東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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ケンカの良いところは、仲直りができること

エリザベス・テイラー/Giant


二思

ーーー346プロダクション

 

 

「た、だいまー!!」

 

「おかえりなさい、皆さん」

 

事務所できらり達の迎えた人がいた。

彼女の名は"アナスタシア"。

日本人とロシア人のハーフだ。

 

「イベント、大丈夫でしたか?」

 

彼女はきらりたちに今日のイベントのことを聞く。

今日はイベントに遅れてしまうような問題が発生した。

プロデューサーがいなくなったり、探していた彼女達もいなくなったりするなど、

イベントに影響するかもしれない問題があった。

結局プロデューサーは見つかり、きらりたちは原宿内でパレードみたいなことをしているところを発見し、

時間通りにイベントを開催ができた。

 

「大丈夫だったよー!アナスタシアちゃん!」

 

みりあがそう言うとアナスタシアはほっとした。

 

「今日ねぇ、面白い人と出会ったの☆」

 

「誰ですか?」

 

「"金木さん"と"亜門さん"だよー!」

 

「"アモン"..?」

 

アナスタシアはある人物の名前に疑問を感じた。

 

「"亜門さん"って誰ですか?」

 

"金木"という人はシンデレラプロジェクト内ではかなり有名になっているが、

"亜門"というのはいま初めて知った。

 

「えっとねぇ、その亜門さんは"喰種”(グール)を倒す人だよ☆」

 

「っ!?」

 

アナスタシアは突然びくっと体を起こし、背後に嫌な寒気が感じた。

きらりが言った"ある単語"によって。

 

「どうしたの?アナスタシアちゃん?」

 

莉嘉はそんなアナスタシアに声をかける。

 

「あ、亜門さんは...."グール"を倒す...人なんですね...」

 

先ほどの様子を隠そうと無理して笑顔を作る。

 

「そうだにぃー☆その人はきらりより高くて、Pちゃんに似てたよー☆」

 

「そうですか....プロデューサーに似ているんですね」

 

アナスタシアはその"喰種”(グール)という言葉に恐れを感じていた。

 

(.......)

 

彼女は会ったのだ。

その"喰種”(グール)に。

 

 

『Что вы видите? Аня?(何を見ている?アーニャ?)』

 

 

故郷で出会った"ロシア人"が"喰種”(グール)だと知った時、

彼女の心は、おそらく消えないであろう深い傷を負ったのだ。

暗闇に光る奇妙な赤い光、そして口は恐ろしく赤い血が染まっていた。

 

 

『Вы знаете, что? Аня?(知っているか?アーニャ?)』

 

『Человеческая плоть является то, что ребенок является самым вкусным』

     (人肉の中で一番美味いのは、子供だということを)

 

 

幼き頃に見てしまった、彼らの姿。

彼女は心の中でこう呟いた。

 

 

 

『....Донато Порпора(ドナード・ポルポラ)』

 

 

 

彼女の記憶から蘇る。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 夜 ーーー 自宅

 

 

金木Side

 

 

「え?前川みくと多田李衣菜がユニットを組む?」

 

『はい。そうなんですよ....』

 

今ぼくは卯月ちゃんと電話をしている。

掛けたのはぼくではなく、卯月ちゃんからだ。

今日はみくちゃんと李衣菜ちゃんがユニットを組むということをぼくに言ったが、

卯月ちゃんの声は嬉しそうな感じではなく、何か納得しないような感じの声であった。

 

「別に悪いことじゃないの?」

 

ユニットを組むというのはいいはずなのだが...?

すると、卯月ちゃんの口から意外なことがわかった。

 

『みくちゃんたち、いつもケンカするんですよ』

 

「え?」

 

ぼくはその言葉に疑ってしまった。

本来ユニットというのは仲良い同士にするべきものじゃないのかと。

 

『昨日ですと写真撮影のときにケンカしていまし...』

 

「そうなんだ...」

 

確かお互いには確か特徴ががある。

みくちゃんは猫キャラで、

李衣菜ちゃんはロックなアイドル。

ケンカするのもわからなくもない。

 

(...大丈夫かな?)

 

それぞれ価値観があり、譲れないところがあるかもしれない。

 

『金木さんが相談に乗ってくれれば....』

 

「え、え...!?さ、さすがに無理だよ...」

 

ぼくはその言葉に困惑してしまった。

流石に自分はそんな重要な人物でもあるまし...

[最近シンデレラプロジェクト内では知れ渡っているけれど..]

 

「まぁ..とりあえず、仲良くさせないとね...」

 

まずユニットを決めたプロデューサーさんがなんとかしないとけないと思う。

どうしてみくちゃんと李衣菜ちゃんにしたんだろうか?

シンデレラプロジェクトの中でユニットを組んでいないのは二人だけだ。

さすがに"余ったから"ではないと思うけど....

 

「そうですね...こちらもなんとか仲良くするよう頑張ります!」

 

卯月ちゃんはいつもの元気な声で返す。

 

 

 

まさかこの後、"彼女ら"に会うなんて....

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 次の日 ーーー 駅周辺。

 

 

(不仲同士ユニットを組むのか....)

 

昨日のみくちゃんたちのことが頭から離れなかった。

プロデューサーさんはどうして組んだだろうか?

まさか喧嘩するほど仲がいいと言うわけではないと思うが...

最悪の場合、アイドルフェスに出れない。

ちなみにぼくはこんな夏の時期だけど"たい焼き"を買った。

理由は特にないが、ただ食べたかったと思う。

 

(なんとか仲直りできないものか....)

 

そう考えていると、ぼくは何かにぶつかった。

いや、向うからぶつけられたような感じで。

 

「あ、す、すみません...」

 

女子高校生の人とぶつかってしまった。

その女子高校生の人はぼくは謝る。

その人の特徴はメガネをしていた。

 

(...ん?)

 

ぼくは何かに気づく。

まさか、"この人"は.....

 

「あの」

 

ぼくは"その人"の声をかける。

 

「はい?」

 

彼女はこちらに振り向く。

普通の人なら普通の高校生に見えるかもしれないが、

ぼくは"ただの普通の高校生"には見えなかった。

 

「あなたはもしかして....前川...みく?」

 

「....え?」

 

それを聞いた彼女はキョトンと頭を傾けた。

まさか間違えたのかと思った次の瞬間、

 

「なんで....わかったにゃ...?」

 

「え?」

 

妙に声が震えていた。

 

「だからなんでわかったにゃ!!??」

 

彼女は周囲に気にせず、ぼくに近づいて問いかける。

見た目では想像がつかない態度だ。

 

「え、え!?」

 

ぼくは彼女がまさかの"みくちゃん”だと言うことに驚いた。

そしてなんて答えればいいのかわからなかった。

 

「えっと...か、金木です!」

 

ぼくは不意に名前を上げてしまった。

 

「え.....?金木?」

 

するとみくちゃんは先ほどまで怒った様子がなくなり、

顔が青ざめ始めた。

 

「もしかして....みんなが言っていた"金木"って...」

 

「うん...ぼくだよ....」

 

「え、ええっ!?」

 

彼女の驚く声が、街中に響いた。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あなたが蘭子ちゃんが言っていた金木さん...」

 

「うん、そうだよ...」

 

ぼくたちは場所を移し、人気(ひとけ)がない公園のベンチに座った。

さっきまでのみくちゃんと比べて、だいぶ落ち着いる。

まさか李衣菜ちゃんと組んでいるみくちゃんと出会うとは考えもしなかった。

 

「この前のきらりちゃんのイベントの時にお世話になったっと聞いたにゃ」

 

「まぁ...あれは...」

 

その時のぼくは美嘉ちゃんと探しに言ったのだが、

実際は"亜門さん"という人にぼくよりお世話になったと思う。

でもよく考えて見ると、やはりシンデレラプロジェクト内に知れ渡っていると改めて感じた。

 

「そういえば.."李衣菜ちゃん"とユニット組むんだよね?」

 

その瞬間、みくちゃんは躊躇ったように見えた。

 

「...な、なんでそれを知ってるにゃ?」

 

「卯月ちゃんから聞いたんだ」

 

「そうか.....にゃ」

 

彼女は視線をそらす。

やっぱり卯月ちゃんの言う通り、仲はあまり良くないように見える。

 

「李衣菜ちゃんとはうまくいってないんだね...」

 

「...うん..」

 

彼女は小さく頷く。

彼女の顔は何か迷いがある感じであった。

 

「金木さんはどうかにゃ?」

 

「え?」

 

「みくと梨衣菜ちゃんのユニットのことにゃ」

 

「どうかな....」

 

そもそもぼくは彼女らについてはあまり知らない。

知っていることと言えば、彼女たちのプロフィールぐらいしか知らない。

 

「...まず、みくちゃんは嫌なの?」

 

「嫌というか....合わないことがいっぱいにゃ...」

 

確かお互いのキャラを合わせるのは無理がある...

 

「李衣菜ちゃんが言う"ロックな気持ち"なんてわかんないにゃ...」

 

「ロックな気持ち...」

 

李衣菜ちゃんらしい言葉だ。

 

「他に気持ちが合わないところもたくさんあるし...」

 

やはりお互いのキャラが合っていないことがわかる。

 

「例えば...?」

 

「この前に夕食で"魚"を出してきたり」

 

「....え?」

 

ぼくはみくちゃんの"ある言葉"に耳を疑った。

 

「もしかして、"魚"食べれないの?」

 

「え?」

 

みくちゃんはこちらに顔を向ける。

 

「ネコキャラなのに?」

 

「にゃ!?これとこれは別にゃ!」

 

彼女は大きく否定をする。

みくちゃんはネコミミをしているイメージがあるんだが、

まさか魚が食べれないとは....

 

「魚嫌いなんだ....」

 

猫といえば魚だと思うんだけどな....

 

「だ、だから...Pちゃん何考えてるかわからないにゃ....絶対余ったから組んだと思う...」

 

彼女はそう言うと、視線を下に向ける。

確かにシンデレラプロジェクト内でユニットを組んでいないのは、

みくちゃんと李衣菜ちゃん二人だけだ。

自分たちは余ったから、と感じるのもおかしくはない。

 

「仲を良くするためにしたんじゃないかな?」

 

「金木さんが言っていることがなんか..."ケンカするほど仲がいい"から組んだに聞こえるにゃ....」

 

彼女は少しぼくに睨んだ。

ぼくは「ごめん」とすぐ謝った。

 

「もしこのユニットがダメだったら...どちらかがソロデビューだにゃ...」

 

「え?どちらかがソロデビュー....?」

 

つまりどちらかが"デビューができない"と言うことだ。

 

「みくたちは...仕方なくやってるっという感じにゃ...」

 

「.....」

 

彼女はだいぶ落ち込んでいた。

今の感じだと無理やり組んでいると言ってもいいだろ。

そんな状況の中でユニットを組むのはあまりよくない。

 

(何かあるかな....)

 

ぼくはどうしたらいいのか考えた。

今一番いいのはユニットを解散するのではなく、

お互い仲良くすればいいことだ。

でも、お互い合わないことばかりでユニット的にはよくない。

 

(あ....そういえば..)

 

ぼくは"あること"を思い出し、

バックからあるものを取り出す。

 

「これなら...食べれるかな?」

 

「ん?」

 

ぼくは"あるもの"をバックから差し出す。

 

「こんな夏の時期にあれだけど...」

 

バックから取り出したのは先ほど買ってきたたい焼きだ。

少し時間はたったが、まだ暖かい。

 

「"たい焼き"なら食べれるよね?」

 

名前は魚だけど、使用している材料に魚はない。

 

「あ、ありがとうにゃ!」

 

みくちゃんは先ほども落ち込みを吹き飛ばし、嬉しそうにたい焼きを受け取る。

 

「これなら食べれるんだね...」

 

ぼくは少しほっとした。

まさか名前だけでも無理ではなかったことを。

 

「みくは魚はだめだけど、たい焼きなら食べれる!」

 

彼女はそう言うと、ぼくに笑顔を返した。

 

「元気になれてよかった」

 

みくちゃんの笑顔に、ぼくは自然を微笑んだ。

 

「....みくちゃんは李衣菜ちゃんのことどう思う?」

 

「李衣菜ちゃんのこと?」

 

まずお互いのいいところがあると思う。

それを聞いた彼女はある言った。

 

「私と同じく"家族思い"」

 

「家族....思い....」

 

ぼくはその言葉に妙に反応してしまった。

あの記憶が思い出す。

"母さん"の姿が。

 

「この前の夜に李衣菜ちゃんがお母さんと電話したところを見たにゃ」

 

「...........」

 

あの働いている姿を思い出す。

一人が頑張って、みんなのために働いていた姿。

ぼくにとってお母さんは偉い人であり、大好きな人。

 

「どうしたにゃ?金木さん?」

 

ふと気がつくと、ぼくはみくちゃんの言葉を聞いていなかった。

 

「.....い、いや...なんでもないよ...」

 

ぼくはそう言うと、みくちゃんは顔を少し傾ける。

なんで深く思っていただろうか、ぼく。

 

「じゃあ、金木さんを金木チャンと呼んでいい?」

 

「え?いいけど.....」

 

ぼくがそう言うと、みくちゃんは立ち上がり、

 

「じゃあ、金木チャン。みくたちのことを応援してくれる?」

 

彼女はこちらに振り向き、答えを待っているような仕草をした。

 

「もちろん、応援するよ」

 

ぼくがそう言うとみくちゃんは、

 

「ありがとう、金木チャン」

 

彼女はとても嬉しそうな笑顔をした。

心から満足をしている笑顔で。

ぼくはその笑顔を見て思った。

 

 

お互いもっと"仲良く"なってほしい。

 

 

ぼくは心からそう願った。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

数時間後 ーーー CDショップ

 

 

みくちゃんと別れた後、ぼくはCDショップに入った。

この前にヒデが買えなかったCDを買ってくれお願いされたので、ここに入った。

最近"先輩"のことで忙しいらしい。

 

(...ん?)

 

"ある少女"を見かけた。

 

「.......」

 

見た感じだとCDを見ていると言うか、何か考えているように思える。

 

(......まさか)

 

ぼくは彼女が"ある人物"ではないとか感じていた。

少し聞くのをためらったが、気持ちを整えて、

彼女に近づいた。

 

「あの....」

 

「ん?」

 

彼女はぼくに振り向く。

 

「君って...."多田李衣菜"だよね...?」

 

「え?....は、はい....そうですけど...」

 

小さく驚いていた。

なぜ私を知っているだろうと言うような顔で。

 

「なんで...私をご存知でしょうか?」

 

彼女はまだデビューはしていないため、

どうして自分の名前を知っているだろうかと不思議に感じている。

 

「えっと...」

 

ぼくがなんて答えればいいのか考えていたその時、

 

「もしかして..."金木さん"?」

 

「え?」

 

驚いてしまった。

まさか彼女の口からぼくの名前を出すなんてことを。

 

「そ、そうだね...」

 

驚いたせいでぎこちなく返してしまった。

 

「へーあなたが金木さんなんだ」

 

関心した様子でぼくを見る。

もちろん彼女と会うのは初めてだ。

 

「みんな言っていた金木さんって、あなただったんですね」

 

「うん....」

 

そういえば先ほど"みくちゃん"と話したため、

ぼくは李衣菜ちゃんにあることを言う。

 

「そういえば....李衣菜ちゃんってみくちゃんとユニットを組むよね?」

 

先ほどみくちゃんに同じような言葉を出す。

 

「え?どうしてそれを?」

 

「卯月ちゃんから聞いたんだ」

 

「卯月から?......そうなんだ」

 

彼女はそう言うと、妙に暗く感じた。

まるでなんで知っていたんだと。

 

「みくちゃんのこと嫌なのかな?」

 

「嫌と言うか....合わないことばかりあるんですよ」

 

やはり李衣菜ちゃんも同じく感じていた。

 

「確かに...みくちゃんはネコのイメージが強いよね....」

 

「そうですよね...ネコの気持ちを理解することなんて無理ですよ」

 

確かに彼女自身はRockなアイドルを目指しているから、

さすがに妥協してネコキャラになるのは嫌だと思う。

 

「そういえば、李衣菜ちゃんって"ロック"が好きなんだよね?」

 

「え?は、はい....そ、そうですね」

 

李衣菜ちゃんはぎこちなく言葉を返した。

 

(ん?)

 

ぼくはそんな彼女に何か違和感を感じた。

答えからが自信なさそうに見えたからだ。

試しにぼくは李衣菜ちゃんに質問する。

 

「例えば何が好きかな?」

 

「えっと...."UK"とかですね...」

 

「UKなんだ...最近いい曲あるよね」

 

ぼくはいくつかのバンドや曲の名前を出した。

大体はヒデに無理やり貸されたのバンドの名前ばかりであったが、

そのバンドの名前は世間ではよく知られているバンドだ。

しかし、彼女の反応は"何か”違っていた。

 

「....あ、それいいですよね...」

 

意気投合するどころか、聞いているだけであった。

まるで知らない単語を聞いて、どう返せばいいのかわからないような感じであった。

まさか.....彼女は....

 

「もしかして....ロックバンドの名前とか知らないの?」

 

「えっ!?」

 

彼女はびくっと体を体を動かす。

 

「そんなことないじゃないですか!」

 

彼女は大きく否定をした。

何か隠しているような感じに。

 

「...じゃあ、知っているバンドは?」

 

「えっと..............」

 

そう言うと、李衣菜ちゃんは視線をそらす。

しばらく沈黙した後、「すみません...」と言い、頭を下げた。

 

「実は私...Rockなアイドルと言っているんですけど...あまり知らないですよね...ははは」

 

彼女はまさかのロックについてはあまり詳しくなかった。

紹介ではロックなアイドルを目指していると書いてあったんだけど...

 

「ギターなんかは持っているんですけど...今練習中なんですよ」

 

「そ、そうなんだ....」

 

「こんな感じだと....さすがにダメですよね..」

 

「確かに...それはまずいよ...」

 

李衣菜ちゃんの顔は不安そうな見えた。

もしバレたら、イメージダウンしかねない。

きっと彼女は焦っているかもしれない。

 

「でも、今から頑張って覚えればいいんじゃないかな?」

 

「え?」

 

今の状態だと遅すぎると言うかもしれないが、

今頑張って覚えればいいと思う。

 

「他の人から見れば遅すぎと思うかもしれないけど、別にぼくは今頑張って覚えればいいと思うよ」

 

「確かに今は遅いと思われるかもしれませんが....今頑張ればいいですよね」

 

李衣菜ちゃんの顔には笑顔が戻った。

 

「あ、これは誰にも言わないでくださいね」

 

李衣菜ちゃんは人差し指を口に近づけ、静かするような仕草をした。

さすがにぼくはそんなことしない。

もし他人に知られたら、彼女の将来に影響しかねない。

 

「約束ですよ?金木さん?」

 

「うん、約束するよ」

 

ぼくと李衣菜ちゃんは約束をした。

彼女はまだ"未熟なロックアイドル"ということを。

 

「ありがとうございます」

 

「みくちゃんとは仲良くしてね?」

 

「みくとは....うん...」

 

口をこわばり、曖昧な感じに言葉を返す。

 

「.....やっぱり、"家族のこと"じゃないですかね」

 

「え」

 

ぼくはその言葉に固まってしまった。

 

「前、みくの部屋に"家族の写真"があって」

 

「.......」

 

ぼくは再び思い出した。

"母さん"のことを。

一人で内職している姿を思い出す。

病気になっていてもやり続ける姿。

あの時のぼくは、心配をしていた。

 

「どうしましたか?」

 

みくちゃんと同じく話を聞いていなかった。

 

「え?なんでもないよ」

 

ぼくがそう言うと、李衣奈ちゃんは

 

「でも、みくのことは別に全部悪く思ってませんよ」

 

「うん...それはよかった」

 

彼女たちはまだユニットと言えるような状態ではない。

みくちゃんも李衣菜ちゃんもお互い悩みがある。

その悩みがどうか打ち明けてほしい。

ぼくはそう感じた。

 

 

 

ぼくは彼女と別れた後、再び思い出した。

 

 

 

小さい頃の"暖かい記憶"が。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 後日 ーーー 自宅

 

 

ぼくは家で本を読んでいた。

前の休みの時に買ったを

立ち上がろうとその時、僕の携帯が鳴った。

 

(ん?)

 

ぼくは携帯を取り、画面を見ると"未央ちゃん"から電話があった。

 

「もしもし?」

 

『金木さん!』

 

未央ちゃんは焦っている感じにぼくの名を言う。

何か急いでいるような感じであった。

 

「どうしたの?」

 

ぼくはそんな彼女に聞く。

すると未央ちゃんはぼくにあることを伝えた。

 

 

 

 

『今から"サマーフェス"に来れますか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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