身体は剣で出来ている。
気が付けば俺は荒野に立っていた。
何処までも雲がかかった空。
辺りには担い手のいない無数の剣が墓標の様に刺さっている。
「あ」
そうして視線をあげて気が付いた。
浅黒い肌に色素の抜けきった髪に鷹のように鋭い目。
きっとあの目で捉えられた獲物は逃げる事は出来ないだろう。
限界まで鍛えた体は黒のボディーアーマーを纏い歴戦の猛者のようだ。
彼は誰もいない剣の丘で独り立っていた。
「さて、こんな殺風景な場所に誰かと思えば貴様か衛宮士郎。何、だいたいのことは察している」
男は。いつかどこかの俺の成れの果てが話しかけてくる。
そうして俺の側に来て目の前の荒野に手をかざす。
すると、俺の前に四つの剣が現れた。
「好きな剣を抜け。それが今のお前に必要な『モノ』なのだろう」
錬鉄の英雄は皮肉に笑いながらこちらを見る。
青の柄に黄色の鍔のロングソード。その剣には誰にも破ることは出来ない誓いが施されている。
交差した白と黒の夫婦剣。その持ち手には紅い宝石が巻いてある。
黒の刀身に紫色の鞘。その鞘には桜の意匠が凝らされている。
雪のように白い大剣。その大剣は無骨だが誰かを守る意思を持っている。
「ああ、それともお前にはあっちの方がいいか?」
錬鉄の英霊の視線を追う。
無限に広がる荒野のその奥先に『ソレ』はあった。
禍々しい奇怪な短剣。その剣はこの世全ての負を濃縮した悪魔の牙。
全身が震える。
今までに感じた事のない恐怖が全身を駆ける。
あの先は地獄だ。もし超えてしまえば二度と帰れない奈落。
「ふ。冗談だ。お前も其処まで愚かではあるまい」
怯えた俺を見て満足でもしたのか。
何事も無かったかのように錬鉄の英霊は此方を見る。
・・・・・・何だかその態度が癪に障った。
「あまり迷っている時間はないぞ?そら、もうそろそろ雲が明ける」
むっとしている俺を急かす弓兵。
その言葉に慌てて剣を握る。
俺が無意識で握った剣。
それは・・・・・・。
ぱちりと目が覚める。
『よう、どうだった?収穫はあったか?』
「・・・アンリ」
アンリの声で元の世界に帰ってきたことに気づく。
『ま、いろいろ言いたいことはあるがひとまず・・・・・・』
「お兄ちゃん、起きてる?」
アンリの言葉を遮るようにイリヤが入ってきた。
勿論、偶然だ。
「イリヤ?」
「?どうしたの、お兄ちゃん?もしかしてまだ熱がある?」
此方を気遣うように手を伸ばし額に触れてくる。それをきっかけに追体験した記憶を思い出し。
「イリヤ」
「・・・・・・ふぇ?」
気が付けば抱きしめていた。
「お、お、お兄ちゃん!?」
慌てた声が聞こえるがそのまま無視する。
ドクンドクンとイリヤの心臓の音が心地良い。
温かいというより熱い体温。当たり前のことなのに涙が零れそうになる。
「あ、なるほど!これは夢なんだね!?うん、そうだ夢だよ、夢!!ああ、早く起きろ私!あ、でもやっぱりもう少しこのままでも・・・・・・」
「イリヤ」
あわあわと目を回したイリヤの名前を呼び視線を合わせる。
「必ず守るから」
「え?」
驚いた顔が視界に広がる。
「悪いな、起こしてもらって。俺もすぐ行くから。先に行ってくれ」
「あ、うん。わかった」
不安そうな顔のイリヤに笑いかけながら見送る。
『・・・・・・どうやら上手くいったみたいだな』
アンリが確認する。
「ああ」
それに対する返答は短い。
それでもアンリには十分だ。
『なら、一丁気張るとしますかぁ!』
勿論だ。
さぁ、最後のカード回収を始めよう。
感想誤字脱字お待ちしています。
いや、それにしてもPS4/VRでマシュとイチャイチャできるゲームを開発中だとは・・・。
買わなければ(使命感
あと今度はエドモンが来ますように。