インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは

視点:リズベット

字数:約七千

 ではどうぞ


※ホロウキリトは、ホロウ・エリアで須郷捕縛に動いたメンバー以外と顔を合わせてません
 したがってレイン、フィリア、ルクスはホロウ・エリア攻略で顔を会わせてますが、非攻略メンバーだったリズ、シリカ、アルゴ、黒猫団(サチ以外)とは会う事なくSAOから退場しています




第四十九章 ~其は友誼を結びし者~

 

 

「薙ぎ払い、来るぞ!」

 

 注意を呼び掛ける声が上がる。レイドの半数ほどもない集団を率いるキリカの声だった。

 意識を死神に変化したボス(モジュール)に向ければ、彼の言葉通りの構えを取っていた。

 実用性重視、飾り付けが無いからこそ感じる殺意の塊が振り抜かれる。

 

「――っ!」

 

 息を吸い、一歩踏み出して左腕に装備した円盾(バックラー)を構える。

 弧を描く鎌の切っ先と盾が真っ向からぶつかる。

 タンクを担うには少々心細い防御範囲の盾は、しかしビジュアルに反した高い性能を発揮し、鎌の勢いを止めた。少なくない削りダメージがガードの上から入るが――しかし、慌てはしない。

 あたしが作った隙を仲間が突くと確信していたからだ。

 

「うおらァッ!!!」

 

 気合の籠った声と共にエギルは暴力的な赤の帯を引く斧を一度、二度、三度――と連続で振るった。豪快な斬撃が死神の体に赤い線を残し、頭上のHPゲージをガリガリと削っていく。

 その様子を、あたしは一旦後退してポーションやスキルで回復、バフの再使用(リバフ)を済ませながら観察する。

 そうして妙だなと思っていた事がやっぱりおかしい事であると確信する。

 

「やっぱステ関係おかしいわよねぇ……」

 

 これに尽きる。

 ボスのレベルは六十八。対するSA:O組のレベルは平均三〇後半から四〇前半のはず。

 レベル差が絶対的とされるシステムを引き継いでいる以上、この差を埋めるように有効打を与えられている点は不自然に感じた。

 この場に居るあたし達は、SAO時代のステータスに戻ったキリトとおそらく当時のステそのままだろうホロウを除き、全員がSA:Oのアカウントでログインしている。アカウントに紐付けられたデータを探ればあたし達もキリトと同じようにSAO時代のステータスを手に入れられるだろうが、その手続き――コンバートはしていない。

 

 ――となれば、原因はほぼ間違いなく《シンイ》とやらだ

 

 心より出ずる意志。セブンが掲げた研究テーマ《クラウド・ブレイン》を、カーディナルが言語化したもの。セブンが大衆の意志を束ねて力にしたものなのに対し、キリトは強大な意志と経験を以て発現させた力。

 少し前にユウキが、更にキリカが使えるようになったシステム外のそれしか考えられなかった。

 俯瞰するように死神と戦う仲間を見れば、キリカとユウキ以外にも何人か光を纏っている事を確認できた。

 アスナ、ラン、サチ、リーファ、シノン、クライン、そしてエギル。

 何れも、かつてあの世界で最前線を戦い抜いた猛者ばかり。ユウキの例から類推するなら『立ち返っている』状態なのだろう。

 言われてみれば、確かにSA:Oで一緒にクエスト攻略していた時とはみんな雰囲気が違っている。目つきも鋭い。最早険しいと言うべきか。プレミアやティア達の命のためと気を引き締めていた時より、明らかに緊張度が違う。

 多分、あれが《攻略組》の姿なのだろう。

 あたしもその姿は知っている。とはいえそれは現実に生還してから放映されていた映像を通してだ。当時はマスター鍛冶師として後方支援に注力していたからフロアボスとなんて一度も対峙しなかった。生還してからフロアボス相当と戦った経験も、ALOスヴァルトエリア二つ目の岩塊ボスのみ。ボス戦に関して言えば素人同然と言える。

 

 それでも、唯一この目で見た"姿"はあった。

 

 死を予感した時のこと。"キリト"が求める剣を鍛えるべく、五十五層の雪山に登った時の事だ。

 

 ――あの時見た姿がホロウと被る。

 

 蔑まれ、虐げられて、助けた人から悪罵を投げられながらも尚戦い抜いた"キリト"の、他者の死に恐怖しながらあたしを助けた様が脳裏をチラつく。

 果てには、七十六層で別れた時の姿も。

 あの時の後悔は今も記憶に深く残っている。どうすればよかったかなんて今でも分からないし、多分何をしても意味を為さなかっただろう。だからこそ、あの無力感が鮮明に残っていた。

 

 その悔悟の念が警鐘を鳴らしている気がした。

 

 このままだと繰り返すぞと、根拠の薄い警鐘が頭の中をガンガン揺らす。

 アークソフィアを走り去ろうとする姿を追う事も出来なかった。

 その存在を話に聞いていただけで、いつの間にか二度と会えなくなっていた。

 

 何度、繰り返すのか。

 

 何度、助けられるのか。

 

 

 

 何度――"彼"の死を、知らされなければならないのか。

 

 

 

「ッ――――!」

 

 ギリ、と奥歯を軋ませる。

 生きたいという当たり前の願いすら望めなかった子供。あたしはその過去を識っている。夢という形でそれを見た。眠っている間のみとは言えそれもシンイには違いない。

 シンイになるほど強く秘めた気持ちなのだ。

 それを支えたいと思って友好を結んだ。

 

 ――結局、外周落下後はリーファが何とかして事なきを得た

 

 疲れ果て死すら願い始めたキリトをリーファが支え、ユウキ達もそれに加わった。女性として愛する事に踏み切ったのもその頃からだ。

 あたしも、キリトの事は好きだ。

 異性としては分からないが――その在り方に惹かれたのは、事実である。

 

 だからこそ。今度こそ、後悔しない

 

 ホロウ。

 あたしと会う事無く、いつの間にか浮遊城から居なくなっていた"キリト"の一人。キリトと別人で――でも、その記憶や過去は同じ少年。

 あの時、あたしが止められなかった子供の、一つの未来。

 何の因果か無限に広がる大地を舞台とした世界(ソードアート・オリジン)で対面を果たす事になった。巫女の件を省いても、きっと裏でとんでもない事態が進んでいるんだろう。

 そしてまた一人でそれを背負おうとしているに違いない。

 その確信が、あたしにはあった。

 

 ――させてなるか、と奮起する。

 

 一人で背負い続けて、その果てにホロウは死んだ。それがキリトも歩んでいただろう未来の果てだ。その結末を、抱いていた怨みが納得できず、ホロウは獣となってキリトと死闘を演じた。

 納得していないのだ、彼も。

 なら、もう繰り返させてはならない。一人で重荷を背負わせてはならない。

 それは、手を伸ばせなかった"あの時"を、繰り返す事になってしまうから。

 

「絶対に――」

『――――オオオォォォォォォ……ッ!』

 

 死神が吼える。

 最早死に体になったそれは悪あがきとばかりに暴れ始めた。しっちゃかめっちゃかに鎌が振り回されて、ユウキ達も一瞬攻勢が緩んだ。

 ――それを見て、瞬時に踏み込む。

 

「――負けて――」

 

 ぐっと、盾の裏で拳を握る。

 ぎゅっと、メイスの握りを強くする。キィィンとスキル特有の甲高い音が響き始めた。

 そこに、死神の鎌があたしを刈り取ろうと迫って来た。それをスローモーションで見ながら、切っ先に合わせるように盾を添わせ――弾く。

 ガード硬直、無し。

 削りダメージ、無し。

 相手の武器は大きく弾かれている。

 文句なしの完璧なパリィだった。

 

「――やるもんかぁぁああああああッ!!!」

『ギォ……ッ?!』

 

 会心の笑み――それすら浮かべず、システムの加速すら置き去りにする勢いでメイスを振るった。メイスはゴガンッ!!! と鈍い音を上げて死神の真芯を打ち抜き、そのままバッターのように振り抜く。

 死神は低い悲鳴を上げて数メートルほど吹っ飛んでいた。

 

『グォォ……――――■■■■■■■■■■■ッ!!!』

 

 その一撃が死神のラストアタックだったらしい。通常のモンスターのように砕け散る代わりに、暗い青色の光を放ちながら形を変え始めた。

 どうやらまだ変身するらしい。

 どこぞの宇宙の帝王みたく四段階か、近年増えた五、六段階か――あるいはもっと多いのか。

 

「ハンッ――――やったろうじゃない」

 

 気を引き締め直す。

 初めてボスにトドメを刺した喜びは少ない。何も終わっていないのだ、喜ぶのは全部終わってからでいい。そう内心で自分を律し、武器を構え直した。

 ――ボスの体は光に包まれ、全貌が見えない。

 

 しかし――――ふとした瞬間、居なくなった。

 

 暗い青の光に包まれた巨大な体が、そのまま収縮し、消えたのだ。取り込まれていた第三の巫女の姿もそこには無い。どうやら終わっていないのは確からしい。

 ならどこに行ったのかと疑問を浮かべながら周囲を見回すも、ボスらしき姿が見当たらない。

 嫌な静寂が場を満たす。プラネタリウムを思わせる空間のだだっ広い床全体に注意を払うが、ボスが現れた気配はない。限界まで張り詰めた神経をじらすように一秒、また一秒と時間が過ぎていく。

 

「いったいどこに――」

 

 そこで《月夜の黒猫団》のお調子者な短剣使いダッカーが、耐え切れないという風に声をあげた。

 ――瞬間、その背後に青暗い光が出現する。

 

「「「「「ダッカー!」」」」」

 

 キリカ、サチ、そしてケイタを含む黒猫団が異口同音に名前を叫んだ。その表情には強い焦りの色が見える。

 

「させるかァッ!」

 

 同時、ホロウが虚空に数本の剣を呼び出して射出。更にダッカーの背後にタワーシールドを呼び出し、光を纏いながらの巨大な一撃から彼を守った。けたたましい金属音と共にダッカーが驚きの声を上げる。

 二つの音を聞きながら、あたしは突如姿を見せたボスの体躯に目を向けた。

 ボスに共通する見上げるほどの体躯は、全身縄の如く盛り上がった筋肉に包まれていた。肌は表れた時の光より尚暗い深い青、分厚い胸板の上に乗った頭は悪魔を想起させる山羊のそれだ。

 頭の両側からはねじれた太い角が後方にそり立っている。眼の色は血を想起させる毒々しさのある緋色。

 そして特に目を引くのは、両手と山羊を思わせる下半身の足首に、青色のクリスタルが無数に吊るされている点だった。

 そのクリスタルには見覚えがあった。記憶にある青色のクリスタル――それは、浮遊城で中層以上に居れば誰もが目にして、最重要アイテムの一つとして切らさないよう注意を向けていた品、転移結晶だ。

 

「まさか、転移結晶の力をボスが持って――?!」

「ああ、そうだ! 七十四層の、二体目のボスだよコイツは! 転移で背後も頭上も狙ってくるから気を付けろ!」

「そんなのありィッ?! どうやって倒したのよ?!」

 

 嘘だろマジかふざけんな、と内心で罵りながら対応を考えつつ叫ぶ。そんなあたしに、焦りとも怒りともつかない複雑怪奇な険しい面持ちのクラインがまた応えた。

 

「あン時は《二刀流》を解禁したキリの字が単騎で倒した! 状況が状況だったしな!」

「……ああ、そうだったわねぇ! そんなニュースがあったの忘れてたわ!」

 

 そしてあたしは思い出した。本来ならクォーターボス前の士気向上に使おうと"キリト"が、無謀な突撃を七十四層ボスにかましたキバオウ派の《軍》を助けるべく、それまで秘していた《二刀流》を解放する事になったあのニュース。

 名を《Evil The Gleam Eyes》。悪魔の輝く目と称された、二体いたボスの後詰め。

 誰もがユニークスキルホルダーのニュースに目を向けていたせいで後詰めの単独撃破に関して触れられる事は無かった。間を空けず《闘技場》で"キリト"が更なる単独撃破をこなし、更にユニークスキルを手に入れた事も、それに拍車を掛けていた。

 

 ――けど、何でそんなボスが変身対象に選ばれたの……?

 

 ボスに注意を向けながら、あたしは疑問を浮かべた。

 先の死神ボスはまだ分かる。攻略組にとって苦い思い出のあるボス――つまり、数多の死者を出した強敵だったからだ。そのログがあったから選ばれたのだろうと考えていた。

 しかし――この後詰めボスには、違和感がある。

 転移能力は脅威に違いない。記憶にある限り、他のボスには無い特性の筈だ。その対集団特化の性能に目を付けて選ばれたのだろうか。

 無作為に選ばれているのかもしれないし、ただの考えすぎなのかもしれないが……

 

「――また転移するぞ! 頭上にも気を付けろ!」

 

 そこでホロウが注意を呼び掛けた。

 さっと頭上と周囲をぐるりと見回し――ティアの頭上に現れたのを認識。

 

「ティアの上よッ!」

 

 ほぼ同時にシノンも認識したらしく、彼女は周囲にそう言いつつ、弓に番えた矢を放った。強烈な光の帯を引きながら空を飛んだ矢は、紅眼の悪魔の中心を射貫き、大きくよろめかせた。その後に続くように空中でソードスキルを使えるホロウやユウキ達が、突進系スキルを使って追い打ちを仕掛ける。

 あたしもボスが地面に落下するのに合わせ、大きくメイスをフルスイングするスキルを叩き込んだ。

 恐らく――アインクラッドでのボス攻略も、これが正攻法だったのだろう。それでも一度のミスが壊滅に直結するボス戦は簡単ではない。回復のために下がった者にも距離を無視して突撃してくる転移性能は恐怖でしかない。

 そう考えれば、"キリト"の単独撃破はある種の最適解だったのかも。

 いや、デスゲームという状況を考えれば異常でしかないのだけども。おかしなことに、『フロアボス単独撃破』の実績をあたしが知る限りでも複数回こなしているし、フロアボス級を含めれば、もっと数が増える。フィールドボスなどワンランク下も含めればもっとだ。その何れもがパーティやレイド前提である事を踏まえればどれだけおかしいかは推して知るべし。

 

 ――だからやっぱり、このボスの選択は違和感がある。

 

 数多の死者を出した訳でもなく、プレイヤーを幾度も翻弄した訳でもなく、剰えたった一人に討ち取られたのが七十四層のボスだ。

 先発こそ《軍》やアスナ、ユウキ、クライン達が居たが、後詰は正真正銘の単独撃破の筈だ。両方を含めても死者一名、挑戦人数はレイドの半数ほど。ユニークスキルホルダーこそいたが、普段の攻略にヒースクリフが居た時点で評価点プラマイゼロである。

 だというのに、選ばれた。

 何故……?

 

「浮かない顔だな、リズベット」

「っ……ホロウ」

 

 ボスに注意を払いつつ、次のボスは何かという予想のために疑問に思考を回していると、その様子が目に留まったらしいホロウが声を掛けてきた。

 ……やはり、その姿に"キリト"が重なってしまう

 圏内事件のカラクリに気付き、モルテ達の目論見を真正面から破った姿に。

 《ビーター》として振る舞っていた、あの頃の"キリト"に。

 

「ねぇ、"あんた"なら"モジュール"が変身するボスの基準について、何か気付いてるんじゃない?」

 

 だからか、あたしは正直に疑問をぶつけた。

 ほとんどのプレイヤーには分からない事も"キリト"だけは気付けた事が多かった。圏内事件然り、ヒースクリフの正体然り、クラウド・ブレイン然り。

 だから今回も何か知っているのではと思った。

 そして――その『何か』こそ、ホロウが今ここにいる理由なのでは、とも。

 

「……そう、だな。推察ではあるけど」

 

 一瞬の間を空けて、ホロウは肯定した。

 

「"あんた"の推察はもうほぼ答えなのよ」

 

 早よ言え、と視線で圧を掛ける。

 会話している間も無数の刀剣を無限段階に射出し続けており、更に転移した直後にキリカかシノンが相手を怯ませているため、この転移ボスも消化試合のような段階に入っている。

 定められたスペック以上を出せないのがAIの特徴。それを覆すのがシンイであり、巫女を取り込んだ"モジュール"はスペック以上の性能を発揮するだろうが、それはキリカとホロウも同じである。心意を使えるユウキ達が加わっている以上、"モジュール"に現段階で勝ち目はない。

 次のボスは分からないが――それも、何が出てくるか分かれば、話は違う。

 だからその推察とやらを知りたかった。

 

「おそらく、SAOをデスゲームにした原因の手が加わった個体である事が、共通条件だと思う」

「理由は?」

「六十八層も、そして七十四層も、本来とは違うボス設定だったらしい」

「誰から聞いたの?」

「カーディナルから」

 

 その答えに、なるほど、と納得する。

 元々キリトに目を付けていたらしいカーディナルが、父・茅場の夢たるSAOをせめて正常に終わらせるべく作り出したのがホロウだという。だから聞いていてもおかしくないとは思った。

 気になるのは『いつ聞いたか』だが、今はいいだろう。

 

「二十五層とかのクォーターボスは?」

「第百層裏ボス以外はそのままだ」

 

 その答えに、むぅ、と思わず唸る。

 六十八層はあの《攻略組》をして多大な犠牲があった戦いだ。七十四層も転移特性を鑑みればそうなっていた筈で、つまり『矢鱈と強い』という特徴があるボスが今も逃げおおせている須郷の協力者の手掛けた個体かと思ったのだが、違うらしい。

 まあクォーターボスは、分かりやすい節目ボスだから強くてもゲーム的にはおかしくない。

 ――逆に言えば、ゲーム的におかしなタイミングで強い奴が怪しい訳だ。

 第百層が該当するのは、放映されていた映像を見て知っている。カンストステータスを無視した威力は明らかに挑戦者にクリアさせる気のないものだった。

 

「九十九層のは?」

「アレはそうだな。あとは七十五層の闘技場」

「……なるほどね」

 

 『ゲージを減らす一本削る度、削り切った武器に耐性を持つボス』もどうやらそうだったらしい。

 闘技場は最後のボスは最後の個体があからさまだったし、そもそも個人戦先鋒の《片翼の堕天使》も、サクラメント事変で和人達が死闘を演じる事になったセフィロトそのものである。当時は召喚武器《ⅩⅢ》があること、個人戦最後のボスから和人に人体実験をした組織の介入を疑っていたが、セフィロトの事を考えれば、本当にガッツリ関わっていたんだなと思い知らされる。

 

 ――……どうにもイヤな感じだ。

 

 ネオ・コアの《無銘》を埋め込み、デスゲームで経験を積ませ、コアを介して洗脳して兵士にする。

 

 一部の《亡国機業》の手が入ったボスばかり選ばれているこの状況が、まるで当時の《亡国機業》トップの企ての焼き直しのように思えてしまい、顔を顰める。

 ともあれ――六十八層ボスは倒し、七十四層ボスも程なく終わる。

 

「次に変身するとしたら、闘技場ボスって事ね」

「または九十九層ボスか」

「ここに来る前に遭遇したわよ」

「じゃあ裏ボスかもな」

「……覚悟しとくわ」

 

 間に何が挟まるにせよ。

 恐らく、ほぼ間違いなく、あのイカレた裏ボスは表れると見て間違いない訳で、あたしは深く呼吸した。

 

 

 

 《亡国機業》ある限り、《SAO》は終わってくれないらしい。

 

 

 

 キリトにとっても、キリカにとっても、そしてホロウにとってもあたし達にとっても。誰にとっても。

 きっと《SA:O》製作を手掛けた政府陣営とやらにも潜り込んでいるんだろう。ソイツが捕まる事を強く願いながら、あたしは姿を変え始めた"モジュール"に意識を向けた。

 

 






 はい、如何だったでしょうか

 投稿が空いたので忘れられてるかもですが、本作SA:Oの運営停止をデバッガーのキリトが提案しても『お前が解決しろ(意訳)』で跳ねのけられてます。その裏の事情がこれ

 《亡国機業》がSAOに手を加えてるなら、当然SA:Oにも加える訳です

 電子ドラッグ売人の取り逃がし、和人の誤認逮捕、須郷脱獄、各地の暴動、サーバーデータの統合化(ユニフィケーション)が一斉に起きてるしね……これで未介入だったらそれこそ『嘘でしょ』案件

 つまり"モジュール"にも関わっている事に……


・《亡国機業》が手を加えたボス達
 『原作との相違点』であり、ISとのクロスによる弊害
 茅場と束が出会ったなら他の人間にも影響があるのは当然
 原作から外れたモノは自動的に《亡国機業》の手が入っている事になる
 《SAO》制作側の場合、それは須郷が該当した
 《SA:O》製作側ならシギル/志崎が該当する
 『須郷の協力者』の割り出しには具象化技術の利用以外に、茅場の証言から以下のボスを手掛けた人員を企画書から選出していたという裏話がある(和人、菊岡、楯無、ヴァベルのみ把握) なお闘技場の件があるのでキリトも仲間には言うのは今更かなと思って特に話していない

1)第六十八層ボス《ザ・フェイタルサイズ》
 原作でもこのボスだった場合、地下迷宮で原作アスナのモノローグにて語られる筈なので、茅場が用意したボスは別物になる

2)第七十四層ボス先鋒《ザ・グリームアイズ》
        後詰《イヴィル・ザ・グリームアイズ》
 後詰の転移能力持ちが該当。先鋒を倒して気が抜けたところを転移不意打ちで刈り取る凶悪な存在。《二刀流》キリトが居なければジリ貧で二十五層、六十八層の悲劇の再来だった

3)闘技場ボス全部
 先鋒《片翼の堕天使》
 乱入《殺戮の狂戦士》
 大将《過去の悪夢に囚われし虚構》
 先鋒で1アウト。大将で2アウト。報酬の召喚武器《ⅩⅢ》が《無銘》と同じなので3アウト。キリト達は大将の時点で、《無銘》を埋め込んだ組織の暗躍を察していた
 ちなみにヒースクリフが先鋒で即座に敗れてるので実装に関わっていない事がSAO時点でも読み取れる

4)第九十九層ボス《ザ・バーサクヒーロー》
 黒幕の片割れである須郷も使役していた
 ゲーム《インフィニティ・モーメント》と《ホロウ・フラグメント》では、過去に戦ったフロアボス4体の弱体化を連戦でこなし、5戦目に二刀持ちの巨大ケンタウロスのようなボスと戦う

5)第百層裏ボス《アン・インカーネイト・オブ・ザ・ラディウス》
 映画ボス
 本作茅場はラスボスじゃないので、ラスボスにはヒースクリフではなく《ザ・ホロウアバター》こと伽藍洞な赤ローブが正式に登録されていた。そのため裏ボス突入前の地震でキリト達以上にヒースクリフは驚いていた
 メタ的には、本作はゲーム版が基準な上、執筆当初は映画はまだだったので裏ボスとして実装された



・リズベット
 "あの時"の事を悔悟している鍛冶師
 リズベットにとって、ホロウは『耐えられなかった少年』という見方が強い
 あるいは『耐える必要のないものを背負って潰れてしまった少年』。優しいあまり背負い過ぎて、潰れてしまったという認識
 それをかつて見た"夢"で識っていたからこそ悔悟の念は人一倍強い
 『支える』という想いは今、悔悟の積み重ねによって力になり、智慧を育てた


・ホロウ
 《ビーター》のままの少年
 積み重ねた罪、背負った業を無意味にしないために背負い続けている。そのため精神性はかつてと大差は無い。無いからこそ負を止める人柱になっている
 つまり、最初は推察を語らなかったのは……


 では、次話にてお会いしましょう


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