東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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二人はそれでも、乗り越える。


心届

 

開始数分前 ーーー サマーフェス

 

 

金木Side

 

 

(どうして....急に!?)

 

ぼくはとにかく急ぐ。

未央ちゃんから急に会場に来るようにと言われたため、

急いでその会場に向かっている。

どうしてぼくが来ないといけないかはわからない。

けど未央ちゃんが『とにかく来てください』と言われたため、

ぼくはわからないまま、行くしかなかった。

 

(あれかな?"サマーフェス"?)

 

未央ちゃんに言われた会場、

サマーフェスに到着した。

その会場は小規模のだが、かなりのお客さんがいる。

その中に卯月ちゃんがいるらしいけど....

 

「あれは!我が友、カネキ!」

 

ぼくが探し始めようとした時、蘭子ちゃんの声が聞こえた。

声がした方に振り向くと、卯月ちゃんたちの姿が見えた。

蘭子ちゃんがぼくに指をさすと、卯月ちゃんたちがぼくの方に顔を向けた。

「金木さん!」と卯月ちゃんが手を振る。

 

「ど、どうしたの...?」

 

ぼくは急いで駆けつけたため、夏の暑さと急いで来た時の疲労がぼくの体にのしかかる。

 

「突然呼び出してすみません...実はみくちゃんと梨衣菜ちゃんが出るんですよ」

 

「え?みくちゃんたちが...?」

 

卯月ちゃんの口から驚くようなことを耳にした。

みくちゃんと梨衣菜ちゃんがこのステージに出るなんて、今初めて知った。

会場が小規模のせいか、そんな情報はあまり行き届かなかったと思う。

 

「それで、金木さんも来たらいいかな?っとしまむーたちと相談して、連絡をしました」

 

未央ちゃんはそう言うと小さく「すいません...」と呟くようにぼくに言う。

せめて昨日に連絡して欲しかった...

 

「あなたが金木さん?」

 

卯月ちゃんの隣に"白髪の少女"がいた。

顔を見ると、その子はあの"LOVE LAIKA"(ラブライカ)のアナスタシアちゃんだ。

 

「そ、そうだよ...」

 

疲れているため、言葉を返すのが精一杯だ。

 

「大丈夫でしょうか?」

 

アナスタシアちゃんはそう言うとバックから水を取り出し、ぼくに手元に渡した。

 

「あ、ありがとう...」

 

ぼくは水を受け取り、すぐに口に注ぎ込んだ。

乾いていた喉が潤わされ、百熱の地獄から天国へと変わった。

なんだかアナスタシアちゃんが天使に見えてしまった。

 

「蘇ったようね...我が友カネキ」

 

日焼け対策なのか、ゴスドリチックな傘をさしている。

 

「蘭子ちゃん、服変えたね」

 

この夏にゴスドリチックなドレスを着たら、さすがに熱中症になりかねない。

今の蘭子ちゃんの姿に少し安心した。

 

「我が衣は、灼熱の血・地獄の姿。これぞ真の衣ぞ!」

 

「....そ、そうだね...」

 

蘭子ちゃんの言う言葉は、未だわからない。

とりあえず....『夏服に変えました!』と言っていると思う。

しばらく彼女たちと会話していると、ぼくはあることを思いついた。

 

「ところで"みくちゃんたち"大丈夫かな...」

 

ここに来た理由でもあるみくちゃんと梨衣菜ちゃんのライブ。

イベントのプログラムには全く書いてはない。

 

「お互いまだ合ってないらしいよ」

 

「え?」

 

凛ちゃんが言った言葉に、耳を疑ってしまうようなことを聞いてしまった。

 

「合ってないって...練習とか?」

 

「そう。しかも、歌詞がまだ曖昧らしい」

 

「え?それはつまり...」

 

「"ぶっつけ本番"..だよ...」

 

夏の暑さのせいか、不安のせいか汗が嫌なぐらい溢れているような気がした。

まさか、そんなことがあったとは。

 

(失敗しなきゃいいんだけど......)

 

彼女たちにとって初ライブ。

練習があっていないと耳にしたため、

ますます不安に感じる。

 

「あ!始まりますよ!」

 

卯月ちゃんが言うと、

舞台からみくちゃんと梨衣菜ちゃんが現れた。

 

「「いえええーーいい!!」」

 

「みくアンド!」

 

「梨衣菜です!よろしく!」

 

元気が良く、登場の仕方は悪くないが......

 

「みくand梨衣菜?」

 

「聞いたことないね」

 

観客の反応はイマイチであった。

そのアイドルがこのステージに立つとは知らない人にとって、

突然現れたアイドルを知るはずもない。

 

(まずい.......)

 

彼女たちの姿に、ぼくは目を背けたくなった。

この前の"new generations"のことを思い出してしまったのだ。

まさか、"未央ちゃんみたいなこと"を再び起こるではないかと。

 

「み、みんなげんきが足りないにゃ!」

 

なんとかこの空気を変えようと二人はあることをアイディアを出す。

 

「みんなで、”にゃあ”と言ってね!」

 

またしても観客の反応が良くない。

掛け声を求められるのは難しい。

 

まさかこのライブは"失敗"するだろうか?

もし二人の初めてのライブが"失敗"で終わるとなると....

 

そんな時、その言葉を打ち壊す大きな声がぼくの耳に入った。

 

「「にゃあああああああああ!!!」」

 

みくちゃんと梨衣菜ちゃんたちが大きな声で『にゃああああ!』と言うと、タイミングよく曲が始まった。

 

(...あれ?)

 

タイミングが良いせいか、観客の反応が徐々に良くなっている。

 

(これは...良いのか?)

 

先ほどまでの暗い空気が一変した。

暗かった闇が、一瞬にして消え去ったように。

 

「じゃあ!行くよ!」

 

「「せーの!"ØωØver!!"(オーバー)!!」」

 

そう言うと観客の反応が一瞬にして最高潮に達した。

 

(これって本当に"みくちゃんたちが作詞”をしたの?)

 

先ほど聞いた話だと練習では息が合わず、作詞もまだ決まっていないと言っていたが、

それなのに驚くほど息が合っており、歌詞もいい。

これがアドリブだなんて、信じられない。

 

「金木さん!一緒に盛り上がりましょ!」

 

「え?....う、うん」

 

ふと気がつくと、未央ちゃんに何度も声をかけられていた。

あまりにも驚いたせいか、ぼくは呆気に取られてしまった。

 

 

みくちゃんと梨衣菜ちゃんの初ライブは、不安がいろいろあったが、

無事に大成功に収めた。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 ーーーイベント終了後

 

 

イベント終了後、ぼくは卯月ちゃんたちに連れられ、

ステージ裏に待っていた。

 

「成功してよかったよ」

 

「そうですよね!みくちゃんたちの初ライブがうまくっていよかったです!」

 

卯月ちゃんの言う通り、初ライブながら成功したことに安心した。

序盤は成功するかどうか不安があったが、無事にライブが終了し、彼女たちにとって満足するような結果だと思う。

 

「みくちゃんとリーナの曲も最高でしたね!」

 

さらにすごいのは、未央ちゃんが言った二人の曲だ。

歌詞と練習が曖昧と聞いていたのが、それが嘘ではないかと思うほどうまく合っていていた。

そんな会話していると、ある声が僕らの耳に入った。

 

「「あ!」」

 

何か見つけたような声が、ステージの裏から聞こえた。

そこに視線を向ける、"二人"の姿があった。

 

「あ!金木さん!」

 

「金木チャン!」

 

二人ともぼくを見て名前を言った瞬間、

数秒固まった。

 

(...あれ?)

 

何かに気づいたかのように固まった。

おかしいことに気づいたようだ。

 

「「....え?」」

 

なんで知っているの?という顔で二人はお互いの顔を見る。。

 

「な、なんで...李衣菜ちゃんが知ってるにゃ!?.」

 

「みくことなんで!?」

 

「みくはこの前に金木チャンと会ったにゃ!」

 

「え!?会ってたの!?」

 

「私も会ったよ!」

 

「にゃ!?なんで李衣菜ちゃんも金木ちゃんに会ってたのにゃ!?」

 

「また喧嘩してる....」と未央ちゃんはつぶやいた。

見ての通り、喧嘩をし始めた。

 

「さっきまで合ってたのに...」

 

ぼくはその光景をただ笑うことしかできなかった。

先ほどのライブだと息が合ってたのに..

 

「こんにちは、金木さん」

 

すると後ろから、聞き慣れた声が耳にした。

振り向くとあの"シンデレラプロジェクトのプロデューサーさん"が立っていた。

 

「あ、プロデューサーさん」とぼくは言うと、ぺこりと頭をさげた。

 

「また、彼女たちとお世話になりましたね」

 

「い、いえ...みくちゃんと李衣菜ちゃんとはたまたま会ったので..」

 

蘭子ちゃんのように偶然に出会い、そして交流するような感じ。

あまり感じないけど、なんだかぼくは運があるかもしれない。

 

「本当にありがとうございます」

 

「はい....」

 

ぼくはまた、プロデューサーさんに感謝の言葉を受け取った。

シンデレラプロジェクトの彼女たちとは結構お世話になっていると思う。

 

「そういえば、金木さんにお伝えしたいことが...」

 

「伝えたいこと?」

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

後日 ーーー 上井大学

 

 

午前の大学の講義が終わり、ぼくはベンチに座り、読んでいた。

今日もまたぼくは、一人で本を読んでいた。

 

(卯月ちゃんたちとは、しばらく会えないんだね...)

 

この前のイベントで帰る時にプロデューサーが、

『夏の合宿をしますので、しばらく会えません』とぼくに伝えた。

今度のアイドルフェスに向けてのため、合宿がある。

しばらく卯月たちとは会えない。

寂しいけど、彼女たちはアイドルだから仕方ないことだ。

 

(少し寂しい....)

 

そう思っていると、ぼくの携帯が鳴った。

 

(ん?)

 

携帯を開くと、"ある人"からのメールだった。

 

(あ、"美嘉ちゃん"からだ...)

 

美嘉ちゃんからメールが来ると言うことは、

 

 

 

 

つまり、"あれ"だーーーーー

 

 

 

 

ぼくはそのメールを開くと、"文"が書いてあった。

 

 

 

 

『今度の休み、予定空いてる?』

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 同日 ーーー 346プロ

 

 

文香Side

 

大学の講義が終わり、私は346プロのカフェで読書をしていました。

今日もまた私は、一人で読書をしています。

私がアイドルになって、いつもの日々が変わりました。

今までいないと等しかったお友達ができ、

やれなかったこともできて、満足です。

 

 

でも、私には"悩み事"を抱えていました。

 

 

それは、本当にアイドルをやってもいいのかと言うことです。

 

 

プロデューサーさんにいくつか励ましの言葉をいただきましたが、

私が欲しいのは"金木さん"からの本当の答えです。

金木さんを思い出すと、あの"寂しそうな顔"を浮かび上がり、

『本当にアイドルをやってよかったのだろうか?』と自分の心の中で葛藤が始まってしまいます。

私がアイドルをやると聞いた金木さんは、一体どうゆうお気持ちをしたのでしょうか?

私には"彼"の気持ちがいち早く知りたいです。

 

「やぁ、文香ちゃん」

 

すると、私の名前を呼ぶ声がしました。

その読んだ人の声は、何か聞き覚えのある声でした。

 

「はい....どうしまし」

 

その声をかけた人の顔を見た瞬間、私は声を失ってしまいました。

 

 

私に声をかけたのは、金木さんをストーカーをしていた人

 

 

 

"一ノ瀬志希さん"が私に声をかけたのです。

 

 

 

 

 

 


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