Fate プリズマ☆アンリ   作:雨の日の河童

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さぁ、終わりの先を見に行こう


第1話

「ええ、では背中合わせで行きましょう。・・・・・何というか、今のあなたの顔を見たらひっぱたいてしまいそうなので」

 

最後の最後に心残りが消えた。

ああ、まったくもって最高のエンディングだ。俺には上等すぎる。

高揚する気持ちを隠しながら踵を合わせた。

 

「せっかちですね。ここまでしたのですから、同時にスタートしましょう。三秒数えたら走り出すというコトで」

 

幸せだった。

望んだ願いは永遠に続けることも不可能じゃなかった。それでも

 

「あ、抜け駆けして二秒目に走り出す、というのはなしですよ。決闘ではないんですから」

「あっはっはっは。甘いな、オレだったら一秒目で逃げ出してる。相手が三秒待っている頃にはトンズラだ」

 

彼女には明日に生きて欲しいから。

 

「そうですね。私も、三秒待った後でその背中を狙い撃ちます」

 

時間だ。

さぁ、進めバゼット(マスター)

 

二人は自身の帰る場所へ走り出す。

衛宮士郎としての殻は崩れオレから私へと戻る。

さあ、夢から覚める時間だ。

虚無へと、あの何もない世界に帰ろう。

 

 

終わらない聖杯戦争は今、二人が望む最良の形で幕を閉じた。

少しばかりのボーナスステージを残して。

 

 

 

 

 

木々が生い茂るなか白黒の陰陽剣を持った男と男装の麗人が死闘を繰り広げる。

白刃が麗人の首を刈り取ろうと横薙ぎに振るわれ、拳にはじかれる。男は思いもよらぬ反撃を受けそのまま体勢を崩す。

その一瞬のスキを見逃さず彼女は自身の必殺の一撃を叩き込む間合いへと踏み込み、

 

「はぁッ!!」

 

己の拳に刻んだ硬化のルーンが男の身体を吹き飛ばす。

土煙をあげながら数m吹き飛びそのまま弓兵は動かなくなり、その姿をカードへと変えた。

今回、教会の依頼でクラスカードと言われる強力な力の源を回収する任務に就いたバゼット。

何でも、そのカードは全部で七枚ありそれらすべてに英霊と同じ力を発揮するほどの魔力が含まれている為、封印指定でありながら執行者である自分に依頼が舞い込むのはある意味当然の結果だったのだろう。

 

「クラスカード弓兵(アーチャー)を回収」

 

これで二枚目。

最初のカードは槍兵(ランサー)だった。

どちらも確かに強敵だった。並みの魔術師では相手にならないだろう。

それでも勝てない相手ではなかった。

 

「ん?」

 

ふと、下を見ると別のクラスカードが落ちているのに気づき拾い上げる。

 

復讐者(アヴェンジャー)?」

 

報告にはないクラスに少しばかり困惑するバゼット。

回収すべきか、否か。

 

「あ」

 

だが、そんな暇など無かった。弓兵のカードと同化してしまったからだ。

 

「・・・・なんだったんでしょうか、今のは。一応、報告すべきでしょうね」

 

信じて貰えるかは怪しいが報告しよう。そう考えながら、バゼットは依頼人の元へと向かうのだった。

 

その数日後、任務を解かれるとはこの時思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「士郎、イリヤさんを起こしてもらえますか?」

「わかった」

「いってらー」

「リーゼリット!!また貴方は朝からお菓子ばっかり食べて!!」

「む、そんなにおこらない。セラもいる?」

「いりませんっ!!」

「あはは・・・・」

 

家政婦のセラにイリヤを起こすよう頼まれる。リズは朝からお菓子を食べてセラに怒られている。衛宮家の日常風景としていつもの事なのでもう慣れたが。

階段を上り、部屋に入る前にノックをする。

 

「イリヤ、入るぞ?」

 

案の定、すうすうと規則正しい呼吸を繰り返す妹。あんまりにも気持ちよさそうに寝ているので起こすのが躊躇われてしまう。

いや、此処は心を鬼にして

 

「ほらイリヤ、朝だぞ。起きろー」

「う~ん。あと、五分だけー」

「なんてベタな・・・」

 

可愛らしい寝言に思わず笑ってしまう。

 

「まったく、五分だけだぞ~」

「えへへへ。・・・ありがとう、おにいちゃん」

 

嬉しそうな声を出して再び規則正しい寝息を立て始める。

 

「さて、セラの説得に・・・なんだこれ?カード?」

 

部屋から出ようとして机に置いてあったカードに目が留まる。

 

「イリヤのか?」

 

小学生の妹は魔法少女が好きでDVDなどお小遣いで買っているのだがその付録か何かだろうか。

 

「アーチャーとアヴェンジャー?」

 

一つは弓を引いた少女の絵、もう一つは鎖で身体を縛られた異様な男の絵。

 

「・・・・」

 

試しに、不気味なアヴェンジャーのカードを手に取り

 

「がっ!?」

 

手に焼けた火鉢を当てられたような痛みが走る。

 

「っ!!って、あれ痛くなくなった?」

 

が、それも一瞬で終わる。

先程の痛みはどこへやら、今は全く痛くない。

 

「・・・・何だったんだ、今の」

「う~ん。・・・・おにいちゃん?って、わわ!?今すぐ出ていってー!!?」

「なんでさ!?」

「う~、寝起きのだらしない恰好を見せたくないの!お兄ちゃんの鈍感!!」

「ちょ、わかったから。出るから枕を投げようとしないでくれ!!」

 

ドタバタと急いで下の階に降りる。

 

「まったく、今更だろうに」

「何が今更なのですか、士郎さん?」

 

黒い笑顔でセラが出迎えてくれた。・・・なんでさ。

 

「士郎、イリヤにイタズラでもしたの?」

「士郎、貴方っていう人は・・・!!」

「ちょ、ご、誤解だ!」

 

セラは結構思い込みが激しい方で一度火が付いたら大変なのだ。

どうにかこうにか、誤解を解いている内にイリヤが来て一緒に説明して事なきを得た。

 

「それじゃ、行ってきます」

「行ってきまーす」

「はい、二人とも気をつけてくださいね」

「いってらー」

 

愛用の自転車を押しながらイリヤと途中まで一緒に行く。

 

「あ、美遊さんだ」

「友達か?仲良くするんだぞ」

「もう、当たり前だよ!!」

「ははは、そうか。それじゃ、気をつけて学校行くんだぞ」

 

はーいっと元気に返事をするイリヤを見送り学校へと向かう。

 

 

 

 

 

 

いつの間にか今朝の出来事は忘れて。

それが衛宮士郎の人生に大きな転換を与えることになるとは知らずに。

 

 




完全に思い付きで書いているので更新はかなり遅いです。
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