東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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二つの世界が交わるこの場所、

3人の男が動き出す。


White Dove

金木Side

 

「今日は卯月は来るの?」

 

「いや、今日は来ないよ」

 

昼下がりのあんていく、

今店内にいるのは僕とトーカちゃんだけだ。

お客さんは今のところいないため、僕たちは少し話をしていた。

その会話の話題はやはり卯月ちゃんのことだった。

卯月ちゃんは時間があればあんていくに来ると言っていて、

僕はそれに"心配"と"恐れ"を感じていた。

その理由は"喰種"(グール)だということをバレてることだ。

何せここあんていくも喰種がやっているお店だから、

もし彼女が知ってしまったら....

 

 

「なんだ、もう嫌われたのか。早いなー」

 

「そ、そんなことないよっ...!」

 

トーカちゃんは少し嘲笑いに似た顔で僕を見た。

さすがに卯月ちゃんはそう考えているとは想像はしたくはない。

卯月ちゃんはいつも優しく接するから余計に想像がつきにくい。

 

ちなみに卯月ちゃんは今日は来ない。

来るときはいつもメールをすることになっているので、

今日はメールは来ていない。

おそらく仕事かレッスンがあるかもしれない。

 

そんな会話をしていた僕らに、

ちょうどお店のドアが開いた。

 

「あ、いらっしゃませー...」

 

「あれ?もしかして新人さん?」

 

店内にやって来たのは二人の親子であった。

一人は綺麗なお母さんと、中学生ぐらいの女の子であった。

 

「あ!リョーコさん、ヒナミ!」

 

「こんにちは、トーカちゃん」

 

「店長2階で待ってますよ、どうぞ」

 

するとトーカちゃんは二人を二階にまで案内をした。

 

「あれ..?どうして二階に?」

 

普通なら店内にいるはずなのだが、

なぜかあの親子は二階に上がっていった。

 

「ああ、受け取りに来たんだよ」

 

「受け取りに?」

 

「....."肉"」

 

「肉...?なんで...?」

 

「.....アンタと一緒よ」

 

 

 

『"自分で狩れないから"』

 

 

 

「え?」

 

僕はトーカちゃんの口に出たことに驚いてしまった。

 

 

"人"(ヒト)を狩れない"喰種"(グール)

 

 

僕が"人"(ヒト)を狩ることができないのはわかるが、

 

 

 

人を糧とする"喰種"(グール)がなぜ狩れないのだろうか...?

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

プロデューサーSide

 

 

346プロダクションにて、とある男性が入って行った。

その人物はシンデレラプロジェクトを指揮するプロデューサー。

背は高く、鋭い目つきで口数は少ない男性だが、

見た目とは違い礼儀は正しく、どの人でも敬語で話す。

 

今日の朝の346プロダクションは少し騒がしい。

 

(...ここにいる人たちはみんな会議に行くのだろうか?)

 

いつものなら朝のこの時間は人が数人しか見ないのだが、

今日は数十人の人がロビーにいた。

それはこの後行われる会議に出席するためだ。

その会議の内容はわからないが、多くの者はあることを予想していた。

以前社内では"喰種"(グール)に関することを話すではないかと言う意見が多く耳にした。

 

 

しかしその内容は"彼"(プロデューサー)にとって良いことないようではなかった。

 

 

「今回話すことはおそらく、"喰種(グール)対策"の削減だろうな」

 

「ああ、やっぱりお前もそう感じたか」

 

「..........」

 

彼の隣で二人の社員の会話が耳に反応した。

それは"彼"(プロデューサー)にとって耳を塞ぎたくなる会話であった。

最近の社内では喰種(グール)対策にかける費用が高いとなどの不満の声がよく耳にする。

ゲートの維持費の高さや13区内の喰種(グール)対策が万全ではないことが取り上げられている。

多くの者はきっと削減、もしくは廃止を求めていた。

こんなものは"必要ない"と

 

「ここの捜査官は絶対アイドルに会いに来るためCCGに入っただろうな?」

 

「そんな甘いことはこの後の会議で終わる。夢を見る時間はもう終わりだ」

 

二人は嘲笑いに似た笑いをしながらこの場を去った。

それはまるで"彼"(プロデューサー)に対する嫌味でも言われているように思えた。

346プロダクションが喰種(グール)に対策をするきっかけは"彼"(プロデューサー)に関係があった。

それは"彼"(プロデューサー)が入社し手間もない時、"とあるアイドル"をプロデュースをしていた。

当初はうまくいったのだが、軋轢を生んでしまい、そのアイドルはやめてしまった。

 

 

 

しかしそのアイドルがやめた同日、"悲劇"が起こってしまった。

 

 

 

 

 

 

それは雨が降る6月、

 

 

 

 

 

そのアイドルは、

 

 

 

 

13区内で"喰種"(グール)に襲われ、死亡した。

 

 

 

 

 

 

(....ああ、また思い出してしまった)

 

気がつけば"彼"(プロデューサー)はあの悪夢の光景を思い出してしまった。

最近"喰種"(グール)のことを耳にするせいか、"あの事件"が頭に遮る。

この前にも13区に"喰種"(グール)の事件があった。

ニュースによれば遺体の損傷はひどく、

"捕食による傷ではない"と言っていた。

そんな恐ろしい"喰種"(グール)が13区にいるとは考えたくない。

"彼"(プロデューサー)は気を取り直し、会議室へと向かった。

今回の会議では主導するのが"美城常務"。

彼女は会長の娘であり、先月帰国したばかりである。

彼女の政策は急進的な改革が多く、

社内では不満の声を耳にしたことがあった。

しかし多くの者は不満を直接言うのではなく、

影でこそこそと言うばかりであった。

そんな状況の中、美城常務の政策に反対した人物が""彼"(プロデューサー)であった。

"彼"(プロデューサー)が指導しているシンデレラプロジェクトは美城常務にとって廃止対象であったからだ。

"彼"(プロデューサー)はそれを存続させるべく、

"シンデレラ舞踏会"と言うイベントを計画していた。

だがそれは"成功すれば"と言う話であるため、

失敗すればシンデレラプロジェクトは終わってしまう。

そんな美城常務と意見が合うことなど、

"彼"(プロデューサー)は考えれなかった。

 

 

 

 

 

でもその会議は、

 

 

 

 

"彼"(プロデューサー)が予想していたものとは違っていた。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

亜門Side

 

 

CCG20区支部の朝

 

"喰種"(グール)の被害が少ないこの場所に、

本局から派遣された"二人の捜査官"が入って行った。

 

「よくやってくれたな、346は」

 

「はい。これから喰種(グール)対策に力を注ぐようですね..」

 

今朝のニュースで346プロダクションが喰種(グール)対策に今後力を入れるとの情報が入った。

これはCCGにとって良い情報であった。

 

 

"亜門鋼太朗"(あもんこうたろう)

 

CCG本局所属の一等捜査官

 

彼はCCGのアカデミーを首席で卒業したエリートで、

喰種(グール)のために開発された武器"クインケ”を使い、

喰種《グール》捜査官として日々奮闘している。

 

「これで私たちは"鼠"をより捕まえやすくなる」

 

真戸は右手を握りしめ、くくくっと不気味そうに笑った。

 

 

"真戸呉夫"(まどくれお)

 

CCG本局所属の上等捜査官

 

白髪で痩せこけた頰と不気味な容姿をしている男性であり、

"喰種"(グール)に対して残酷な態度を示す。

亜門とはパートナーとして組んでいる。

 

「まさか....美城常務があの状況で判断を下すとは..」

 

「彼女も我々の気持ちを理解したのだろうね」

 

346プロダクションと連携して以来、

CCGは高額な資金を得た。

連携前よりも研究と対策がしやすくなり、

CCGにとって346はなくてはならぬ存在となった。

 

 

しかし、最近346プロダクション内では不満の声が上がっていた。

 

 

維持費の問題や、13区内の喰種(グール)対策が十分に取れてないなど問題があった。

確かに13区は以前から"ジェイソン"がいる。

 

だがその"ジェイソン"の駆除は決して容易ではない。

この前にも13区に"ジェイソン"による犯行があった。

"ジェイソン”の特徴は捕食ではなく"遊び"による犯行だ。

大体の遺体はボロ雑巾のようなひどい有様で現れてしまう。

捕食している傷はなく、まるで拷問の傷に似ている。

そんな恐ろしい喰種(グール)が潜む13区に置く346プロダクションにいる者も少しCCG側の気持ちをわかってもらいたい。

亜門も一度346プロダクションに入ったことあるが、

社内の人間は捜査官に対する冷たい視線が嫌に感じるほど味わった覚えがあった。

"なぜここに来ている?”と言っているかのように

 

("あのプロデューサー"は今回のことをどう思うだろうか..?)

 

亜門が言うプロデューサーは、CCGと346が手を組むきっかけとなった被害者のアイドルを担当していた人物のことだった。

出会ったきっかけは"アイドル捕食事件"であった。

346プロダクションに所属していたアイドルが、

"喰種"(グール)に襲われてしまい、死亡した悲惨な事件であった。

その被害者のアイドルは346プロダクションに所属していたのだが、

担当していたプロデューサーによれば"その日にやめてしまった”と言っていた。

その同じ日に事件が起きるだなんて、"彼"(プロデューサー)にとって悲痛に違いない。

当時の亜門はCCGに入りたての新米捜査官であり、

その時の事件現場にいた。

亜門は"彼"(プロデューサー)に被害者について聞いていた。

それがきっかけとなり、二人はある程度の顔見知りとなっていった。

 

(...そういえば、"彼"(プロデューサー)のアイドルに間違われたことあったな..)

 

ちなみに亜門と"彼"(プロデューサー)は年であり、容姿は似ている。

スーツ姿に同じ髪型、同じ身長である。

以前凸レーションの諸星きらり赤城みりあ、城ヶ崎莉嘉に"彼"(プロデューサー)と間違われていた。

もしかするとシンデレラプロジェクトのアイドルに"間違われるかもしれない"。

 

「ところで真戸さん」

 

「ん?」

 

「あの"親子"が見つかるといいですね」

 

「見つかるさ、その為に来たのだから」

 

 

二人の捜査官が"ここ"(20区)に訪れた理由は、

 

 

 

 

とある"親子の喰種(グール)”を追っていたからだ。

 

 

 

 

 

 




いつも読んでいただきありがとうございます。

最近投稿の間隔が遅くて申し訳ございません。(不定期ですが..)

投稿が早くなるようがんばります。

次回は凛がとある二人を連れてくるようです。

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