東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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偽りの姿


それは僕たちだけではなく、彼女たちにもあった。





false

金木Side

 

 

(まさか美嘉ちゃんがここに来るなんて...)

 

僕は美嘉ちゃんがきた驚きがしばらく続いていた。

何せ先ほどテレビに出ていた人物が目の前にいるのだから、

友達でもある僕でもなぜか驚いてしまう。

 

「結構雰囲気いいんじゃん〜」

 

僕の目の前にあるカウンター席に座っているのは"美嘉ちゃん"だ。

美嘉ちゃんはお店の雰囲気に気に入っていたみたいで、

興味を持った目でお店の中を見渡していた。

今のところこのお店にいるのは、僕と美嘉ちゃんと隣にいるトーカちゃんだけだ。

彼女はメニュー表をじっくと眺め、僕に視線を向けて、

 

「金木さんいいバイト選んだじゃん☆」

 

「あ、ありがとう...」

 

美嘉ちゃんは可愛らしく僕にウィンクをした。

僕はそんな美嘉ちゃんを見て、

さらに緊張が増してしまった。

 

「ん?もしかして...アタシが来て緊張してるとか?」

 

「そ、そんなことないよ..」

 

僕は美嘉ちゃんが来たことで緊張をしていたのは本当だった。

でも僕は美嘉ちゃんの答えに嘘が混じったような恥ずかしそうな顔で否定をしまった。

美嘉ちゃんは僕の行動を見て、「隠してるな〜」と未央ちゃんと違った良からぬ顔で僕を見つめた。

まるで僕を揶揄うかっているような感じで、じっとこちらに見つめる。

なんだか美嘉ちゃんはポジティブな子だなと思った。

 

「そういうところがなんか金木さんっぽくていいよね☆」

 

「はは..ありがとう..」

 

今まで僕は美嘉ちゃんのイメージはは気が強い子で話しかけづらいと言う印象だった。

でも実際話してみたら、見た目とは違い素直でいい子であった。

そういうところが僕にとって美嘉ちゃんらしいところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも今回はどこかいつもとは"違う感じ"がした。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと...カネキ」

 

「え?」

 

するとトーカちゃんは僕を強引に引っ張り出し、

2階に上がるドアの中に連れ出した。

 

「ねぇ、カネキが話してたヤツって"城ヶ崎美嘉"?」

 

トーカちゃんは少し深刻そうに美嘉ちゃんの方向にに指を指す。

 

「そうだよ...僕の友達でもある.」

 

「マジで言ってるの..?」

 

トーカちゃんは眉をひそめ、僕を見る。

 

「うん、本当だよ..」

 

「なんでアイツと友達になってるの...」

 

トーカちゃんは手を頭につけ、困った顔になった。

それはこの前に話したことと同じことだ。

彼女も346プロのアイドルだから、もし僕が喰種とバレたら僕も彼女も終わりだ。

しかも美嘉ちゃんはシンデレラガールズの一人で、いろんなメディアに出ている。

彼女が喰種と出会っていたと知られてしまったら.....

トーカちゃんは悩んだ顔をして何か考えた末、「さっさと注文させて帰らせろ」と苛立った様子で僕に指示をした。

 

「え!?それはさすがに..」

 

「さっさとしろ、バカネキッ!」

 

トーカちゃんは控えめに僕に怒鳴りつけた。

彼女の言う通り、早く帰らせた方が僕たちのためでもあり、美嘉ちゃんのためでもある。

 

 

僕は今いる状況を改めて自覚した。

 

 

それは"決して明かしていけないこと"を僕は持ってしまっているのを

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

美嘉Side

 

 

「あれ?金木さん何かあった?」

 

先ほど金木さんはお隣にいた女の店員の人に連れ出され、ドアの中に入って行った。

その連れ出した女子はどこか深刻そうな顔であった。

もしかしたらアタシが来たことに驚いたかも。

 

「いや..さっき彼女から注文を聞かないの?と言われたから..」

 

「ああ、そうだったね..まだアタシ何も頼んでないね...」

 

ふと気がつけばアタシはただメニュー表を開いているだけで、その中身を見ていなかった。

やっぱアタシは"あのこと"を言うのを緊張してる...

 

「ここは喫茶店だよね..?」

 

「うん、そうだよ?」

 

「こ、コーヒーとか淹れれるの?」

 

「僕はできないよ...コーヒーの腕はまだまだだよ...」

 

「そっかー...それは残念だね...」

 

アタシはそう言うと視線を金木さんから手元にあったメニュー表に視線を向けた。

 

「「........」」

 

徐々に話すたび、気まずい空気が大きくなりはじめた。

話すネタが尽きたせいかアタシは金木さんに視線を向けず、

メニュー表に向けていた。

メニュー表をじっくり見ているが、そんなにメニューは書いてはない。

アタシはどのメニューを決めずに、ただ話をしていた。

 

 

 

もうそろそろ切り出すしかない....

 

 

 

「か、金木さん..」

 

「ん?」

 

アタシは緊張した口で金木さんを聞いた。

そして金木さんがアタシの方に視線を向けた。

なんだかステージに立つよりも緊張しているみたい。

とても緊張しているせいか中々"あれのこと"を言い出せずに、数分沈黙が続いてしまった。

 

(い、言わないと...)

 

アタシは緊張で震えた口で金木さんに心の中の悩みを伝えようとした。

 

 

 

 

でも、そう簡単に出せるようなことじゃなかった。

 

 

 

 

「カ、カフェオレを飲もうかな..?」

 

「カフェオレ?...あ、ああ、わかったよ...」

 

また避けてしまった。

アタシが出したかった話ではなく、

唐突で違う答えを出してしまった。

なんだか後悔がした。

金木さんがカフェオレを作るため、棚から器具を取り出し、コーヒーや牛乳を用意した。

アタシはしばらくその光景をただ見つめてしまった。

言うことがあるのに何故か黙っていた。

 

(...言わなきゃ)

 

アタシは今度こそ金木さんに"あのこと"を話すことにした。

いつまでも口に出さなきゃ意味がない。

アタシは勇気を振り絞り、話したいことを口に出した。

 

「その....最近のアタシ、どう思う?」

 

「...え?」

 

金木さんはアタシの言葉に驚き、手を止めてしまった。

 

「さ、最近の美嘉ちゃんのこと...?」

 

「うん...なんか...変わったことあると思う?」

 

アタシはそう言うと、金木さんに視線を向けず、カウンターに視線を向けた。

何度か金木さんに視線を向けることはあったが、じっくり見ることなんてできなかった。

金木さんはなんていえばいいのか考えているように見えた。

 

「ふ、雰囲気変わったよね?」

 

「....うん」

 

「.....」

 

アタシの答えの返し方が悪いせいか、

金木さんは何も言わなくなってしまった。

どう答えを出せばいいのかわからないように見えた。

 

「えっと...最近、大人になった感じだね」

 

「.......大人?」

 

「髪を下ろした姿の美嘉ちゃんはなんだか新鮮感を感じたよ....」

 

金木さんはそう言うと、手で髪を下ろした仕草をした。

確かに最近街中やテレビのCMではアタシの髪を下ろした姿をよく目にする。

その理由は最近大手化粧品メーカーの広告を担当するようになったからだ。

それは他の人から見ればいい話かもしれない。

 

 

でも、アタシはそうは思わなかった。

 

 

「アタシ、これでもいいのかわからないの」

 

「わからない?」

 

金木さんはアタシの言葉に頭を少し傾けた。

 

「今までのイメージを変えたのだから...これでいいのかわからないの」

 

今まではカリスマJKのイメージがあったのだけど、

その化粧品のCMではそのイメージが潰された。

大人らしさがメインになり、自分の個性を否定されている嫌な気持ちが胸に生まれた。

 

「それでその不安でイライラして、昨日莉嘉にきつく言って...」

 

「莉嘉ちゃんに?」

 

莉嘉はアタシの妹で、同じく346プロでアイドルをしている無邪気で幼い感じがかわいい。

でも昨日アタシは迷いがあるせいかイライラしてしまった。

"仕事が嫌ならやるな"と。

 

「ちょっと八つ当たりっぽく言ったことが後悔してる...」

 

「....」

 

「...美嘉ちゃんは今迷っているよね」

 

「...うん」

 

「まるで"今の自分の姿"が、"偽りの自分"に見えてはっきりしていないっと感じると思う」

 

金木さんの言う通りだった。

今の自分の姿が、嘘をついているように思えた。

それじゃあ、仕事も人生も面白くはない。

 

「美嘉ちゃんはクールでいるのはいいのだけど...」

 

「やっぱり、美嘉ちゃんはハキハキした方が似合うよ」

 

金木さんはそう言うと、少し微笑んだ。

それは何かが失ったことに寂しく感じるようにみえた。

そしてアタシの目の前にできたカフェオレをそっと置いた。

 

「例えばクールな大人を演じるより、美嘉ちゃんらしいところを出した大人を演じた方がより良いイメージが湧くと思うよ」

 

「金木さん、結構いいこと言うじゃん」

 

アタシはそう言うと、渡されたカフェオレを口に注いだ。

コーヒーの風味がミルクとの相性がとても合う。

まるで今まで合わなかったものが、とても合っているように。

そう思うとなんだか気持ちが軽く感じた。

 

「いや...僕は大したことは言わないよ..」

 

金木さんはそう言うと照れ臭そうに笑った。

 

「金木さんも何か"悩み"があったら"アタシにも"聞いてね?」

 

「美嘉ちゃんにも?」

 

「あれじゃん、志希に悩みとか色々言ったとか聞いたよ」

 

この前のサマーフェスの時、志希が金木さんのことを耳にした。

彼の性格、住んでいるところ、あと好きなものなどいろいろ聞けた。

その中の一つが金木さんの性格だ。

金木さんは文香さんがアイドルになった時、悲しかったと聞いた。

志希は金木さんはとても寂しがりな人だと。

 

「ああ...志希ちゃんなら言うよね...」

 

金木さんは少し照れくさそうに壁に目をそらした。

やっぱり照れ臭いことだとわかった。

アタシもそう言われたら照れるのは間違いない。

 

 

 

 

「でも僕は、別に"悩み"はないよ」

 

 

 

 

金木さんはそう言うと、右手で"顎を触った"。

 

 

「えー、今はないんだ...」

 

アタシは金木さんに今は悩みがないことに少し残念な気持ちになり、

カウンターに寝そべる感じに顔をテーブルにつけた。

実際は残念な気持ちになっていないけど、

アタシの心の中に遊んでみようと言う気持ちがなぜか生まれた。

そしたら金木さんはその姿を見て、慌てた様子になった。

 

「あ、で、でも、"いつか"は言うよっ!」

 

「"いつか"?」

 

アタシは金木さんをさらに言葉を出すため、揶揄うように言葉を返した。

 

「そ、そうだよ...!もしあったら、美嘉ちゃんも他の人にも..」

 

「他の人?さては、"卯月ちゃん"だね?」

 

「え!?ど、どうして..!?」

 

「それも志希に聞いたよ。もー、金木さんたらー♪」

 

その情報も志希にも聞いた。

志希が言うには、結構連絡取っているらしい。

もしかすると心のどこかで"あの気持ち"があるかも。

なんだ心が軽くなったと実感できた。

 

「わ、わかったよ。 じゃあ、約束するよっ!」

 

「うん、約束ね☆」

 

アタシはそう言うと、えへへと笑った。

こうしてアタシと金木さんは約束をした。

 

 

 

それは悩みがあったら言うこと

 

 

 

きっとこれからもいっぱい悩みや不安なことがで合うかもしれない。

 

 

 

だからアタシは金木さんと約束を交わした。

 

 

 

 

 

そういえば、ここの喫茶店はなんだか雰囲気が好きになった。

 

 

 

今度、莉嘉とみりあちゃんとここに来ようかな?

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

卯月Side

 

 

お昼12時の仕事が終わり私はあるところに向かってました。

 

「今日も金木さんは働いてるかな?」

 

秋の少し心地のよい風が気持ちいこの季節

でもその風がなぜかより緊張をさせているように思えました。

この前は未央ちゃんと凛ちゃんと一緒に来ましたが、

今回は私"一人で"来ています。

私は金木さんに何も言わず再び"あんていく"に行くのがなんだか勇気がいる...

 

(あ..来てしまった..)

 

ふと気がつけばもうすぐ金木さんが働いている"あんていく"に着いてしまいます。

一体何話そうか何も考えずにそのままお店の入り口まで進んでしまいました。

 

(うう..緊張がする...)

 

お店のドアの前に立ち、私は手を握りました。

そして、ドアを開きました。

 

「いらっしゃいませ」

 

そこにいたのは金木さん...ではなく、金木さんと一緒に働いている女の子でした。

 

(あ、あれ..?)

 

私はお店の中を見渡しましたが、お店にいるのは私とその方だけでした。

 

「...あの、どうなさいましたか?」

 

するとその店員さんは私に声をかけてきました。

 

「あ、ああ!な、なんでもありません!」

 

私は緊張していたせいか、ぎこちなく返しました。

 

「そ、そうですか...」

 

その方はどこかおぼつかない顔をしました。

私の行動に変に感じたと思います。

 

「と、とりあえず席に座りますね!」

 

私はそう言うと、カウンターの方に足を運びました。

 

(金木さんがいなくても...その方とお話できればいいです..!)

 

私は心の中でそう呟いた後、まっすぐにカウンター席に座りました。

今のところどう会話すればいいのかわからずに

 

(ま、まずは...その方のお名前を聞かないと...!)

 

私は目の前にいる店員さんに緊張しながら声をかけました。

 

「あ、あの...お名前はなんて言いますか?」

 

「お名前ですか...?」

 

その人は少し困った様子になりました。

まさかここでお名前を聞かれるとは予想はしなかったと思います。

 

「"トーカ"です」

 

その人はそう言うと、素敵な笑顔で返しました。

ショートカットで右目が髪で隠れていましたが、とてもかわいい子です。

 

「と、"トーカさん”ですか..!」

 

私は緊張気味た感じでうんうんと頷きました。

 

「以前お店にいらっしゃいましたよね?」

 

「あ、はい!そうです!」

 

その方は「やっぱりそうですよね」と言い、可愛らしく笑いました。

覚えてもらえたことに嬉しくなりました。

 

(あ、そういえば...)

 

私はあることを忘れていました。

それはここ"あんていく"に訪れる理由の一つを忘れていました。

 

「今日は金木さんはいませんか?」

 

「金木さん?」

 

「はい、今日はお会いできるかなと思いここに来ました」

 

「そうですか....今日は仕事があると思いますが...」

 

「ご、ごめん!」

 

トーカさんが言った瞬間、お店のドアが急に開きました。

ドアを開いたのは金木さんでした。

遅刻して慌てているように見えました。

 

 

その時でした。

 

 

「コラッ!カネキ!何遅刻してるんだ!」

 

「ご、ごめんっ!トーカちゃん!」

 

「え..?」

 

先ほど私に優しく接したトーカさんが、

荒々しい態度に急に変わってしまいました。

 

「さっさと着替えてこい!カネキッ!」

 

「わ、わかったよ..」

 

金木さんはトーカさんにそう言われると、すぐに二階へと上がって行きました。

 

 

「...あっ」

 

 

するとトーカさんは私を見て、固まってしまいました。

まるで隠していたものがばれてしまったかのような驚きと恐れが混じった顔でこちらを見てました。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーー

 

董香Side

 

「...あっ」

 

私は不味いことをしてしまった。

それは"島村卯月"の前で絶対客の目の前で見せない自分を出してしまった。

別に私の正体が全てバレたのではないけど、性格がバレるだけでも不味い。

だいたいカネキが悪いのだけど。

 

「...ふふっ」

 

「...?」

 

「はははっ!」

 

すると島村は笑い出した。

まるで隠していた笑いをどんどんと表に出すように

 

「なんだか董香ちゃんは"凛ちゃん"みたいですね」

 

「"凛ちゃん"?」

 

「あ、"凛ちゃん"はこの前来た黒髪でロングヘアーの子です!」

 

「へ、へー....」

 

卯月は先ほどの私の姿を見たにも関わらず、どんどんと私に話しかけてくる。

 

「トーカさんはもしかして同じ高校生ですか?」

 

「そ、そうだね...今、高2で17」

 

「高校生二年生で17歳ですか!?私と同じじゃないですか!」

 

島村卯月はそう言うと輝いた目で大きく声を出した。

 

「あ...あ、そうなんだ...」

 

私は少しぎこちなく返した。

なんだか面倒臭いやつに絡まれているように思った。

 

「同じ年だなんて、初めて知りました!」

 

「.....ふ、ふーん」

 

私は少し微笑んだ。

しばらく島村卯月に接してみてわかったのは、

本当に偽っていないことだ。

テレビとかでは可愛い子ぶっていて、絶対裏のあるやつだと嫌っていた。

でも実際に会ってみると、違っていることに気づいた。

 

「その..."凛"は金木に怒ってるの?」

 

「凛ちゃんですか?」

 

この前、卯月と一緒に来ていた友達の一人"渋谷凛"。

アイツとカネキの会話の感じだと、完全に金木を厳しく接していた。

 

「怒っていると言うか...行動を叱っていると言うか...」

 

「それ私に似てる」

 

私はそう言うと自分に指をさした。

 

「ほ、本当ですか!?やっぱり凛ちゃんと同じですね!」

 

「そ、そうなんだ...そんなに似てるかな.....?」

 

私はそう言うと、少し頭を傾けた。

嬉しいようで、嬉しくは感じない答えであった。

 

「それで...カネキって、いつも頼りない感じ?」

 

「え?」

 

卯月は私の言葉を聞いた瞬間、

まるで私の答えが間違っているようにこちらを見てきた。

 

「か、金木さんはいい人ですよ!」

 

「いい人?」

 

私はそれを聞いて中々イメージがつかなかった。

いつも頼りなく、小心者感があるし、毎回オーダーミスするやつが、良い人だなんて考えにくい。

 

「か、金木さんは私にとって"最初のファン"でもあり、"大切なお友達"です!」

 

卯月はそう言うと、まっすぐとこちらを見る。

卯月の目は決して嘘は言っていない。

本当にカネキはいいヤツだとこちらに言っているように見えた。

 

「そうなんだ...そ、それはごめん...」

 

「あ、謝らなくてもいいですよ!」

 

卯月はそう言うと慌てて手を振った。

 

「面白いね、卯月は」

 

「そ、そうではありませんよ...!」

 

卯月は照れながらそう言った。

その姿はどこか可愛かった。

 

「あ、卯月で呼んでいい?」

 

私はふと気がつくと、無意識に名前を言ってしまった。

まだ合って数分なのに。

 

「はい!卯月でいいですよ」

 

卯月はそう言うと、笑顔で返した。

 

「っ!」

 

私は卯月の笑顔に、何故か驚いてしまった。

他のヤツの笑顔とは違う笑顔だと

その笑顔は本当に卯月しかできない笑顔に見えた。

 

「....ん?」

 

すると私は2階に上がるドアに視線を向けた。

私たちを見るヤツの存在に気づいたからだ。

 

「あ、金木さん!」

 

卯月は金木さんの姿を見て、どこかテンションが高くなっていた。

 

「あの..さっき、何話してたの?」

 

「アンタには関係ない」

 

私はいつも通りカネキに対して、冷たい態度で返した。

冷たい視線でアイツを見る。

カネキは「え....」と困った様子で頭を傾けた。

でもそれは先ほどの私の感情を卯月に見せてしまったからではなかった。

むしろ感謝に近いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも振り返ると、後悔してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"喰種"でもある私が、なんでまた仲良くしちゃったんだろう

 

 

 

 

"人間”(ヒト)

 

 

 

 

 

 

 

 


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