インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 お久しぶりです(;´Д`)

 一ヵ月空いてしまってすみません……しかも進んでないんだよなぁ……()

視点:セブン

字数:約七千

 ではどうぞ




幕間之物語:歌姫編 ~慰安バカンス~

 

 

二〇二五年八月十五日、金曜日、午後九時

ALO シルフ領南方 トゥーレ島

 

 

【ALO】妖精バカンス、海底クエストに行くわ! コラボもあるよ!【ユーミル/歌姫セブン 歌姫レイン】

 

 

 リアル側は夜の帳に包まれた現在、ALOは時間が同期していないため、真夏同然の太陽光がこれでもかと言わんばかりに降り注いでいる。その光を反射し、キラキラと輝く水面が地平線の先まで続いていた。

 ここは円状の大陸《妖精郷(アルヴヘイム)》を囲うように存在する海の一角、シルフ領の更に南方に位置する孤島《トゥーレ島》。バカンスを楽しめる砂浜や亜熱帯地域特有の植物で構成された密林を見るに、おそらくデフォルトの気象設定は現実での赤道付近に設定されているのだろう。

 要するに、いつでも海水浴を楽しめる場所という事だ。

 もちろん圏外なのでモンスターやPKを警戒しなければならないが、今のところどちらの影も見えていない。

 その砂浜で、海をバックに立つあたしは空中に表示されたディスプレイを操作し、カバー曲をバックにループアニメが流れていた待機画面から、自身を映すカメラ映像に切り替える。

 しっかり設定が出来ていることを確認してから口を開いた。

 

「やっほー、みんな! プリヴィエート! 【セブン報道局(チャンネル)】の時間よ! 今日はALO南方の地、バカンスに適したトゥーレ島から水着姿でお送りするわね!」

 

 プリヴィエート、という挨拶のコメントが流れた後、少しずつ、そして一気に興奮と驚きを露わにした反応が一気に流れていく。どうやら水着を着ての配信とは思わなかったらしい。

 それはそうだ。ライブ配信は事前に告知していたが、場所はもちろん、装いに関しても言及しなかったのだから。

 

「ふっふーん、みんな驚いてるわね♪ これはあたしからのサプライズプレゼント! 今までいろいろあったのに今でも見てくれてるみんなへの感謝の気持ちと思ってね!」

 

 そう言ってくるりと回る。すると予想通り、コメントが湧き立った。ちょこちょこ変態チックな発言も見えるがライン越えしてなければスルー安定である。

 

 

| ●ニキネキセブンファン  |

|  ¥10,000       |

| 水着感謝のスパチャ&一ヵ月見れなかったお詫び代  |

| しかしいつの間に企業所属になったんです?     |

 

 

 そこで本日最初のスーパーチャットが流れた。いきなり一万円の投げ銭とはかなり豪胆な人である。アカウント名に見覚えはあったが、その額では初めて見た気がした。

 

「あ、ニキネキセブンファンさん、スパチャありがと! 企業所属になったのは三日前よ。ALOでライブをするにあたって所属した方が色々と楽だからね」

 

 《ユーミル》はALOの運営企業のため、今までプレイヤーの工夫で作ってきたスタジオ設営などで多少の融通を利かせやすくなる。

 もちろんライブ配信で統一してもいいのだが、あたしのファン層は歌唱のライブ配信と、ALOの生ライブで得た二グループが存在する。特に後者は名前が売れてから急激に回数を増やしたため、必然的にファンの獲得数は上だ。『セブンのライブ』と聞いて思い浮かべるのは恐らくALOの生ライブの方が多い。

 以前は《シャムロック》の団員がスメラギの指示でスタジオ設営をしていたが、ギルドを解散して以降、生ライブは一度もしていない。

 

「あたしの生ライブを楽しみにしてくれてる人もいるし、毎回有志を募るのも申し訳ないからね。そのときALOの宣伝にもなるからってユーミル側からオファーが来たの」

 

 実際は、生ライブを楽しみにしてくれてるファンの願いを叶えられないと愚痴をこぼした時、それを聞いた和人が色々と取り計らってくれたのが真相である。

 ユイ、ストレア、キリカがゲームメインの企業所属の配信者なら、あたしは《ユーミル》の顔となるアイドル枠の配信者という枠組というスタンスになる。V-tuberはその成り立ち上、ゲーム配信やライブ配信を主とするが、アイドル活動も兼ねている人は少なくない。しかしユイ達だとアイドル活動はまだ難しいため、その枠組に入るのはどうか、と篠ノ之束、茅場晶彦の二人に彼が提案してくれたのだ。そして広報活動に適している――事変以前の活動でALOの印象が良くなった実績がある――として採用された、という訳だ。

 つまりあたしのライブは、今後ALOの広報活動も兼ねているという事になる。

 

「攻略系はアルゴちゃんやストレアちゃん達が取り上げるだろうから、あたしは主にサブクエストとか、寄り道系を上げていくつもりよ。戦いだけがVRMMOじゃないんだから」

 

 ふんす、と胸を張りながら言う。

 

「あ、そうそう。予め言っておくとクエスト中は流石に戦闘衣装に着替えるからね」

 

 ふと思い出し、そう付け加えると、えー! と不満のコメントが流れる。どうやらあたしの水着姿はそこそこ評判が良いらしい。

 まあ色々と異性に鈍いキリトにも効いたから、つまりそういう事なのだろう。

 

「いや、流石に圏外でずっと水着は危ないもの。あたし一番弱いんだし」

 

 《ヴァフス事変》を経た今、あたしの種族熟練度は折り返しを過ぎて600に届かんとしているが、それでも戦闘メインのみんなよりは低い。アカウントを新しくしたキリトよりは上かな、という程度だ。

 魔法の熟練度は自信があるため、ほぼ支援のみの行動になるだろう。

 

「ま、それよりもよ! そろそろ今日一緒にクエストに行くメンバーを紹介するわ! シルフの【剣姫】、リーファちゃん! 言わずと知れたキリト君、キリカ君達のお義姉さんよ!」

「どうも」

 

 紹介と共にカメラに入ってくる金髪のシルフ剣士。配信前は水着で泳いでいた彼女は、既に見慣れた緑衣に身を包み、長刀を腰に佩いている。

 彼女はぺこりと簡素にお辞儀をした後、すぐにフェードアウトしていった。

 コメントからは『もうフェードアウト?』『速過ぎるw』など、あまりに簡潔な挨拶に対する動揺が見て取れる。

 

「はいはい、テンポよく行くわよー! 次は【閃光】の二つ名で知られてる細剣使い、アスナちゃんよ! 支援・回復特化のウンディーネなのに前衛で戦う事から【バーサクヒーラー】とも呼ばれてるようね」

「ちょっとセブンちゃんやめて?!」

 

 カメラにフェードインしつつ、慌てた様子のアスナが悲鳴を上げた。

 それを素知らぬ顔で流しながら、カメラ外にいる()()()()に目を向ける。

 

「それと同じく、【舞姫】で知られてる細剣使い、ランちゃん! 彼女も同じく【バーサクヒーラー】って呼ばれる事があるらしいわ!」

「セブンさん?!」

 

 背を押されて出てきたランが非難の目を向けてくる。やはりそれも素知らぬ顔でスルーして、彼女の背中を押した人を手招きする。

 

「次はランちゃんの双子の妹、【絶剣】と呼ばれる片手剣使いのユウキちゃんよ! 種族は闇妖精インプ!」

「はーい、こんにちは! ユウキです!」

 

 元気いっぱいの挨拶と共に頭を下げるユウキ。彼女はその後、なにか言いたげな様子のアスナ、ランの二人の手を引いてそそくさとフェードアウトした。

 代わりにカメラに入ってきたのは音楽妖精プーカの槍使い。

 

「次はユウキちゃん、ランちゃんと同じギルドメンバーの槍使い、音楽妖精プーカのサチちゃん! 槍はもちろんだけど、片手剣も使えるらしいわ! あと歌が上手いって!」

「どうも、サチです……あの、最後、誰から聞いたの?」

「キリト君からだけど?」

「き、キリトぉ……」

 

 事実を口にするとサチは困ったような表情になった。恥ずかしがっているが、それ以上に困惑の方が強いらしい。プーカを選んでいる時点で歌唱力はそれなりに自信があると思っていたが違うのだろうか。

 まぁ、それはいいか、とあたしは頭を振る。

 

「次はケットシーきってのスナイパー兼双剣使い、【射手(アーチャー)】シノンちゃん! システムアシスト圏外の200m先から的中させる腕前は仲間随一ってキリト君からのタレコミよ!」

「シノンよ、よろしく」

 

 フェードインしたシノンはひゅん、と尻尾を振りながら言った後、来た道を即座に戻っていった。彼女もリーファと同じように挨拶が短いが、先の面々がそんな感じだったので、今度は動揺は少なく思える。

 そんな彼女に苦笑を送ったあたしは、そして! と一際強く声を上げる。

 

「あたしと一緒に企業所属になった《ユーミル》のV-アイドル、歌姫レイン! 【多刀流】の二つ名を持つあたしのお姉ちゃん! プレイヤーネームはレインよ!」

「えへへ……ど、どうも~、歌姫レインこと、レインです。はじめまして」

 

 はにかみながら、おずおずとやってきた赤毛の鍛冶妖精がそう自己紹介する。

 

 

 ――だれ?

 

 ――義弟が味方してた実姉、企業所属になってたのか

 

 ――親ならぬ妹の七光り

 

 ――コネかな

 

 

 レインの挨拶に対し、コメント欄は懐疑、批判のものが多くなった。

 これは予想できたことではある。一から始め、数百万のファンを獲得したあたしと一緒にデビューしたとなれば、あたしの人気を利用しようとしているように見えるのは必然だった。あたしのファンの分だけ彼女のアンチになりかねないのである。

 ましてやあたしがずっと使っていたチャンネルに、いきなりコンビを組むように入ってきたとなればそうなるのも当然か。

 ここであまり擁護し過ぎれば却って反感を買ってしまう。それはユーミルにとっても、そしてあたし達にとっても良くない事だ。

 だから事実だけを告げていく。

 

「一応あたしもお姉ちゃんも、オファーがあったとは言えしっかりとした面接と試験を受けて、合格してデビューしてるからね。あたしと違って活動歴が無いのに通ったって事はそれだけ実力があるって事よ」

 

 普通はこちらから応募して、それから選考されていく訳だが、あたし達の場合は逆にオファーが来た。身内で会社を作る時の流れに近い。

 それに彼女はデビュー以降、1~2時間を歌枠に使っているし、和人が用意した”安息の地”の空間を使ってのライブ配信も終えている。飛び入りダークホースな分、実力重視なのだ。誰かと比較するからそうでもなく見えるだけで、彼女の実力は十分だと、彼女のライブを見れば納得するに違いない。

 

「明日はデュエットライブする予定だし、そこでお姉ちゃんの実力を思い知るといいわ!」

「せ、セブン、気持ちは嬉しいけどハードル上げ過ぎな気が……」

「もう! お姉ちゃんは控えめ過ぎなのよ! そんなのじゃ輝くパフォーマンスもくすんで見えちゃうわよ!」

 

 あたしに本気で怒るくらいアイドルになりたがった彼女は、それだけ努力したのだろうと分かる素地がある。積み重ねてきた時間は確かにあるのだ。

 ただ彼女は成功した実感がないだけ。

 自信は後から付いてくるだろうとあたしは確信している。姉は、そうかなぁ、と半信半疑だけど。

 暫くはあたしが引っ張ってあげないといけないだろう。

 ――迷惑かけた分、それで返せたらと思う

 そう考えている事を知らないだろう姉の背を押してフェードアウトさせたあたしは、さて、と流れを変えた。

 

「女性メンバーはここまで! あたし以外の七人で一パーティーよ」

 

 

 ――やべぇメンツだなぁ……

 

 ――……あれ、じゃあセブンちゃんはソロ?

 

 ――女性メンバーは、って事は男性もいるの?

 

 ――男はやめてー!!!

 

 

 やや含みのある言い方をしたからか察しのいい人たちはすぐに気付いたようだ。中には阿鼻叫喚のコメントを流す人もいたが、その人達は無視である。

 まだ返事こそ貰っていないし、公然とお付き合いをしている訳ではないが、あたしの気持ちについては既に公然の事実である。アイドルとしてどうか、という意見も聞くが知った事ではなかった。

 

「まずはこの人! あたしの活動に欠かせない人物、一時期はALO最強の座に就いてたウンディーネの剣士、スメラギ君よ! あたしのアイドル活動のマネージャー兼研究職としてのあたしの助手もしてくれてるわ!」

「スメラギだ。よろしく頼む」

 

 

 ――ひっさしぶりに見たなこの顔

 

 ――見た目に反してのバリトンボイスとか卑怯過ぎんよーwww

 

 ――セブンファンガチ勢の男

 

 ――事実上のロリコン

 

 

「スメラギ君、ひっどい言われようね」

「構わん、言わせておけ」

「素っ気なさは海に来ても変わらないわねぇ」

「それは海と無関係ではないか……? そもそも俺は、浮き輪が無いと泳げないセブンが溺れた時のために来ているんだが。海底に潜ると聞いたが大丈夫なのか?」

「残念でした! 先月に特訓して克服済みよ!」

「なん……だと……?」

「……あれ? 言ってなかったっけ?」

「初耳だが」

「あはは、ごめんごめん、最近忙し過ぎて伝え忘れちゃってたみたい」

「……まぁ、忙しかったのは事実だからな」

 

 やや遠い眼をしつつ、スメラギは嘆息した。青い瞳や短髪がくすんで見えるのは気のせいではないだろう。

 最近は三つに増えた和人の機体全てのプログラムやシステムを見直しつつ、オリジンの異変調査に時間を費やしてたから、忙殺されていたのは事実。こうして仮想世界にダイブするのもかなり久しぶりだ。

 

 

 ――いきなりテンション下がったな

 

 ――いつか過労死するんじゃね?()

 

 ――知ってるか、これで二人とも未成年なんだぜ……?()

 

 ――ウッソだろ

 

 ――マジなんだよなぁ……

 

 

 あたし達のダウナーなテンションに当てられてか、コメント欄も似たようなテンションになり始めた。他所で見ているリーファ達は苦笑している。

 これはいけない、とあたしは頭を振って気分を切り替える。

 

「――ま、今日はそんなあたし達よりも忙しくしてた人もいるし、その人の慰安も兼ねてるのよねぇ。という訳で、最後のメンバーを紹介するわ!」

 

 そう言ったあたしは、近くに立っていた人物――レプラコーンの少年の手を引っ張り、カメラに映す。

 

「最後の一人はキリト君! リアルでは黒髪黒目だけど、ALOでは銀髪に金の瞳よ! 今日はキリト君の慰安とその監視も兼ねてここに呼んでるわ!」

「どうも、キリトです。監視されてます。助けて」

「監視してないとロクに休まないキリト君の自業自得よー」

 

 ややふざけているのは分かるが、人聞きが悪いので即行で却下しておく。

 

 

 ――仕事中毒かな?

 

 ――過労死しそう(確信)

 

 ――最年少が一番過労死に近いとかどうなの……

 

 ――過労死よりも戦死の可能性が高いんだよなぁ……(ここ最近の活動を振り返りつつ)

 

 

「そうなのよねぇ……危険なトコには出来るだけ近付いてほしくないんだけど」

「そうしないとまた世界の危機になりかねないから仕方ない」

「そうなのよねぇ……」

 

 

 ――正に『虎穴に入らずんば虎児を得ず』だな

 

 ――結果的に義弟自身の安全にも繋がるという皮肉よ……

 

 ――まだ危機が残ってるなら休んでる場合じゃないだろ定期

 

 

 最新のコメントが表示された時、ぴく、とあたしの眉がひくついたのが分かった。対岸の火事とばかりの他人事な発言に苛立ったのだ。

 だが、あたしが何かを言うよりも速く、キリトが口を開いた。

 

「動きたいのは山々だけど”上”に止められたらそうもいかない。ISや兵装の使用許可がなければ、俺も檻の中の獣と変わらない」

 

 そう言って、彼はあたしや、脇にいるリーファ達に苦笑を向けた。

 その視線に含むものを察したあたしもまた苦笑する。

 

「あたし達が”檻”って言いたいのかしら」

「今は”楔”だけど、な」

「……窮屈よね」

「仮想世界は自由だから十分だよ」

 

 リアルでは、彼の行動範囲は極めて制限されている。国外に飛ぶ事だって反対派からすれば『危険だ』の一点張りだった。亡国側に寝返るのでは、また暴走するのでは、と。その意見を跳ねのけるための普段からしている行動制限。

 例外的にそれが解除されたのは、国外の亡国のアジトや、《製薬会社スペクトル》にあるだろう創世記Virusの摘発、クリーチャーの駆除に彼の力が必要とされたからだ。徐々に行き渡り始めている件のワクチンがあるとは言え、ユウキ達がアバターで対峙したハンターなど、現代火器を以てしても危険性の高いクリーチャーはやはり多い。ISの防御障壁も絶対ではないし、操縦者がクリーチャーに馴れていなければ最悪二次被害、三次被害を生みかねない。それを危惧した各国上層部や《BIA》幹部、彼自身の提言もあり、バイオテロに当たる面々の監督兼補佐として彼が選ばれた。

 あたし達はあまりいい顔をしなかったが、大義名分を背負って各研究所の研究資料を見たり各国上層部、IS操縦者や軍部と繋がりを持てる絶好の機会だと言われれば、許さざるを得なかった。

 更に、お盆明けから予定されている《第三回モンド・グロッソ》のために各国の最大戦力でもある国家代表が来日する。つまり事変以降、《BIA》参加国の(みょう)(だい)として日本に滞在していた代表候補生たちが帰国するとはいえ、一時的に国防力が下がってしまう。その隙に《製薬会社スペクトル》イコール《亡国機業》が事を起こしにくいようにと、行動制限の一時解除が認められた。

 それが再開されたという事は、世界中のアジトや《製薬会社スペクトル》支部の調査・露払いは終わり、彼が必須となる状況がなくなったという事に他ならない。

 つまり今すぐに危機的状況に陥る可能性は低くなったという事なのだ。

 ――この一連の流れは、アジト襲撃を除いて全て政府の声明で明らかにされている事だ

 もちろん《BIA》のホームページにも記載されている。彼が大きく動く事の必要性を明示しなければ、反対派が面倒な事を言い始めるからだ。

 その必要性が無くなったなら自ずと答えは決まってくるのだが……

 

「それに、ここに来れるという事は、それだけリアル側は平穏に近付いたという事でもある。俺が出なければならない事態なんて無い方がいいんだ。そっちの方が、明らかな異常事態なんだから」

「キリト君……」

 

 彼の言葉に、あたしは言葉に言い淀んだ。その異常事態の現場に生身で行かないあたしが言える事は何もない気がしたから。

 それを知ってか知らずか、彼は微笑みを向けてきた。

 

「それで、今日のクエストはなんだ? 休息がメインなら大変なものじゃないんだろう?」

 

 もうこの話はここまでだ――と、言外に言われているような気がした。

 はっとしたあたしは、気を取り直して口を開いた。

 

「そうね。道中、説明するわ。みんな、行きましょう!」

 

 敢えてコメントを見ないようにしながら、あたしはキリトとスメラギの二人とパーティーを組む。羽を出しつつ、水着の上に被せるように戦闘衣装を纏った。

 それからあたしは羽を震わせ、夏の青空へと飛び立った。

 

 






・慰安&配信の経緯
 1.セブンのキリトとのくんずほぐれつを知られた
 2.キリトが休みを得た(世界が一時的にでも平穏になった)
 3.夏と言えば海
 4.ALOのクエストを配信して広報活動


・各国の亡国アジト
 判明している限りは殲滅完了
 諸々の研究資料押収済み(アジト襲撃組でのみ共有)


・《製薬会社スペクトル》支部
 地下研究所のクリーチャー殲滅完了
 諸々の研究資料押収済み(BIA経由で各国共有済み)


枳殻七色(歌姫セブン)
 二つ名:歌姫
 ユーミル所属V-tuberアイドル
 個人勢だった頃から百万超えのファンを有する。《シャムロック》解散後からライブが出来ておらず、要望に応えるため、和人経由で企業所属になった。その過程で二つ名を姉妹ユニットの名字扱いに採択する
 ユイ達がゲーマーズならセブン&レインはアイドルグループ枠
 臨海学校前の猛特訓でのやり取りが仲間に知られた&キリトの慰安の必要性がかみ合ったため今回のクエストに挑む事に
 クエストとは言うが、聞いた難易度は低いのでキリトには観光してもらうつもりで呼んでいる
 配信は仕事としてしている
 種族熟練度:605


枳殻虹架(歌姫レイン)
 二つ名:多刀流
 ユーミル所属V-tuberアイドル
 無名からいきなりの転身。セブンファンからの風当たりは強いが、歌唱力は高く、アイドル業への入れ込みの強さから素で実力は高い
 やや引っ込み思案な性格のため過小評価されがち
 自身の新設チャンネルで一緒に配信している
 種族熟練度:810


桐ヶ谷和人(キリト)
 二つ名:解放の英雄、世界最兇
 ユーミル所属テスター兼デバッカー、日本総務省所属特別調査員、《MMOストリーム》ライター、《BIA》特別顧問、そのほか多数
 《BIA》設立以降、日夜ずっと働き続けていた事もありお盆休みを獲得。家族(意味浅)サービスに費やす
 ゲームをしている事を批判されるが、『それだけ世界は平和になった』と反論して黙らせている。世界の問題を子供一人に背負わせる事そのものが”異常”なので反論は是非もないネ
 種族熟練度:350(力勝負でセブンに押し倒される)


(;´Д`)<では、次話にてお会いしましょう……(何時になるやら)


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