どうぞ!
夜空の星々は明るくて見えないけれど、家の灯、車の灯、街灯がそれぞれの色を輝かせながら揺れている
自然の幻想的な美しさと異なり、人が作り出した風景はいつの時代、どんな場所でも美しい。
けれど、
「本当に久しぶりだね!四年ぶりかな?」
隣に君がいるからだろうか?
君が隣にいるだけでこの輝きが霞む。君の笑顔が何よりも眩しい。君の笑顔を見るだけでこんなにも気恥ずかしさを感じる顔がだんだん紅潮していく鼓動が早くなる。
この感じがとても心地よいと思える。
こんなに好きだという気持ちがあるのに、日々増すばかりなのに、僕は隣にいる彼女とのこのたった30cmの距離にまだ甘えている。
例えるなら、星空の星々の中でも控えめに輝く小さな星の気持ちのよう。
隣に強く輝く星の側で控えめに輝くことに甘んじている。一緒に強く輝くことができない臆病者。
「そうだね。僕が小学生の時にお別れしたからね。」
夢のため、お母さんのためにフランスへ飛び立った時は今でも辛い思い出の一つだ。
「あの時は、すごく悲しかった。よみくんとお別れなんて信じたくなかったよ。あの頃の私ってよみくんにべったりだったよね。」
「うん、そうだった。どこに行こうといつも一緒だった。トイレに行くのも付いてきたこともあったよね。」
「えぇー?!そんなことあったかな〜?アハハハハ」
けどね、僕ものぞみちゃんにべったりだったよ。何かをしようとする時は必ずのぞみちゃんと一緒にやりたかった。フルートを始めた時だって、のぞみちゃんと一緒にやりたかったから誘った。
「あっ!よみくんよみくん。ここ覚えてる?」
そこは公園だった。僕らが幼い頃、フルートの練習やおにごっこなどした懐かしい場所
「昔と何一つ変わらずにあったんだ。嬉しいな」
「ふふ♪私ね。たまにここでよみくんのこと思いながらフルート吹いてるんだ。」
えっ?
「私にとって君は、大切な人だから」
それって、
「さっ!行こっか?もうすぐよみくんの家に着くよ。」
のぞみちゃんはそう言って足早に歩いて行ってしまう。
僕は呼び止めることもできずにそのまま彼女の後ろ姿を見つめる。
「どしようもないほど、僕は臆病者だな。」
僕は彼女を追うために駆ける。
少年は知らない。
少女の耳が真っ赤に染まっていることを
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「着いたよ!」
あれから数分で僕の家の玄関に着いた。
家に着くまで僕らは終始無言で歩き続けた。
「ありがとうね。家まで連れて来てくれて。」
「いいよいいよ。困ってる人がいたら助けてあげるのが、当たり前でしょ?」
「そうだね。のぞみちゃんなら絶対そうする気がする。」
「そうかな?誰でも困ってる人がいたら助けてあげると思うけどなぁ?」
誰でもではないと思うな。他人を助けることなんて誰でもできることじゃない。他人と関わるのは誰だって怖いけれどその怖いと思う心の壁を乗り越えようとする勇気を持ってる人と持ってない人で分けられる。
その勇気を持ってない人が魅力的ではないとは言えないが、やっぱり勇気を持っている人の方が魅力的だし美しいと思える。
「それじゃあ、バイバイよみくん。」
彼女は僕に背を向けて帰って行く。
「バイバイのぞみちゃん」
彼女が帰りたいのなら呼び止めるなんてことをしたくはない。まだいたいっていうのは僕の我儘だ。それを言って彼女を困らせるのは嫌だ。
「よみくん!」
僕は呼ばれたことに驚きビクッとしてしまう。振り返るとのぞみちゃんがすぐ後ろにいてまた驚く。
「明日!明日もしも時間が空いてるならどこか遊びに行かない?」
頰を少し朱に染めながら言うその姿がとても愛おしく感じる。
「もちろん」
僕の返事を聞くと両目に星々を輝かせ
「明日の11時によみくんの家に行くから待ってて!」
それだけを言うと彼女は駆けていく。
僕をその後ろ姿が見えなくなるまで見つめたいた。