君に届け(仮)   作:風霧奏

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6話

 

 

ここどこだ??

 

星詠は絶賛迷子であった。

 

 

「伏見に行くつもりが、なんで金閣寺の近くなんだろう?てか僕はどこに今いるんだろう??」

 

 

もう時刻は既に20:00。

お腹空いたなー。

 

 

そんなことを考えていると不意に風を感じた。僕は誰かに導かれているのだろうかと錯覚をした。なので、導かれるままに歩み始めた。

 

 

伏見稲荷神社に着いた。ここまで来れば家までの道はわかる。

 

 

♪〜♪〜♪〜♪♪♪〜♪

 

 

フルート?

 

 

僕は音がする方に行くとそこには少女がいた。黒い綺麗な髪を後ろでショートポニーテールにし、目を閉じながらフルートを吹いていた。

 

 

綺麗な子だなぁ。

 

 

僕は見惚れていたけど、音色が悲しそう。聞いていてこっちまで胸を締め付けられる。

 

 

「なんで、そんな悲しそうに吹くの」

 

 

居ても立っても居られなくなった。

 

 

振り返った彼女は、

 

彼女の瞳は潤んでいた。

 

頰には涙が道を引いていた。

 

 

涙を流しながら演奏していた。だから放って置けなくなった。

 

 

だってこの子は

 

 

僕にとって大切な女の子だったのだから

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「なんで、そんな悲しそうに吹くの」

 

 

突然聞こえた声に驚き振り返るとそこには黒くて長い髪が風に靡いて月の光を受けてキラキラしていた。顔は可愛らしいけれど、どこか不思議な雰囲気を醸し出していて妖艶な香りもする。

右手には頑丈そうな黒いケースを持っていた。

 

 

「なんで、涙を流しながら吹いているの?辛いの?辛いのにフルートを吹くの?音楽は悲しいから吹くものじゃないよ。」

 

 

声からして男の子だけど、明らかに外見女の子っぽいし、でも

 

 

「君はなんでフルートを手に取ったの?」

 

 

この子の喋り方はどこか懐かしく感じる。

 

 

『のぞみちゃん!のぞみちゃん!いっしょにフルートやろう!!』

 

 

幼い時、まだ私が幼稚園児だった時、フルートを初めて見た時、初めて夢を持った時、初めて恋をした時。

 

 

「よみくん?」

 

 

私はつい今しがたまで忘れていた名前を呟いた。忘れられない思い出を作ったのに忘れないって、誓っていたのに、ずっと側にいたいと願った。

想い人が今目の前にいる。

 

 

 

「僕はまだのぞみちゃんとの約束覚えてるよ。」

 

 

彼ははっきりと私の名前を呼んだ。

大切なのに、忘れちゃダメだったのに、約束まで破ったのに、そんな私なのに

 

 

「ただいま、のぞみちゃん」

 

 

こんな私がなんでこんなにも幸せな気持ちになっているんだろう。視界がボヤける。頰を伝う感触。暖かいものが溢れ出してくる。

 

 

「頑張ったね。辛かったよね。傷ついたよね。苦しかったよね。泣いて良いんだよ。涙は流すためにあるんだから」

 

 

彼は優しく抱きしめてくれた幼い日のあの頃のように、だから、

 

 

 

 

「おかえり。よみくん」

 

 

私は笑いながら泣いた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

しばらくして、のぞみちゃんは泣き止んだ。

 

「服を汚しちゃってごめんね。よみくん」

 

 

「ううん、気にしなくていいよ。」

 

 

「久しぶりにおもいっきり泣いた気がするな。少しスッキリした!」

 

 

のぞみちゃんは笑顔でそう言う

 

 

のぞみちゃんには笑顔が一番似合ってる。改めてそう思った。

 

 

「よみくんはいつ帰って来たの??」

 

 

「今日帰って来たばかりだよ。」

 

 

「えっ?!でもでもなんでこんな時間にここにいるの??」

 

 

「えーっと、道に迷ったんだよね。のぞみちゃん僕の家ってどこだっけ??」

 

男として情けなく感じる。

 

 

 

「えっ?!携帯とかは、持ってないの?」

 

 

「解約しちゃったからもう持ってないです。」

 

 

 

「そうなんだ。それは災難だったね。よしっ!それじゃよみくんの家に行こう!」

 

 

我ながらすごく情けない、女の子に家まで送ってもらうなんて、

 

 

そんなことを考えながら僕らは歩き出した。

 

 

 

 




遅くなりました!ごめんなさい!



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