インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 今話は久し振りなキリト視点。前話でキリトが眠った直後の話ですね。

 そしてキリト視点は、BLEACHで私が最も好きな場面の引用。前話の後書きとこれ、そしてサブタイトルで、もう分かった人は多少いるだろうなぁ……

 今回の後書きは、リーファ説教後のキリトの状態と今話の意図の解説の長文です。ご参照下さい。

 文字数は約一万九千。

 ではどうぞ。




第七十七章 ~尊バレシ醜キ本能~

 

 

 レベルやステータスの面で絶対的に勝っていて、この世界で戦い抜いて来た経験全てを総動員しても、リー姉に勝てなかった。

 リアルでも、人体実験の影響で下限がかなり上がっている俺の方が直姉よりも身体能力で上回っていたのだけど、武道を習い始めた頃からこれまで組手ではただの一度も勝った試しが無かった。思えばリー姉が組手で勝負を掛けに来たのも、武器を使うとレベルや性能差が出るからと、俺に勝つ可能性が最も高い方法だったからでもあるのだろう。

 同時に、俺の欠点を克明にする事で、多くの人の命を左右する選択肢の中から選んだ答えが毎度絶対正しい事など無いと伝えたかったのかもしれない。完璧ではないんだから、と。

 そして、全てを一人で背負い悩むのではなく、それを自分達にも分け、知恵を出し合おう……そう言いたかったのかもしれない。

 そもそもプレイヤーネームからして俺にとって特別な意味を持つ名前からもじっていたのに、《ビーター》などで振る舞っているのは《織斑一夏》としてだった。リー姉に泣きついたりした時も、表向き《桐ヶ谷和人》という彼女の弟としてだったけど、それでも意識や思考は《織斑一夏》としての側面が強かったように思う。アキ兄――――アキトを殺そうとした時、二度も『家族』関連で躊躇ってしまったのがその証拠。

 結局俺は覚悟が出来ていなかった。

 《桐ヶ谷》家に引き取られて直姉の義弟として生きていく覚悟も出来ていなかった。アキトと対峙した時、情を掛けずに殺す覚悟が出来ていなかった。

 だから俺は桐ヶ谷であり、織斑でもあった。

 立場としては《桐ヶ谷和人》なのに、立ち振る舞いや意識が《織斑一夏》なら、それはちぐはぐでも当然だ。

 自分自身、矛盾の塊だとは思っていた。白に指摘された事で戦う理由も矛盾していて、曖昧に過ぎていたのだとも自覚していた。

 けれど……俺は戦う理由とかよりも、まず在り方そのものからして矛盾していたんだと、今回の事で嫌というほど理解させられた。

 

 

 

『漸く理解したか、この莫迦《王》が』

 

 

 

 頭を撫でられながら、凄く怠いけど、でも気持ちがスッキリしたからか心地いい疲労感に身を委ねてすぐに落ちた微睡の中でゆったり思考していると、ふと呆れたような声音で、俺のものでは無いけど俺の声が脳裏に響いた。

 

 瞼を開ければ――――そこは、【ホロウ・エリア管理区】では無かった。

 

 深淵とすら思える黒い雲に覆われた天。雲から降り注ぎ積もる黒い雪。白く荒れ果てた大地。散らばる一人分の人骨。鎖で雁字搦めにされている大きな棺桶。東西それぞれが顔を覗かせている血を想わせる赤の太陽と闇を思わせる黒い新月。

 そして、世界全体が黒と薄暗い闇に覆われる中で、最も目に付く白尽くめの人影。

 腰に手を当て、不遜な立ち姿でこちらを見ているその人影は、肌も髪も衣類も病的なまでの白さを持っている。白目の部分は黒く、瞳は金。口から覗く舌は病的な青。好戦的な表情を見せている人影は背中に純白のエリュシデータと紫色のダークリパルサーをやはり交叉して吊っていた。

 ふと自分の体を見下ろせば、以前はホロウが来ていたようにフーデッドコートの方だったが、今回は白尽くめと同じ長年愛用している前開きの黒革コート。少し腕を回せば背中に交叉して吊っている愛剣達の感触を背中に感じられる。最近《ⅩⅢ》で出し入れするのが基本になっていたから何だか久し振りな気がする。

 そんな微妙に感慨深い事を考えながら、こちらを見て動かない白尽くめの人影――――以前刃を結び、それから力を貸してくれている白の下へと近付く。

 少し歩いて、およそ十メートルの距離を開けて互いを見合う。

 リアルで考えれば十メートルは思ったよりそれなりな距離だけど、生憎と現実だろうと仮想だろうと素の身体能力を強化された身としては一瞬で詰められる距離。仮に今から斬り合うにしても、既にどちらも相手を間合いの中に入れている。

 それでも斬り掛かって来ようとしないのは、少なくとも今は白にも戦う気はないという事だ。この後どうなるかは分からないけど。

 出来れば今回は戦いたくないな、と思いながら口を開く。

 

「こうして会うのは久し振りだな」

『そうだな、お互い顔を見合う形で会うってなれば《圏内事件》発生の夜以来って事になる。まァ、久し振りと言っても、実のところ半月も経ってねェンだがな……』

 

 色が反転しているせいで白はとても人間には見えない色合いになっているけど、それでも顔立ちや声が同一なのは妙な気分になる。白は俺より多少慣れているからかそうでも無さそうではあるが、それでもどこかやりにくそうな感じはある。

 そんな事を観察していると、僅かに口の端を歪めていた白が表情を改めた。これは真面目な話だと――そもそも白の話は基本大抵真面目だけど――判断してこちらも居住まいを正す。

 

『その以前オレと初めて会った時、オレが伝えた《王》の《最強》がマガイモノだって話。今の《王》ならそれが何を指していたのか分かるよな』

「……ああ。リー姉が理解させてくれた。俺は《桐ヶ谷和人》であると思っていたのに、意識や思考は《織斑一夏》だったんだな……だからずっとずっとそれを引き摺って来た。思考と在り様、決断と立場、何もかも噛み合わなければ確かにマガイモノだ……まったく、傍から見れば無様な嗤える程の道化だな……」

 

 《織斑千冬》について碌に知りもし無いのにそれを目標にして生きて来た。他者の話を聞いて、なまじ実物を知らないだけにどれだけいい結果を出しても妥協出来ず、盲目的にそれを追い求めて来た。それを白は『マガイモノ』と称した。根本からおかしいのだ、と言って。

 当時、それまで俺は自分が作り出した《世界最強の実姉》の偶像を目標にして《最強》を目指していた。その《最強》のイメージそのものが的外れだった上に、何時の間にか手段が目的にすり替わっていて、だから白がマガイモノと言ったんだとばかり思っていた。

 確かに、そういう意味もあっただろう。そうでなければ地下迷宮で死神型ボスを対峙した時、飛び出してきたユイ姉を護る為に力を貸してはくれなかった筈だ。

 でも違う、それだけでは無かったのだ。そもそもからして、《桐ヶ谷和人》として生きていた俺がその名をもじってプレイヤーネームにしていたのに、《織斑一夏》として振る舞っていたから、色々とおかしくなった。

 リー姉を姉と慕うのに、元家族を兄と言う。殺すと決めた元兄に『家族』関連の事を口にされただけで剣を止めてしまう。既に捨てた名、捨てた家に戻りたいという願いが潜在的にあって、俺は自分の意志を貫けなくなっていた。

 当たり前だ。そもそも在り様と思考が噛み合っていない。噛み合っていなければ、当然決断や覚悟だって揺らぐし、立場もふよふよと定まらないままになる。

 

 ――――言い訳がましいが、デスゲーム初期の頃の在り様はハッキリとしていた。

 

 第一層ボス戦で《ビーター》を名乗ったあの時、キバオウによって《織斑一夏》だとバラされた時からずっとかつての意識があったものの、しっかりと線引きは出来ていたのだ。シリカに語ったようにこのSAOを生きる《ビーター》/【黒の剣士】としての《Kirito》は《織斑一夏》としてで、この世界が終わったら《桐ヶ谷和人》として生きるつもりだった。

 このSAOが終わると共に、《織斑一夏》は元の亡霊に戻る筈だったのだ。

 けれど予想外な事にここまで生き延びた。

 更に《桐ヶ谷和人》を知っている直姉/リー姉までもがSAOに入って来た。

 それは、《織斑一夏》へと戻っている俺を《桐ヶ谷和人》へ戻す要因としては十分過ぎた。今まで《桐ヶ谷和人》としての俺を知らない人ばかりの環境だったから振る舞えていたのに、知っている人――しかも大切な家族――が来てしまっては、その在り様がグラつくのも必然。

 貫く覚悟が無くて、家族が恋しかったばかりに在り様を曖昧にしてしまった。

 大体肉親に捨てられて、拾ってくれた人に家族の証である名前を貰った時点で、《織斑一夏》へと戻る決断を下した事そのものが誤りだったのだ。既に死んだ者と自分でも捉えていたのだから。

 だから俺はデスゲームが始まった日、あるいは《ビーター》を名乗ると決断した時から既に間違っていた。

 そんな基盤がグラグラで穴だらけの状態で積み重ねたものが本物な筈が無い。そも、『寄りを戻したい』という願いを俺が無意識に目を逸らし自覚していなかった時点で、自分をハッキリとさせずに積み重ねてもハリボテなのだ。見た目で確かに圧倒出来るだろうし、事実今まで襲い掛かって来た者達を俺は破って来たけど、本当の意味での全力では無かった。

 それを分かっていたから、白は俺の目指す《最強》を、そして俺がそれまで積み重ねて来た全てを『マガイモノ』と纏めた。

 

『《ビーター》や周囲が言って来た事に関しちゃ流石に不可抗力な部分もあるが、《桐ヶ谷》と《織斑》の立場を曖昧にしてたのは完全に《王》が悪い。あの温厚な義理の姉があそこまでキレたンだ、『寄りを戻したい』って願いを知っただけでも相当キたンだと思うぜ……何より、自分が死ぬ事が他者の幸せになるって自己犠牲的な思想がな』

「……だろうな……」

 

 直姉/リー姉にとって、俺のその思考は裏切りにも等しいものだ。あれだけ今まで愛してくれて、大切にしてくれたというのに、それなのに俺は今の家よりも前の家に戻りたいという願いを未だ捨てきれずに居たのだから。

 トラウマで、あれだけリー姉に《桐ヶ谷和人》として生きていたいと言ったのにも拘わらずその願いを抱いていたのだから。

 言い訳なんて出来る筈も無い。

 

『……まァ、流石の《王》も懲りただろ。義理の姉があそこまで言ったンだ、俺からはこれくらいで勘弁しといてやる』

 

 ふぅ、とどこか手間の掛かる相手の面倒を見ているような人の表情で溜息を吐いた後、次が本題だ、と白は続けた。

 

「その本題っていうのは、俺を此処に呼んだ理由なのか?」

『当然説教もあるがな。オレの言い方が分かり辛かったってェのは否定しねェが、流石にアレばかりは《王》自身が気付かねェと意味無いからな……それはそうと話を戻すぞ。何となく察しているかもしれねェが、この世界は《王》――――厳密に言えば、《織斑一夏》の精神世界だ』

「此処が……」

 

 本題だと前置きして白が語った内容を聞いて、改めて周囲を見回す。

 何度見ても世界が滅亡した後にしか見えない黒と闇に覆われた荒野だ。地平線の先には片や血色の太陽、片や光を映さない新月が半分ほどそれぞれ顔を出し、こちらを挟み込んだ世界。

 …………自分の中に広がる精神世界に対して言うのも何だが、この世界は、どこか寂しい。

 これが《織斑一夏》の心象風景という訳か。

 

『詳しい話はまた何れ折を見て話していくが、取り敢えずこの世界は、一時の夢みたいなモンだと思ってくれればいい』

 

 本当はもっと詳しい部分の説明があるのだろうけど、今回俺をこちらへ引っ張って来た事とは関係が薄いか無いようだから省略する事にしたらしい。取り敢えず仮想世界のようなものだと思っていればいいという事は分かった。夢と仮想世界はちょっと違うけど。

 それにしても、敢えてこの精神世界の主を《王》と呼称している俺や白ではなく《織斑一夏》と言うとは……何か込み入った事情がある話のようだ。何れ聞かされる時に備えて心構えくらいはしておくべきかもしれない。

 俺はまだ、白がどういう存在なのかすら知らないのだから。

 当然、白が住まう俺の事も。

 

『それで本題についてだが……もう分かってはいるだろうが、オレ達に残された時間は約五ヵ月。《ホロウ・エリア》からどれだけ早く脱出出来るかで肉体の限界より早くクリア出来るか否かが決まると言っても良い』

 

 確かに、《アインクラッド》側の圏外転移門のアクティベートデータが消失した以上、《アークソフィア》の圏内転移門にしか転移出来ないのだから、オレンジカーソルのデメリットによって俺はまだ帰る事が出来ない。それを如何にかする為に今後探索をしようと、管理区で再会したユウキ達と話し合っていた。

 カルマクエストをどれだけ早く見付け、且つ素早くクリアするかが俺の今後――――それこそ生死を左右すると言っても過言では無い。

 別に《攻略組》の実力を侮っている訳では無いけど、これまでモンスターやマップデータなど最前線の情報はほぼ全て俺が集めて来た。アルゴも集めていたが激戦区である迷宮区内部の情報は九割方俺。その情報を基に攻略メンバーは動いていたから、俺が抜けている間もずっとこれまでと同じペースで進める筈が無い。スキルや装備のバグもあって猶更だ。

 だから俺の復帰が今後を左右するのは分かるけど、それだと少し疑問が浮かんでくる。

 

「それは分かってる。でも、それなら俺一人ででも今から探索に出た方が良いんじゃ……」

 

 以前ならともかく、今の俺の装備や戦闘スタイルは一対一、一対多の戦いを最も得意としている。相手が物量で来るならこちらも《ⅩⅢ》に登録している多くの武器を召喚し、射出する物量作戦に出れば良いだけだからだ。むしろ味方がいるとその方法を取れないので各個撃破しか出来ず却って面倒な事になる。

 だから此処で今から斬り合うよりも、今から一人で探索に出た方が効率としては良いのではと思った。

 けれど俺のその思考は間違っているのか、白はあからさまに呆れた様子で溜息を吐いた。

 

『仮にそうだとして、それを義理の姉達が許すと思うか? というかついさっきその思考・行動を叱られたばかりだろ。学習しろよ……』

「う……」

 

 今までずっと最前線攻略や《ビーター》として《アインクラッド》の秩序を保ち、元ベータテスターとビギナー達の間を取り持って来たが、その何もかも一人でしようとする思考をついさっき否定されたばかり。もっと頼れ、完璧な人間なんて居ないのだ、人の責任まで背負うなと言われたばかりだ。

 効率重視だとしても、一人で何もかもやろうとしていたのは確かに褒められたものではない。

 というか今度はアレどころじゃすまないのではないだろうか。

 まったく不思議なものだ。リー姉に叱られる前はむしろ見限り、見捨て、嫌悪し、侮蔑し、忘れて欲しいとすら考えていたのに、今はそれらが嫌で嫌で仕方ないんだから。傲慢、我が儘にも程があると思う。

 今まで命を奪って来た人達の事すらも無駄死ににして忘れようと、その罪から逃げようとしていたその傲慢さは、とてもでは無いが許されるものでは無い。

 例えリー姉に捨てられる事がその罰なのだとしても、それで許される事は無い。

 ずっと一人で戦うのを維持でも貫いて来たのは、《ビーター》といった立場だけでは無く、きっとどこかしら死を求め彷徨っていた部分があったからだと思う。

 苦しいけれど、でも自分で死ぬのは罪から逃げる事と同義だから、だから戦いの中で死ねば責められないという思考が無意識にあったのだ。死にたくて死にたくて仕方が無いのに自殺だけは選ばなかった事がその証拠だと思う。死に方では無く、そもそも死ぬ事そのものが罪から逃げる事であるという事実から目を逸らして。

 リー姉が一番怒っていたのはきっとそこ――罪から逃げる事――なんだろう。

 

『……ハァ……分かっちゃいたが、こりゃ重症だな……』

「……?」

 

 ついさっき受けた説教を改めて思い出し、叱られてすぐ忘れていた事に対して自己嫌悪を覚えていると、白がこれ見よがしに大きな溜め息を吐いた。

 溜め息の後には何かしら呟いていたが、声が小さくてイマイチしっかり聞き取れなかった。重症、とだけは聞こえたが……

 

『――――なら、《王》に問題だ。“王とその騎馬の違い”とは何だ?』

「何……?」

『一応言っておくが、人と馬だとか四本足と二本足だとか、そういう安直な謎掛けじゃねェからな』

 

 唐突に向けられた問題。

 王と騎馬。それは昔の戦の総大将が当てはまると言える内容だけど、さっきの話の流れからどう関係するかが分からなかった。

 

『分からねェか? ……ならもう一つヒントをやる。《王》とオレみてェに全く同じ力と姿をした存在が二つ居るとして、戦いに向かう王とそれに力を添える騎馬となる違い、つまり差とは何だ?』

「戦いに向かう王と、力を添える騎馬の違い……」

 

 分かりにくくはあるが、与えられたヒントを聞いてオウム返しに呟きながら思考する。

 白は俺と自身の関係性の事を恐らく言っている、それは分かる。そうでなければ俺達のこの状況を示唆するような例え話を追加でも言わない筈だから。だからこの問題に対する答えが、恐らく俺と白の関係性の一つの答えになり得るのだ。

 そこまで考えて、ふと思った事がある。

 それは、どうして白は俺の事を《王》と呼んでいるか、という事。

 この問題と照らし合わせるなら白は自らを『力を添える騎馬』と揶揄している事になる。俺が基本的にアバターを動かしている事から『戦いに向かう王』と見て、そう揶揄しているのかもしれないが、ただ俺が表に基本出ているからというだけでは無い気もする。

 

『……まだ分からねェって顔だな』

「うぅ……」

 

 悩んでいる姿を見て呆れたように白が言い、俺は居心地悪く唸ってしまう。それに白は嘆息を一つ洩らす。

 

『……こうなったら仕方ねェ。あまりしたくなかったが、手荒にさせてもらうぜ』

 

 嘆息した後、白はどこか苦渋を感じさせる面持ちで言った。

 

『《王》には、これから此処でオレと殺し合ってもらう。あくまで精神的なものではあるが此処で死ねば実際に死ぬからな』

「……え」

 

 以前斬り合った――白に殺す気があったかは分からないが――からその心構えは出来ていたが、まさかここでの戦いで死ぬ事になるなんて思わず、思考が真っ白になった。

 

「何で、そんな事を……?」

 

 思考が真っ白になって固まった俺がその問いを投げられたのは、純粋に疑問として浮かんだからだと思う。

 以前、俺の戦う理由を見直すよう言って来た時の印象では、白は俺が死なないよう仕向けている節があった。そうでなければ時々主導権を奪って勝手に行動する事も、死に掛ける時に力を貸してくれる事も無かった筈。だから俺は、白は基本的に助けてくれる存在なのだと認識していたのだ。

 それに来て白との殺し合いである。困惑するなという方が些か無理があった。

 

『何故、か……以前《王》との別れ際、『死なれたら困る』って言ったのは覚えてるか?』

「ああ……言ってたな、戦う理由を見直せっていう言葉と共に」

『そうだ。だと言うのに、《王》は自分で死ぬ道を選びやがった。奇跡的なタイミングで強制転移があったからまだ生きているがそうでなかったら死ンでたのは明白だ……生憎だがな、オレは死ぬ事だけは嫌なンだよ。だが体の主導権は《王》が基本的に握っている。その《王》が死のうとするなら――――オレが、《王》になって生きてやる』

 

 最後の言葉を言い切ると同時、ゾッとする程に濃密で重い殺気を向けられ、半ば反射的に背中に吊っている二振りの愛剣の柄を握り、一気に引き抜いて左右に広げて臨戦態勢を取った。

 その俺を見て、白も背中に吊っている二剣の柄に手を掛け一気に引き抜き、左右に構えた。

 俺を殺す事で、肉体とアバターを動かす主導権を握り、死なないようにする為に。

 この世界での死という事はさっき白が言っていたように本当に精神的な死という事なんだろう。肉体的には死なないが、人格という面で死ぬのだ。

 

『今回は前みてェなヌルい戦い方はしねェ、本気で命を取りに行くぜ――――死にたくなけりゃ全力で抗えッ!!!』

 

 怒号と共に神速で距離を詰めて来る白。その速度はこの薄暗い闇の世界で特に目立つ白だからこそブレが見える、俺と同じ色だったら確実に見失っていただろう速さだった。

 十メートルという距離を刹那で詰めた白はその二刀を体の前で交叉したまま突っ込んでくる。

 あまりの速さ故に防御するしか手は無く、対抗する為に俺は左の剣を横に、右の剣を縦に翳して交叉させる。

 直後、白の斜め十字に重ねられた二剣と俺の正十文字に重ねた二剣が交錯し、火花を散らせた。途端に二剣の柄を握る手に凄まじい圧力が掛かり、弾き飛ばされないよう力を籠めて耐える。踏ん張った脚が乾いた大地を砕き、抉り、陥没した。

 

「く……ッ!!!」

 

 ――――何だ、この馬鹿力……ッ?!

 

 さっきの会話を真実を定義するなら、俺と白のポテンシャルそのものは完全に同一な筈。俺もその気になれば今の速度や鍔迫り合いで感じる力くらいは出せるのだろう。実際キバオウ達を殺す時の速度は今の白くらいあった気がするし、フロアボスとの戦いも同じくらいの圧力を感じていたから、拮抗していたという事は同程度出せる筈。

 だが、少しずつ俺の剣は押されていた。ギギギ、と金属が軋む音を上げて、徐々に自分の方へ押し込まれる。

 会話しながらだったとは言え、以前の白との戦いはほぼ拮抗していた。

 しかし今回は違う。辛うじて届きはしているが、白の方が上になっていた。

 これはマズい。何かしら相手に短所があれば良いものの、白が俺と同一の技量とポテンシャルを誇るなら、この状況は非常にマズい。何しろ相手は完全に自分の上位互換、こちらが打てる手が更に数段上になって返される。しかも相手も同じ手を持っているのならそう易々と通用する筈も無い。

 

『オレの速さに付いて来られるかァッ?!』

 

 どうする、と鍔迫り合いながら思考を回していると、眼前の白が話し掛けて来た。

 随分と余裕だなと思いながら耳を傾けた直後、白の姿がブレ、そして消える。当然俺は勢い余って眼前の空間へと二剣を空振った。

 それとほぼ同時、ゾクリと体中を悪寒が走った。

 

「ッ……?!」

 

 ほぼ直感で剣を振り抜いた勢いを殺さずその場で右回転し、エリュシデータを背後へと向けて右薙ぎに振るう。するとガギ、と鈍い音と手に再び圧力が生じる。

 すぐに顔を向ければ、そこには一瞬前まで俺の眼前にいた白が居た。あの一瞬で目に映らない程の速さで背後へと回り込んだのだ。

 

『へェ、まさか素のままこれに反応するとは驚いたぜ』

 

 白はそう言って、ニヤリと嗤う。

 

「ッ……どうやって、あんな速度を出したんだ……?!」

 

 俺だってその気になれば出せる筈だが、しかし俺の場合相手の真横を過り、地面を踏み抜いた反動で止まり、勢いを付けて背後から斬り付けるという攻撃方法。真横を過る事無く円を描くように迂回する方法であの速度を俺は出せない。過去に何度かやろうとした経験があるからこそ、白がしたその行動がどれだけ異常で、どれだけ難易度が高いかが理解出来る。

 簡単な話だ。目的地まで真っ直ぐ走るのと、大きく迂回して走るのとでは到着するまでに掛かる時間は歴然としているように、この場合もそれと同じ。

 白は俺が相手の真横を通って背後に回るのと全く同じと思えるくらい――――けれど、迂回する方法を取っているのだからその実何段も上の速度を叩き出しているのだ。幾ら俺よりポテンシャルが上と言っても辛うじて拮抗出来る程度の差でしか無い以上、あまりにもそれは違和感があった。

 真っ直ぐ走った時のタイムが一秒未満の差でしか無いのに、相手が迂回する方法を取ったら何故か物凄く速いという、そんなある筈のない事態。

 一体何をしたらそんな事が出来るのだと、焦りもあって思わず問いを投げた。

 

『《王》は単純な発想しかしねェから思い付かないだけだろうが、もっと《ⅩⅢ》にある属性武器を有効に使いやがれ。今の使い方じゃ完全に宝の持ち腐れだ』

 

 背後から斬り掛かろうとして、けれど俺のエリュシデータに阻まれて一度距離を取った白は、問いへ答えるようにそう言った。

 どうやら《ⅩⅢ》に最初からある武器、それも炎のチャクラムや地の斧剣といった特殊な力を有している武器の何かを使ってあの速度を出しているらしい。速さだから、多分風の六槍の力だろう。背中に風を受けていたら多分俺もそれを感じていた筈だから、足裏で風を爆発させて、バネや砲弾みたいにしたとかか。

 

『もっと柔軟に考えろよ。何で武器からしか炎や水を出さねェ? 別に武器が手許に無くても使えンだぞ?』

「……そうなのか?」

 

 まるで武器以外からも出せるような物言いに疑問を覚え、警戒は怠らないまま話に耳を傾ける。どうしてか白の話を聞かないといけないと思ったからだった。白も構えこそ解いていないが話す気満々なのか、斬り掛かる様子は殆ど無い。

 その様子の白は、やっぱりか、と呆れた様に頭を振る。

 同時に白の剣からは黒い雷が迸り、紫の剣からは禍々しい蒼の炎が迸った。恐らく前者は雷刀《プラズマ》の力、後者は戦輪《エターナルブレイズ》の力だろう。本当に武器が近くに無くてもその力を操れるようだ。

 試しに俺もエリュシデータから雷が、ダークリパルサーから炎が迸るイメージを強く持つと、それぞれの刃が白雷と赤炎を纏う。

 

「マジか……」

『何時まで経ってもやらねェからまさかと思ってはいたが、やっぱ知らなかったンだな……いや、まァ、仕方ないと言えばそうだけどよ……』

「……そんな憐れむ眼で見ないでくれ……」

 

 名状し難いものを覚えていると言わんばかりの顔で見られてしまい、何とも言えなくなってしまう。

 確かに白のような有効的な使い方をしなかったのは俺の努力不足、発想不足と言えるけど、普通固有の武器以外にも自在に出せて操れるようになるとか思わないだろう。風の力ならまだ分からなくも無いけど、炎や雷も固有武器以外に纏わせられるとか予想外だ。武器固有の力だから、その武器からしか出せないと思っていた。

 

『というか、この使い方は闘技場に出て来たオレ達のマガイモノもやってたぞ』

「え……――――あ!」

 

 言われて、そういえばと《個人戦》の時の事を思い出す。

 確か二刀から曲剣に持ち替えた時だったか、一度だけだが宙に躍り出たホロウが地上にいる俺に向けて曲剣を振るった際、その剣尖に沿うように放射状に黒い雷を放って来た事がある。

 今まですっかり忘れていたし、当時も必死過ぎて全く気にしていなかったが、言われてみれば雷の力を有していない曲剣《エンゼルイーター》が雷を放つというのは普通に考えておかしい。《暗黒剣》のソードスキルも衝撃波やオーラを飛ばす、地面に叩きつけると紫色のオーラが噴き出して攻撃するといったものばかりで、雷系のものは一切見られなかったのだ。

 分かり辛くはあったけど、明らかなヒントはあったのだ。多分白はアレを見たから固有武器以外の武器からも炎や雷を出せる、つまり《ⅩⅢ》を持っているだけで自在に操れる事を知ったのだろう。

 

「あああぁぁ……ッ! 何で今まで気付かなかったんだ……ッ!」

 

 登録した武器の召喚が自在に出来る事に気付けていたなら、わざわざ固有武器を召喚しなくたって他の武器に炎を纏わせたり水の刃や鞭をぶつけたり、足元から岩を隆起させて奇襲したり、色々と応用出来た。

 もっと早くに気付けていたら、リズ達を攫ったとメッセージを受けて時に慌てて状態異常付与ポーションを作る必要も、たった一本の毒剣で博打染みた危ない橋を渡らなくても済んだのに……

 

『まァ、分かり辛かったからな……あン時の《王》は食い付くのに必死だった訳だし、そう気を落とす事も無ェと思うぜ。俯瞰してたからオレはそれを考え付いた訳だし』

「その同情が今は凄く痛い……ッ!」

 

 俺を殺すと言って来た相手に同情されると物凄く心にクる。なまじ別の存在だけど別の自分でもあるため尚更クる。

 生きる為に、強くなる為と必死に磨いて来た経験と力が無駄だったとは言わないし、決して思わないけれど、更に強くなる可能性を完全に見過ごしていたのはかなりショックだ。これでも真面目に鍛錬を続け、《ⅩⅢ》の特性を研究して来ただけに、その可能性を思い付かなかったのは不甲斐無い。

 ……今更思ったけど、出来ないのかな程度に思い付いてもおかしく無かった気はする。なまじ俺のIS武装と同一の性能だった為に現実の物理法則や特性に引っ張られ、固定観念に囚われていたようだ。

 《ⅩⅢ》はイメージが命。イメージしなければ基本的に何も出来ないが、逆に言えばイメージ次第でどんな風にも扱える代物という事になる。

 ISの場合、現実の物理法則に倣って量子や原子、分子、光子の流れや向き、法則、特徴を全て把握していなければ満足に扱えなかった。つまり炎のチャクラムには一定範囲内の原子・分子を高速で振動させ、熱を上昇させる機能を有しているが、それ以外は有していないから発火や発熱などは出来ない。

 俺は現実世界と仮想世界の差をまだ理解し切れていなかったという事だ。

 

『……調子狂うな……まァ、良い。ほら、ンな隙だらけで良いのか? ボヤボヤしてたら――――殺すぜ?』

 

 今まで思い付かなかった予想外の使い方を知ってショックを受けている間も話し掛けて来た白の声が、途中から正面では無く、左横からいきなり聞こえた。それもかなり近く、耳元で囁かれたとすら思うくらい近い。ゾッとする殺気もあった。

 流石に間に合わないかと体を捻り後退しつつダークリパルサーを振るうが、予想されていたようで空を切る。

 

「ぐ……ッ!」

 

 同時、左脇腹に鋭い痛みが走った。

 思わず動きが鈍るものの出来るだけ我慢してバックステップを続けていると、思わぬものが目に入る。

 地面に点々と落ちている赤い色。それから一瞬遅れて鼻を突く錆びた鉄を思わせる特有の匂い、一昔前はその匂いで嗅覚が麻痺していたから久方ぶりに匂うそれが何か一発で分かった。

 

「な……紅い液体に、この匂い……血液、血だとッ?!」

 

 それは血。動物なら何もかもが必ず有している、酸素原子と結び付くヘモグロビンや白血球、その他栄養素を運ぶ生命の水面のだった。

 今の家に拾われてから滅多に見なくなった血は点々と乾き荒れ果てた白い大地に落ちていた。視線を更に落とせば、左脇腹は鋭い斬閃が刻まれていて、そこからだくだくと赤い液体が流れている。それに応じるように視界左上の数字とゲージが減っていくが、それを吹き飛ばす光景がそこにある。

 ここは《織斑一夏》の精神世界であって仮想世界では無い。十三歳以上対象故に流血描写を赤いドットに変換する事で対処している世界ではないから、確かに血が流れてもおかしくないのだが、まさかこの世界で斬られたら血を流すようになっていたなんて。

 痛みに関してはSAOでも受けるようになっていたから慣れたものだけど……

 

『何だ、そンなに不思議か? 一つの体に居るオレ達にとってはここもある意味での現実だ。なら血が流れたって何らおかしくは無ェだろ。何せここで死ねばオレ達の精神は本当に消えるンだからな』

「……そうだな」

 

 精神世界だから、と思っていたけれど、言われてみれば確かにそうだ。一つの体の中に同時に存在している俺と白にとってすれば、この世界もある意味での現実なのだ。どちらかが死に、どちらかが生きる殺し合いをこの世界で繰り広げるのであれば、別に血が流れてもおかしくはない。

 むしろ血は流れず、痛みも不快な衝撃に置換されていて、それなのに冗談抜きで人の命を終わらせる世界となったSAOが異常なだけ。

 

 ――――どうやら……この二年以上の生活で、かなり俺も温くなってたらしいな……

 

 ――――これで《殺し合い》をして来ただなんて……

 

 今の家に拾われてからは命の危機が無くて、SAOに囚われてからは毎日命を危険に晒していたけど血なんて無くて、生物が死ぬ瞬間すらも現実のそれとは程遠く乖離している。なまじ実際に見て来たからこそ、その乖離を日常としてしまって温くなったのだろう。

 殺し合い。

 それは血という命の源流を流し、痛みという叫びを受け、それらを全て受け止めた上で命すらも奪う行為。

 長らくそれらから離れていたから、ただ叫びを受けていただけだったから忘れていた。血という決定的なモノを忘れていた。暖かい命の源流、生きている証であり、流れ出て死に近付いている事を知らせるそれを忘れていた。戦いに於いて大切なそれを失念していた。

 《笑う棺桶》も、恐らくはその類。血という決定的なモノを見ていないから殺人快楽へと傾倒しやすかっただけで、仮に見ていたら何割かは恐れを為し、剣を捨てていただろう。オレンジ達もその数を劇的に減らしていた筈だ。キバオウやリンド、誅殺隊もあそこまで直截的に命を取りに来てはいなかっただろう。

 血とは、それだけ生者――殊人間――に嫌悪感を与えるモノなのだ。それが流れる事態は忌避すべきであり、流す事態を引き起こす者を嫌悪するように世の中はなっている。命を奪う行為を嫌悪し、禁じる為に、まずその出だしとなる《流血》が起こらないよう意識に根付かせたのだ。幼い頃から刷り込まれたそれらは十分血への忌避感を持たせている。

 だが同時に、血を流すという事は相手を傷付け、痛めつけ、弱めている証でもある。憎く疎ましい相手が血を流していれば人間の深層に根付いている獣性が頭を擡げ、喜悦に浸る。かつて俺を嗤いながら虐げて来た者達のように。

 アキトは俺を殺したくて殺したくて堪らなかったようだから気にも留めなかっただろう。そもそも昔から暴力を振るわれては口や鼻、時には頭からも血を流していた。血を見ただけで手を引くのならあそこまで酷くはなってない。むしろ勢い付かせていたようにも思える。

 その中でも特に異彩を放っていたPoHは、また別。そもそも俺に技術を叩き込んだのはPoHだから。

 PoHだけはこれまで俺が見て来た多くの人間の中でも一際異彩を放つ人間の一人。血を流す事に喜悦するのではない、命を奪う事に愉しみを見出しているのでも無い――――恐らく、その過程に最も悦びを見出している。そうでなければ殺人快楽者達を取り纏めて《笑う棺桶》なんて組織を作っていない。争い死に至るまでの過程を最も悦んでいるからこそ、恐らく一箇所に集めたのだ、自分がその殺し合いの風景を見届けられるように。

 俺が電撃的な速度で《笑う棺桶》掃討戦の計画を立て、実行に移したあの時、モルテ辺りからの内通によって話を聞いていたであろうPoHは短時間ながらも一人であれば逃げられた。圏外転移門を攻略組が閉鎖する事で逃走を困難にしていたとしても、絶対ではない、あの男の腕と邪道っぷりなら難なく突破出来たであろう事は想像に難くない。

 つまりあの男は、逃げられなかったのではなく逃げなかった。殺されるとしても攻略組や俺との殺し合いを演じられればそれで良かったのだろう。

 最も危険性を理解していた俺が真っ先に殺したので愉しめたからどうかは定かでは無いが。

 

 そうなると、なら、俺は?

 

 血を流し、人に死を与え、それらを直に感じて来た俺は、『恐れを為す者』と『踏み越える者』のどちら?

 

 

 

 ――――決まっている。

 

 

 

 ――――踏み越え、殺す者だ。

 

 

 

 弱肉強食、それが殺し合いの世界にある唯一つの真実。

 殺さなければ殺されるなら、殺られる前に、殺るだけの事。

 そうやって生きて来た。《織斑一夏》だった頃はずっと抑えて、《桐ヶ谷和人》になってからは忘れていて、《ビーター》を名乗り出してから気付かない内に再開していたその行為。捨てられてから拾われる前に教えられた――――いや、叩き込まれ、刻み込まれたその教え。

 ずっとずっと恐れていた。

 あちらは殺しに来ている。でも、逆にこちらが殺せば悪く言われる。当然だ、だって誰もが《織斑一夏》の死に同情を抱かない、誰よりも価値が下だと見られていたから。その評価で親しい人達からの信用を喪う事が恐かった。取り返しのつかないところまで来ているのに、その深みに嵌まっていくのを恐れていた。

 

 ――――かつての家に戻れなくなる事を恐れていたが故に。

 

 ――――今ある温かみを全て喪うと考え恐れていたが故に。

 

 けれどクラインは、アルゴは、ヒースクリフは、ユウキやアスナ達は、リズ達は、そしてリー姉とユイ姉は、そんな俺を拒絶しなかった。目の前で殺しをしたというのに、リー姉が叱って来たのは自分を犠牲にする行動と思考、そして曖昧な目的と手段、在り様だけ。殺す事を決断したのも、その行動も、決して否定されはしなかった。

 リー姉の弟のままでいる事も、キバオウ達を殺した事も、前の家に戻りたいという願いそのものも、否定はされなかった。

 無論率先して殺しをする事はダメだろう。外道となれば、きっとリー姉自身の手で何時かは裁かれる。

 けれど、殺しに来ている相手に素直に殺られる事を、相手に非があるのに自分が悪いのだと死を受け容れる事を、あるいは相手だけでなく自分にも非は無いのに死を受け容れる事を、皆は拒絶する/否定する/容認しない。俺に、自分だけの為に戦う理由を考えるよう言ったリー姉だけは、絶対それを容認しないだろう。

 責任から逃れず、罪を忘れず向き合い続ける事が重要なのだ。

 死は、それらから逃げる事なのだ。

 なら……

 

「ここで……」

『ン?』

「こんなところで死ぬ訳にはいかない、絶対に……ッ!」

 

 

 

 ――――白を殺し、その罪を背負ってでも生きなければ。

 

 

 

 ――――今までこの手で殺してきた人達、目の前で護れず死んだ人達、そして呪詛を唱えて命を絶った人の死を踏み躙る訳には、いかないのだから。

 

 

 

 ――――リー姉達を哀しませる訳には、いかないのだから。

 

 

 

 ――――まだ皆とお別れしたくない。

 

 

 

 ――――そうだ……俺は、生きたい。

 

 

 

 ――――まだ、生きていたいッ!

 

 

 

「絶対に――――死んで、たまるかァッ!!!!!!」

 

 

 

 ずっと暗い気持ちで死にたいと願っていた反動か、それともリー姉があそこまで叱ってくれた事が効いたのか、少し前とは完全に真反対の願いまでもが湧き上がる。

 その願いの為にも、生きる為にも白を殺さなければと息巻いて、俺は白尽くめで瓜二つの容貌をしている剣士に怒号を叩き付けて疾駆した。踵を上げて出来た空間に風を起こして砂塵を溜め込み、そこに炎を発生させる事で超小規模な粉塵爆発を発生させる事で発生した、ただ風を暴発させるだけよりも遥かに高い爆発力を以て。

 白の言葉で《ⅩⅢ》の新しい可能性を知った直後、碌に練習や実験もせずにするのは危険だと判ってはいたが、殺し合いに不意打ちも卑怯な手も全て正当手段。むしろこれくらいの事をしなければ自分よりポテンシャルはおろか戦い方の発想が上の白を殺せないと考えていたから、躊躇う事無く実行に移した。

 全てがスローモーションに見えて、急激に近付く白。

 

 

 

 ――――その顔には、どこか満足そうな笑みが浮かんでいた。

 

 

 

「――――えっ……?」

 

 自分の想定以上の急激な推進力に負けず、両肩と腕に力を入れて眼前に突き出した二本の剣。白の満足そうな笑みを見てそれらを引っ込める時間などある筈も無く――そもそも驚きと疑問で半ば硬直していたのもあって――二つの刃はアッサリと、白の華奢な体躯を貫いた。背中から貫通した切っ先が白の肩越しに見える。

 物凄い勢いだったのは確かだが、穏やかな表情に反してしっかりと地面を踏み締めていたらしく、幾らか後退はしたものの白は決して倒れはしなかった。両手からは剣が零れ落ち、それぞれ粒子へと消えたけれど、まるで俺を受け止めるように決して倒れなかった。白の腹からは赤い血がだらだらと流れ出ていて、白い服を朱に染めていく。

 その白を、剣を突き込んでいる姿勢故に見上げる。どうして、何で抵抗する素振りすら見せなかった、どうして笑っていると思考は疑問で埋め尽くされていた。

 そんな俺の頭を、白は右手で撫でて来た。荒々しい口調や剣呑な空気を出していたとは思えないくらい――――どこか、懐かしさを覚える手つきで。

 

『本能だ』

「……ほん……の、う……?」

『《王》に足りない決定的に欠けていたモノ……さっきオレが出した問いの答え、それが《本能》。敵を殺す本能。生きたいと必死になる本能。死に怯え、だがそれを跳ね除けようとする原初の階層に刻まれたモノ……人はそれを、《生存本能》とも言う』

 

 今まで見た事無いくらい穏やかな面持ちで、頭を撫でてきながら言う白。腹に突き立てられ、背中まで貫通しているのに、その痛みなんて痛痒にも感じていないかのように平気そうな顔で白は言う。

 いきなりの事で戸惑った。視界右上の数字は刻一刻と減っているのに、白は焦る様子も見せない。

 

『何時死んでも良いように……そう考えていた《王》は、何れ死が訪れたとしても受け容れる気でいた。抵抗はする、そうならないよう手も打つ……だが、それらは全て、他者への影響を考えての事ばかり。自覚はあるだろ』

 

 白の確信が込められた言葉に、小さく首肯する。

 無い訳が無い。

 自分の事を完全に度外視して、他者の為だと自ら命を危険に晒そうとするその行動を俺はアルゴに幾度も咎められたし、皆が心配してくれていた原因なのだから。自分が死ぬのは仕方が無いと諦めていたのは、とっくの昔に分かっていた。未来も暗く、辛いものだと分かっていたから、死ぬ事に意味を見出そうとすらしていた。

 それが今までの行動で生じた罪や責任から逃げる事なのだと、リー姉に教えられた。

 

『何が何でも生きたい、仮令恨まれようとも相手を殺してでも生きたい、そういうモンが《王》には欠けていた。殺しは罪で悪だからな、そう考えるのも仕方無いと言えばそうだ。だが《王》はあまりにも無さ過ぎたンだよ』

「……でも……」

『言うな。今でこそ別だが、オレだって《織斑一夏》から生まれた人格。『認められたい』という欲求と『自分に価値を見出せない』思いってのは嫌でも理解してる』

 

 かつて、本当に一握りの人を除いて誰からも認められなかった俺は、とにかく何かしら人の役に立ちたい欲求が潜在的にあった。アキトがどれほどなのかは知らないが、少なくとも俺の家事の腕は、捨てられた年にはわざわざ文句を言いに来なくなる程度には認められていたと思うし、姉も偶に褒めてはくれていた。

 だから押し付けられたものだとしても家事は嫌いにならなかった。それだけが、かつての自身にとって唯一人の役に立てるものだったから。

 それくらいでしか、自分の価値が分からなかったから。

 

『自分だけを狙って来るヤツは殺さない。これだけ聞けば平和主義者と取れるが、自分以外も狙うヤツは必ず殺すとなれば話は別だ。あまりにも自分に無頓着なンだよ……だから今回、《王》をここに呼び寄せたンだ。義理の姉に説教されてこれまでの思考・思想を崩された今だけが、コレを理解させるのに最適だったからな』

「つまり……白は、自分の命だけを狙って来る者も殺せるように、しようと……?」

 

 そういう事なのか、と思って問う。

 白はこの問いに、ゆっくりと首を横に振った。

 

『生きたい、何が何でも、罪を背負ってでも生きたい――――死にたくない。その強い生への欲求、つまりは生存本能を呼び覚ます事、それが今回の本題だった。『自分だけを狙う他者を殺せるように』ってのはあくまでその本能を行動に移したモンだからな、基が無けりゃ意味が無ェ。理性という名の鞘に納めたままの剣で、一体何を斬るってンだ?』

「それは……」

『《王》だって嫌という程見て来て、理解しているだろ。人間ってのは愚鈍で醜い化生の名前だ。強いヤツも居るが、逆に弱いヤツだって居る、弱いヤツが居るからこそ強いと判断されるンだから当然だな……そうやって何かを、自分じゃねェ何者かを貶めないと自分を保てねェのが人間。そしてそれが普通なンだよ、《本能》だからな』

「……」

 

 白の穏やかな言葉を黙って聞く。剣を抜かないまま、頭を撫でられながら、静かに耳を傾ける。

 

『敵を容赦なく斬り刻み、引き裂き、叩き潰し、貪欲なまでに戦いを求めて荒れ狂う心。俺達の皮を引き裂き、喉元を掻ッ裂いた神経のその奥、原初の階層に刻まれた殺戮反応――――それが《本能》だ。人間は争わねェと生きられねェ、優劣を決めねェと落ち着けねェし自分を保てねェ。《生》への究極の欲求を有する存在が『戦いに向かう王』であり、劣っている事を認める以前に『優りたい』とも思わねェのが『力を添える騎馬』なンだ。その騎馬も《生》への欲求で命の危険から逃げようとはするが……』

 

 だが、と白はそこで言葉を区切った。

 

『《王》にはどちらも無かった。劣っていてもいい、何故ならそれが当然だと言われ続けていたから。命の危機があってもいい、何故ならそれを超えなければ自分を保てねェから……《王》は、王としても、騎馬としても、そのどちらも持っている最低限のモノすら持ち合わせていない異常者だったンだ。危険に立ち向かえていたのも勇気があったからじゃねェ、義務感という蛮勇があったから。そこに《生》への執着は存在しない』

「……そうだな……」

 

 もし《生》への執着を持っていた/《死》を恐れているのであれば、第七十四層のボス戦の時、何が何でも撤退しようとしていただろう。無理に立ち向かおうとせず、回避とパリィを主体に扉へと後退し、蒼眼の悪魔を倒す前に撤退を選択していた筈だ。

 そも、単独でボスを倒そうという考えが浮かんでも即座に否定している。仮令《二刀流》という破格のスキルを持っていたとしても。

 

『オレはそれを危ぶんだ。だから今回、あの問題を出して、オレと殺し合ってもらった、《王》に《生存本能》を持ってもらう為にな……思ったより上手くいったようで良かったぜ』

 

 そう満足そうに笑って言ったのと同時に、白は一歩下がって腹から剣を抜くよう動いた。

 

「あっ……」

 

 それに気付いて、慌てて剣を引き抜く。

 頭を撫でられていた感触が無くなって少し残念な気持ちもあるが、それよりも白に消えて欲しくなかった。俺を殺しに来る敵かと思っていたのに、実際は今後の事をしっかり考えてくれていたのだ、消えて欲しくなんか無い。

 

『ンな哀しそうな顔をしなくても、別に消えやしねェよ』

「ほんとう……? うそじゃ、ない……?」

 

 俺を安心させる為だけに嘘を吐いているのではと思って疑念と共に白を見るが、白は不敵な笑みを浮かべて頷いた。

 

『そもそもここで死んだらマジで死ぬってのも《王》に《本能》を持ってもらう為に吐いた嘘だ、マジにさせないと出来ないからな……しかしまァ、まさかここまで短時間で目的が達成出来るとは、本当に義理の姉様々だ。最低でも五十回はやり直す羽目になると思ってたンだがよもや一発とはな』

「流石にその回数はひどくない……?」

『自分の胸に手を当てて考えてみろよ』

 

 流石に五十回もやり直しはしないだろうと思って不満を言うが、すぐにそう返されたので、今までの行動と思考を振り返ってみた。

 

 ……何も言えなかった。

 

『さて……随分と時間が余った事だし、此処でオレと鍛錬でもしていったらどうだ。これでも《王》がしてこなかった戦い方やコツがあるからそれなりに良い経験になると思うぜ。どうせ今から戻っても暇だろうからよ』

 

 全く反論出来ない事実に気付いて沈んでいると、どこか楽しげな声音で白がそう提案して来た。

 視線を向ければ、俺が突き刺した傷も白い服を汚した血の赤も完全に無くなっていて、ふと自分の脇腹見ても同様に完全に無くなっていた。視界にあったゲージや数字も無い。白い乾いた大地に落ちていた血も亡くなっている。

 傷が無くなったとは言え、血の色の太陽と真っ黒い新月に挟まれ、滅んだ世界を思わせる此処にあまり長居はしたくないのだが――――しかし何故だか、此処はとても居心地よく感じる。落ち着きもする。

 ここが《織斑一夏》の精神世界だからか。

 

「そうだな……今後の為にも強くないといけないし、今までの積み重ねもリセットされたみたいなものだ。白から色々と学ばせてもらおう」

 

 だからか、この世界に居るのも悪くないと思って、気付けば白の提案を受けていた。無論自分が思い付かなかった戦い方を学ぶ為もある。

 その返事に、白はニヤリと笑みを浮かべた。

 

『ヘッ、良いねェ、そうこなくちゃな。ンじゃ早速――――行くぜェッ!!!』

「負けるかァッ!!!」

 

 そうして、全てが滅びを迎えている精神世界で、俺は白と血を流しながらの鍛錬を開始した。

 

 






 はい、如何だったでしょうか。



 白がマイルド過ぎる……ッ!



 こんなの違う、という方も居るでしょうね。違和感覚えてる人も居るでしょう。

 これはちゃんとした理由もあるんですが、大部分は単純に私の力不足。パクリになるからと避けているのもあってBLEACHの虚一護にはならなかった。当然ですが作品世界観の違いがあるので本作の白、あっちの白と存在理由からして違いますし。

 『《王》が死に掛けてる時にだけ出て、それ以外基本ノータッチ、基の人格がアレだから実は世話焼き』という感じなのでこんなのも良いんじゃないでしょうかと思ったり。虚一護も斬月に頼まれて打算があったとは言え付き合ってたし、殺し合いを経て何度か一護強化してたし。

 そういう訳で、これが私には限界でした……ご容赦頂ければ幸いです。原典には勝れなかったヨ……

 あ、こんなでも白は基本《王》に『しか』優しくないです。リーファやユウキ達は信用・信頼を寄せていますが、《王》にとって害悪(=足を引っ張るだけ)なら容赦無し。

 つまりリーファとの戦いの時に顔を出さなかったのは、それが《王》のためと理解していたから。《王》の益になるなら大抵の事は看過するスタンス。

 ……寝ながら精神世界で鍛錬出来て、自分自身でもあるから弱点・欠点も分かって直せる上に、更に基本俯瞰してるから今回みたいにキリトの欠点も指摘出来る《本能》の白って、第二のお師匠ポジションになりそう。別人格といがみ合ったり、何とか共存したりな話はよく見るけど、こんなのはあんまり無いんじゃないかな(BLEACHの斬魄刀と死神の関係から目逸らし)

 ともあれ、今話でキリトの思考がまたまた転換。

 今までは『死んだら守れない』、『死ねない』という義務的だったのが『生きたい』、『死にたくない』という欲求へと傾きました。途中の思考を読み返して頂けると何となく分かるかと。

 今までのキリトは『時が来るまで死んではいけない』、『希望の為に生きなければならない』という義務的な思考をしていました。つまり『相応しい時/理由であれば死を躊躇いなく受け容れる』という狂信者だった訳です。《ビーター》や【黒の剣士】としての思考が正にそれ。だからユウキ達は何度も疑問を覚えていたし、リーファに至っては『歪んでいる』と思った訳です、だって狂信ですもの。

 今回の話で『自分の半身とも言える白を殺してでも生きたい=死を受け容れたくない、生きたい』という欲求を覚えた為に、『死を選ぼうとしたから主導権を奪う』という建前で襲って来た白を倒せた訳です。一種の開き直り。これが無かったら、白の殺す動機に納得して殺されていました(欲求を覚えるまでは毎晩寝る度に殺し合う無限地獄でしたけどね(^ω^))

 また、白のアプローチが無ければリーファの『キリトが生きていないと哀しい』という言葉を曲解し、『自分が生きていないと幸せになってもらえない』と考え、他者の幸せ=自分の生存=自分の幸せと、説教の意味が無くなっていました。

 普通は他者の幸せと自分の幸せは乖離するもの(そもそも生存は前提なので間に挟む事すらしない)

 この場合で原作キリアスを例にすると『キリト:アスナとユイと暮らすの幸せ』『アスナ:キリト君とユイちゃんと暮らすの幸せ』という風に、幸せに思う理由はそれぞれ相手を対象としたもの且つ自分の欲求(暮らし)が根源。自分の幸せを相手に求める関係。

 本作のキリトやリーファの思考になると『リーファ達:キリトが生きて幸せになってくれると幸せ』『キリト:皆が幸せになってくれていると幸せ』という風に、キリトは他者を幸せにするために自分が幸せになろう(生きよう)と義務的に動こうとしていました。相手の幸せをキリトが自分に求める関係。

 幸せはその人個人の中で起こるものなのに、それを起こそうとしていた事が歪の一つ。『幸せだったら良いな』という願望では無く『幸せにする/させる』という義務系。

 今までずっと見て来た《本能》の白だからこそそれを危ぶんで、リーファの叱責で色々と解放され思考がリセットされたタイミングで仕掛けた訳です。これより前でも後でも基盤に《本能》が組み込まれない為に同じ事の繰り返しになっていた事でしょう。『生きたい』という欲も、『でも罪が……』という理性・思考で否定し、抑圧していたでしょうから。また義務感になっていた恐れも。前話のシノンやユイ視点にある通り、重責から解放されて素直になったからこそ出来た事。

 何だろう……BLEACHの白一護を参考にしてるのに、あっちとこっちで行動の理由が真反対な気が……本作白は過保護、つまりリーファ達と同じ保護者枠という事ですね!

 セルフ保護者とか新しいな?!Σ(・□・;)

 加えてキリト強化フラグ。発想の方面で戦闘にメチャ強い白(尚、義姉にはお察し)が直々に相手するんですから精神的にはおろか、実力も超強化待った無し(技術はお察し)

 今話の会話で既に戦い方が幅広くなってますからね……自分で戦いながら同時に並列思考で強いイメージを練り上げる。これを繰り返す事でマルチタスク能力が上昇、つまり《ⅩⅢ》の運用と戦い方が恐ろしく向上する。もっと効率良くなるヨ!

 その気になったら瞬歩(偽)や風の刃を重ねて燕返し(偽)やオサレ鬼道(偽)なんかが出来るように……BLEACH序盤での瞬歩使い(朽木白哉)の速さの絶望感を思い出しますな。本作、キリトやユウキ辺りは瞬歩紛いの移動出来ちゃってますが。リーファに至っては九頭龍閃モドキ見切れるし(キリト・リーファ以外は見えてない)

 これくらいしないといけないのがキリトだけって、MMORPG(パーティープレイ前提)な筈なのにSAOとは何なんだろう……(困惑)

 あと闘技場のホロウ戦(未覚醒)を見返せば分かりますが、曲剣から雷撃を放っているのは、この時の為の伏線だった訳です。いちいち属性武器出さなくても登録してたら使えるよというね……一人だけ世界観が違うなぁ……(元ネタ的に必然)

 まぁ、もっと強くないとキリト、死ぬんですがね、展開的に。最強(将来)主人公なので、そこに行き着く為にも沢山苦難を乗り越えてもらわないと(嗤)

 長文失礼。

 では、次話にてお会いしましょう。



 ――――SAO編生存難易度:『ミッション:本能の目醒め』を達成。《ゲヘナ5/6》(気を抜けば即死or全滅)から《ヘヴン6/6》(気を抜かなくても即死&全滅有り)へ変更されました。
(自分生存or仲間全員生存→自分生存&仲間全員生存)

 ――――SAO編攻略難易度:『ストーリー:本能の目醒め』をクリア。《ノーマル1/6》から《ハード2/6》へ変更(任意選択不可)されました。
(精神ダメージイベント増&狂化イベント増)



生難『驕ったな。仲間一人生かすだけでも現状至難の業だと言うのに、仲間全員どころか己を含めた全てを救わんと欲するとは、ほとほと愚考よな。分不相応の望みは身を滅ぼす摂理を解さん愚か者共め、貴様には地の理(ゲヘナ)では生温い、天の理(ヘヴン)を見せてやろう。己が身を以て分相応というものを知るが良い――――攻難、お前も相手をしてやれ(愉悦)』

攻難『私が相手をするのは構わないが、この身はあと四度の変身を残している。果たして真っ当な勝負になるのやら……(愉悦)(強化が四回だけとという訳ではない)』

 尚、これまでの難易度で既に精神面を除いてキリト以外がギブアップ寸前(嗤)

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