東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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雲行きが怪しくなり始めた。



それは彼らが住む街を覆うように広がっていった。


Murk

卯月Side

 

 

「こんにちは、金木さん」

 

「あ、やぁ、卯月ちゃん」

 

再び金木さんが働いている喫茶店に踏み出した、私。

店内は私と金木さんだけでした。

時間がだいぶ開いていたせいか、

ここに来るまでワクワクしていました。

私は前に来た時に座ったカウンター席に座り、

早速金木さんに声をかけました。

 

「お元気でした?」

 

「うん、元気だったよ」

 

金木さんはそう言うと、少し微笑ました。

私は金木さんの表情を見て、どこかほっとしました。

 

「あ、あの卯月ちゃん...」

 

「ん?」

 

「お金大丈夫?」

 

「え?お金ですか?お金は別に問題ないですよ?事務所でお給料もらってますので大丈夫です!」

 

「そ、そうなんだ...喫茶店のメニューは学生だと少し高いんだと思うけど...」

 

よく考えてみますと、喫茶店でいただくものは大体高いように見えます。

でも金木さんやトーカさんとお話しできれば、別に気にするようなことではありません...多分っ!

 

「そういえば...トーカさんはいらっしゃいますか?」

 

「トーカちゃん?」

 

それはここに来て、ふと気づきました。

以前仲良くなりましたトーカさんが、

今日はお店には姿がありませんでした。

 

「あー、トーカちゃんはテスト勉強だよ」

 

「テスト勉強ですか...少し残念です」

 

「まぁ、彼女もそう言う時はあるから仕方ないよ。ちなみに卯月ちゃんはテスト大丈夫?」

 

「え?わ、私ですか...?」

 

その質問を聞いた私は、少し焦ってしまいました。

 

「私は......国語があんまりよくないんですよね....」

 

「国語が苦手なんだ...」

 

漢字は大丈夫ですが、その文書を説明しろとなると非常に難しく感じます...

 

「金木さんは国語は得意ですか?」

 

「僕?国語は得意だよ」

 

「本当ですか!今度、勉強教えてください!」

 

「そ、それは今度、時間があったらね...うん...」

 

そういうと金木さんは"顎をこするように触りました"。

久しぶりの金木さんと会話をして、私は楽しんでいました。

 

「あの...卯月ちゃん?」

 

「はい?」

 

「僕が言うのはあれだけど....何か頼まない?」

 

「あ、そうでしたね」

 

ただ会話しに来るのは、お店としては困ってしまいます。

私は今日は飲もうか、手元にあるメニューを開きました。

前回はカフェオレを頼みましたので、今回は別のものを選ぼと思います。

 

(でも...何かいいもの.....あっ!)

 

そんな時、私の頭にふとあることを思いつきました。

それは以前から金木さんにやって欲しいことです。

 

 

 

 

 

「そろそろ“金木さんの淹れたコーヒー”が飲んでみたいです」

 

 

 

 

 

「...え?」

 

金木さんは私の言葉に驚いてしました。

まるでそのことを疑うかのような顔で私を見てました。

 

「...本当にいいの?」

 

「はい!ぜひ、飲んでみたいです」

 

私がそういうと、金木さんは頭を抱え、悩む仕草をしました。

彼は本当に悩んでいました。

私はやってくれるかそれともやってくれないか少し緊張しました。

やって欲しい気持ちがありますが、

逆に無理して欲しくない気持ちが争うかのように複雑な心境でした。

金木さんは悩んだ末、「よしっ!」と言い、

 

「...じゃあ、やるよ」

 

「本当ですか!ありがとうございます」

 

金木さんの淹れたコーヒーが飲めることに嬉しく感じました。

さっそく金木さんは棚からコーヒーが入った袋を取り出しました。

その袋を開き、コーヒー豆を取り出して、コーヒ豆を粉にする機械に淹れました。

 

私はじっくりとその光景を見ていました。

まるで初めて何かを見る子供みたいに目をまるまると目を開いて見てました。

 

「....あの卯月ちゃん?」

 

「どうしました?」

 

「あんまり見られると緊張するよ...」

 

「あ....それはすみません」

 

私は視線をそらすため、メニュー表を見ました。

メニューを見ているというか、顔を隠しているに近い感じで。

 

(...何やっているんだろう、私...)

 

まるで恥ずかしがっているような仕草で、胸の中がもやもやとしてました。

メニュー表からこっそり目を出そうか迷っていると...

 

「卯月ちゃん」

 

「..はい!?」

 

「コーヒーできたよ」

 

ふと気がつけば、

あっという間に出来上がったみたいでした。

私は顔を隠していたメニューを外すと、

カウンターに湯気がともるコーヒーが置いてありました。

 

「これがコーヒーですか...」

 

目の前に置かれたコーヒーは、写真で見るよりも空気が違ってました。

コーヒーという物を知っているのに、

なぜか初めて見る感覚に近いものを感じました。

 

「...初めてお客さんに出すよ」

 

「え?本当ですか?」

 

「今まではカプチーノとかカフェオレぐらいしか出してないからね...」

 

「と言うことは、私が初めてですね....」

 

私はそう笑顔で返した後、表情が少し強張ってしまいました。

金木さんにとって初めてお客さんに出すコーヒーと言われますと、

なんだかより緊張が高まってきました。

 

(....は、早く飲まないとっ!)

 

流石に眺めているじゃ、コーヒーが冷めてしまいますので、私は飲む覚悟をしました。

 

「....では、いただきますっ!」

 

私がそう言うとコーヒーが入ったカップを持ち、

コーヒーを口に入れました。

 

「......」

 

「...どうかな?」

 

「.....」

 

笑顔だった私がだんだんと顔が曇らせてきました。

その同時に私の胸に"あるもの"が湧き上がりました。

 

「ま、まずいです....」

 

「...え!?」

 

コーヒーを口に淹れた瞬間にとても苦い液体が私の口に広がり、今すぐに口から吐き出したい気分でした。

でもさすがに口から吐き出すのは失礼なので、無理して飲みました。

 

「あ....別に下手というわけじゃなくて....」

 

「...?」

 

「私...実は、コーヒーを飲むのが苦手なんですよ...」

 

今更自分で言うのはあれですが、私はコーヒーが飲むことはできません。

飲むことができるのはコーヒーの風味より甘みが強いカフェオレなどのものです。

それにしてもなんでコーヒーをブラックでいただこうとしたんだろう、私...

 

「で、でも金木さん....」

 

でも私がただ苦いだけのコーヒを飲んで、

 

 

 

"わかったこと"と"言いたいこと"が生まれました。

 

 

 

「今はこのコーヒーはただ苦い味しか感じられませんが...」

 

 

 

 

今の私の口は拒絶したくなるほど苦さですが..........

 

 

 

 

「金木さんの淹れたコーヒーはよかったですっ!」

 

「....よかった?」

 

「はいっ!」

 

コーヒーを飲んで得たことは、ただまずいだけではなく、

これから好きになろうと言う意欲が生まれました。

 

「ですので、コーヒー飲めるように頑張りますっ!」

 

「そうなんだ....それは嬉しいかな」

 

「ありがとうございますっ!」

 

流石に全部は飲むことはできなかったですが、

今度は全部飲めるように頑張ろうと思います。

 

「「..........」」

 

 

しばらく時間が過ぎると急に会話が止まってしまいました。

いっぱい話したいことがあったのに、

すぐに尽きてしまったように感じました

 

(な、何か話さないと...っ!)

 

焦りがより気まずさを増してるようでした。

 

 

 

そんな、何も話していないその時でした。

 

 

 

 

(....ん?)

 

金木さんの後ろにあるドアが開いていることに気づきました。

誰かこちらを見ているような気配を感じました。

じっくりそれを見ていると...

 

「っ!」

 

その瞬間、そのドアの奥で“女の子”と目が合いました。

 

「あ、あの!」

 

私はそう言おうとした途中、その子はすぐにドアを閉めてしまいました。

 

「ど、どうしたの?」

 

「先ほどの後ろのドアに女の子がいたんです!」

 

「女の子...?.........っ!」

 

金木さんは首を傾げましたが、しばらく時間が経つとあることを思い出したような顔になりました。

 

「金木さん、今の子誰ですか?」

 

「だ、誰だろうね...?」

 

「...え?金木さんは知らないのですか?」

 

「名前とか聞いたことないんだよね...」

 

金木さんはそう言うと、手で顎を触れて首を傾げました。

 

 

 

 

あの女の子の目は、“何か恐れている”ように見えました。

とても不安そうに私を見つめていた瞳が、

頭の中から中々離れられませんでした。

 

 

 

 

そう思うと私は、

 

 

 

より“あの子”に話したくなってきました。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金木Side

 

 

(僕の淹れたコーヒーが良い....)

 

卯月ちゃんが帰った後のあんていく

僕はあることを思っていた。

それは先ほどの卯月ちゃんの“言葉”だけ。

まだ未熟な僕の腕なのに、なぜそう言ったんだろうか...?

 

(....まぁ、僕もがんばらないと)

 

彼女も仕事を頑張っているなら、

こちらも頑張らないといけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

"彼女と長く一緒にいるために"

 

 

 

 

 

 

 

 

(...ん?)

 

そんなことを考えていると、お店のドアを開く音がした。

 

「あ、金木さん」

 

僕が声をかける前に、先に声をかけられてしまった。

その方を見た僕は、口が開いてしまった。

 

 

そのお客さんは女性の方で、

 

 

 

僕は名前は知っていた。

 

 

 

 

 

 

その方の名前は、

 

 

 

 

 

文香(ふみか)さん”だった。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「いいところですね...」

 

「はい....ありがとうございます」

 

文香さんはカウンター席に座り、店内を見渡していた。

でも僕は文香さんを見ることはできなかった。

まさか文香さんが訪れるなんて信じられなかったからだ。

未だに嘘のように感じられてしまう。

 

「アイドルのお仕事は慣れましたか?」

 

「はい、おかげさまで順調です」

 

「はは...そうですか。それは良かったです」

 

話の話題を出すが、すぐに途切れてしまう。

それがより気まずさを増す。

 

「....あ、そういえば、金木さん」

 

文香さんは流石に沈黙が続くのがまずいと感じたのか、“ある話題”を出した。

 

「実は、金木さんに話したいことがありまして...」

 

「話したいことですか?」

 

僕がそう聞くと、

文香さんは嬉しそうな顔つきになり、こう言った。

 

 

 

 

 

「私、“プロジェクトクローネ”に参加することになりました」

 

 

 

 

 

 

 

それは彼女にとって嬉しい知らせだった。

文香さんはとても嬉しそうに僕に伝えた。

 

 

 

僕はそれを聞いて驚き、彼女を祝福の言葉をした。

 

 

 

 

 

でも、

 

 

 

 

 

 

 

そのプロジェクトは、

 

 

 

 

 

 

 

決して良いだけじゃないと知る。

 

 

 

 

 

 

 


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