東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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思いやり



チューリップの花言葉はそれらしい

この前に凛に教えてもらった言葉。

まさにあたしたちが歌った曲にぴったりのような気がする。



そういえば、”彼”はどこにいるのかな?



生きていればいいんだけど....


あの時"彼"に言った言葉。

あれは思いやりだったのかな?





唇 前編

 

 

 

金木Side

 

 

(まさか......本当にやってきてしまった...)

 

ついにやってきてしまったこの時。

美嘉ちゃんと遊ぶ約束(詳しくはそうではないが)が今日行われるのだ。

美嘉ちゃんとは何度か会っているのだが、

なぜか今回は夢にいるような感覚だ。

 

(.....早すぎたのかな?)

 

集合時間まであと5分程度だけど、緊張をしているせいか、なんだか早く来たかのようであった。

 

(...本でも読んでようかな?)

 

しらばく周りを見渡しても仕方ないので、ぼくはベンチに座り、カバンの中から本を取り出し、

読み始めた。

先ほどの緊張が和らいだ。

やっぱり本の世界に入れば、周りの雑音が消え去り、心地がいい。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

美嘉Side

 

 

(あ!いたいた☆)

 

待ち合わせ場所で金木さんを見つけた。

金木さんは今、ベンチにで本を読んでいた。

 

(この前、だいぶお世話になったし...楽しまないとなー)

 

この前に莉嘉たちを探す手伝いをさせたり、"あのこと"とかいろいろ金木さんに迷惑をかけたようなことがあった。

だから、今日は金木さんと遊ぶ。

 

(でも.....金木さんだけじゃないんだよね...)

 

さすがにアタシと二人だけでは少しまずいから、

"志希"と"志希の友達”も連れて遊ぶことになった。

その方が”緊張”がほぐれる。

 

(んーそのまま現れるのは少し物足りないかなー?)

 

このまま来ても面白くないから、どうやって金木さんと会おう?

 

(あ!そうだ!後ろから驚かしちゃお♪)

 

金木さんは一体どんな反応するだろう?

そっと金木さんの後ろに近づき、位置につく。

 

 

(よーし!驚かしちゃお☆)

 

 

アタシは金木さんを驚かす気満々だった。

 

 

金木さんを顔をそっと近づき、

そのまま驚かせばいい.......

 

 

 

"はずなのだけど".....

 

 

 

(....っ)

 

 

 

驚かそうとしたアタシは、動きが止まってしまった。

 

 

(.......っ)

 

 

 

動きを止まってしまったのは、金木さんの顔に原因があった。

金木さんの顔は"どこか寂しそうな顔"であったから。

アタシはその顔に、見つめていた。

まるで"何か大切なものを失い、悲しむような顔"を。

 

 

「あ、美嘉ちゃん」

 

 

しばらくアタシが見ていたせいか、金木さんが後ろに向いた。

寂しそうな顔が消え、いつものの金木さんの顔に戻った。

 

「........あ、ど、ど、どうも!金木さん!」

 

突然こっちに向いてしまい、私は慌ててしまった。

慌ててしまったせいか金木さんは『ん?』と変に感じたような仕草をした。

 

 

”さっきの顔”は、一体なんだろう.....?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金木side

 

 

(どうしちゃったんだろう?)

 

美嘉ちゃんに会えたが、不思議なことがあった。

美嘉ちゃんがぼくの顔を見てなぜか驚いていたのだ。

別に周りには驚くようなものはないのだが....?

 

「やっほ〜カネケンさん〜♪」

 

この気まずい雰囲気の中、それを打ち破るかのように志希ちゃんがやってきた。

 

「久しぶり、志希ちゃん」

 

「久しぶり〜カネケンさん〜!」

 

志希ちゃんは相変わらず無邪気な子供みたいだ。

 

「あ、もしかしてあたしが入っちゃダメだった?」

 

「「そんなことないよ....っ!」」

 

ぼくと美嘉ちゃんは息がピッタリに同じことを言った。

先ほどの気まずい空気を無くしてくれたことに感謝したい気分だ。

 

「ははは、二人ともお似合いだね〜」

 

志希ちゃんは何か企んでいるような目でぼくと美嘉を見た。

 

「金木さんとはそんな関係じゃ...!」

 

「まぁまぁ。美嘉ちゃんとカネケンさんは"そんな関係"じゃないと言うことわかってるから〜」

 

志希ちゃんはそう言うと、にゃははと笑った。

なんだかステージに出る美嘉ちゃんと今隣にいる美嘉ちゃんは全く違うように見える。

そんな会話の中、ぼくはあることを思い出した。

 

「ところで...何人来るの?」

 

昨日メールで連絡をしたのだが、何人連れて行くのかはと言うのを忘れてしまった。

 

「えっと...3人」

 

「「え?」」

 

ぼくと美嘉ちゃんはその人数に聞いて驚いてしまった。

妙に多いような気がした。

 

「あ、来たよ〜」

 

ぼくは振り向くと、固まってしまった。

驚いてしまったのだ。

やって来た"3人"を見て。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 ファッション店 ーーーー 金木✖️宮本フレデリカ

 

 

 

「カネケンちゃんこっちに来て〜♪」

 

「は、はい.....」

 

志希ちゃんが誘って来たお友達はかなり有名な人であった。

一人は今一緒にいる宮本フレデリカさん。

二人目は塩見周子、

最後は速水奏だ。

今、フレデリカさんのお買い物に付き合っている。

 

(フレデリカさんはかなり美人だけど...... )

 

フレデリカさんはフランス人と日本人のハーフで、

容姿はほぼ外国人といってもいいだろ。

金髪で白い肌、青い瞳という完璧な容姿と言いたいところだが....

 

「ところでアタシのサイズってどのぐらいだっけ?」

 

「フレデリカさんのサイズは知りませんよ...!」

 

喋らなければ美人と言うのがふさわしいぐらい適当な発言を連発する。

先ほどは『あ、知ってる?アタシ、宮本武蔵と名字、同じなんだって!』だとか、

『わー、あの鏡に映ってるの、どこの美少女?...あ、これアタシだ!』など、

どこかのタレントさんに似ているような気がする....

 

「あははは、そうだったね!カネケンちゃんはアタシのサイズわからないよねー♪」

 

そう言うとフレデリカさんはえへへと笑う。

フレデリカさんが小悪魔系アイドルと言われる理由がよくわかる。

 

「そういえば、フレちゃんのことをさん付けするの珍しいねー♪」

 

「そうですか..」

 

フレデリカちゃんは年齢的には先輩と言ってもいい。

さすがにちゃん付けをするのは、抵抗がある。

 

「別にアタシのことふつーにフレちゃんと言ってもいいよ?」

 

「いや、大丈夫ですよ...フレデリカさんはぼくより一つ上ですから...」

 

「カネケンちゃんはアタシの年下なんだねー。初知りー♪」

 

フレデリカさんはふむふむと頷いた。

おそらくフレデリカさんのファンの人なら今のぼくの状態を羨ましく思うかもしれないけど、

ぼくはもう早く誰かに変わってほしいぐらい疲れている。

そう思っていた時、フレデリカさんの口にあることが出た。

 

「そういえばカネケンちゃんって、シキちゃんと仲良いよね?」

 

「え?」

 

フレデリカさんの口に出たのは、志希ちゃんに関することだ。

 

「そうですけど...」

 

「だよね!だってシキちゃんはいつもカネケンちゃんのことをアタシに言うもんっ!」

 

「そうなんですか...」

 

「たとえば、『今日カネケンさんにいろいろ言った!』とかいろいろっ!」

 

「いろいろってなんですか....」

 

でもよく考えみると志希ちゃんが他の人にぼくの言うほど気に入っているかもしれない。

それを思うとなんだか嬉しく感じた。

 

「だから、次シキちゃんと一緒の時に、『シキちゃん大好きー!』と言ったりっ!」

 

「え、えぇっ!?そんなこと言えないですよっ!」

 

それじゃあまるで告白しているようで恥ずかしい。

 

「じゃあもしくは何か買って、かっこよく『シキちゃん。愛してるよ』と言ってあげたりー☆」

 

「さっきとあんまり変わらないじゃないですかっ!」

 

「あはははっ!カネケンちゃんは面白いね!」

 

この会話が一時間続いた。

フレデリカさんの適当な発言をつこっむことを何度も何度もして、

お店を出る時はもく喋ることができないほど疲れた。

でもフレデリカさんは疲れた様子もなくぼくに話し続けた。

もしかしたら志希ちゃんよりだいぶ疲れたかもしれない。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 香水専門店 ーーーー 金木✖️志希

 

 

志希Side

 

 

「カネケンさんと初デ〜ト〜♪」

 

「さすがにデートじゃないよ...」

 

フレちゃんの次はあたしがカネケンさんと一緒になる番。

カネケンさんと来たのは、あたしが好きな香水専門店。

ずっとカネケンさんと一緒に行きたかったお店。

 

「カネケンさんはどの香水がいい?」

 

「ん...爽やかな香りかな?」

 

「えー"卯月ちゃんからもらったやつ”と同じじゃーん」

 

「...え?」

 

すると金木さんはあたしの発言に"何か"気がついた。

 

「どうして卯月ちゃんからもらったとわかったの...?」

 

金木さんは驚いた様子であたしに聞いた。

やっぱり食いついて来た。

 

「さぁ、どうしてでしょうか〜?」

 

あたしはそう言うと、にゃはははと笑った。

気づいてよ、カネケンさんが寝ていた時にあたしがやったことを。

 

「もしかして...友達になったとか?」

 

「いやいや、まず卯月ちゃんとは一度も会ってないよー」

 

カネケンさんの連絡先を調べてた時に見たんだよ。

気づいてよ。

 

「ん....わからない....」

 

「えーわかんないのー?」

 

しばらくカネケンさんは腕を組んで考えたが、本当にわからないようだった。

多分さっきのフレちゃんのお買い物で疲れたせいで頭が回らなかったと思う。

 

「で、どうなの?卯月ちゃんとは?」

 

とりあえず卯月ちゃんとはどんな関係なのか聞いてみた。

おそらく卯月ちゃんとはあたしが出会う前に会っていると思う。

 

「...卯月ちゃんとは仲良しだよ」

 

「そうなんだー」

 

カネケンさんの笑顔は満面...というわけではなく、

どこか寂しそうな笑顔だった。

でもそれは金木さんの"癖"かもしれない。

癖なら仕方ない。

 

「卯月ちゃんとはよく遊ぶ?」

 

「んー....最近は卯月ちゃんに会うことはないけど...連絡はよくするよ」

 

「へー、卯月ちゃんから?」

 

「だいたいはそうだね...」

 

カネケンさんの顔は、"本当に幸せそうだ"。

 

「それで卯月ちゃんはいつもカネケンさんになんて言ってるの?」

 

「仕事であったことやおもしろいこと、あと嬉しかったことも言ってきてくれるよ」

 

話を聞く限り、カネケンさんと卯月ちゃんは本当に仲がいいかも。

それを聞いたあたしは意地悪したくなってきた。

少しカネケンさんを困らしちゃおー。

 

「なんかー嫉妬しちゃうなー」

 

「え?」

 

「そんな卯月ちゃんと仲いいなんて、なんか嫉妬したー」

 

あたしはぷいっと口を膨らませ、怒った感じにした。

実際は怒ってはないけど。

 

「こんなんだったら、あたしのデビューライブの時に来るわけないじゃんー」

 

「そ、そんなことないよ...!」

 

カネケンさんは少し困った顔で否定をする。

その顔はなんだか可愛い。

 

「というか.....第一に、ちゃんとレッスンとかお仕事かやってるの?」

 

「んーどうかなー?」

 

あたしはそう言うと、何かをそらすしぐさをした。

答えはいつも失踪してる。

めんどくさいレッスンとかお仕事は失踪している。

 

「まさか失踪したんじゃないよね?」

 

「わお!どうして、あたしが失踪することわかったの!?」

 

見事にあたしがいつもやることを的中した。

カネケンさんは賢い。

 

「そんな感じだったらプロデューサーさんの口からデビューする話はでないよ」

 

「ははは、"いつか"はデビューは.....」

 

陽気であったあたしは、突然口が止まってしまった。

"カネケンさんの顔"を見て。

いつもは困ったような顔をしているのだけど、

"今"は違う。

 

「その"いつか"と言うのは、"いつ"なの?」

 

「........」

 

あたしはめずらしく黙っていた。

 

なぜなら、いつも優しいカネケンさんが"怒っていた"のだ。

 

「失踪してばっかじゃ、デビューできないのは当たり前だよ。他の子がデビューできるのは、レッスンとかお仕事をしっかりと取り組んでいるから、そんなことしていいの?志希ちゃん?」

 

「.......」

 

いつも他の人に怒られる時なんかはだいたい問題なく言葉をスルーすることができる。

でもカネケンさんに怒られている今、そんなことはなぜかできなかった。

カネケンさんが言っている言葉は、他の人がいう言葉より本当に怒られていると感じられる。

特に難しくもないことを言っているのに。

 

「........だめ....だよね」

 

しばらく黙っていたあたしは口を開いた。

 

「失踪ばっかじゃ....デビューなんかはできないよね....」

 

なんだか文香ちゃんと喋ったあたしが"バカ"に見える....

あの時文香ちゃんがかわいそうだ。

 

「だから....カネケンさん、ごめんなさい」

 

あたしはそう言うと、しっかりと頭を下げた。

いつも他の人に怒られた時はちゃんと謝るなんてしないのに、

とても珍しくちゃんと謝った。

こんなの初めてかもしれない。

 

「....いいよ、"志希ちゃん"」

 

カネケンさんは優しくあたしの名前を言った。

いつも聞くあたしの名前より、とても心地よく聞こえ、心の中が嬉しく感じる。

顔を上げると、先ほど怒った顔つきをしたカネケンさんではなく、

いつも見る優しいカネケンさんだ。

 

「それでいいよ。志希ちゃん」

 

カネケンさんはどこか寂しそうに微笑んだ。

その顔が好き。

 

「....もし志希ちゃんがCDデビューが決まったら、ライブに来てくれる?」

 

「....もちろん来るよ」

 

カネケンさんはそう言うと少し微笑んだ。

その顔も好き。

 

「だから....ちゃんとレッスンして、いろんなお仕事も受けてね」

 

「志希ちゃん、失踪しないようにがんばりまーす!」

 

そう言うとカネケンさんにビシッと敬礼をする。

 

「じゃあ、志希ちゃんが好きな香水あるかな?」

 

「あたしが好きな香水?えっと確か...あ!あそこにあるよ!」

 

そう言うとあたしはカネケンさんの腕に抱きしめ、連れだす。

 

「..てっ!志希ちゃん!ぼくの腕に抱きしめるのはっ!」

 

カネケンさんの顔はすぐに赤くなった。

 

「いいじゃんー♪志希ちゃんがやりたいことに付き合って♪」

 

しばらく香水を選んでいると、あたしはあることを思い出し、金木さんに小指を出す。

 

「ん?」

 

「"指切りけんばん"。"約束"でやるじゃんー♪」

 

あたしはそう言うと、にゃははと笑った。

 

「...そうだね」

 

カネケンさんはやれやれと少しため息をしたのだけど、

それでもあたしのわがままに付き合ってくれる。

 

あたしは"そんなカネケンさん"が好きだ。

 

 

 

 

 

 

 

この後、"約束"を"破ること"があるなんて。

 

 

ひどいよ、"カネケンさん"。

 

 

 

 

 

 


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