東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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変わってしまった僕の日常


彼女たちとは違う日常


どんどんと違いが明らかになってくる



Oddity

 

 

金木Side

 

 

 

"あの事件"が起きた後、

僕はなんとか一命を取り止めた。

 

重症に負った僕の腹部には針が縫った跡があり、

徐々に傷の跡がなくなってきている。

僕を治療した嘉納先生は数週間後は退院はできると聞いた。

これで僕はいつもの日常に戻れると思った。

 

 

 

しかし、

 

 

 

 

僕の体に"異変"があった。

 

 

 

 

(生臭い...)

 

それは食事を取り始めた時に異変を感じた。

口に運んだ食べ物は水を除いてすべて不味く感じる。

口に入れた魚は生臭くてそれ以上入れられない。

魚だけではなく味噌汁は濁った機械石油みたいで飲めたもんじゃない...

それに豆腐の食感は動物の脂肪を練り固めたような気分の悪さだし、

 

 

 

つまり、全部"不味い"

 

 

 

"嘉納先生"にそのことを伝えたら、

"事故のストレスで食が通らないかもしれない"と言われた。

 

(それにしても本当にストレスだろうか...)

 

ストレスだとすれば、"少し"でも問題なく口に入れられるはずだ。

でも今の僕の状態だと全ての食べ物が食べれない不味さ

これがストレスのせいとは疑いを感じてしまう。

 

(....ヒデは心配しているだろうな..)

 

 

『今日もお友達いらっしゃてましたよ』

 

 

先ほど看護師の人に言われた言葉

入院して以降、毎日のように聞く言葉でもあった。

ヒデはそのぐらい心配しているとわかる。

今までも心配してくれるのはヒデしかいない。

 

(さすがに...ヒデ以外来るわけ)

 

「あれれ?どうしたのカネケンさん?」

 

ふと気がつくと、誰もいないはずの隣に"女子の声"が聞こえた。

 

「っ!?」

 

僕はびっくりし、隣を見ると"人"がいた。

 

その人は髪はロングヘアーで制服姿の女子高生

"志希ちゃん"だった。

 

「し、志希ちゃん!?」

 

「やっほ〜カネケンさん〜♪」

 

志希ちゃんは僕の驚いた姿ににゃははと笑った。

相変わらず子供のような無邪気さがある子だ。

 

「ど、どうしてここに?」

 

「カネケンさんが数日姿がなかったから、探してたよ?」

 

志希ちゃんの顔を良く見ると、会えたことに嬉しいかホッとした顔つきであった。

彼女は、大切に考えてくれる。

 

「それは...ごめん...」

 

そういえば僕が事故から意識を取り戻した時、

携帯を開いたらヒデと志希ちゃん、美嘉ちゃんからのメールが多くあった。

そう考えると志希ちゃんは僕のことを大切にしてくれる友達だと少し安心をした。

ちなみまだ美嘉ちゃんに返信はしていない。

 

「おや?全然食べてないじゃん」

 

すると志希ちゃんはあることを指摘した。

それは僕の目の前にある食事だ。

そう、不味くて口に入れられない食事だ。

でもそう感じるのは自分だけで、

看護師の人に食べてもらったが、

問題ないですよと言われた。

なんて説明すればいいか考えてたその時、

 

「びょーいんの食べ物はマズイよね〜」

 

志希ちゃんがそう言うとおえとマズイ時のリアクションをした。

相変わらずのふざけた感じが混ざったリアクションであった。

 

 

 

でも、今の僕は"そういう状況"ではない。

 

 

 

「そ、そうだね..」

 

僕はその志希ちゃんのリアクションに苦笑いをした。

その瞬間志希ちゃんが『カネケンさんあたしのことバカにした〜!』と頰を膨らし、

怒った仕草をした。

でもその怒った仕草はどこか可愛い。

そのやりとりが気がつくと一時間が短く感じた。

それは僕にとって嬉しいことだった。

ここの病院でベットにいることが多く、つまらない。

本を読んでもただ字を読んでいる時が多かった。

そんな時に志希ちゃんが来てくれたことにありがたく思う。

 

「そういえば、カネケンさん?」

 

「ん?」

 

「文香ちゃんや卯月ちゃんに伝える?」

 

何気ない会話の中で出てきた新たな話題、

それは他の人に伝えるかと言う話題だ

僕が"こんな状態"だと言うことは今のところヒデと志希ちゃんしか興味を持っていないと思う。

 

「...いいよ、言わなくても」

 

「どうして?」

 

「きっと仕事とかで忙しいと思うから..」

 

僕はそれ以上広めては欲しくはなかった。

それは知ってはほしくないこともあり、

心配はして欲しくなかった。

 

 

 

 

でも

 

 

 

彼女はそんなことはしかなった

 

 

 

 

 

「じゃあ、伝えとくよ」

 

 

 

 

志希ちゃんは満足そうな笑顔をし、

僕にそう伝えた。

まるで僕が『伝えて』と言って、嬉しく感じたように

僕は否定をしようとしたが、

彼女は僕に喋るタイミングを奪ったかのように再び口を開く。

 

 

 

「金木さんは別に一人じゃないからね」 

 

 

 

志希ちゃんはそう言うと「じゃあ、またね〜♪」と言い、部屋から去っていった。

 

(....心配している...か)

 

しばらく違う人と出会ってはいなかったため、少々嬉しかった。

その後、志希ちゃんと入れ替わる形で看護師さんが入って来た。

 

「あれ..?金木さん?」

 

「はい?」

 

するとその看護師さんは何かに気づいた様子で僕を見た。

 

「"お薬"飲みましたか?」

 

看護師の言葉におかしく感じた僕は食事の横にいつも置いてあるはずの薬の場所を見た。

 

 

「あれ..?」

 

 

 

 

僕が見たときには、薬がなかった

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

志希Side

 

 

(それにしても、見たことない薬だね〜)

 

あたしはカネケンさんがいる病院に出た後、

ベンチに座って"あるもの"を眺めていた。

 

"免疫抑制剤"と言う名前の薬だ

 

おそらく食後に飲む薬だと思う。

どうして持っているかって?

そりゃ、興味が出て奪っちゃたから仕方ない。

 

(免疫抑制剤って、こんなものだっけ?)

 

あたしが知っている免疫抑制剤はたくさんあるけど、

何か形がおかしい。

 

(帰ったら調べてみよ〜♪)

 

あたしはカバンにしまって、346プロに向かった。

今日は撮影がある日だから

 

 

 

今日はお見舞いだけではなく、戦利品がゲットできるとは

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金木Side

 

 

 

それから僕は退院をし、

普段の生活に戻った....

 

 

 

でも僕の食欲は、減る一方であった。

 

 

 

 

(まさか....僕が....)

 

 

僕は食い散りばめられた食べ物に囲まれているかのように横たわっていた。

その理由はあることにふと感じてしまったからだ。

先ほどテレビで"  "の特集をしていた。

その番組で取り上げていたのは、"  ”の生態でだった。

その生態で今の僕に一致しているところがあった。

 

 

 

それは、"食するもの"だ。

 

 

 

”  ”は”人”(ヒト)しか食べることができず、人間が食べているものは全て不味く感じる。

僕は不安に思い、冷蔵庫にある食べ物をがむしゃらに口にした。

そしたら、全て吐き気がするほど不味く感じた。

 

 

とても、とても、

 

 

"食べれるようなものではなかった"

 

 

床には冷蔵庫にあった食べ物が散りばめられており、

すべてが僕が吐き出した食べ物だ。

 

 

(...どうすれば)

 

 

僕はまるで"カフカに出てくる青年”だ

その青年は食べ物の嗜好が変わり、

新鮮な食べ物は口にできず、

腐りかけのチーズなどを好むようになった

 

もし僕の食べ物の嗜好がわかってしまったなら、

 

 

 

 

 

 

 

僕にとっての"チーズ"は...?

 

 

 

 

 

 

 

「....?」

 

ふと意識を戻すと、携帯が鳴っていた。

 

(誰だろう..?)

 

僕は空腹で力が入らない体を動かし、携帯を手に取り、画面をを見る。

 

その電話の主は、"知らない電話"であった。

 

(...留守番電話?)

 

僕はその留守電話を流した。

 

 

 

 

『もしもし、金木さん?』

 

 

 

 

その声はどこか聞いいたことのある女性の声であった。

 

(文香...さん?)

 

その声を耳にするのはひさしぶりであった。

 

『志希さんから聞きました。最近まで事故で入院されたと...

 お身体は大丈夫でしょうか?

 そういえば、今日金木さんがお好きな高槻泉のサイン会が駅前の本屋さんでやってます。

 では、お大事にです』

 

 

(そういえば....高槻泉のサイン会あったな...)

 

空腹から出る食欲のせいか、僕はすっかり忘れていた。

僕はフード付きの上着を来て、外に出た。

しばらく外に出ていなかったので、外の空気がなんだか新鮮に感じる。

 

 

 

 

 

いい気分転換になりそうだ....

 

 

 

 

 

 

でもそれが、より僕を苦しめてしまう

 

 

 

 

 

僕は

 

 

 

"  ”になってしまったのか?

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

凛Side

 

 

(夏休み明けテスト...まぁまぁかな..)

 

テスト返しの後の昼休み、

私は机でぼーとしていた。

今日の一限から休み明けテストが返された。

周りの友達は点数の悪さにあーやこーやいっているのだけど、

私は良くも悪くもない普通だった。

 

(そういえば...結局はシンデレラプロジェクトは潰れないことに安心した..)

 

先週、資料室に移動した事務所にてプロデューサーが言った。

シンデレラ舞踏会というものをやると

つまり、シンデレラプロジェクトは存続すると言う意味だ。

少しは安心はしたのだけど、結果がでなければシンデレラプロジェクトは終わってしまう。

 

(どう言ったことするだろう...?)

 

少しこの先のことを考えたその時であった。

 

 

「ねぇ、昨日"変な人"見たよ」

 

「え?どんなやつ?」

 

 

隣で何か会話していることに耳をした。

話の内容では、昨日にある人を見かけたと言うものだった。

 

(変な人...?)

 

私はなぜか興味を持ってしまった。

別に無視しても構わないものなのに

 

「そいつはね、フードかぶっていて、人差し指を噛んでよだれを垂らしてたよ!」

 

「まじで?めっちゃキモいじゃん!!」

 

「ほんとそれ"怪物"じゃん」

 

 

(...........)

 

 

妙に気味の悪い話なのだけど、

 

 

 

 

私は聞いてしまった

 

 

 

 

私には関係ないはずなのに

 

 

 

私の身近にいるような怖さがあった

 

 

 

どうしてそう感じたのかわからない

 

 

 

 

 

ただ、

 

 

 

 

 

 

怖い感じがあるだけ

 

 

 

 

 

 

無視できなかった

 

 

 


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