東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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四葉

今日、四つ葉のクローバの髪留めを買ったの

お母さんからの数少ないプレゼント

本当ならお父さんと一緒にいるつもりだったけど、今日もいなかった

どうして私のお父さんはいないの?、と何回もお母さんに聞いたのだけど、

お母さんはその話を聞くたび悲しそうな顔をするの

どうしてなのかその時の私はわからなかった

 

 

後から気づいたの

お母さんが亡くなった後、お父さんはもう居なかったんだ

つまりお母さんと同じく殺されたの

あの時、悲しそうな顔をしていたのはお父さんはもういないんだということだったんだ

私が人間じゃないことがダメだったのかな?

どうしてこんな生き物に生まれて来たのかな、私

 

 

"人間のお姉ちゃん"と友達になった

彼女は笑顔がとても輝いていて、かわいかった

私はそれを見てお兄ちゃんを思い出したの

あの優しい笑顔が頭に浮かんだ

私は人間という生き物が怖かったんだけど、

なぜかお姉ちゃんは怖くは感じなかった

お姉ちゃんはお兄ちゃんと同じく文字を教えてくれた

彼女はお仕事が忙しい時でも私の元に来てくれるの

そんなある日、私は気づいてしまったの

"お姉ちゃんも"悲しんだってことを

 

 

ある時、私はお姉ちゃんからお花の本をもらったの

その本にはお花の意味がいろいろあった

それで私がつけている髪留め、四つ葉のクローバーの意味を知りたくなった

どうゆう意味かな?、と思って調べたの。

そしたら明るい言葉ばかりの花じゃないことに気づく。

 

希望、愛情、信仰

 

そして最後にあった言葉。

 

 

 

 

それは"復讐"。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

  

収録当日 ーーー テレビ局前

 

 

蘭子ちゃんのお金は、ブレインズキャッスルの収録にて受け取ることになった。

収録ということはつまり、テレビの収録現場を見ることだ。

収録ということで応募が出来るだろうかと思ったが、ぎりぎりに応募ができた。

そして今、収録が行われるテレビ局に向かっている。

するとテレビ局前に卯月ちゃんたちが待っていた。

 

「お!金木さん!」

 

未央ちゃんはぼくが来ていることに気づき、ぼくに近寄る。

 

「久しぶりじゃないですか〜」

 

「うん....久しぶり」

 

未央ちゃんの元気にぼくは負けていた。

 

「あ!金木さん!」

 

次に来たのは、卯月ちゃんであった。

 

「卯月ちゃん元気になったんだね」

 

しばらくメールをしていなかったため、体調についてはわからなかった。

 

「はい!おかげさまで元気です!」

 

卯月ちゃんは笑顔で言葉を返す。

ぼくはその笑顔を見てよかったとほっとした。

 

「金木、久しぶり」

 

3人の中で最後に来たのは、凛ちゃん。

 

「久しぶり凛ちゃん」

 

凛ちゃんは「全く..」とため息をつき、

 

「あんたはなぜか偶然にアイドルと会うよね。たとえば蘭子とか」

 

「まぁ....そうだね」

 

昨日電話した未央ちゃん曰く、シンデレラプロジェクトのみんなに知られたらしい。

そんな会話しているとある人物がぼくたちの元に来る。

 

「こんにちは、金木さん」

 

プロデューサーさんがやって来た。

ぼくは彼にこんにちは、と挨拶をして頭を下げる。

 

「この間の神崎さんのこと、ありがとうございます」

 

スーツの中から封筒を取り出した。

 

「神崎さんのお金はまだ来ませんので、代わりに私が渡します」

 

「あ、ありがとうございます....」

 

ぼくはお金を受け取る。

本来もらう側なのだが、

なんだか本当にもらっていいのか困惑してしまった。

 

「ハンバーグ専門店に行ったのですね」

 

ぼくはそれを聞いた瞬間、え?と小さく驚いた。

 

「どうしてわかるのですか?」

 

「神崎さんがそうおっしゃったので」

 

「蘭子ちゃんのしゃべっていることわかっているのです?」

 

「いえ、まだ少ししかわからないのですが...」

 

ぼくは「ですよね....」と小さく呟いた。

プロデューサーさんも困るのもそうだろうね。

 

「へー、金木って蘭子の好きな物を当てたんだ」

 

「近くにハンバーグ店があったから、蘭子ちゃんはそれを見てたから...」

 

「ふーん。まぁ、蘭子は金木のこと気に入ったらしいし」

 

「え?そうなの?」

 

「だってプロデューサーも同じく"我が友"と言っているから、かなり気に入られている証拠だよ」

 

「気に入られたんだ...」

 

あの時出会った時を思い出す。

確かに彼女は難しい言葉を使っていたが、テレビなどでは見られない姿を見てしまった。

蘭子ちゃんはお嬢様系かなと思ったが、実は優しい子。

そう考えてみると嬉しく感じる。

 

(あ、そういえば...)

 

「確か今回の収録って...."CANDY ISLAND"の皆さんが出るんだよね?」

 

番組を応募する時、次回の出演者リストで"KBYD"の対決と書いてあった。

 

「えっと..."ブレインズキャッスル"だよね?」

 

「そうですよ!初のテレビ出演です!」

 

みんなに聞いたが、プロデューサーさんだけはなぜか顔色が違っていた。

 

「いや、実は"変更"が...」

 

「え?」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 撮影開始 ーーー スタジオ

 

 

「看板も変わってるし....」

 

「なんで変わったんだろう.....」

 

スタジオに入ってわかったことは"頭脳でドン!ブレインズキャッスル"ではなく、

今回からは"筋肉でドン!マッスルキャッスル"に変わっていた。

理由はアイドルがあまりにもクイズに答えられないから急に変更になったらしい。

そりゃあ番組側としては問題を答えられないとクイズ番組にならないよね...

 

(そんなに難しい問題をやっているのかな....?)

 

普段クイズ番組を見ないぼくには難易度がわからない。

確かこの番組は"川島瑞樹"と"十時愛梨"の"シンデレラガーズ"二人が司会を務める人気クイズ番組だ。

今、両チームの自己紹介タイムだ。

 

「ではチーム名をどうぞ!」

 

そう言うと幸子ちゃんたちKBYDチームはカメラに目線を向け、

 

「かわいい僕と!」

 

「野球!」

 

「どすえチームどすえ」

 

KBYD チームはこの番組では最多出場である。

 

(名前が長い....)

 

どうしてそうゆう名前になったのかは知らないけど、

特に幸子ちゃんのかわいいぼくがかなり強調されているように思える。

 

「幸子ちゃんって...かわいいぼくって必ず言うよね...」

 

テレビで何度も見るが、だいだいかわいい僕と言うイメージが強い。

 

「さっちーのことどう思う?」

 

「どうかな....別に嫌いでもないけど....」

 

好きとも言えない。

分類は違うけど、"志希ちゃん"が浮かぶ。

 

「ではチーム名をどうぞ!」

 

「「きゃ、"CANDY ISLAND"です」」

 

緊張していたせいか、一致していない。

 

(緊張している.....)

 

初めてテレビに出演であってか、かなり緊張気味であった。

ぼくはその姿を見て心配になった。

 

「初々しいですねー」

 

「初々しさでは完全に負けているかわいい僕と野球どすえチームさん。今日は勝てそうですか?」

 

「大丈夫ですよ!なんて言ったってかわいいぼくが付いてますから!」

 

本当に幸子ちゃんってかわいい僕と言うよね。

 

「待ってください!そういう意気込みは、マイクパフォーマンスでどうぞ!」

 

愛梨さんがそう言うと幸子ちゃんにマイクを渡す。

その同時に智絵里ちゃんはスタッフさんからマイクを受け取る。

 

「えーあなたたち"CANDY ISLAND"でしたっけ?お菓子みたいに甘い覚悟だと、この番組とかわいいぼくには勝てませんよ!」

 

幸子ちゃんがそう言うと、智絵里ちゃんはひっと顔が青ざめ、

 

「す、すみませんでした!」

 

そして大きく頭を下げる。

ぼくはその姿を見て驚いてしまった。

 

(え..謝っちゃうの?)

 

本来ならここで言い争う感じだと思ったが、全く違った。

 

「はい!10ポイント!」

 

「え...」

 

まさかのKBYDチームより先にポイントをゲットしてしまった。

観客から驚きの声が上がる。

 

「トークバトルはCANDY ISLANDの皆さんの勝利です!」

 

観客の皆さんは拍手をし、CANDY ISLANDの皆さんを祝った。

 

「はい!オッケーです!」

 

スタジオのスタッフさんがそう言うと、

その同時に未央ちゃんが大きく息を履いた。

 

「子供を見守る母親みたいだよ...」

 

未央ちゃんがほっとしていた。

 

「はは....そんなに心配なんだね」

 

「だって、特訓をしたからね」

 

「特訓?」

 

「そう、ツッコミの特訓ですよ。なんでやね!ってね」

 

未央ちゃんがビシッと手を振る。

 

「つ、ツッコミ...?」

 

「テレビ番組ってウケとツッコミがないとダメじゃないですか?」

 

「まぁ...そうだね...」

 

確かにそうじゃないとテレビは面白くはならないかもしれないけど、

定番のなんでやねんはどうだろうか...?

 

「智絵里ってテンパっていたよね」

 

「そういえば、智絵里ちゃんだいぶ緊張していたね」

 

"CANDY ISLAND"のメンバーの中では一番緊張してように見える。

 

「そうだね、ちえりんは"家の事情"でそうなっちゃたらしいよ」

 

「え?」

 

「ちえりんの両親は仕事で忙しくて、寂しがり屋になっちゃったとこの前話してたよ」

 

「....そうなんだ」

 

ぼくはそう暗く呟いた。

なぜか視線を伏せてしまった。

 

(........)

 

妙にぼくは暗くなってしまう。

なんだか"一致"してしまう。

 

「どうしましたか?金木さん?」

 

「....ん?」

 

気がつくと卯月ちゃんが心配そうにこちらを見ていた。

 

「あ、いや、なんでもないよ....」

 

「?」

 

卯月ちゃんは頭を傾け、疑問を持った顔をした。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

2回目の収録の休憩。

収録の合間に休憩があり、

ぼくはトイレに行っていた。

 

(大丈夫かな....)

 

ポイントは圧倒的にKBYDチームが有利だ。

もし次勝てなければせっかくデビューしたばかりの"CANDY ISLAND"のアピールタイムがなくなってしまう。

 

「智絵里ちゃん!」

 

突然、誰かが倒れたような音をした。

ぼくはそこに振り向くと智絵里ちゃんが倒れていた。

 

「大丈夫ですか!」

 

ぼくはそんな彼女に近づき、呼びかける。

するとプロデューサーさんがぼくに顔を向け、

 

「金木さん、緒方さんを楽屋に」

 

「は、はい...」

 

ぼくは彼女を楽屋まで運んだ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ぼくも楽屋の中に入った。

本来なら一般人が立ち寄る場所ではないところのため、

バレないために楽屋に入っている。

 

「ありがとうございます」

 

「いえ...偶然にその場にいたので..」

 

プロデューサーさんは頭を下げる。

ぼくはいいですよと少し困惑した。

ぼくは楽屋の椅子に座り、彼女の様子を見ていた。

 

「智絵里ちゃん大丈夫かな...」

 

彼女は横になり、休んでいた。

きっと緊張で倒れてしまったのだろう。

 

「....ん」

 

すると智絵里ちゃんは目を覚ます。

 

「大丈夫ですか」

 

プロデューサーさんは智絵里ちゃんに声をかける。

 

「はい...すみませんでした」

 

「次の収録できますか?」

 

「.....はい」

 

そう言うと彼女は体を起こしたが、

不安そうな顔をしていた。

 

「笑顔でできますか?」

 

「.........」

 

彼女は言うのをためらっているように見えた。

すると智絵里ちゃんはぼくがいることに気づき、

 

「あなたは....」

 

彼女は誰だろうか?と思っていると思う。

先ほどかな子ちゃんも杏ちゃんも気になっている様子であった。

 

「えっと...ぼくは"金木研"」

 

「"金木"....」

 

すると彼女は何か思いつきたような顔つきになり、

 

「金木って...もしかしてこの前に蘭子ちゃんが言っていた...」

 

「うん。そうだね」

 

「「え!?」」

 

智絵里ちゃんとかな子ちゃんは大きく驚いた。

 

「"カネキ"って....あなただったんですね」

 

「意外と普通な人なんだね」

 

「まぁ...たまたま蘭子に会ったんだんだよね」

 

やはりだいぶ広まっていることを実感する。

 

「...智絵里ちゃんてだいぶ緊張していたよね」

 

「....はい、緊張が...」

 

やはり気にしていたんだ。

 

「大丈夫だよ。未央ちゃんも凛ちゃんもそうだったし」

 

「え?そうなんですか?」

 

智絵里ちゃんは少し驚いた。

きっとイメージはなかったと思う。

 

「でもなんで卯月ちゃんたちのことを知ってるの?」

 

杏ちゃんが疑問を持ったような顔つきをする。

 

「えっと...new generationsのみんなとは友達のような関係...かな」

 

「そうなんですか!?プロデューサーさん!?」

 

かな子ちゃんは驚き、プロデューサーさんに聞く。

 

「そうですね。彼女たちとは何度かお世話になっています」

 

「まぁ...その通りだね」

 

否定するなんてない。

 

「でも智絵里ちゃん、君は一人じゃないよ。杏ちゃんもかな子ちゃんがいるよ」

 

収録中の智絵里ちゃんはかなり緊張をしていた。

まるで抱え込んでいるように。

 

「だから罰ゲームをやるもの、一人じゃないよ」

 

だから、君は一人じゃない。

君は仲間がいるんだ。

ぼくとは違って。

 

「じゃあ杏、バンジー嫌だから逆転を希望します!」

 

杏ちゃんがそう言うと二人は笑顔を取り戻した。

つまり勝てばいい。

 

「そっか、逆転すればいいのか。それでアピールタイムをゲットして」

 

「一緒に歌を届けよ」

 

彼女たちの暗い空気が立ち去る。

 

 

「「行くよ!CANDY ISLAND!」」

 

 

再び彼女たちに笑顔が戻った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 夜 ーーー テレビ局外

 

 

「まさか同点になるとは....」

 

結果はどちらが勝ち、どちらが負けではなく、

両チームが同点になったのだ。

 

「まぁ、でも良い成果を上げましたよ」

 

未央ちゃんは満足に言う。

 

「そうかな....」

 

両者引き分けで両チームはアピールタイムをもらえたのはいいが、

両チームは罰ゲームのバンジージャンプを受けることになった。

でもそれよりも気になることがあった。

 

「で.....なんでぼくもここに待つのかな?」

 

「いいから金木さん!」

 

未央ちゃんと一緒にここに待っている。

卯月ちゃんと凛ちゃんはCANDY ISLANDのみんなに挨拶をした後、

帰っていたのだが....

 

「ほら、来た!」

 

未央ちゃんがばしばしとぼくを叩き、

何かを指した。

 

「あれ...CANDY ISLANDの皆さんだ...」

 

「金木さん!」

 

かな子ちゃんがぼくに手を振る。

 

「あれ?金木さんって会ったことあるの?」

 

未央ちゃんはこちらに視線を向ける。

 

「いや...実は収録中に会ったんだ...」

 

「え!?」

 

未央ちゃんは驚いた。

 

「いつ会ったの?」

 

「えっと休憩中かな...」

 

未央ちゃんは「休憩中か」つぶやく。

するとかな子ちゃんはぼくに近寄る。

 

「おかし食べますか?」

 

かな子ちゃんはバックからプラスチックケースを取り出す。

そして蓋を開くと、綺麗な黄金色をしたクッキーが並んでいた。

とても美味しそうだ。

 

「じゃあ、いただくよ」

 

ぼくはクッキーを取り出し、食べる。

 

(美味しい...)

 

ほのかに香るチョコの味がよく、舌触りがいい。

 

「おいしいね。このクッキー」

 

「本当ですか?もっと食べていいですよ!」

 

彼女はかなり喜んでいた。

ぼくはあまり食べないため、数枚だけ取った。

 

「まさか未央ちゃんと待ってたなんて、よくわからない人だね」

 

杏ちゃんはテレビに出ていた時とは違い、だるそうに言う。

ぼくはそんな杏ちゃんに少しホッとした。

収録中に見せた私服ではなかった。

その服の特徴を一言を言えば、『働いたら負け』だ。

 

「とりあえず、みんなを元気付けてありがとう。金木さん」

 

彼女はぼくにそう言うと、

 

「杏、帰ってゲームがしたい。今日も"YONE"と狩りに行かねば」

 

杏ちゃんはつぶやくように言うとよろよろと帰って行った。

彼女が言った"YONE"はおそらくゲームのフレンドの人だろう。

 

「あ、待って杏ちゃん!」

 

かな子ちゃん杏ちゃんを追いかけるように行く。

 

「あの...金木さん」

 

そんな状況の中、声をかけてきたのは智絵里ちゃんであった。

彼女は最初にステージ現れた時よりもで笑顔であった。

 

「先ほどはありがとうございます...」

 

智絵里ちゃんは頭を少し下げ、ここから立ち去った。

 

「いやー金木さんはモテモテだね〜」

 

未央ちゃんがぼくをからかうように言う。

 

「そ、そうかな....」

 

未央ちゃんは、もー気づいてよ〜とバシッとぼくの腕を叩く。

 

「痛いよ....」

 

「大丈夫ですよ。このくらいは」

 

未央ちゃんはいつも友達とこう言う風な会話をしているのかな?

 

「まぁ、とりあえず帰りましょ?」

 

「うん...いいよ」

 

ぼくと未央ちゃんは駅まで一緒に帰った。

その後未央ちゃんとは駅で別れた。

結局、両者引き分けで終わってしまったが、

今回のクイズ番組で輝いたのは”彼女”(智絵里ちゃん)かもしれない。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 後日 ーーー 大学

 

 

大学の講義が終わり、ぼくは今日もまた一人でベンチに座り、本を読んでいた。

"文香さん"はいなかった。

 

(.......)

 

346プロでの仕事で忙しいかもしれない。

それなら仕方ない。

そんな静かな空気を打ち壊す人物がいた。

 

「カネキ!!」

 

ヒデがぼく両肩を掴み、ゆさゆさとぼくの体を激しく揺らす。

 

「お前!なんでテレビにいたんだよ!?」

 

「え?どうして...?」

 

「どうしてじゃねぇだろ!この前の"CANDY ISLAND"が出ていたマッスルキャッスルに卯月ちゃんたちと一緒にいた映像が映ったんだぞ!」

 

つまり見られた。

 

「なんで俺を誘わなかったんだよ!」

 

「..ご、ごめん...」

 

ぼくはそんなヒデに謝る。

 

「ちなみにいつ行った?」

 

「この前の日曜日に...」

 

それを聞いたヒデは「あーまじか」と手を額に置く。

 

「その時先輩に頼まれたことががあったしな..さすがに応募しても来れないな....」

 

先輩のことを無視してアイドルのライブなどを見に行くなんてさすがにひどい。

 

「じゃあ、今度そんな誘いがあったら俺を呼べよ?」

 

「え...」

 

うんと言うべきか迷ってしまった。

 

「なんだよ!そんな嫌そうな感じになって!」

 

再び僕の体を揺らした。

 

「じゃあな、カネキ!」

 

ヒデはそう言うと、すぐに去ってしまった。

 

(......ヒデのアイドル愛はちょっとな...)

 

再び静かさを取り戻した。

ぼくは途中読んでいた本を読もうとした時であった。

 

(...ん?)

 

携帯が鳴った。

こんな時間に来るのは珍しい。

 

(誰だろう...?)

 

画面を見ると発信者の名前はなく、

見知らぬ電話番号であった。

ぼくはその電話に出た。

 

「もしもし...」

 

『金木さん!』

 

何か焦っているような感じであった。

わかることと言えば、発信者の声は"女性"だ。

 

「え..誰?」

 

『今どこにいる!?』

 

彼女は名前を名乗らず、ぼくの居場所を聞き出す。

 

「え..ちょうど20区に...」

 

『ちょうどよかった』

 

 

 

 

『今すぐ来てくれない?』

 

 


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