東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

21 / 84
もう少し



今なら逃げ出せそうだ

ぼくを不自由にさせた檻から逃げ出せる

檻のドアは脆く、今なら壊せそうだ。

そのドアを叩き続ける度、早く外に出たい気持ちが高まる

もし外に出れば今まで見たことのない世界が広がり、羽ばたける

最初にしたいことは、"彼女"のそばに行くことだ

君の声はとても可愛らしく、檻にいた時のぼくの唯一の楽しみだった

そして何より君の一番の魅力は、笑顔だ

あの笑顔が、もっと近くで見れるんだ



でも、そんな願いが届くわけなかった。



『逃げたらダメ』



ぼくの背後から聞きたくない声が聞こえたんだ
まるで死刑宣告を受けたような冷たく、恐ろしい一言


『他の子と関わったらダメなの』

『あなたはそういう運命』

『さぁ、新しい檻にお入り』


ぼくは飼い主に掴まれ、新しい暗い檻に入れられたんだ

もう君の顔も声も聞こえない檻に





唇 後編

  

 

  カフェ ーーー 金木×塩見周子  

 

 

金木Side

 

 

「どうよ?金木?そのカフェモカは?」

 

「ん....甘すぎるかな...」

 

今僕たちがいるのは人気があるカフェ。

ぼくのとなりは'周子ちゃん'。

ぼくと同じ年のアイドルだ。

銀髪のショートヘアに、黒い瞳。

とても可愛いし、美しい。

 

「それはないわー」

 

「え....ご、ごめん...」

 

「え?別に謝ることないよ?変だねー」

 

周子ちゃんはそう言うとはははっと笑った。

本当はカフェモカはを頼む予定はなかったが、周子の提案で今持っている。

と言ってもこのカフェモカはぼくの口には合わなかった。

ぼくには今若者に流行っているものには合わないかもしれない。

 

(よく食べてるよね....周子ちゃんは)

 

周子ちゃんと一緒に気づいたことは、周子ちゃんの食欲だ。

容姿は細いなのだが....

 

「これは…たい焼きの匂い…?」

 

周子ちゃんが何か嗅ぎつけたような仕草をした。

 

「また食べるの...?」

 

「そー♪お腹すいたーん♪」

 

見たのとは違い、食欲が旺盛の気がする。

そんな会話をしていると周子ちゃんがあることを口にした。

 

「そういえば金木って、文香ちゃんに似てない?」

 

「っ!?」

 

"文香"をいう言葉に驚いてしまい、飲んでいたがカフェモカでむせてしまった。

 

「どうしたの?」

 

「い、いや...驚いちゃって...」

 

「驚いたの?もしかして、他の人にも言われたりしたり?」

 

「それは...違うかな...」

 

確かに文香さんと共通点があるかもしれないけど、

それは違う。

 

「実を言うと...文香さんとは同じ大学で、友達なんだ」

 

「へー文香ちゃんと大学同じなんだね、意外〜」

 

周子ちゃんはふむふむと頷いた。

そういえば、文香さんとは長く会ってはいない。

きっと仕事で忙しいだろう。

そう思っていたら、周子ちゃんが何か良からぬ顔で、

 

「もしかして、"好き"?」

 

「....え....っ!?」

 

ぼくはそれを聞いて、焦ってしまった。

ぼくが文香さんを好きだなんて、

まさかそんなことはない

 

「そ、そんなことないよ....」

 

「金木、顔赤いー」

 

ぼくは否定はしたのだが、周子ちゃんは信じようともしない。

 

「シューコちゃんがなんか手伝いしようか?」

 

「だ、大丈夫だよ..!ぼくは今の関係で十分だし...」

 

「その今の関係はなんだろうねー?」

 

「う、うん...友達だよ」

 

しばらく周子ちゃんにいじられた。

まるで恋話をしているようであった。

 

 

でも、そんな言葉なんて言えない

 

 

彼女は"アイドル"だから

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

カフェテラス ーーー 金木×速水奏

 

 

「金木さんって、美しい人が好き?」

 

「え?」

 

奏ちゃんとの最初の会話はそれだった。

何か意味が込められているように。

 

「例えば...私みたいな人とか」

 

「そ、それは...」

 

奏ちゃんは高校生とは思えない美しさ。 

ぼくより年上のように見えてしまう。

隣に座るだけでも緊張をしてしまう。

 

「なんてね」

 

「......え?」

 

奏がそういうとふふふっと笑った。

ぼくはそれを見て、惘然してしまった。

 

「あんまりからかっちゃ可哀想かな。ふふっ」

 

「は、はぁ...」

 

「それに"文香"もそうだし」

 

「え?....文香....さん?」

 

ぼくは"文香"というのを名に反応してしまった。

 

「金木さんって文香とはお友達なんですよね」

 

「なんで...知ってるの?」

 

「文香に金木さんのことを話してたら、嬉しそうに金木さんについてお話ししてくださいました」

 

「そうなんだ....」

 

最近文香さんとは会っていなかったが、

忘れていなかったことに嬉しく思えた。

 

 

 

 

『私は....アイドルになったら、変われますでしょうか...?』

 

 

 

 

 

「....どうしました?」

 

「え?」

 

気がつくと、ぼくは奏ちゃんに何度も声をかけられていることに気がついた。

 

「どうしましたか...?」

 

「いや......なんでもないよ」

 

ぼくは奏ちゃんに変に思われないように無理に笑顔をしたのだが...

 

「"寂しい顔"をしましたが、なにかありましたか..?」

 

ぼくの顔に問題があるらしい。

 

「あ...えっと別に寂しく思ってないよ」

 

否定はしたのだけど、

心の中に何か残っていて気持ちがよくなかった。

文香さんを思うと、なぜか悲しく思ってしまう。

別に文香さんは悪くないのに、何故だろうか?

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

メイク店 ーーー 金木×美嘉

 

 

美嘉Side

 

 

「この前、莉嘉が私のメイク道具を勝手に使って」

 

「結構大変だね」

 

今度はアタシの番。

金木さんと一緒になる番だ。

本当ならみんなで一緒に回るつもりだったのだけど、

志希が「カネケンさんと二人っきりになりたい人ー?」と急に言い出し、結局二人っきりになってしまった。

 

(まぁ...アタシはいいんだけど...)

 

別に気にすることじゃなけれど、

なぜか少し"物足りない"気がする...

そんな会話の中、金木さんがあることを言う。

 

「美嘉ちゃんっていいよね」

 

「ん?」

 

「莉嘉ちゃんと仲良くしていて」

 

金木さんがそういうと"寂しそうに笑う"。

 

「そりゃーね。家族だしね」

 

大変なところもあるけど、一緒にいて苦しいだなんてない。

むしろ楽しい。

 

「金木さんは兄弟とかいないの?」

 

金木さんはもしかして一人っ子かな?

 

 

 

「"いないよ"」

 

 

金木さんはそう言った。

なにか込められたように。

私が「そうなんだ」と言おうとした瞬間、金木さんの口に衝撃的なことが、

 

 

 

 

『家族と呼べる人なんて、もう"いない"よ』

 

 

 

「.....っ!?」

 

アタシはそれを聞いた瞬間、言葉を失ってしまった。

あまりにも衝撃すぎて、なんて言えばいいのかわからなかった。

 

「ぼくのお父さんは4歳の時になくなって、母さんは10歳の時になくなったんだ」

 

そんなことを告げた金木さんは衝撃を受けたアタシを見ることなく、どこか寂しそうに話す。

 

「...それで、金木さんは..?」

 

「叔母に引き取られたのだけど.....あまり...」

 

それを聞いたアタシは金木さんの姿に、

とても暗く、寂しそうに見えてしまった。

 

「だから..他の人を見るとなんだか羨ましく感じるんだ」

 

金木さんは"どこか寂しそうな笑い"をした。

その顔は幸せとは程遠いような顔だった。

 

だから、あんな"寂しそうな顔”をーーーー

 

 

「....でも、金木さんはだいぶ"幸せ者"だと思いますよ?」

 

「え?どうして..?」

 

「だって、"友達"がいるじゃないですか?」

 

「友達...」

 

金木さんは何かおぼつかない様子でつぶやくように言った。

 

「ほら、卯月や凛、未央に"私"がいるじゃないですか」

 

家族がいなくても、金木さんには友達がいる。

金木さんの連絡先を教えてくれた卯月が"特"にそうだ。

 

「そうだね....て、"友達"と呼んでいいのかな?」

 

「え?....ん、ん.....」

 

でもよく考えると、アタシみたいなアイドルと友達になるのはちょっとあれだけど....

 

 

「でも金木さんは、あの時私を助けた"恩人"じゃないですか?」

 

 

もしあの時に金木さんがいなかったら、アタシはここにはいなかった。

だからアタシは、"彼"(金木さん)と友達になってもいい。

 

「...そうだね。美嘉ちゃんを助けたね、ぼく」

 

なんだか金木さんの"寂しそうな笑顔"が、幸せそうに見えた。

 

「さてと...金木さん、アタシにぴったりなヤツあるかな?」

 

金木さんの"あの顔"も分かったし、このお店に来た本題を出した。

 

「美嘉ちゃんに似合ってる化粧品...?」

 

「そっ!金木さんがアタシに似合うリップを選んで!」

 

「え、え....ぼくには選べれるかな...?」

 

とりあえずこの前にリップを切らしたから(だいたい莉嘉が使ったけど)、金木さんに選んでもらう。

金木さんには女子のメイク道具を選ぶのは難しいと思うけど、

これからアタシみたいな女の子と友達のなるのだから、知らないといけない。

 

 

 

と思ったんだけど、ある日を境に"彼"が居なくなってしまった

 

なんでいなくなったんだろう

 

もっとアタシたちと過ごして欲しかった

 

もっと長くていて欲しかった

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 ゲームセンター ーーーー 全員

 

 

金木Side

 

 

(大変だったな....)

 

先ほどぼくは美嘉ちゃんとメイク店にいた。

そこで美嘉ちゃんにリップを選んで欲しいと言われ、

少し緊張してしまった。

たくさんリップある中で、ぼくが選んだリップは少しピンク色をしたリップ。

気に入ってくれるかどうか不安だったけど、気に入ってくれた見たいでよかった。

 

(後は...何をやるんだろう...?)

 

その後ぼくと美嘉ちゃんは他の子と合流し、ゲームセンターにいる。

やはり5人揃うとかなり目立っているように見える。

フレデリカさんに志希ちゃん、周子ちゃん、奏ちゃんに美嘉ちゃんと言う誰もが目にする有名人。

ぼくはそんな彼女たちから少し離れて歩いて行った。

そんな時、美嘉ちゃんがある誘いを出した。

 

「金木さん、プリクラ撮ってみる?」

 

「プリクラ...っ!?」

 

その単語に少し抵抗感があった。

ぼくにとって、プリクラなんて無縁と言ってもいいだろ。

女子が好んでやるものだから、さすがに男がやるようなものではないと思う...

 

「ぼくはいいよ....みんなで撮ってきて」

 

ぼくは断ったが、他のみんなの反応がよくなかった。

 

「えーカネケンちゃんは撮るべきだよ!」

 

「金木もやろー!」

 

フレデリカさんと周子ちゃんが無邪気な感じにぼくの両腕を掴み、

無理やりぼくをプリクラの中に連れ込む。

 

「え!?や、やめてください!」

 

ぼくは必死に抵抗するが、今度は志希ちゃんと奏ちゃんがぼくの背中を押す。

 

「別に撮るだけでも問題ないじゃん〜。カネケンさん〜」

 

「変なこともしないので、さぁ、行きましょ?」

 

そして必死に抵抗した末、ぼくはプリクラの中に入れられた。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「これが...プリクラなんだ....」

 

プリクラに入れられたぼくは彼女たちとプリクラを撮った。

6人でのプリクラは窮屈に感じられた。

ぼくは彼女たちに囲まれる形で真ん中にいた。

彼女たちには言えないが胸が当たった。

 

「はははっ!カネケンちゃんがもっと可愛いく見える!」

 

フレデリカさんが笑っていたのはぼくたちが写っている写真だ。

目が通常よりも大きく開いているようで、なんだか違和感を感じる。

それに彼女たちは撮影に慣れているせいか、とても可愛い。

それに対してぼくはカメラには慣れておらず、

目が閉じている写真もあれば目が外れている写真もある。

 

「金木がまっすぐ向いているの一枚しかないじゃん」

 

「金木さんはカメラには慣れていなんですね」

 

みんなはぼくが写っている写真に笑っていた。

 

「やっぱね、フレちゃん的にカネケンちゃんは女装したほうがいいよ!」

 

「結構ですよ...フレデリカさん...」

 

「じゃあカネケンさんが女になる薬を作るから」

 

「それはダメだよ!志希ちゃん!」

 

やはりここでもいじられる、ぼく。

 

(..そういえば、みんな仲良いね...)

 

ふと思えば、彼女たちを観察してあることに気づいた。

それは仲がいいことだ。

最初であった時は普通に喋り、笑い合っていた。

そして会話が途絶えることもなく楽しく話し合っているためとても良さそうだ。

 

「もしかしたら...ユニット組めるじゃないかな?」

 

「「........」」

 

(あ、あれ...?)

 

ぼくがそう言うと、なぜか喋っていたみんなが黙ってしまった。

何かまずいことを言ってしまったのだろうかとじわじわと焦りだす。

 

「ふふふっ....」

 

「ん?」

 

するとフレデリカさんが小さく笑い出し、

 

「「ははははははははっ!」」

 

「っ!?」

 

突然みんなは笑い出し、ぼくは驚いてしまった。

 

「驚いたでしょ?」

 

志希ちゃんが満足そうに笑いながらぼくに聞く。

 

「う、うん...どうしたの?」

 

「カネケンさんを驚かそうとみんなで急に黙り込んで、そして笑い出すっと言うドッキリだよ?」

 

「金木さんはどんな反応するか、試してみたかったんですよ」

 

「そ、そうなんだ...」

 

あの奏さんも美嘉ちゃんも驚かすだなんて、ちょっと驚いた。

 

「確かにみんな仲良いねー。アタシもいいかも☆」

 

「このメンバーなら組めるかも♪」

 

「最高なメンバーになれそうね」

 

ぼくが提案したことはみんなの反応が良かった。

最初は言ってはならないことだと思ったのだけど、

みんな賛成してくれてよかった。

 

こうしてみんなと楽しい時間が過ごせた。

ぼくが知らない世界に踏み越えて楽しかった。

 

 

 

 

とても楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 

とても"幸福"だった。

 

 

 

 

そしてぼくが言った"ユニット"が

 

ぼくがこの世界に去った後だなんて

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 フェス前日 ーーー "あんていく"

 

 

 

20区にある喫茶店

その喫茶店の名は、"あんていく"

一人の初老の男性が営んでいる

中は落ち着いた雰囲気で、一見普通に見えるが、

"あること"が普通のお店とは違う

 

「こんばんわ」

 

するとあるお客さんが来店した。

そのお客さんの容姿は美しく、

ボブカット風の髪型の女性であった。

 

「お久しぶりです。"芳村さん"」

 

彼女は名は、高垣楓。

"人間"だ。

 

「おや、"楓ちゃん"。久しぶりだね」

 

芳村は彼女を見て、微笑んだ。

 

芳村が彼女を見て微笑んだのは有名人だからと言う理由でもなく

美しい方だからと言う理由ではない

 

 

 

 

 

 

彼女は"かつて"のあんていくの仲間であるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。