東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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偽る


僕に必要なこと

それは僕のためでもあり、他の人のためでもある








Antique

 

金木Side

 

 

「ーーゆっくり焦らずに、平仮名の"の”の字を描くようにね」

 

「は、はいっ」

 

僕はあんていくで働き始めた。

それは僕にとって初めてのバイトである。

と言っても今はお店のカウンターにいるのではなく、

二階の控え室にいる。

 

「.....」

 

今そこで僕はコーヒーを淹れる練習をしている。

でも緊張しているせいか、出来がいいとは言えなかった。

 

("微妙"...)

 

自分の淹れたコーヒは店長の淹れたコーヒーとは、

どこか味が違ってるように思えた。

 

「店長と比べると何かが違います...」

 

僕がそう言うと店長は少しにこやかになり、

 

「....コーヒーは手間をかけることで全く味が変わるんだ」

 

「"人"も同じ、焦ることはないさ」

 

僕は少し安心感は出たが、

なんだか申し訳ない気持ちが同時に僕の胸に生まれた。

するとそんな僕に店長の口から驚くことがあった。

 

 

「 なんだか金木くんの姿を見ると"楓"ちゃんを思い出すよ」

 

 

「..."楓"ちゃん?」

 

僕はその言葉に反応してしまった。

 

「その人って誰でしょうか?」

 

僕はその"楓"と言う名前に気になってしまった。

その人はもしかして、かつてここにいた"喰種"だろうか?

 

 

「金木くんは"シンデレラガールズ"を知ってるかね」

 

 

「...え!?」

 

僕はそのことを聞いて驚いてしまった。

何せ世間に大きく知られているあの"シンデレラガールズ"に、

該当する人物がいるからだ。

 

「"楓"って....あの"高垣楓"さんのことですか!?」

 

「そうだよ。君と同じ身長ぐらいの子だよ」

 

店長は僕の驚いた姿に『そんなに驚くことかな?』とにこやかに笑った。

 

「彼女も最初コーヒーを淹れるのが得意ではなかったよ。味が薄かったり、時には濃すぎたりの時はあったよ」

 

テレビに出ている楓さんはクールでどこかミステリアスという大人なイメージがあるが、

彼女にもそんな姿があったことに以外に感じた。

 

「でも彼女もうまくコーヒーを淹れるのがうまくなったよ」

 

「だから金木くんも、いつかはできるよ」

 

さっきよりも安心感が得たような気がした。

それはかつてあんていくにいた楓さんのことを聞いたかもしれない。

 

「楓ちゃんは僕たちあんていくのみんなをよく知ってるよ。コマくんやイリミさん、ヨモくんのこともね」

 

楓さんはアイドルになった現在もここにこっそりと訪れると言う。

そのことは楓さんとあんていくのみんなだけの秘密だと店長は言ってくれた。

 

「ああ、そうそう」

 

すると店長は何か探し始めた。

そして「あった」と見つけた。

 

「この前、楓ちゃんがこれを渡してくれてね」

 

店長はその見つけたものを僕に見せた。

緑の紅葉を型にしたうちわであった。

そこには"高垣楓"のサインがあった。

 

「それって...?」

 

「楓ちゃんが初めてライブしたところでファンの皆さんに配ったものだよ」

 

店長はそれを嬉しそうに"楓さん"のサインが書かれたうちわについて言った。

まるで我が子を褒める親のような温もりが感じられた。

 

 

 

すると僕はふと胸に感じてしまったことがあった。

 

 

 

「彼女は..."喰種"ですか?」

 

 

 

ここで働くと言うことはつまり、

"喰種"と言うことだろうかと、ふと頭に浮かんだ。

それなら彼女は....

 

 

 

「いや、彼女は立派な"人間"(ヒト)だよ」

 

 

 

「え...?」

 

しかしは、僕の予想していたことは違う答えを店長は口にさらっと出した。

僕はあまりにも意外な答えに言葉がでなかった。

 

「あんていくのみんなは僕たちが"喰種"だと言うことは楓ちゃんには伝えてないよ」

 

その時の店長の顔は"笑顔"だった。

それはどう言った意味なのかわからなかった。

 

「それじゃあカネキくん、トーカちゃんの元に行ってくれないかな?」

 

「は、はい...」

 

僕は店長に言われた通り、控え室から出た。

僕の胸の中には"楓さん"の意外な一面を知れた驚きと、新たな疑問が生まれた。

 

 

それにしても、どうして店長は"楓さん"をここに迎えたのだろう..?

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

("ヒデ"を殺すだなんて....)

 

僕は考えたくないことを聞いてしまった。

それはトーカちゃんに言われた言葉

 

 

 

『...もし何かのきっかけで、アイツが私たちの事に気がついたら...』

 

 

 

『その時は..アイツ"殺す"から』

 

 

 

とても冷たく、恐ろしい言葉に聞こえた。

でもそれが現実、

僕は"人間"ではなく"喰種”

バレたらお終い

 

 

僕はそんな状況に立っていることを忘れてはならなかった。

 

 

(...いつか"そんな時"が訪れてしまうのか..)

 

 

そんな暗いことを耳にした僕、

その気分を変える出来事が起きた。

それはお店のドアが開く音がした時だった。

 

「あ、いらっしゃ....」

 

僕は暗い気持ちを隠し、

いらっしゃいませと言おうとした。

しかし僕は言うのを途中で止めてしまった。

その理由は"来たお客さん"にあった。

 

「やっほー!金木さん!」

 

「え」

 

僕はあまりにも驚いたせいか、固まってしまった。

そんな僕にさせたのは三人の女子高校生だった。

 

「金木さんお久しぶりです」

 

「久しぶり、金木」

 

その三人は僕の友達でもあり、アイドルでもある子達。

"卯月ちゃん"と"凛ちゃん"、"未央ちゃん"だった。

 

「な、なんで...来たの?」

 

「いやー金木さんに久しぶりに会いたくて、しまむーに場所を聞いたよ」

 

「この前、"志希さん"に教えてもらいましたので...」

 

僕がバイトをすると言ったのはヒデと文香さん、志希ちゃんにしか言ってなかった。

その中で卯月ちゃんに一番言いそうな子は志希ちゃんしかない。

あの子なら言いかねない。

 

「じゃあ、ここに座るよー」

 

三人はテーブル席を座ると思ったが、未央ちゃんが「カウンターの方がいいよね」と言ったためカウンター席になった。

 

「さてと、喫茶店だからまずは金木さんが淹れたコーヒーでも飲みたいねー」

 

未央ちゃんは何か企んでそうな目で僕を見る。

 

「さ、さすがに僕はまだ出せるようなコーヒーできないよ...」

 

先ほどの練習の成果ではお店に出すのは先が長い...

 

「えーじゃあ大将!三人ともカプチーノで!」

 

「ここは喫茶店だよ...未央ちゃん」

 

僕は未央ちゃんの発言にツッコミを入れた。

元気なところが彼女の取り柄だ。

カプチーノは先ほどヒデが頼んだやつと同じだった。

それなら僕の腕では問題なくカフェラテアートができる。

さすがに三人分は時間がかかるので、トーカちゃんは手伝ってくれた。

 

「結構いいところだね」

 

僕がカプチーノを作っている時、

凛ちゃんはさりげなく僕に声をかけた。

 

「そ、そうだね...」

 

僕がそう言うと凛ちゃんは

 

「金木なら絶対迷惑かけるよね?」

 

僕はその言葉に刃物が胸に刺さったように心にきた。

 

「ま、まぁ確かに迷惑はかけてるよ...」

 

凛ちゃんの言葉は正しかった。

僕はバイトを初めて何度もトーカちゃんに怒られている。

掃除の仕方やオーダーのミス、あとコーヒーをこぼすなどいろいろある。

そう考えてると凛ちゃんの目は鋭いなと感じる。

 

「ほんと金木はドジだね」

 

「ご、ごめん...」

 

僕は無意識に謝ってしまった。

まるで説教されているかのようであった。

 

「凛ちゃん、さすがに言い過ぎですよ」

 

すると僕をフォローをする人がいた。

それは"卯月ちゃん"だった。

 

「金木さんはまだ始まったばかりですし、わからないこともありますよね?」

 

「あ、ありがとう..」

 

彼女は僕のことを考えてくれる。

僕は彼女のことを優しく感じた。

 

「それと金木さん、お体は大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫だよ...元気になったし」

 

僕はその言葉に少し慌ててしまった。

元気になった理由はしばらく時間が経ったおかげとかそう伝えた。

 

 

 

実際は"違う"けれど

 

 

 

でも僕は彼女たちと会話ができて嬉しかった。

こんな忙しい時にわざわざ僕の所に来るなんて考えもしなかった。

僕を心配してくれる人がヒデ以外いるなんてありがたかった。

 

 

 

 

 

でも、隣にいたトーカちゃんの表情はなぜか暗かった。

それはどこか"嫌な予感"がした。

 

 

 

 

その"嫌な予感"は、トーカちゃんの口に現れた。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

卯月ちゃん達が帰った後、僕は少々疲れた。

未央ちゃんの無茶振りが何度もあり、僕は困った。

どんなコーヒーが美味しいかだったり...まぁたくさんあった。

 

「アンタ、絶対にあの三人に"喰種"だとバレないようにしろよ」

 

トーカちゃんは再びヒデに伝えたことを同じく僕に言った。

僕が「わかってるよ」と言おうとした瞬間、

ヒデとは全く違ったことを僕に聞いてきた。

 

「あの三人は"346"のアイドルでしょ?」

 

「え?」

 

トーカちゃんがその質問を聞いて来た事に小さく驚いた。

 

僕は「そうだけど...」と伝えた瞬間、

トーカちゃんの口に"驚くようなこと"を耳にする。

 

 

 

「もし上が知ったら、アンタも"あの三人”の命ないから」

 

 

 

「...え!?」

 

僕はその言葉に、不安が募ってしまった。

 

「三人の命はないってどういうこと!?」

 

本来命が危うくなるのは僕だけのはずなのだが、

なぜ卯月ちゃんたちがそうなるのかわからなかった。

 

「346はハトと手を組んでいるから、喰種の中では恐れられている」

 

「例えばあそこで働こうとしても"喰種ではないことを証明するもの"を要求するし、毎月"喰種ではない検査"とか他のところよりも厳しい」

 

その情報は普段耳にしない情報だった。

喰種だから耳にすることのできる情報だとわかる。

それはたとえステージのアルバイトや清掃員でもと例外ではないとトーカちゃんは言った。

 

「あと、仮にあの三人がカネキが"喰種"だと言うことを知ってそれを隠したら、"牢屋行き"」

 

「え!?」

 

トーカちゃん曰く、人間が喰種を庇えば、他の刑罰より重いと言う。

つまり僕は彼女たちの夢を殺すことになる。

 

「もしアンタが"喰種"だとバレたら、あの三人の夢を本当にぶち壊すから」

 

 

 

「だから、"死ぬ気で”隠しな」

 

 

 

「...うん、わかった」

 

僕はトーカちゃんの言葉に深く心に染み付いた。

それは決して忘れてはならぬこと。

彼女たちの運命を壊すことを聞いて、

 

 

 

 

僕はとても怖く感じた

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーー

 

卯月Side

 

 

「いやー金木さんがバイトするとはねー」

 

私たちは今日ちょうどお休みでしたので、

一緒に金木さんの働いている喫茶店に行きました。

その喫茶店は20区にある"あんていく"と言うお店でした。

そのお店の中はコーヒーの香りがいい香りでした。

 

「少しみっともないところあったけどね」

 

凛ちゃんは相変わらず金木さんに対して厳しかったです。

確かに凛ちゃんのおうちは花屋さんですから、小さい時からお店の手伝いをしてます。

そう考えると凛ちゃんがそう言ってもおかしくはなかったです。

 

「なんか、金木さん変わった感じなかった?」

 

「確かにどこか変わった感じあるよね?」

 

「そうでしょうか...?」

 

未央ちゃんの言う通り、金木さんは以前よりどこか違って見えました。

それは一体どこなのかはわかりません。

 

 

 

 

しかし、私は少なくとも"プラスなことではないな"と感じます。

 

 

 

 

(それにしても..金木さんと一緒に働いてた人誰でしょうか..?)

 

私は金木さんが働いているお店で、気になる人を見つけました。

その人は右目が前髪で隠れていて、ショートカットで、私と同じぐらいの女子の方です。

 

(また、訪れようかな?)

 

私はふと胸の中に感じました。

その時は一人で来ようかなと

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金木Side

 

 

卯月ちゃんたちが来た後、他の友達があんていくに来た。

それはあんていくに働き始めて幾つ経った時であった。

 

(美嘉ちゃん変わったな...)

 

僕の視線はふとテレビに向いていた。

それはテレビ番組を見ているのではなく、

"CM"を見ていたのであった。

そのCMは化粧品のCMで、

 

 

僕の友達の"城ヶ崎美嘉"が出ていた。

 

 

普通なら見逃すCMのだが、今回は違っていた。

それは今までカリスマJKと言うイメージを持っていたのだが、

なぜか最近は大人な女性へと変わってしまったからだ。

僕はそんな彼女に少し寂しく感じたが、

これもいずれは起きることだから仕方がないと思う。

 

「何テレビ見てんだよカネキ」

 

「あ、ごめん...」

 

ふと気がつくとトーカちゃんが僕の行動に叱っていた。

僕はトーカちゃんに言葉に、仕事に戻った。

 

「アンタって他に346の友達いる?」

 

「そうだね...他に20区に住んでいる"一ノ瀬志希"ちゃんや"鷺沢文香さん"も友達だよ」

 

「見た目からしても中身からしても考えられない」

 

「ひ、ひどいな....」

 

トーカちゃんは相変わらず僕に対して厳しい態度をとる。

なんだかトーカちゃんが"凛ちゃん"みたいな感じがした。

 

「で、他には?」

 

「他には.....」

 

僕が言おうとした時、ドアが開く音がした。

 

「いらっしゃ....」

 

僕がそのやって来たお客さんを見た瞬間、

口が止まってしまった。

それは驚いてしまったからだ。

 

「どうも、金木さん」

 

帽子とメガネをかけた子

一見普通の女の子に見えるが、

僕の目ではそうではなかった。

 

 

 

 

その人は先ほどテレビのCMに出ていた"城ヶ崎美嘉ちゃん"だった。

 

 

 

 

 


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