君に届け(仮)   作:風霧奏

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2話

『20:50発、東京行きは7番搭乗口にて、搭乗受け付けを開始します。繰り返します‥‥‥』

 

 

星詠は目を見開いた

 

 

もうそんな時間か

 

 

「懐かしい夢を見たな。」

 

 

僕は椅子から立ち上がり背伸びをする。

 

 

何年ぶりだろうかあの夢を見るのは、最近は忙しくて見ることはなかった。以前はしょっちゅう見ていた気がする。

 

 

あの出来事からもう2年

 

僕の髪も身長は少し伸び、声も前よりも低くなった。

けれど、僕のそばにあるこいつはあの時と変わらない。

 

 

「あれからもう2年‥か。」

 

 

そうだ。もう2年も過ぎたのだ。

 

あれから色々あった。ここへ戻り、己の技術をもう一度磨き直し己をさらなる高みへと届くように練習を続けた。

 

 

その甲斐あってか皆に認められ、世界中から賞賛された。

 

 

あの時、母さん喜んでくれてたな。

 

 

 

 

あの時母さんと一緒にコンクール巡りをしなければ、京都府大会を見に行かなければ、あの音色を聴かなければ、今頃僕は何をしていただろう?

 

違う夢は見つけられなかっただろうな。

 

音楽から逃げていたのかな?

 

音楽を嫌ったのかな?

 

音楽を‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忘れていたままだったのかな‥?

 

 

 

 

 

けど、僕はあの音色に導かれた。

 

そしてこうしてまた、ここで音楽を続けられた。

 

 

『夜月星詠様、間も無く受け付けが終了してしまいますのでお早く。』

 

 

言われて僕は慌てて相棒が入った鞄を持って、飛行機に乗り込んだ。

 

案内役の人に言われるまで気づかなかったよ。危ない危ない。

 

 

僕はCAにチケットを見せ椅子に案内してもらった。二階にある8席しかないファーストクラスだ。これでも僕はお金持ちだ。エコノミーでもいいがせっかくファーストクラスが使えるし、それに何よりこいつをできるだけそばに置いておきたかったから。

 

 

席に着き、ウェルカムシャンパンを頂き一口飲む。日本では違法だけどフランスでは16歳から飲めるので、これは当たり前だ。まだあまりシャンパンの味にはなれないけれど、この匂いは少し癖があって好きだ。

 

しばらくシャンパンを楽しんでいると機体が動き出したので、もうすぐ離陸するのだろう。

 

 

僕は外の景色を見ながら、ここでの出来事を思い出す。一度は逃げ出した場所なのに今ではここを旅立つのはとても名残惜しい。悲しい。

 

 

そして離陸準備が整ったのか機体が停止した。

 

 

「フランスはとてもいい国だったな。また来たいな。」

 

 

機体が急激にスピードを上げ離陸する。これから10時間以上の空の旅だ。

 

 

 

「さよなら、第二の故郷

今いくよ。日本!」

 

 

僕の潤んだ瞳には、これから起こることに目を輝かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ダッタン人の踊りいいですよね!

二期目の展開とても気になりますー!!

ちなみに僕は実はフルートを吹いてました!

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