Fate プリズマ☆アンリ   作:雨の日の河童

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少年は新たな日常を手に入れる


第2話

士郎side

「ただいまー」

 

時刻は午後七時。

家に帰るとセラがすでに夕食の用意を始めていた。

 

「お帰りなさい、士郎」

「おかえり、シロウ」

「ただいま、二人とも。セラ、手伝うよ」

「いいんです!これは私の仕事ですから士郎は座って待っていてください!」

「でも、一人より二人でやった方が早いだろ?」

「もう、そうやってまた私の仕事を……」

 

袖をまくり、念入りに手を洗う。

 

「今日は鮭ときのこのバターホイル焼き、小松菜の和え物とお味噌汁ですので」

「わかった、なら鮭の方は俺がやるよ」

「頼みます」

 

 

鮭の臭みを取るため塩をまぶして十分ほど放置。

しめじをほぐし、野菜を薄く切る。

鮭の切り身から出た水分をふき取り、塩コショウで味付け。

後はホイル巻いて蒸し焼きに。

 

「あ、お兄ちゃんおかえり」

「ただいま、イリヤ。もうそろそろご飯だから」

「うん、わかったー」

 

トタトタと自室に向かうイリヤを見て今朝のカードを思い出した。

 

「イリヤ、ちょっと聞いていいか?」

「?」

「イリヤの机の上に合ったカードなんだけど」

「え!?」

「いま、ああいうの流行ってるのかなって」

「う、うん!?その、は、流行ってるんじゃないかなぁ!!」

 

何だかひどく動揺している。

……見られたくないものだったのかも。

 

「そうか。あんまり無駄遣いするなよ?」

「うん。あ、そうだ今の内に宿題終わらせてくるから!!」

 

ドタドタと今度は急いで階段に上っていった。

 

「イリヤさんたらあんなに急いで。そんなに宿題が多いのかしら?」

 

不思議そうに首を傾げるセラ。

 

「ま、イリヤなら大丈夫」

 

とのんきにリズは返した。

 

 

 

イリヤside

『イリヤさん、これはマズイですねぇ』

「凛さんにばれたら冗談抜きで大変なことに!!」

 

ああもう、うっかりしていた。

カードってどんな感じなのかなぁと眺めている内に眠くなりそのままホルダーに直さず寝てしまいそれを凛さんにいうと

 

『はぁ!?カードをホルダーに直さず眠ってしまったぁ!? ……まったく。イリヤ、これからは気をつけなさい。次したらデコピンじゃなくて私のガンドだからね?』

『いたっ!?』

 

「ガンドって絶対痛いよね?」

『それはもう!デコピンの比じゃありませんよ』

「ひぇ~」

 

見られたのは弓兵のカード。

ああ、昨日に戻れるなら戻りたい!!

 

イリヤー、ご飯出来たぞー。

 

「はーい、今行く~」

 

とほほ、自業自得なのだから仕方ない。

今夜、凛さんに報告しよう。

 

気分がガクッと下がりながらも私は夕飯を食べる為、一階へと降りていく。

 

 

 

 

因みに、夕飯はすごくおいしかった!!

 

 

 

 

 

 

 

士郎side

「もうこんな時間か」

 

どうやら、勉強に没頭していた様だ。

英語の辞書を閉じ一通り自身の和訳を見直す。

 

「うん、たぶん大丈夫だろう」

 

仮に間違っていても今度休みの日に冬木の虎に会うのでその時に質問しよう。

さて、明日も早いし眠るとしよう。

 

ベッドに入りゆっくりと目蓋を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄を見た。

ある日突然奪われた。

――まずは目だ――

貧しくとも幸福が最低限約束された生活。

――おい、左目は残しておけよ――

どうやら、俺は悪魔だったらしい。

――やかましいな。喉をつぶしておいた方が――

自身も知らなかった事実に隣人は嘆き、嫌悪し、はては憤怒した。

――そうだな。息ができればいいだろう――

なぜ?俺は悪魔じゃない!! やめてくれ。

――手足の腱を切れ。腱だけだぞ、そいつの体は村みんなの物だ、全員に残しておかないと――

痛い痛いイタイ!? なんでどうして? どうしてこうなった? なぜ? 何故? ナゼ?

身体に呪いが刻まれる。

――舌も切っておけ。死なれてたまるか――

隣人も友も、果ては家族でさえ罵声を憎しみを怒りをぶつける。

――ざまあみろ。悪魔め、よくも――

どう……して……?

 

 

 

 

 

 

「よう、こんな世界に何の用だ?」

「ッ」

 

気づけば夜の街に出ていた。

ここは……新都?

冬木で発展した都心部でかなりの人が住んでいる、はずなのに。

(人の気配がない?)

 

「おーい、聞いてるのか?衛宮士郎」

「お前は……」

 

目の前には黒い影。

辛うじて、人型。

顔がないのにどんな表情を浮かべているのか分かってしまう。

 

「ん? オレか? 名前はないんだが呼び名ならある」

ま、名前負けしているけども。

 

きひひ、影は笑う。

 

「アンリマユってんだ。気軽にアンリって呼んでくれ」

 

この世全ての悪(アンリマユ)

ゾロアスター教の悪神。

確か、中学で習ったような気がする。

 

「で、単刀直入で聞くんだけど」

どうしてこの世界に来た?

 

悪神は笑いながらもその声は何処か咎めるように。

 

「……知らない。気づいたら此処にいた」

 

そう、俺にもわからない。

寝て起きたらここにいた。…………とんでもない悪夢を見たが。

 

「んじゃ、何か心当たりは?」

「そういえば、カードを触った」

「カード?」

 

そうだ。カードを触れたこと以外考えられない。

 

それを聞きアンリは、あーとかえーとか言いながら頭を掻いた。

そして、意を決したようにこちらを見据える。

 

「えー、誠に残念なお知らせ。お前、オレと同化しちゃいました」

「…………は?」

「正確には、オレがお前に同化した、だな。イヤー、運がなかったな」

 

ケラケラと影は笑う。

 

えっと、つまり?

事態を飲み込めない俺は簡単な説明を求める。

 

「つまりだな、オレとお前は一心同体。これから、毎日一緒ってこと」

ご愁傷さま。なんてちっとも悪びれることなく謝る、アンリ。

 

「なんでさ!? カードに触っただけだぞ!?」

 

訳が分からない。何をどうしたらそうなるのか見当もつかない!

 

「だとしても、結果こうなんだ。諦めろ」

 

アンリは笑いながら手を差し出す。

「あ」

 

……俺の馬鹿。

つい条件反射で握手してしまった。

 

「契約はここに成立した。これから面白おかしくそして、大切な物のため頑張ろうぜ」

 

それは影から少年へと変貌する。

影は人の形を成した。

髪の色や身体の呪い、服装以外は正にそれは自分だった。

 

「さて、どうやら起きる時間の様だぜ? まぁ、また後で会えるし今夜はお開きってわけで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ます。言いたい事、聞きたいことは色々あるけどまず一言。

 

「……なんでさ」

 

自室の布団の中あまりの出来事にため息と独り言がこぼれたのであった。

 




衛宮さんちの今日のごはん。毎度、思うんですけど凄くおいしそうですよね、あれ。
誤字脱字感想お待ちしております。
また、此処がおかしいなどの指摘もお待ちしています
(特に口調が難しいので)

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