インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~ 作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス
どうも、おはこんばんにちは。
今話は世論編。ヴァフス編辺りでちょろっと書いてた雑誌やニュースの書き方です。
時間軸としては前話記者会見の翌日くらいですね。
『こういう考え方もあるんだなぁ』くらいで読んで下さい。
字数:約七千
ではどうぞ。
インフィニット・ストライプス 7月21日9:00発信
『――セフィロトが言っていた事は事実ではあるけど、言葉足らずだよ。バトル漫画とかだと『気』とか『魔力』とかいうのあるよね? シールドエネルギーもアレみたいなものだと思ってくれると一番いいかな』
筆:はぁ……なんだか、現実味がないというか、ちょっと信じ難いんですが……ともあれISを動かすという事は、他者の命を使うという事なんですよね?
『それも少し違う』
筆:え? でもセフィロトは、この地球を破壊して、死んだ生命のエネルギーを吸収し、進化するって言ってましたよ。それってつまりそういう事じゃないんですか?
『うーん……なんて言うか『魂=エネルギー』じゃなくて、『魂』っていう炉心から、『エネルギー』っていう熱が出ているイメージかな。で、ISはその熱を使って動いてるって事。もし仮に『魂=エネルギー』の理論が正しいとすると、【黒椿】のワンオフや【森羅の守護者】の旗が持つエネルギー増幅機能はどう説明するんだってなるでしょ』
筆:あー、言われてみれば
『補給口がない【無銘】のエネルギーが自然回復するのも、彼の魂から出るエネルギー……所謂”気力”って奴で賄ってるからだよ。覚悟を決めたら倍率ドンになる。ただ彼は常に守る意思を強く持ってるから《覇導絶封》とかの【黒椿】の単一仕様能力は自動発動しちゃうんだ』
筆:へぇ、そうなってたんですね。ちなみにそれ、本人は知ってるんですか?
『《亡国事変》の後にエネルギーの説明ついでに話したよ。前から【無銘】のエネルギー回復に関して疑問に思ってたみたいで、道理でって納得顔だった』
筆:以前はどう説明していたのです?
『世界中に漂うエネルギーを吸収してるからって、誤魔化してた。真実を伝えるのはちょっと、ね……』
筆:あー……ホロウを見てるから、なんとなく分かる気がします……
筆:ところで博士、生身でそのエネルギーを扱う事は出来ないんですか?
『それはわからないよ。”殺気”や”怒気”、”
筆:え……破裂、ですか……
『体の中から外に向けて思いっきりエネルギーを出すとなったら、肉体の強度も相応じゃないとね。じゃないと《ファイナルエクスプロージョン》みたいに塵になっちゃうから』
筆:うわぁ、夢がない……というか博士、それ知ってるんですね
『和君がエネルギー弾出せるようになったって知ってから色々と調べてね。で、『気を付けるように』って注意喚起のために見せる題材に適してたからさ』
筆:……自爆特攻しそうな気しかしないんですが
『いやぁ、昔ならいざ知らず今の彼ならホントにホントの最後の切り札だね。守る人も全部喪って。それくらいしないと勝てなくて。そんな状況に追い詰められないと絶対使わないよ』
筆:凄く自信ありげに言われますね
『そりゃあ、その想い一つでデスゲームも、世界も救った子だって知ってるからね』
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黛 渚子(まゆずみ・なぎさこ)
インフィニット・ストライプス副編集長
デイリー・プライムオンライン 7月21日発信
さて、既に世界に知られているように、過日にサクラメント市を中心に米国全土を襲った《リアル・バイオハザード》は国際指定テロ組織《ファントム・タスク》によって引き起こされたものでした。これの引き金を引いた黒幕《オズウェル》は計画の失敗を悟った時点で自身に《K-Virus》を投与し、自らクリーチャーと化したため、援軍として派遣された各国のIS操縦者、またアメリカ国防軍によって討伐され、地下研究所は自爆装置によって跡形もなく消し飛び、およそ手がかりとなり得る物証はほぼ喪われたと言えるでしょう。
可能性があるとすれば、暴走時の桐ヶ谷少年が取り込んだ三つ目のコア【白式】(篠ノ之博士製)でしょうが、今のところつい三日前に新設されたNGO団体《BIA》からの報告はありません。
本当にただ手掛かりを掴めていないのか。
それとも掴んではいるが、世界を混乱させないよう伏せているのか。
今後も《BIA》と桐ヶ谷少年、篠ノ之博士らの動向に目を向けておく必要があるでしょう。
しかし、未だ謎の多い《亡国機業》ではありますが、実のところ戦力そのものはかなり削れているというのが篠ノ之博士達の見解です。
先月半ば、IS学園を襲撃した複数の組織の内、大々的に世界に中継された映像では最低三人の《亡国機業》構成員が桐ヶ谷少年により撃破、後に捕縛されています。この三名に聞き取りを行い、情報を入手していく予定だとも報告されていました。更に今月頭、故人となった織斑秋十少年(没年・16歳)を誘拐した仕立て人であるアメリカ代表候補筆頭生ダリル・ケイシー嬢も、IS学園に潜りこんでいた亡国側のスパイである事が発覚し、現在学園地下の拘置所へ拘留され、聞き取りが行われているとの事。
技術・経験を積むのに多大なコストを要する『操縦者』を四人捕えた事は事実。この点から、それなりに戦力が削れたと言えるでしょう。
とは言え《亡国機業》が独自にコアを作成出来る点から油断は禁物でしょう。
何故なら桐ヶ谷少年の体に最初に移植されたコア【無銘】は、実に三年も前の時点で作成されていたという《亡国機業》製の代物だからです。篠ノ之博士に依存せざるを得ない国際社会のISコア事情を鑑みれば、それに頼らなくて済む《亡国機業》の方が一歩リードしていると言わざるを得ないでしょう。
巷では、一連の騒動で捕らえた構成員はしっぽ切りをされたのではないか、という説も浮上しています。
桐ヶ谷少年や更識楯無代表候補達がサクラメントに赴いていたのは、故・織斑秋十少年に貸与されていた【白式】のコア反応があったためであると公式発表がありました。
これはつまり、少なくとも篠ノ之博士製のコアであれば反応を追えるという事を意味します。
よってその反応を追えば拠点となり得る《亡国機業》のアジトも突きとめられる訳ですが、独自にコアを作成できる状況が知られた今、そう楽観する事は出来そうもないというのが新説が語る事です。もし全てのISのコアを独自製のものに入れ替える計画があったのだとすれば、篠ノ之博士製が製作した既存のコアと、それを基にした機体は邪魔になる。だから敢えて捨て駒として使い、あわよくば桐ヶ谷少年を捕らえようと画策していたのではないか、というのです。
仮にこれが真実だとすれば、恐ろしいと言わざるを得ないでしょう。
なぜなら、育成に多大なコストを要する『操縦者』を捨て駒に出来るほどの備えを終えていると言っているも同然だからです。
いえ、事実終えているのかもしれません。IS学園襲撃時然り、【森羅の守護者】然り、ISは既に無線通信を介した遠隔戦闘をも可能とする時代へと突入しています。『ISは無人では動かせない』というこれまでの常識が壊されたも同然です。
天災・篠ノ之束博士と並ぶだろう技術者が《亡国機業》にいる以上、今後は熾烈な技術変革が幕を開けるに違いありません。
未来がどうなるかは、現代の英雄や天才達に掛かっていると言えるでしょう。
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デイリー・プライムオンライン
中〇日報オンライン 7月21日(月)12:21配信
インフィニット・ストラトス(以下、IS)が世界に公表されてから九年が過ぎた。
人々が認知するIS関係のイベントとは今月末に控えている第三回モンド・グロッソだろう。ISに限らず言えば、今年はアメリカ・オリンピックが開催される年であった。
国連、国際IS委員会などの公式発表により、来月8月に予定されている第三回モンド・グロッソは出場する国家代表、および一部代表候補のみが日本を来訪し、無観客状態で試合を行う予定に決まった。この決定に対し、《リアル・バイオハザード》を恐れる世間からの風当りはかなり強い。新規発足したNGO団体《BIA》を中心に会場に厳重な警備が敷かれるとは言え、未だ《亡国機業》としての顔を持っていた《製薬会社スペクトル》に対する捜査・制裁が終わっていない現状では時期尚早に過ぎるというのが主な根拠だ。
これは今月末開催予定であったアメリカ・オリンピックが中止された事が関与していると言える。
《製薬会社スペクトル》の本部が置かれていたサクラメント市を中心にアメリカでは未だバイオハザードが続いており、事件から約十日が経つ今も被害報告は日々増加傾向にある。織斑秋十氏、および桐ヶ谷和人氏を依り代としたセフィロトの行動によってサクラメントとその周辺地域は荒れ果てた荒野となり、およそ感染した生物は存在していないが、ウィルスは目に見えない形で人々を脅かしているのだ。ワクチンの開発も完了していない今、世界中に置かれた支部のどこからバイオハザードがいつ発生するか、市民は不安を抱えている。
《亡国機業》の壊滅と《製薬会社スペクトル》の営業停止と解体、および綿密な調査を経て、ワクチンが行き渡ってから国際交流の場を開くべきというのが日本の、そして各国国民の総意だが、現政権にこの声は届いていないように思える。
いざとなれば政府機能の移転などを行い、それに伴って政府官僚も避難するだろう。
それでいいと思っているのならそれは間違いだ。
さて、ここまで現政権、また各国の判断に問題提起してきたが、もう一つ同様に提起しなければならない組織がある。つい先日に発足したばかりのNGO団体《BIA》だ。
《BIA》とは『バイオテロ迎撃連盟』の英単語のイニシャルを取って付けられた名前であり、その名の通りバイオテロに対する情報収集・予防・クリーチャーと化した存在の鎮圧、危険地域の制圧・安全確保の他、バイオテロによって被害を被った市民に対する救出・支援活動も視野に入れている。また大本の原因となる《亡国機業》に対する作戦行動も取ると宣言しており、いま世界が最も注目し、その存在を必要としている組織の一つと言えるだろう。
■そもそも、NGO団体とは何か?
その歴史は意外に古く、もともとは国連などの国際会議で、各国政府や国際機関とは異なる「民間団体」を指す名称として使われるようになったのが語源とされる。最初に作られたのは1815年ウィーン会議で設立されたライン川航行中央委員会。現在は貧困や飢餓、環境などの地球規模の問題に対して、国家や民族、宗教の壁を越えた民間(非政府)の立場から、利益を目的とせずに社会的な活動を行う団体のことを指し、日本では『非政府組織』とも呼ばれている。
原則として『国際連合憲章』により、NGO団体は国際連合との連携協定を結ぶ事になっている。これに該当しないのは営利団体、政党、基金など、『営利目的』や『政治関与』、またその組織そのものが活動するためにないなどの条件に当てはまるものとされる。
ちなみにNGO団体で一般人も聞いた事があるのは『国際赤十字』などだと思われる。
■《BIA》は本当に非政治関与か?
《BIA》は国際連合と連携協定を結んでいるため、営利目的でなく、政治に関与しておらず、またその組織はファンド目的でない事は証明されている。
しかし、本当にそうだろうかと今一度考える必要があると思う。
何故そうするべきかと言うと、《桐ヶ谷和人》氏の存在は、《BIA》への日本政府の介入を許す温床であるからだ。
知らない人はいないと思うが念のために説明すると、かの少年は未成年であるにも関わらず、MMOトゥモローのライター兼調査員であったり、果てには総務省仮想課(VRMMO関連の政的部署)に名を連ねている人物だ。更に特別顧問という形で《BIA》を構成する小隊規模の実働部隊『SOU』、少数精鋭のバックアップ部隊『SOA』、そして電脳ダイブメインのホワイトハッカーチーム『SEOS』全てに関与する立場にも就いている。
能力的に可能なのかと疑問に思うが、デスゲーム時代は単独行動で生き抜き、強大な敵を相手に一人、あるいは数十人の連帯でも相対した経験があるため、ここは可能だと仮定して話を進める。
そんな彼の経験を現実に反映させるのは、偏にその身に埋め込まれた【無銘】(《亡国機業》製)、【黒椿】、【白式】(共に篠ノ之博士製)の三つのコアだろう。それらが彼の身を守りつつ、現実で戦える術を与えるのだ。
ここで問題なのが、篠ノ之博士製のコア二つは日本政府に所有権があるという点である。
既に移植されてしまい、取り除けば死亡する危険性から彼が死ぬまでそのままなのは確定しているが、それでもコアそのものの所有権は日本に帰属している。【黒椿】の機体は篠ノ之博士が主に製作したようだが、【白式】はブリュンヒルデの【暮桜】と同様、日本政府直轄の研究機関《倉持技研》だ。ひょっとすると生体コアになった事でメンテナンスはノウハウを持つ博士が担当するかもしれないが、所有権は変わらずだろう。
だとすれば、桐ヶ谷少年はその命を日本政府に握られたも同然という事になる。
いや、彼が『大切な存在』と公言している者達の身柄を含めれば、常に人質を取られているようなものに近い。天災のバックアップがあろうと24時間365日常にその全員を守れるとは限らないだろう。
ともあれ【黒椿】と【白式】と運命共同体になった彼は、コアの所有権に引きずられる形で政治に巻き込まれかねない。
その第一歩が直近のモンド・グロッソなのではないか、という事だ。
常識的に考えて、《製薬会社スペクトル》への捜査・制裁も不完全で、《亡国機業》も健在、ワクチンすら出来ていない現状でモンド・グロッソを開催し、オリンピックは中止するという判断は、バイオハザード発生地がアメリカであるという点を抜きにして考えれば、残るファクターとしてこの線が強いと思わざるを得ないだろう。
あの少年は義務教育をロクに受けていない子供である。しかし、確かにデスゲームや幾多の事件、世界を救った英雄であり、影響力は甚大だ。
腹黒い官僚の言葉の傀儡にされ、頷いてしまったがために、日本国内で予定されたモンド・グロッソ開催になってしまったのではないか。
それでは国連が認めた三原則の一つ『非政治関与』を破っていると言える。
無論、これは日本政府だけが悪いのではない。仮に政治的関与があるのなら、《BIA》会長でもある篠ノ之束博士をはじめ所属する大人がこれを断固として拒否し、また少年英雄を大人として守り、正しく導くべきなのだ。
そして中止といかないまでも、半年や来年に延期されるなどの対応を検討するのが国民を想う正しい国家運営ではないだろうか。
人命を尊ぶ在り方を掲げるならば、政権に忖度する状況を作ることなく、真に国民を想って行動すべきなのだから。
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©中〇日報オンライン
MMOトゥモロー・アルゴの一言ボード 7月22日(火)18:00発信
7月21日夜、世界は震撼した。
それがどれほどのものか、私にも想像は出来ない。
【解放の英雄】キリト/桐ヶ谷和人の死闘により、私を含め9600名余りの人間があの浮遊城から解放された。
過日の《亡国事変》では世界滅亡の危機にあり、約六十億の人命が喪われるところだった。
それと比べれば一万に届かない数は多くないのかもしれない。
しかし、忘れてはならない。
《SAO事件》に死者はいる。243名の、その人を想うあまり《ナーヴギア》を取り外した行為によって命を落としてしまった尊い命の存在を、我々は忘れてはならない。
なればこそ、あの世界の消滅は必然であり、自然であった。
――これは、おそらく人間が生きる以上は永遠に答えの出ない至上命題である。
カタチが違うとは言え、”あの世界”を象って作り直された世界を、ある人は『人命の冒涜』と言い、またある人は『技術の発展』と言うだろう。どちらも正しく、間違っていない。
どちらがより正しいかなんて、私にも分からない。
ただ一つ思うのは。
喪われた命を盾に、他者を、仮想世界を貶める事はしないで欲しい。
それこそ『人命の冒涜』だと、私は思う。
なぜなら私も、そして今は亡き彼らも、あの世界に囚われた全ての人は等しく新天地を夢見ていた同胞なのだから。
――――――
帆坂 朋(ほさか・とも)
MMOトゥモロー専任ライター/リサーチャー
『アルゴの一言ボード』の他に同サイトで『アルゴのウィークリー新聞』『アルゴのお便り枠』『ALO攻略掲示板』『MMO配信板』など多数の特集を持つ
SAO生還者。【鼠】の二つ名で情報屋を営んでいた
・シールドエネルギーとは、つまり?
BLEACHの霊圧
ドラゴンボールの気
ナルトのチャクラ(九尾)
FFⅦのライフストリーム=魔晄
『魂』という炉があって、そこから発生してるモノが霊圧であり、気であり、星の命=魔晄であり、本作ISに於ける『シールドエネルギー』
あまりに出力が強いと更木の斬魄刀然り、ベジータのファイナルエクスプロージョン然り、漫画版超のブルー悟空フルパワー然り、その身が保たなくて傷ついていく
本作に於いては和人のようにコアを移植していないと一護、悟空らのようにエネルギーを放てない=生身じゃ(ヾノ・∀・`)ムリムリでいきます
つまりドラゴンボールしたければ人造人間(コア移植)になるしかないのだ……
――地球人で気功波出せる亀仙人達が如何に凄いかって話ですね
FFⅦもマテリアがないと人間は魔法使えないしね。それと一緒です(和人のマテリアは”マスターまほう”と”まねまね”で)
・【黒椿】の単一仕様能力
精神エネルギー=魂から出るモノなので、和人が固く決意するほどドンドン流れ出る。その質(正しい気、邪悪な気のようなもの)と対応した武器で発動対象が決定される仕組み
――武器対応までしていたとか、ホントに束さん、三つも発現するのは予想外だったんですかね?
・《BIA》の立場
実績がないが、初手で世論反対のモンド・グロッソ開催側に立ったので批判的な目で見られている
実際鷹崎元帥達は第三回モンド・グロッソの優勝と興行収入を前提に計画を立てていたので、ある意味政治介入の忖度になる訳だが……
――ならなんで各国も同意してるんですかねってハナシ
いつバイオハザードが起きるか不明、国家代表という一大戦力を日本に集めるとか諸国からしてもイヤな筈だが……?
・アルゴの一言ボード
前半は『
『思うところは確かにあるが、外野がそれを言ってんじゃねぇヨ』というのが本音
有名無実のようなものだが、初めて『SAO生還者』という身の上を明かした
SAOアバター名=リアル名で結び付いた人物の一人になった
今年一年、お付き合い頂きありがとうございました。
2021年からもよろしくお願い致しますm(__)m
では、次話にてお会いしましょう。