロデビューします!」

 

 

 

 

それを聞いた僕は、最初に胸の中に生まれたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"孤立感"だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは自らの意思で生まれたのではなく、勝手に生まれきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

度重なる彼女たちから聞く言葉が、徐々に僕の孤立感を増しているように聞こえるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


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