東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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彼は隠していました

本当の気持ちを



寂心

 

 

文香side

 

 

それは雨の降る日でした。

私はいつも通りに古書店にいました。

大抵の人なら外に歩くことはないのですが....

その日はたまたま私の古書店に入って来たのです。

その入って来た人が、"346プロのプロデューサーさん"でした。

 

「どうぞ.....」

 

金木さんに名刺を渡しました。

受け取った金木さんはその名刺を見て、驚きました。

「346プロからなんだ....」とつぶやきました。

 

「そのプロデューサーさんから....."金木さんのお友達"が所属している346プロだと聞きました」

 

この前に金木さんにアイドルのお友達の写真を見せてもらいました。

『彼女たちの名前は、"島村卯月ちゃん"と"渋谷凛ちゃん"、"本田未央ちゃん"』と金木さんはおっしゃいました。

それで私はそのプロデューサーさんから"346プロ"と聞いた時、すぐにわかりました。

 

「そ、そうだね....うん」

 

金木さんは言葉を発した一瞬、

"寂しいお顔"をしました。

 

「っ.......」

 

私はその姿を見て、不安が私の口を塞ぎました。

言おうとしていた言葉が言いにくくなったからです。

 

「まさか文香さんがアイドルを....」

 

深い哀色。

そんな金木さんのお顔を見ていたら、私はこのまま黙って入られませんでした。

気を取り直し、口を塞ぐ不安を取り除き、口を開きました。

 

「私は....アイドルになったら、変われますでしょうか...?」

 

「....」

 

一体どういう顔をするのか心配しました。

悲しむお顔はもう見たくない気持ちが、ますますと溢れました。

しかし金木さんは悲しいお顔をせず微笑み、

 

「"いいんじゃないかな?"」 

 

金木さんは"手を顎をこするように触わりました"。

 

「...え?」

 

私は驚きました。

予想とは違う結果のでした。

 

「変わりたいなら、自ら進んだら変われると思うよ」

 

「.........」

 

「文香さんが変われたら、ぼくは"嬉しいよ"」

 

「.........そうですね」

 

私は"少し"微笑みました。

"その時の私"は嬉しく感じました。

でも時間が経つにつれて、金木さんの顔に違和感を感じ始めました。

金木さんの微笑みが、なんだか寂しそうに見えたのです

 

(......苦い)

 

頼んでいたコーヒーが砂糖を入れたにも関わらず、とても苦く感じました。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 夕方 ーーー 自宅近く

 

 

金木Side

 

 

「........」

 

ぼくは肩を落としながら、歩いていた。

落ち込んでいた。

 

(.........まさか文香さんが....)

 

あまりにもショックだったのか、喫茶店で聞いた言葉が頭に残る。

文香さんは持っていた名刺を見たが、ぼくが知っているプロデューサーさんではなかった。

 

(....あれ、もう着いた...)

 

気がつけば、ぼくが住んでいるアパートに着いた。

妙に時間感覚が狂っているように思えた。

住んでいる部屋は2階だ。

ぼくは上に続く階段を一歩づつ登る。

もし後ろに人がいたら、おそらく苛立ちを感じてしまうぐらい鈍いやつと思うだろう。

すると誰かが座っていた。

ぼくはその人を見た瞬間、

 

「志希ちゃん...?」

 

ぼくがそう呟くと、座っていた人が反応し「やほー」と笑顔で手を振る。

 

「なんで...いるの?」

 

「ちょうど学校終わったし、暇だから来たー」

 

彼女はいつも通りに、にゃははと笑う。

まさか学校に抜け出したのか?と思ったが、言う気力もなかったため聞かなかった。

 

「別に今日は泊まりはしないから、安心してー」

 

志希ちゃんは立ち上がり、「あけて〜」とぼくの肩を叩く。

ぼくは「はいはい...」と答え、アパートの鍵を開け、中に入る。

志希ちゃんは入った瞬間、「あ〜この匂いは落ち着く〜」と呟く。

 

(........)

 

やはり"先ほどのこと"がなかなか離れられない。

 

「あ、そうそう。あたし、"アイドル"をやるかも」

 

「え.....?」

 

志希ちゃんの発言に、ぼくは驚きのあまり声が出てこなかった。

 

「346プロの人に声をかけられて、これ渡された」

 

志希ちゃんはかばんから名刺を出し、ぼくに渡す。

その名刺の名前を見ると、文香さんが持っていた物と"同じ"だった。

今のぼくは「そうなんだ...」と答えるしかなかった。

 

「どうしたの?元気ないねー」

 

落ち込んでいることを気づいたのか、志希ちゃんはぼくに近づく。

 

「何か嫌なことでもあったのー?」

 

「な、なんでもないよ....」

 

嘘。

本当はあるんだ。

 

「そうかなー?志希ちゃんから見たらあると思うよ?」

 

「別に.......なんにも.......」

 

 

 

 

 

 

....あれ?

 

 

 

 

 

自分の頰に水が流れたような感覚がした。

ぼくはそれに手を触れると、それはただの水ではなかった。

気がつくとぼくは、涙を流していた。

自然と流していたんだ。

 

「あれ?どうして泣いているの、カネケンさん?」

 

志希ちゃんは驚き、頭を少し傾ける。

 

「なんで.....だろう....なんで涙が.....涙が....」

 

徐々に涙の量が増えてくる。

ぼくは手で拭くが止まらなかった。

 

「辛いこと....あったかな...?」

 

先ほどの文香さんの言葉が思い出す。

別に気にすることじゃないのに、なぜか思い出すんだ。

 

「悲しんでいるのかな.....ぼく...?」

 

「........」

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、志希ちゃんはぼくを"抱きしめた"。

 

 

 

 

 

 

「......!」

 

あまりにも驚いてしまい、言葉が出せなかった。

突然抱きしめられたのだ。

志希ちゃんの柔らかい肌。髪の毛から香るシャンプーの香り。

彼女はぼくの背中をポンポンと優しく叩く。

 

「カネケンさん知ってる?30秒ハグハグすると、1日のストレスのうち約1/3がなくなるって」

 

「.......」

 

ぼくは何も言わず、頷く。

 

「カネケンさんは優しいけど、抱え込むよね」

 

「.......」

 

ぼくは何も言わなかったが、志希ちゃんは続けて話す。

 

「あんまり抱え込みすぎると、カネケンさんだけじゃなくて、あたしもみんなも困っちゃうよ?」

 

「...........」

 

「だから、カネケンさんはあんまり抱え込まない方がいいんじゃない?」

 

「そうだね....」

 

「じゃあ、カネケンさんの悩みを聞いてあげる」

 

「..........」

 

彼女は抱くのをやめ、ぼくの肩に手を置く。

 

「別にゆっくりでもいいよ?」

 

彼女は笑顔で返す。

その笑顔を見たぼくは、ゆっくりと口を開く。

文香さんがアイドルをやること。

ぼくはそれを聞いてどう思ったのか。

ぼくは志希ちゃんに伝えた。

なんだか少し気分が楽になった。

志希ちゃんは「へーあのカネケンさんのお友達もやるんだー」とうんうんと頷いた。

 

「カネケンさんはその文香ちゃんがアイドルになることは嫌なの?」

 

確かにぼくが落ち込んだの理由は、文香さんがアイドルになることだと思う。

でもそれは嫌とは言えない。

 

「....違う」

 

「じゃあ、なんで?」

 

「....."離れたくないから"かな?」

 

「離れたくないかー」とぼくの頭を撫でる。

 

「確かに離れたくないよねーもしかしたら忘れられるかもしれないし」

 

「............うん」

 

よく考えてみれば、"一番嫌なこと"だ。

 

「でも、あたしはカネケンさんのことは絶対忘れないよ?だってアイドルをやっても、カネケンさんのところへ行くよ」

 

「....サボったりしないでね」

 

志希ちゃんの癖は失踪することだ。

何度かメールで宣言していたから。

 

「大丈夫ー。スカウトしたプロデューサーは優しいよ」

 

志希ちゃんはにゃははと笑う。

ぼくはその姿になんだか幸せに感じた。

 

「とりあえず、文香ちゃんに伝えとくね」

 

「え?」

 

ぼくはそれを聞いて驚く。

 

「だって、カネケンさん嫌なんでしょ?文香ちゃんと離れて、忘れられることが嫌なんでしょ?」

 

「う、うん....」

 

少し変に感じてしまったが、

嬉しく感じた。

そのおかげで、笑顔が戻ったような気がした。

 

「.....志希ちゃん」

 

ぼくは弱々しい声で、彼女の名前を呼ぶ。

彼女は「なにー?」と頭を傾ける。

 

「....ありがとう」

 

ぼくはそう言い、微笑んだ。

そして再び涙が流れた。

 

「もーカネケンさんは泣き虫ー」

 

志希ちゃんは嫌な顔もせず再び、ぼくに抱きつく。

それから志希ちゃんはぼくが涙を止まるまで、そばにいてくれた。

 

 

 

 

 

 

ぼくは、久しぶりに"幸福"を感じた。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 朝 ーーー13区

 

 

今日は大学はお休みで、天気がいい。

ぼくがここに来たのはなんとなく気分転換しに来たのだ。

まだ昨日のことが胸に残っているが、

志希ちゃんのおかげで、気分が軽くなった。

それでももしできるなら、今日中にその残っているものを取り除きたい。

それでここに来たのだ。

 

(やっぱり人がいるよね....)

 

やはり休日ということで、人波が大きかった。

 

 

(.......ん?)

 

しばらく歩いていると、

ぼくは"あるもの"を見つける。

 

(なんだろう?これ?)

 

ぼくはそれを拾い上げる。

『DARK PREDICTION』と書かれたノート。

一体何が書いてあるんだろうと思い、開いた見た。

 

「..........」

 

しばらく見た後、そっとノートを閉じる。

そのノートの内容を一言で言うなら、"拾ってはいけないもの"と言えばいいだろう。

そのぐらい見てはいけないものだった。

 

(ど、どうしよう.......)

 

ぼくは焦り出す。

これをどうすればいいのかわからなかった。

 

(とりあえず...交番に...)

 

ぼくは移動をしようとしたその時、

 

「あ....」

 

後ろから誰かがこちらを見て、気づいた。

その声を聞いた瞬間、背筋が凍った。

 

(み、見られた....)

 

視線を感じる。

明らかにこのノートの所有者だと思われる。

ゆっくりと振り向くと、"ある少女"が立っていた。

 

「あ、あ、あ......き、き、貴様!...我がグリモワールを...」

 

普通の人とは違い、ゴシックロリータの衣装に身を包んだ緋眼の少女がぼくの前に立っていた。

ぼくはその人を見た瞬間、一体誰なのかわかった。

確か"シンデレラプロジェクト"のアイドルの。

 

 

「"神崎"...."蘭子"?」

 

 

 

 

 

 


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