吹奏楽コンクール京都府大会が開かれた京都コンサートホールでは、
「はーい、こっち向いてー」
『いぇーい☆』
「滝先生」
「なんでこんなところいるんですか」
「賞状は誰か持って」
「私はいいよ」
「あすか先輩。頭もう少し下げてください。うわぁぁぁ」
季節外れに冬服を着た少年少女たち
京都府立北宇治高校吹奏楽部は全日本吹奏楽コンクール京都府大会で金賞を獲り、関西大会への出場が決まり誰もがその喜びを分かち合っていた。
そんな中一人の少女は、戸惑っていた。
『あの北宇治が金賞で関西大会なんて、悔しい。』
去年まであんなに腐っていた吹奏楽部が、たった一年で関西大会なんて‥
私バカみたいじゃん。
少女はもう一度彼らを見つめその場を去った。
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歓喜に満ちた雰囲気の中、松本美知恵は、自分のことのように涙していた。
彼女が北宇治に赴任して吹奏楽部の副顧問として初めての金賞初めての関西大会出場だ。これに感動できないほど彼女は軍曹先生と言われるほど冷酷ではない。
そんな彼女に電話がかかって着た。
彼女は涙を拭い電話に出るとその相手は高校時からの親友夜月奏だった。
『もしもし美知恵!北宇治優勝したんだね!おめでとう!』
相変わらず、情報を集めるのが早い。
「えぇ、ありがとう。でもこれは彼らにとってまだスタートラインに過ぎないわ。目標は全国大会だもの。」
『おぉー、いいねいいね!ロマンがある!私そういうの好きだよ!!』
うるさすぎるくらい元気なやつだ。
『そんな美知恵に良いこと教えてあげる。息子、今日フランスから帰国してくるの!!しかも!最高のお土産を持ってね!』
奏の息子は確か、音楽を勉強するために小学6年生の時からフランスへ行っているのは聞いていたが、最高のお土産とはどういうことか?奏が言うことだから相当凄いのだろう。
『あと!夏休みが終わって少ししたら息子を北宇治に通わせるから!よろしくね!それじゃぁね!』
「あっ!おい!切れてしまったか。」
どういうことだろうか?と考え出した時
「松本先生!集合写真撮りますよ!早く早く」
と女子生徒3人に手を引かれ輪の中に加わる。
今は、この喜びを分かち合おう。
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「2年ぶりの日本だ。」
僕は関西国際空港に到着した。
検問所を抜けゲートをくぐるとそこには、
「おかえりー!星詠!」
母さんが笑顔で待っていた。
「うん。ただいま。」
僕は飛び込んでくる母さんを受け止め抱き締めた。
「ヨーロッパツアーお疲れ様でした。あなたは私の自慢の息子だよ。」
「ありがとう。」
これだけのために
僕の夢は母さんの夢だった。
母さんが果たせなかったことを成し遂げること。
それで母さんが喜んでくれるなら。
母さんが幸せになってくれるならと。
僕は母さんに恩返しができたのかな?
このために、僕はフランスで頑張ってきたのだから。
次回から原作キャラとの出会いに入ります。