インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

25 / 446


 どうも、お久しぶりです、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 一週間空けてしまい、お待ち下さった皆様、申し訳ありませんでした。レポートやら実習やら発熱やらでてんてこ舞いだったので……

 さて、今話ではタイトルからも分かる通り、かなりの激戦要素を入れております。アッサリ終わる部分もあるにはありますが……堕天使のACを見た事がある人なら途中のやり取りは分かるんじゃないですかね。

 視点としてはキリト、リーファ、シノンです。今までと較べて少し狂戦士の凶暴性が薄れておりますが、ご容赦頂きたく思います。

 ではどうぞ!




第二十二章 ~堕ちし英雄達の死煉~

 

 

 長刀使いの堕天使、戦斧使いの狂戦士と睨み合う中、最初に動いたのは堕天使だった。

 

『この身の程知らずが』

 

 そう言って、長刀を突き出すかのように右半身を前にして構えた堕天使は俺へと突貫してきた。

 刺突かと予想していたが、答えは上段からの振り下ろし。

 ギリギリで反応出来たのでエリュシデータを振るって相殺したものの、直後真下から刃が迫る。真上に続いての真下からの攻撃に対応しきれず、ダークリパルサーで直撃を防ぐのが精一杯だった俺は真上に吹っ飛ばされた。

 その俺を追撃するべく、堕天使は黒い片翼をはためかせながら飛んできた。

 

『ふっ!』

「ぐ……ッ!」

 

 十分に対応は出来なかったから空中へ飛ばされたが、別にダメージを受けた訳では無く、依然として俺のHPは九割強を保ったままだった。それも《戦闘時自動回復》スキルとポーションのリジェネによって何れフル回復する。

 ダメージを負わなかったという事は、すなわちノックバックも無いという事である。

 よって俺は空中というこの世界では慣れない環境ではあるものの、堕天使が追撃に振るってきた長刀に対し、二刀を振るって相殺する事が出来た。横薙ぎに振るわれる長刀と交錯するように振るってやれば相殺出来るので、そこまで苦では無い、むしろ空中でしっかり態勢を整える方が大変だった。

 二、三、四、五、六、七撃目の横薙ぎを防いだ後、堕天使は俺の横を高速で飛び抜けた。てっきり攻撃が来るかと思って黒剣を右薙ぎに振るったものの見事に空振った俺は、その勢いのままぐるりと空中で回って、視界を地面から上空へと移す。

 

『滅却してやろうか』

 

 上を向けば、暗雲が渦巻いて立ち込める空の中心に浮かぶ堕天使の姿が見えた。俺をしっかりと見ていた堕天使はそう言い、長刀を逆手で持ち直した後、初速から凄まじいスピードを出して突っ込んでくる。

 

「ッ……やられるかッ!」

 

 空中で碌に身動きを取れない俺に取れた手段は、一つだけだった。ソードスキルだ。

 仮にここが現実世界だったなら男性の中でも俺にだけ許されているだろうISを使っただろうが、ここはそんなものなど存在しないSAOなので、俺にはソードスキルで対抗するしか考え付かなかった。

 ソードスキルは、システムがプレイヤーのアバターを既定の動きに沿って動かして敵を攻撃するシステムの一つ、つまりこれはシステムが主体となる。武器を通じてプレイヤーのアバターをもシステムアシストの対象に置く事で、システムの動きにアバターが動くのだ。

 つまりシステムが許した動作なので、極論常識外の行動なども可能になる、それがシステムが支配する仮想世界の特徴だ。

 俺はその一つであるソードスキルを用いて、真上に居る堕天使へ突進した。

 二刀から蒼の光を迸らせ、駒の様に時計回りに回転しながらの突進は《二刀流》突進二連撃ソードスキル《ダブル・サーキュラー》だ。とても使い勝手の良い突進スキルであるこれは、システムの動きに沿って、本来なら再現された重力によって落下する筈の俺の体を真上に動かし、押し上げてくれた。

 《ダブル・サーキュラー》は右回転しながら、左の剣を右斬り上げ、右の剣を一回転した後に逆袈裟に振り抜く技。勿論構えによっては左右逆もあり得る、その場合は回転の向きから攻撃の型の向きも全てが逆になるだけだ。

 そして堕天使の長刀は逆手持ちとは言え、俺から見て右から左へ振り抜かれる軌道にあった。丁度俺の剣劇と正反対の向き。

 よって、俺の二剣と堕天使の長刀がぶつかり合うのは必然であった。

 ギャァンッ! と空中で二剣と一刀が交わった音が響き渡り、俺達の急上昇と急降下の慣性は完全に相殺された。凄まじい速度の相殺であったためか、背中がそれぞれ天と地から闘技場の壁へと向きつつ、刃を合わせている俺達は空中で数秒浮遊感を味わった。

 

『ほぉ……? 何がお前を強くした?』

「ッ……仲間でも無いのに言いたくないな!」

 

 間近で背筋がぞっとする程の酷薄な笑みと共に問われ、半ば意地になりながら言葉を返し、二剣を押す。

 丁度その時にあちらも長刀を押したようで、互いに距離を取るように刃が押し出され、体が離れた。

 

『消え去れ』

「なん……ッ?!」

 

 距離が離れたから油断していたと言われれば確かにそれもそうなのだろう。堕天使は隕石を呼び寄せたし、狂戦士は斧を薙ぎ払って地を這う衝撃波を放ったり一瞬で距離を詰めて来ていた事を考えれば、距離が離れても警戒を怠るのは愚かだと言えた。

 しかし、よもや長刀を一度薙いだだけで、蒼白く細長い三日月形の斬閃が飛んでくるとは予想していなかった、しかも一回振るだけで六発飛んでくるなんて。

 

「こ、の……ッ!」

 

 弾丸とまではいかないが、それでも野球ボールよりは遥かに圧倒的な速度で飛んできた六つの斬閃。

 それに対し、俺は黒剣に蒼黒い光を宿し、六連撃からなる最上位ソードスキルである《ファントム・レイブ》を放った。

 左斬り上げ、右斬り上げ、袈裟掛け、刺突、袈裟、一回転して唐竹割りを放つ六連撃は、刺突だけがかなり不安ではあったが、斬閃全てと綺麗に相殺し合ってくれたため、俺はノーダメージでやり過ごす。

 

『ほぅ……』

 

 堕天使は、さっきの高速で飛んできた斬閃全てを相殺し切った事を興味深そうな顔で吟味しているようだった。

 何となく、その顔を見て、ムカついた。こっちは必死で二対一の中で食らい付いているっていうのに余裕そうな態度が何となくムカついた。

 余裕そう、そして何かを吟味するような表情はヒースクリフやエギルだってするが、しかし彼らのそれと堕天使のこの表情とは根本からして違っていた。堕天使の場合は、面白い、と上から目線に感じられたのだ。

 され続けるのも癪だし、堕天使のHPはあと少しで消し飛ばせる。このままでは狂戦士の猛攻の合間にまたHP1攻撃をされてしまう事は予想出来たため、空中で墜ちて行っている今、何とかして追撃出来ないかと思案した。

 そしてすぐに思い付く。さっき自分自身でやった事だったからだ。

 俺には堕天使のように斬撃を飛ばす事も、炎や隕石を放つ事も出来ないのだから直接攻撃しか手段が無い、つまり間合いを詰めなければならない。

 そして今が空中であるなら、ソードスキルによる突進しか、方法は無かった。

 

『余裕構してんじゃねぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええいッ!!!!!!』

「チィッ! ここで来るか……!」

 

 正に再び《ダブル・サーキュラー》を放とうと構えを取った時に轟く野太い方向に、俺は思わず舌打ちしながら視線を堕天使から外し、地面へと向ける。下では地面から僅かに浮き、そして自然落下しながら斧の宝石から火焔弾を放出している狂戦士の姿が見て取れた。

 この何十発と放たれる紫色の火焔弾は恐ろしい程の追尾性能と弾速を誇っているが、実体が無く、アストラル系のようなものだからか炎の中心で輝くドット部分しか攻撃判定が存在しない。とは言え、追尾性能によってそのドット部分がアバターに当たるよう調整してくるので、体の捻りだけでは決して避けられないのが実情だ。

 しかし実体が無いという事は容易に相殺する事も可能であり、炎だから簡単に阻む事も可能だろうと思って、俺は粉塵の中で咄嗟に《スピニング・シールド》をブレス攻撃された時と同様に放った。それが功を奏したのは偶然だ。

 よって対抗策は出来ているも同然だったから、タイミングとしては忌々しいと思いながらも、まだ未知の攻撃で無いだけ対処しやすかった。

 俺は頭と足を逆さにし、頭から地面に突っ込んでいくような体勢になった後、ダークリパルサーを眼前に掲げて翠色の円盾を形成するように高速回転させた。翡翠色に輝く疾風の円盾に火焔弾が次々と辺り、刃に阻まれては散っていく。

 斬り散らされた紫色の火の粉が顔の横を通り過ぎるのを我慢しながら、俺は全弾防ぐまで根気強く待った。

 左手の指と腕に衝撃が来なくなってから剣の構えを解くと、地面に辿り着くまで残り十メートルという所だった。

 思った以上に高い所まで上がっていたのだなと思いつつ、危なげなく地面に足を付き、脚の関節で衝撃を和らげ、すぐに動けるよう態勢を整えた。

 

『約束の地へ』

「ッ?!」

 

 そこで、唐突に予想外な所から声が聞こえた。真上だ。

 声が聞こえ、同時に何かの圧を感じて即座に右へ飛び退くと、一瞬前まで居たところに長刀を突き立て、その周囲の大地を隆起させる堕天使の姿が視界に入った。どうやら俺が火焔弾の嵐を耐え抜いている間に片翼で移動し、俺の真上を取っていたらしい。ズルいと思うのは俺だけでは無い筈だ。

 しかしこれは逆に好機でもあった。何せ堕天使は地面に長刀を突き立てた状態、つまり防御姿勢も攻撃姿勢も取れない無防備な状態だったから。

 

「ここで……ッ!」

 

 ここで決めるべきだ、脳裏でそう声が聞こえた。

 それに従って一歩、強く踏み込む為に左足を踏み出した。

 

 

 

『貴様ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!』

 

 

 

 その時、俺の後ろから恐ろしい怒号が唐突に響き渡った。

 思いもよらぬタイミングからだったのでビクゥッと肩が跳ね、動きが止まってしまう。

 チラリと肩越しに後ろを見やれば、斧を俺に向けて突き出し、紫色の宝石から禍々しいオーラを放出させている狂戦士の姿を三十メートル程先に見つけた。

 

『漢にィ……! 後退のォ……! 二文字はァ!!!』

 

 狂戦士の顔には凄惨な笑みが浮かんでいた。びきびきと血管が浮き出ている浅黒い顔に、凄惨な笑みは、空恐ろしかった。それ以上に斧から感じる圧倒的な威圧感の方が凄まじかったが。

 もしかすると、禁則事項で同じものに触れると威力が上がるとか、そんな感じなのかと思った。

 

『無ぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええいッ!!!!!!』

『ふっ!』

「く……ッ!」

 

 続けて放たれた怒号と共に、重苦しい重低音を轟かせながら禍々しい極太の光線が放たれた。その直線状に居た俺と堕天使は、それぞれ別方向に跳んで、その破滅を齎す光線を躱す。同じ方向に躱したら追撃しようとも思っていたのだが、どうやらそうは問屋が下りないようだった。

 堕天使とは、一対一ならまず確実に勝てるという確信がある。割と突進速度があるしえげつない攻撃をしてくるが、まだ対処のしようはあるからだ。隕石群も躱すか斬るかで対処可能だった。

 しかし狂戦士がここに入って来るとなると、些か以上に難がある。狂戦士の妨害が強い為だ。

 狂戦士に対して離れる移動を取れば、それがたとえ堕天使に向かって移動する為であろうと後退と取られるし、あちらは巨大レーザーやら追尾性能の高い火焔弾やらを速攻で放ってくる、予備動作が少ないから隙も小さいのだ。更には恐らく頭上に表示されていた回数分だけ怯まないと来ている。

 堕天使を潰そうとすると、一旦視界外に置いた狂戦士の方が手隙になるから火焔弾を放たれ、邪魔されてしまう。それに下手すればレーザー砲やら高速移動後の攻撃を受けてしまう。

 防御も出来ないとなると、圧倒的に狂戦士が邪魔なのだ。

 

「……こうなったら、いい加減に腹を決めるか」

 

 元々吉と出るか凶と出るか分からない賭けをしようとしていたが、先が分からないからこそリスクを考えて二の足を踏んでしまっている現状、これを打開する為の行動を起こさず先延ばしにして敗北したでは目も当てられないし、応援してくれた皆への裏切りになるから俺自身がそれを許さない。

 堕天使を倒し切る事が出来ないなら、ここは狂戦士の方を何とかする必要があるかも知れないと、そう思った。

 実際、狂戦士の方は見た感じ、遠距離攻撃はえげつないものの、近距離攻撃は真正面から割と堂々とした物理攻撃しか今のところは無い。まぁ、ストンプは落雷を呼んでいたし、さっきは岩塊が形成されたから、完全に純粋な物理攻撃とは言えないものもあるにはあるが、動きは堕天使より遅いからかなり対処のしようがある。

 その間は堕天使がノーマークになり、最悪HP1攻撃をされてしまうが、一応対策は浮かんでいるから何とかなるだろう。

 むしろ狂戦士の攻撃力を何とかしないとこの戦いはヤバい。

 

「……行くッ! は……ぁぁぁぁぁああああああああああああああああああッ!!!」

『いいぜ、来いよ!』

 

 二刀を構え、俺は堕天使から狂戦士に狙いを変えて駆け出した。斧を構え直した狂戦士は獰猛に笑いながら待ち受ける。

 駆け寄りながら、俺は狂戦士の頭上とその上に表示された黒いカーソルの間にある数字を確認した。やはり数字は《REST:15》となっていた。

 俺の予想が正しいなら、この数字は攻撃を当てる度に一ずつ減っていき、ゼロになった時に初めてまともにダメージが通り、かつノックバックを受けるようになる筈だ。

 問題はこの数字が何時、どのタイミングで、何をきっかけにして回復するのかという事であるが、こればかりは実際にゼロにしてみない事には分からない。

 ただ分かるのは、恐らくこの数字がゼロにならない限り、狂戦士はどんな攻撃に対しても怯まないという事。

 それなら、こちらの行動も狭められるのだが、逆に考えれば、その行動を取ればどうにか出来るという表れでもある。

 

『屑がァッ!』

「ッ……!」

 

 俺が間合いに入った瞬間、巨漢の斧使いは後ろ手に引いた戦斧を大きく振り下ろしてきた。

 その一撃を男の右側面へとスライドターンで移動する事で躱す。さっきと同じセリフだったからもしやと思えば、やはり予想通り、地面を叩いた一撃は丸い岩塊を浮かび上がらせた。

 この闘技場に出てきている二対のボスに関しては、茅場晶彦が先導した部分では感じられたフェアネスが情報不足や明らかに世界観を違えた攻撃方法からは感じられないが、少なくともある程度の統一性を持って攻撃行動を取っている事は他と同様である事が分かった。

 俺達プレイヤーがソードスキルを放つ時、必ず音と光、そして特定の構えを取らなければ出来ないように、この二体のボスは技を放つ際にはそれぞれ特定の構えとセリフを言わなければならないのだ。

 狂戦士の場合、恐らく全ての攻撃行動が技であると同時、全てにセリフが設定されている。これが設定者の慈悲によるものなのか、それとも元々そういうキャラ設定なのかは知らないが、プレイヤーは予備動作よりもむしろセリフに注意しなければ敗北を喫するに違いない。

 それが分かれば、相手がどんな攻撃をしてくるかも分かるという事。距離を開ければ火焔弾を放ってくるのであれば、密接していれば恐らく放ってこないのと同様に、相手がどんな隙を晒すかも分かるという事。

 これがプレイヤーとプログラミングされたNPCの最大の相違点だろう。

 

「は……ぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああッ!!!!!!」

 

 地面に斧を叩き付け、隙を晒している狂戦士の右横から、俺は蒼光を迸らせて二刀を振るった。

 《ザ・グリームアイズ》達にも放った十六連撃からなる《二刀流》上位ソードスキル《スターバースト・ストリーム》だ。

 袈裟掛けに始まり、二刀の回転や叩き付け、高速の乱舞を巨漢の脇腹に叩き込んでいく中、その剣劇と同じ回数の硬い音と感触を知覚し続けた。

 しかし、最後の左刺突の一撃を放った時、それまで硬いものを叩き切る感触だったのが肉を斬り裂くような感触へと変わり、音も硬質なものから肉を絶つ音へと変わった。

 

『ぐぉうッ?!』

 

 それは、頭上に表示されていた数字が消失した事を知らせるものだった。

 《スターバースト・ストリーム》の最後の一撃は狂戦士の右脇腹に深く突き刺さっていて、今まで一切怯まなかった巨漢が痛そうに表情を歪め、軽く仰け反っているのが確認出来た。

 

「ッ……まだまだぁッ!!!」

 

 これで、狂戦士の頭上の数字をゼロにすればまともに攻撃が通る事が分かった、これ一つでも賭けに出た価値は十分あったと言える。

 しかし、今回の好機をそれだけで済ませるのは勿体無いと感じた俺は、僅かに左半身を更に前へと押し出した。すると右肩に担ぐように持ち上げている黒剣から赤い光が迸り、システムの動きに合わせて俺も速度と重さを増加させる。

 赤い光と共に放った技は高速の刺突五連、袈裟掛け、跳び上がりながら逆風、体幹を捻っての唐竹割りという八連撃からなる《片手剣》上位ソードスキル《ハウリング・オクターブ》。速度だけでなく一撃の重みもあるので、《片手剣》スキルの中でよく使っている技の一つだ。

 その赤い斬閃は全て的確に巨漢の筋骨隆々とした体躯に叩き込まれ、その度に今までとは違って分かりやすく仰け反っていく。

 

『終わりだ』

「ッ……!」

 

 唐竹割りを放ち、右に黒剣を振り抜いた後、今度は左右から黄色の光を迸らせる。

 直後、システムによって動かされる俺は、凄まじい速度で狂戦士との距離を詰めて二刀を突き出し、強烈な刺突を男へ見舞った。刺突の勢いはそれでは収まらず、巨漢の体に二刀を突き刺したまま思い切り前進し続ける。

 この技は《デュアル・ストライク》という《二刀流》突進二連撃ソードスキルだ。《ダブル・サーキュラー》と異なって刺突オンリーだし技発動前後の隙は大きいが、《ヴォーパル・ストライク》を超える突進速度と距離を持つため、使い所によってはとても有用だ。

 その突進によって、俺はギリギリで横から突進してきた堕天使の一瞬八閃の技を回避した。狂戦士にかなりのダメージを与えられている今、邪魔されてしまっては堪ったものでは無い。

 狂戦士のHPは漸く最上段の一段目が削れようとしていた。《ホリゾンタル・スクエア》四連撃を喰らって一割しか減らなかった事を鑑みるに、どうやらあの《ぺネトレイト》とかいう数字が存在する間は被ダメージ量が減少してしまうようだった。

 後退、防御、アイテム使用禁止に加えてこんな性能があるなど、つくづくプレイヤー泣かせのボスである。

 この闘技場を設定した存在に悪態を胸中で吐きつつ、俺は狂戦士が仰け反りから回復しないよう、ソードスキルを連続させて放ち続けた。勿論堕天使が攻撃してきた時は《デュアル・ストライク》で移動し、躱しながらだ。

 

『ぶるああああああああああああああああああああああああッ!!!』

 

 そんな、それまで苦戦していた状態からは考えられないくらい一方的に攻撃していた俺を止めたのは、他ならない狂戦士だった。狂戦士は突然咆哮を轟かせたと思えば、いきなり斧を反時計回りに回りながら振り回したのだ。

 唐突な事、そしてソードスキルを繋げられず硬直を課されていた俺は、その一撃を諸に受けて後方へ吹っ飛んだ。

 ダメージを受けて残ったHPは八割強、どうやら無理矢理割り込むからそこまで威力は高くない設定だったらしい。

 気付けば、狂戦士の残りHPはもう少しで六本目に入ろうかというくらいに減っていたのである。半分を切ったから中断させられてしまったのだ。

 

『もっと愉しもうぜッ! この痛みをよォッ!!!』

「が、ァ……ッ?!」

 

 狂戦士が右手を持ち上げ、凄惨な笑みと共に言った直後、暗雲渦巻く天から紫色の雷が二つ落ちて来た。

 一つは狂戦士……そしてもう一つが、俺だった。上が少し明るくなったと思った瞬間にはもう落ちていて、あまりにも予想外な方向から受けた痛みに、目の前が真っ白になった。チカチカ、と中心で黒い輝点が明滅する。

 その雷は恐らく一瞬、一発しか落ちていなかったのだろうが、全身を穿たれた俺には何十発、何十分と続いているかのように感じられた。全身からしゅぅぅぅ……と白煙と黒煙を上げ、ぶすぶすと髪や服が小さな電気を爆ぜさせる中、俺は翡翠の剣を杖代わりに倒れ込むのをどうにか凌いでいるのが精一杯だった。

 ぐらぐらと、全身の痛みが頭を揺らがせて、視界が揺らぐ。

 

「ぅ……く、ぅ……ッ!」

 

 

 

 ――――……痛い……痛みだとッ?!

 

 

 

 口からは小さく、ぶつ切れの喘ぎしか出て来なかったが、胸中と脳裏では同じ疑問を叫んでいた。

 この仮想世界ではリアルでの行動をほぼそのままに反映出来る、それは食事をした時の美味さに対する多幸感や睡眠を取った後の爽快感、必死に動いた後の精神的な疲労感などだ。

 そんな現実に限りなく近くなったこの世界で、少なくとも俺が知る中で一つだけ一切反映されていないものがある。

 それが痛覚だ。痛覚は人に危険を知らせる信号ではあるが、それはただ躓いた時にも打ちようには激痛を受ける事から、現実では危険な凶器である武器を持って戦うRPGゲームにはプレイを阻害する因子として除外されている要素なのだ。ゲームプレイの為に痛みを度外視するなど、それはもう常軌を逸していると言える。

 だから少なくともVRMMOの走りであるこの《ソードアート・オンライン》では、痛覚緩和システムこと《ペインアブソーバ》というものによって、痛みを感じず、その代わりに不快な衝撃がアバターを貫くようになっている。

 だからこそ、この世界を生きるプレイヤー達は、少なくとも痛みに臆して戦わないという事は無かった、それがこの仮想世界での常識だからだ。物足りないという者も居たかもしれないが、少なくともシステムでそう設定されている以上は仕方ない事である。

 よって《ペインアブソーバ》によって不快感に置き換えられている筈の痛みを受けている事に、俺は隙だらけという事を理解していながらも疑問を胸中で叫んでいた。

 狂戦士は赤と橙色が混ざったような光が全身を覆い、明滅していて、HPバーの下には攻撃力上昇を示す《剣に上向きの矢印が付いた赤いマーク》と防御力低下を示す《盾に下向きの矢印が付いた青いマーク》が追加されていた。更には頭上の《ぺネトレイト》の数字も元の20はおろか、何故か40にまで増加していた。

 防御力低下は、《ぺネトレイト》の数字の存在で殆ど相殺されているから、実質攻撃力がかなり上がったというだけだ。しかもこちらは痛みを受けるようになっている。

 HPの残量的にさっきの雷はダメージゼロだったようだが、痛みを受けるというデバフを受けてしまった以上、状況はHPの量とは反比例して絶望的なまでに悪い。

 俺にも攻撃力上昇と防御力低下のマークがあったが、受けるダメージが増えた事を考えると、与えるダメージが増えたメリットがあっても全く喜べない。

 

『貴様に朝陽は拝ませねェッ!!!!!!』

 

 痛みで動けないでいる俺に走って近付いて来た狂戦士は、彼我の距離が数メートルほどまで縮まった時に足を止め、戦斧の柄では無く刃と柄まで伸びている部分を左手で持ち、右拳を振り抜く構えを取った。

 その右手に、バチバチと、蒼白い紫電が走るのを見て、嫌な予感に襲われた。

 すぐにその嫌な予感は現実のものとなった。狂戦士が右拳を振り抜いて地面に叩き付けた後、何と狂戦士を中心として半径数メートルの領域の地面から猛々しい紫炎が吹き上がったのだ。

 その範囲内に居た俺はその紫炎を諸に浴び、空中へと思い切り吹っ飛ばされる。炎の熱と肌を灼く痛みが襲って来て、目を瞑って耐えようとした。

 HPは一気に六割まで減り、更には毒のアイコンがレベル一~五まで全て揃っていて、ガリガリとゲージが削れていっていた。

 

『貴様の死に場所は、ここだぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああッ!!!!!!』

 

 浮遊感をかなり長い時間味わい、そして落下している最中にその怒号が聞こえた時、俺は再び首元を掴まれて振り回された。さっきはただ不快感しか感じなかったのに今は酷い激痛を覚えていて、碌に声も出ないまま、俺は地面に叩き付けられた。

 叩き付けると言っても掴んだままでは無く、途中で手が離れたので、俺は地面に当たった後は軽くその場でバウンドしたようだった。背中から全ての感覚が失せるような衝撃と痛みが全身を走った直後、一ヵ所に集中した熱感と斬り裂かれる感触、そして全身を砕くような衝撃に襲われる。

 

「ぅ、ぐ……ぁ……?」

 

 痛みに顔を顰め、閉じていた目をうっすらと開いてみれば、俺はアリーナの空中を飛んでいた。と言うよりは吹っ飛ばされている途中だった。

 放物線を描きながら飛んでいて、暫くしたら俺は横に流れながら斜めに降下していった。

 

「がぁ?!」

 

 もうすぐで地面に落ちるという時、どうやら吹っ飛ぶ先に居たらしい堕天使の長刀が俺の胸を貫いて来た。

 鈍い衝撃と共に鋭い激痛を受け、呻き声をあげた俺は、体を貫く長刀によって宙づりにされているのが分かった。

 堕天使の顔には酷薄なまでに涼しげな笑みが浮かべられていた。一目では綺麗だと思う端正な顔つきも、行動と状況を照らし合わせれば恐怖しか呼ばないだろう。

 

「ぐ、ぅ……」

『覚えているか、あの時の痛みを』

「な……に……?」

 

 自身の長刀で宙づりにしている俺を見ながら言ってきた言葉は、意味が分からないものだった。

 この男はプログラミングされたNPCであり、俺やアスナ達のようなプレイヤーでは無い以上、この台詞も恐らくは設定されているものに過ぎない。だと言うのに何故か、そうは思えない何かが感じられた。

 それは俺の過去から来るただの思い過ごしなのかもしれない、ただの勘違いなのかもしれない。

 けれどそうとは思えない何かを、堕天使の台詞からは感じられた。

 

『楽しかったか、痛みを忘れられて。嬉しかったか、痛みを受けなくなって。喜んだか、痛みを気にする必要が無くなって』

「な……?!」

 

 堕天使の言葉は、決して看過出来ない内容だった。プログラミングされているものだとしても明らかにおかしかった。

 たとえ比喩的表現を用いていたとしても、それが俺の事を言っているというのは嫌でも分かった。

 《痛み》とは過去の事、俺が《織斑一夏》の時に受けていた全ての悪意。正の感情は今の事、俺が《桐ヶ谷和人》として受けて来た全ての感情。

 俺は桐ヶ谷家に、直姉達に拾われ、愛されて、本当に幸せだった。織斑家に居た頃に一切幸せが無かった訳では勿論無いが……喜び、嬉しさもこみあげて来る幸せは、《桐ヶ谷和人》としての方が圧倒的に多かった。

 かつての苦しみを、痛みを、悲しみを、寂しさを、孤独感を忘れてしまえる程に満たされていたのだ。

 

『今までを忘れるくらい幸せだっただろう……ならば、今再び、忘れられない痛みを刻もうか』

 

 実際に口にはしていないから分かる筈も無いのに、偶然か、はたまは必然なのか、俺を長刀で貫いたまま堕天使はうっすらと冷たい微笑を浮かべた。

 朗々と、まるで謡うように並べられる言葉を、聞きたくなかった、耳を塞ぎたかった。何か大切なものを壊される、そんな嫌な予感を少しでも遠ざけたかった。一刻も早く、目の前の男を斃して終わらせたかった。

 けれど、現実は非情だった。全部で五つある毒が全て掛かっていて、長刀で宙づりにされている俺には絶えず毒による痛みを伴う虚脱感が襲ってきているし、HPは三割を削ろうとしていた。

 更には、男は黒い片翼を広げた後、その長身痩躯を包む紅い光に、黒を伴った翡翠色の光をも纏わせた。

 アルゴの情報ではHPが四分の一以下になった時に強化状態になるらしかったが、最早事前情報など意味が無いようだ。既に色々と情報とは異なるものが出てきている時点でそこまで頼ってもいないのだけど。

 

『お前の最も大切な“モノ”は何だ……?』

 

 

 

 ――――それを奪う喜びをくれないか

 

 

 

 微笑みと共にそう言われ、頭が真っ白になった直後、思い切り真上に長刀が振るわれ、遠心力と慣性の力で俺の体は長刀から抜けて真上に吹っ飛んでいく。

 腹から長刀が抜けた時の激痛に目を瞑って耐えていた俺がうっすらと開くと、堕天使は俺を空中へ放った後、片翼で追い掛けて来ていた。

 

「ッ……ポイズンキュア!」

 

 それでもまだ距離があった。それに空中に放られて碌に身動きが取れないなら、五つもあって一気にHPを削っている猛毒をどうにかした方が良いと判断し、俺は腰のポーチから緑色の結晶体を取り出し、翳し、文言を唱えた。

 安直ではあるものの覚えやすいそれをと絶えた後、緑色の結晶《解毒結晶》は砕け散り、光の粒子となる。それが俺の体を包み、毒のデバフを全て解除してくれた。

 

『貴様ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!』

 

 一応空中であろうとアイテム使用には反応するらしく、未だ上に跳んで行っている俺の三次元的な位置の地面に狂戦士は瞬間移動もかくやの速度で移動し、俺がさっき躱した時と同様の攻撃を繰り出していた。全て不発に終わってしまっているのは仕方が無い。

 

『滅却してやろう』

「ッ!」

 

 狂戦士の方に気を散らしている間に距離を詰めて来ていた堕天使の声が聞こえ、そちらに意識を向ける。

 堕天使は右半身を前に、右へ振り抜く姿勢で長刀を構えていて、俺もまだ鋭い痛みが所々にあるものの二剣を構え、迎撃の姿勢を整えた。

 そして、堕天使と俺の剣が交錯した。

 

 ***

 

「きー……!」

 

 自身よりも幼い義弟の渾名を口にしながら不安げに表情を歪める新たな義妹ユイを安心させるように抱き締めながらも、あたしも同じように不安な気持ちに駆られていた。

 あの子の過去を知っているからこそ、さっきの堕天使の台詞が明らかにおかしい事には気付いていた。

 アスナさん達はその時、長刀で宙づりにされる余りにもショッキングな光景から目を逸らしていたから聞き逃したようだし、クラインさん達も男性陣で何か言っていたから聞き逃しているかもしれないが、少なくともあたしはじっと見ていたからしっかり聞こえた。ユイちゃんも、恐らくはそうだろう。

 HP1という危機的状況から奇跡的にも脱したあの子は、しかし今もまた追い詰められていた。それはHPという見える形でもあるし、また過去を抉るという精神的なものでもだ。

 確かにキリトは、《桐ヶ谷和人》という名前を名乗り出したあの子は、過去の痛みを忘れていたと言えるだろう。実際には忘れてはいないが、何時も何時も怯えるような、そんな事は無くなった。何にでも昔と対比し、喜びを得る程の痛々しい様を見せる頻度はかなり低くなったと言える。

 だが、幾ら名前を変えようとも本質までは変わらない。あの子は《桐ヶ谷和人》であると同時に《織斑一夏》でもあるのだ、実際にその名で生きていたのは事実なのだから、過去を幾ら願ったとしても消せない以上は認めるしかない、それは仕方が無い事だ。

 あの堕天使は、今を過去に戻すと、そう言外に宣言していた。

 それはつまり、あの子の《桐ヶ谷和人》としての今を否定し、《織斑一夏》の頃に戻すという事だ。既に《Kirito》として酷い環境に身を置き続けているにも拘わらず。

 いや、そもそもプログラミングされただけの筈のNPCがそんな事を言う事自体が土台不自然だ。ただのあたしの思い過ごしにしては、あらゆる意味で辻褄が合い過ぎていると思った。

 この辺に関してはあの子と話し合った方が良さそうだと、心に留めておく事にした。

 

『滅却してやろう』

「ッ……!」

 

 そんなあたしの視線の先では、思い切り空中へ放り投げられたキリトと、彼を追い掛けて片翼をはためかせている堕天使が、空中で二剣と長刀を構えて交錯する光景があった。

 堕天使の長身よりも長い刀身を持つ鋭利な刃が斬閃のみを残す速度で振るわれるのに対し、キリトもまた的確に刃を閃かせ、一撃一撃をしっかりと防ぎ続けていた。

 

「お、おいおイ……キー坊とボス、どんどん上に上がっていってるゾ……」

 

 上に上昇を続けながら攻撃する堕天使と、その攻撃を防ぎ続けている為に上へと放られ続けるキリトは、既に闘技場の観客席の上に展開されている屋根よりも上、暗雲渦巻く空まで届いていた。

 《アインクラッド》の構造上、一層の高さは百メートルだから、それより高くない事は確実――そもそも屋根の高さがおよそ四十メートルくらい――なのだが、空を飛べるALOとは違ってここは飛べないSAOなのだから、そんな高さまでいっている方がおかしい話である。

 しかし、戦っている場所はおかしいものの、キリトが空を飛べる堕天使を相手に劣っていないというのは納得がいく話ではあった。

 キリトはリアルで、ISのコアを体に埋め込まれている。

 それは彼が知る限りでは生身でもISを圧倒する人間を作り出すプロジェクトの一環でもあったらしく、事実コアに適合した彼は単独で研究所や追手のIS操縦者達を相手取り、生還している事から、その試みは成功していると言える。

 それだけでなく、彼はISコアが反応した事で女性と同様にISを扱える。つまり空中戦を男性の中で唯一経験した事があるのだ。

 あたしの義弟になって暫くした後に尋ねて来た束博士の提案、そして何よりも本人の意向もあって、彼はISの訓練を束博士がどこかに有しているらしいアリーナで積み重ねている。

 つまり約半年の空中戦闘の経験があるあたしとほぼ同等の時間ながら、彼はその密度であたしを圧倒する経験がある。恐らくALOプレイヤーを含め、空中戦で彼以上に強い者は他には居ない。

 それは翅が無く、空中での身動きが制限されている現状でもボスと渡り合っている事から分かる事だ。

 

『消え去れッ!』

「負けるかッ!」

 

 空中で激しく剣劇を交わしていた二人の声が天から聞こえて来た。

 堕天使は長刀を両手で持ち、キリトは二剣を交差させ、鍔迫り合いをしていた。どうやら斬り合っている中で自然とそうなったらしい。

 その鍔迫り合いも、あたしが目を向けてすぐに終わった、どちらもが刃を押し合ったから後方へと離れたのだ。

 距離が離れた二人は、そのまま野球のドームのように展開されている闘技場の屋根の上では無く側面に足を着け、慣性を喪って落ちるよりも前に走り始めた。二人は距離を縮めるかのように屋根によって作られたアーチの側面を走っていく。

 

「……いや、どこのアクション映画よ?」

「でもステータス満たせて技術があったら出来ちゃうんですよね、ああいうの……」

「そういえば、アルゴさんは昔、敏捷特化を活かして水面走ってたっけ……」

「アー……あったね、そういえばそんな事ガ。まぁ、壁走りはアーちゃんやユーちゃんは勿論、キー坊が出来てもおかしくはないけどサ……」

「もう殆ど空中戦だよね……ほら、狂戦士なんか、置いてきぼり喰らっちゃってる」

「恐らくこういうのを想定されてなかったんでしょうね……」

 

 順にリズベットさん、シリカさん、アスナさん、アルゴさん、ユウキさん、ランさんの台詞である。どうやらSAO古参組から見てもアレは相当おかしい部類に入るらしかった。

 狂戦士も恐らくプログラミングされていない状態だからなのか、火焔弾を出しても良さそうなのに、空中で斬り結んでる彼に視線を向けるだけで特にアクションを起こさずに待機している。

 逆に考えれば、狂戦士の妨害が入らないという事なのでチャンスという事もある。恐らく設定されている三次元的な攻撃範囲の外に居るのだ、屋根の高さまで上るなんて誰が想像するかという話なのだが。

 そんな風に、余りにもSAOの常識から外れた戦闘を見せ始めた二人は、《片翼の堕天使》がアリーナの中央の空域へと鍔迫り合いで押された事で剣劇の応酬が一旦中断される。

 アリーナ中央の空域へと堕天使が移動した後、キリトもまた後を追うように屋根の側面を蹴り、その身を宙へと晒した。

 

「俺の最も大切な“モノ”か……」

 

 どうなるか、静まり返る闘技場の空に、キリトの声が朗々と響き渡った。

 決して響かせようとしている訳では無い、しかし力強く芯の籠ったそれが、自然と古代ローマを彷彿とさせる空間に響いていたのだ。

 

「アンタは“俺”の事を知ってる風だけど、何も分かってないな……全てが大切だ、大切じゃない“モノ”なんて何一つとして無いッ!!!」

『ふ……!』

 

 キリトの怒号を聞いた堕天使は、どこか面白そうな笑みをハッキリと浮かべた後、後退する勢いを片翼で止め、そしてはためかせて前方へ突進した。

 互いに突貫する二人は鍔迫り合いのように、両手持ちの長刀の振り下ろしと二剣の振り下ろしの一撃が交錯し、空中で突進の勢いが相殺される。

 

「まだ、だぁッ!!!」

『……?!』

 

 今までならそこでまた同時に後ろへと飛んでいただろう。

 しかし、今回キリトは違った。徐に二刀を真上にかち上げ、鍔で堕天使の長刀を真上に跳ね上げた。

 キリトに隙が生まれるが、勿論予想出来なかった行動に出られた堕天使もまた、隙が生まれる。

 

「ジ・イクリプスッ!!!」

 

 そして二刀の剣士は、自身が両手に持つ漆黒と翡翠の剣から眩い黄金色の光輝を迸らせ、堕天使を起点にして縦横無尽に、まるで瞬間移動のように高速機動をしながら二刀を閃かせ、斬り刻んでいく。

 片翼を利用して空中でも身動きは取れる堕天使も、流石に超高速ともなれば反応は出来ないようで、驚くような声と斬撃を受けた時の呻きを上げながら、ただ為すすべなく斬閃をその身に受けるだけだった。

 

「これで……終わりだッ!!!!!!」

 

 幾度も幾度も場所を変え、高度を変え、二剣を閃かせ続けた【黒の剣士】は、トドメとばかりに一際高く高度を取った。

 天を振り仰ぐように空中に大の字に身を晒す堕天使目掛けて、天高くまで跳んだ彼は真下へと一気に加速し、黄金の光の帯を引きながら、右の剣を大上段から振り下ろす。同時、空間を炸裂させるかのような大爆発が発生する。

 キリトは唐竹割りを放った姿勢のまま地面に着地し、二刀から光が消えた。

 そして空中で蒼い光の残滓を引きながら見下ろしてくる堕天使を振り仰ぎ、視線を投げ返した。

 

「……“想い出”の中で、じっと、していてくれ……」

 

 そう、キリトはどこか哀愁を漂わせながら言葉を投げた。それに堕天使がふっと微笑みを浮かべ……

 

『私は、“想い出”にはならないさ……何れまた舞い戻ろう……お前が生きる、その場所に』

 

 意味深な言葉を残し、片翼にその身を包んだ直後、蒼い結晶へと散った。

 

『貴様ァ、そんな所で長々と何をしている?』

「……」

 

 どこか感傷に耽っている様子のキリトだったが、その空気をぶち破るドスの利いた声が響いて、彼はそちらに顔を向けた。その先には戦斧を持ち上げて構え、キリトを見据える残る一体のボス《The Genocide Bersercar》が居た。

 キリトは狂戦士の姿を見て、脱力していた四肢に力を籠め、左右に二刀を開きながら立て、前のめりになりながら構えた。

 

『鼠のように逃げおおせるかッ! ここで死ぬかッ!!! どちらか選べぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええいッ!!!!!!』

 

 そう言った後、ぶるあああああああああああああああッ!!!!!! と怒号を轟かせながら狂戦士は駆ける。それに対し、後退を許されていないキリトは前へと走り始めた。

 青い《殺戮の狂戦士》と二刀の【黒の剣士】の、一対一の戦いが、漸く始った。

 

 ***

 

『皆殺しだ!』

 

 堕天使を倒し、漸く一騎打ちに持ち込んだキリトが駆け寄ってすぐ、同じく走って距離を詰めていた狂戦士がどうしてか足を止め、戦斧を前方に構えた。それだけでなく、斧からは禍々しいオーラがはちきれんばかりの様相で噴き出していて、明らかに放たれたらヤバいと分かる溜めだった。

 それはさっきも放たれた技の構え。

 

『ジェノサイドブレイバァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!』

「ッ……!!!」

 

 その技は何度か放たれていた為か、キリトも予備動作で何が来るか分かったらしく、オーラの輝きが一際強くなったその瞬間に射線上から横へと跳び退いていた。直後、轟音と共に巨大な光線が通り過ぎる。

 その横を、減速しないまま駆け抜けたキリトは狂戦士へとすぐに肉薄した。

 

『貴様に朝陽は――――』

 

 戦斧の刃と柄を繋げている部分を持ち、右拳を振り上げる動作と共に放たれた言葉。

 それが響いた瞬間、キリトはその場で大きく跳躍し、十メートルほどの高さまで跳び上がった。

 

『拝ませねぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええッ!!!!!!』

 

 そして怒号と共に右拳を叩き付け、さっきキリトを猛毒状態にした紫炎が吹き上がるものの、それは遥か上空まで一足飛びで跳び上がっていたキリトには届かず、完全に回避されるだけに終わった。

 

「はぁあッ!!!」

 

 紫炎が雲散霧消し始めた時、キリトは黒剣を逆手に持った後、その刃に蒼白い光を宿らせてから真下に突き出して急降下した。

 その下突きは伏せ姿勢から上体を起こす途中だった狂戦士の頭頂部に刺さり、痛烈なまでの衝撃音、そして狂戦士を中心として周囲に蒼白い波が放射状に広がるのを見た。

 

『ぬ、ぐぅ……!』

 

 頭頂部に黒剣を突き立てて静止したキリトを見て、これは拙いのではと思っていたものの、それは杞憂に終わった。何故か狂戦士が呻きを上げながら片膝を突いたのだ。

 

「……あら? ボスが膝を折ったわよ……?」

「ああ、アレはスタンだね。《ライトニング・フォール》にはスタン付与効果があるし、今回の場合は頭を強打したから脳震盪を起こしたみたいな感じで起こったんだよ」

「へぇ……」

 

 私のちょっとした疑問の呟きに答えたのは、近くでキリトの応援をしていたユウキだった。

 確かに現実でも頭を強打し、脳を揺らされたら人間は自然と膝を折って転倒を防ごうとする。

 恐らくそれをスタンに置き換えたのだろうけど、さっきまでかなり現実離れした技を放ってきた敵なクセしてそういう所だけは割と忠実なのだなと、何となく呆れてしまう自分が居た。

 

「お……ぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」

 

 そんな会話をしている間に狂戦士の頭上から右手側へと地面に降り立ったキリトは、堕天使にトドメを刺した時と同じ黄金色の輝きを二刀から迸らせた。

 違いは、先の技が三次元的な機動を含んだ猛攻撃だったのに対し、今度は地面に足を着けたまま場所の移動を行わないで乱舞を繰り出すというものだった事。蒼光の《スターバースト・ストリーム》を遥かに超える速度で叩き込まれる剣劇、その剣閃は煌々と輝いていた。

 しかし狂戦士に凄まじい勢いで叩き込まれる剣閃は、その全てが硬質な音で軽く弾かれているようだった。狂戦士のHPも六本目の五割を下回ったところ――残りHPは四本四割――で、一撃ごとのダメージ量は怯ませられていた時よりも大幅に減っていたのだ。

 

「まだだああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」

『ぬぅ……ぶち殺すッ!!!』

「あ、スタンが終わったよ?!」

「オイオイ、スキルをまた始めたばかりだぞ?!」

 

 ストレアとエギルが焦ったように言い、私達はやや前のめりになって観客席からアリーナを覗き込み始めた。

 気絶から立ち直ったのを示すように膝立ちから立ち上がった狂戦士、その男に、一度終了したスキルを再び繋げ、また黄金色の剣戟を叩き込み始めたキリト。

 状況はどう見てもキリトの方が危険だった。

 キリトのHPは、どうやら《戦闘時自動回復》スキルというものがあり、更にはさっき飲んでいたポーションの効果がまだ少しだけ残っていたからか、毒の状態異常をすぐに解いた事もあって六割強まで回復していた。

 しかし狂戦士の攻撃力を考えると、下手すれば次の連続攻撃でやられてしまいかねない可能性もあるから安心は出来ない。

 

『一発で沈めてやるよ、覚悟は出来たかァ……?』

 

 そうこうしている内に何やら見るからにヤバい構えを取り、危険を知らせる台詞を口にして来た。手に持つ斧を後ろ手に下げ、右手を持ち上げ、大きく振り下ろす構えを取った狂戦士の戦斧からは、禍々しいオーラがまるではちきれんばかりの様相で迸っていたのだ。

 台詞から、アルゴという情報屋が集めた中でも危険度トップクラスの内容、一撃死攻撃のものというのは予想が付いた。

 既に色々と情報と乖離しているが、それでもそれは使用してくるタイミングのみで、実際に使っては来るのだから無い方が不自然だ。それを放つための構えに入ったのだ。

 

『ワールドォ……デストロイ――――ぬぐぉ?!』

 

 技名らしき台詞を口にし、とうとう放つべく大きく斧を振り上げた正にその時、唐突に呻きを上げて仰け反り、攻撃が中断された。キリトの猛攻撃が漸く通ったのだ。

 黄金色の剣戟が続いている最中だったので、どうやらある規定の何かを満たしたのがソードスキルの途中だったらしい。

 キリトは黄金色の剣戟の最後に二刀を左右へ振り抜いたが、そこで止まる筈も無く、狂戦士が仰け反りから回復するよりも前に別のソードスキルへと繋げた。蒼光の《スターバースト・ストリーム》だけでなく、《片手剣》で放つ四連撃や三連撃、六連撃、凄まじい速さで放つ十連撃のソードスキルを立て続けに放ち続けた。

 その怒涛の勢いはまるでこれまでやられた分をやり返すかのようにも思えたと同時、狂戦士を恐れているようにも見えた。

 

「これ、で……トドメッ!」

『ぐぉああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……?!』

 

 延々と技を繋げていたキリトは狂戦士の残りHPが一割を切ったのを見て、黒剣から深紅の光を迸らせ、耳を劈くような轟音と共に強烈な突進突きを放った。

 その突きを胸の中央に受けた狂戦士は後方へ思い切り吹っ飛びながら断末魔を上げ、壁に激突。

 そして蒼い結晶片へと散っていった。

 

「ッ……はぁっ……はぁっ…………ぅ……」

 

 漸く一息吐ける事に安堵したのか、キリトは倒れこそしなかったものの、翡翠色の剣を杖代わりに膝立ちで体力回復に努め始めた。

 幾ら実質SAO最強と言えどもまだ子供、それに常軌を逸した戦闘を立て続けに失敗が許されないというプレッシャーを背負って生き抜いたのだから、むしろ安堵と同時に気絶しないだけ凄いのだと思う。

 しかし、状況はそんな事などお構いなしとばかりに進む。

 勝利を祝うファンファーレだとか、アナウンスだとかも掛からず、回復の為か暖かな光に包まれているキリトの頭上に、またパネルが出現したのだ。

 そこには《Kirito VS The Hollow Seized with Nightmare of past》と表示されていて、この相手が恐らく《個人戦》最後の敵なのだろうと分かった。

 それにしても、この敵の名前、直訳すれば《過去の悪夢に囚われし虚構》という意味になる訳だが、色々と意味が分からない。先の二体のボス、堕天使と狂戦士の事から考えれば何かしら意味を持っているのだろうけれど……

 

「お、ボスが出て来たぞ!」

 

 ディアベルという蒼髪に白銀の軽鎧で身を固めた、騎士を自称している――実際に他者からも認められている――男性プレイヤーの声で、アリーナにキリト以外の人影が現れた事に気付いた。

 その人影は、狂戦士が出て来た時に使われていた出入り口から歩いて出て来ていた。

 その人影は、一言で言えば……

 

「……黒い、わね……」

 

 そう、黒かった。その人影はキリトなど比では無いくらいに真っ黒だったのだ。

 まずキリトと違って顔の部分まで黒いフードを被っているから顔が見えない、両手も指貫手袋では無くて指先までしっかり覆う真っ黒な皮手袋、ブーツも鋲付きブーツでは無くて黒い革靴。更には裾が足首まである全身を覆う黒いロングコート。

 唯一銀色のチェーンが首元の飾りから下げられていたが、そんなのは気休め程度でしか無い。

 

「黒いのもそうだけどさ……キリトと同じくらい小さくない?」

「小柄なキリトくんと同程度の新調の人型ボスですか……小人族とか、そういう設定なんですかね? SAOでもエルフが居ますし居てもおかしくはないと思いますけど……」

 

 リズベットとシリカが言ったように、次に特筆すべきは、その背丈だ。

 観客席はアリーナ中央から最前列でも結構離れているから正確性に欠けるのだが、眼に狂いが無ければ、出て来たボスはキリトと同程度の身長、ないし僅かに低い程度の背丈だ。

 

「オイオイ……あのボスのHP、かなり妙だぞ……」

 

 私達が出て来た人型ボスの特徴について話していると、和装で身を固めているバンダナ男のクラインが顔を顰めながら言ってきた。

 HPゲージに気付いていなかった私達が促されるままにボスのHPを見て、そして唖然とした。

 

「ナ……ゲージ一本、だッテ……?」

 

 茫然とアルゴが呟く。新たに現れた人型ボスのHPは、ボスにあるまじきたった一本、プレイヤーと同じ条件だったという事に私達は唖然とした。

 同時、嫌な予感を覚える。

 

「……キリトは……勝てる……のよ、ね……?」

 

 何となく頬が引き攣っているのを自覚しながら、私はアスナに問い掛けた。

 脳裏に浮かんでいる予想が外れて欲しいという願いを抱いていた故の行動だったが、アスナは、まず首を横に振った。

 

「分からない……ボスのHPが普通より少ない時、それはつまり、プレイヤーを苦戦させる要素が他よりも遥かに多い事の証でもあるから…………もしかしたら極端に防御力が高いとか、一本だけどHP量で言えば五本分あったりとかの可能性も否定出来ない。万全のキリト君ならともかく、堕天使と狂戦士を一気に相手して疲弊してる彼では、キツイかも……」

 

 勝てる見込みがゼロでは無いという辺りでキリトの強さに改めて称賛を送るべきなのかもしれない、あの歳でここまで強いというのもおかしな話ではあるのだが、過去を考えればまだ分からなくも無い。

 ただ、その彼をしても勝てない可能性があるというボスを最後に、しかもほぼ一切情報を明かされていない状況で相手をしなければならない。

 彼が勝ち抜けば万事解決、そうで無くとも彼が戦えば情報が明かされて他の挑戦者が勝てる見込みは高くなる。

 それでもキリトほど勝率が高いプレイヤーはいないと思えた。堕天使と狂戦士による理不尽な猛攻撃を受けて尚立ち上がっていたキリトだからこそ、ずっと一人で戦っていたからこそだ。

 ホロウ――暫定的なボスの呼び名――は、パネルに表示された待機時間が十秒を切った時点でアクションを起こした。

 徐に右手を持ち上げたかと思えば、右手の平に黒っぽい紫電を走らせ、そしてそこから一本の剣を出現させたのだ。悪魔の羽を思わせる剣身、鍔元の部分には悪魔を思わせる黄色の瞳、柄は黒が混じった深緑に染められているその剣は見るからに禍々しかった。

 

「……ッ?!」

 

 それを見たキリトが瞠目し、表情を引き攣らせながら禍々しい剣を凝視しているのが、酷く印象的だった。

 まるで、何故それがある、とでも言いたげな表情だったのだ。

 

『ッ……!!!』

「ッ……!!!」

 

 そしてとうとう待機時間がゼロになり、パネルが消え去ったと同時、二刀の【黒の剣士】と一刀の【黒の剣士】が互いに刃を届かせようと駆け出した。

 最終戦が今、始まろうとしていた。

 

 






 はい、如何だったでしょうか。

 漸く堕天使と狂戦士が斃れました……堕天使はACがあるので倒し方は決まってたんですが、狂戦士だけはどうにも出来ず。しかも嵌めコンボしないと《ぺネトレイト》が邪魔するという仕様なので、描写し切れませんでした。同じ場面書くとアレですしね。

 さて、途中でキリトがヤバいのを狂戦士から贈られました。先に言っておきますが、コレ……


 最低でもSAOクリアまで永遠にそのままです。そして何時外れるかは秘密です。


 つまりキリトだけ、全てのダメージに甚大な痛みを受ける訳です。一応これだけは言っておこうと思いました。

 実はこれにもちゃんと意味があります、物凄い後から関わってきます。勘が良い人は多分気付きます。

 そして最後に出て来たHP一本の人型ボス……分かる人には分かるネタですね。色々と感想に書いて頂いて嬉しかったですが、最初からこう決めていたので、申し訳ありませんでした。

 勿論基ネタは別にありますが、複数混ぜ合わせているので、基ネタそのものではありません。どんな攻撃が出てくるか想像してみて下さい。

 次はこのボスとの戦闘……長引かせたくないです。出来ればそろそろストーリーを進めたいですからね。

 では!


 今話で出て来た攻撃


《The Genocide Bersercar》
『貴様に朝陽は拝ませねぇ!』《ポイゾニックヴォイド》:拳を叩き付けた点を中心に半径数メートルの地面から紫炎を噴出、当たった相手を毒状態に置く防御不能の極悪技。当たればまず確実に毒(リメイク作では熱毒)状態。
 そこまで高く吹き上がらないのでジャンプしていれば当たらないのだが、発動が速い。

『もっと愉しもうぜ、この痛みをよぉ!』《ヴァイオレントペイン》:攻撃力三倍、防御力半減、鋼体プラス20効果を雷を浴びる事で得る。原作では狂戦士のみが対象だったが、本作ではキリトにも効果が及んでおり、更には痛覚緩和システムを排除し、戦いの中で痛みを感じるようにさせる極悪仕様になっている。
 ちなみに文中にある通り雷にダメージ自体は無い。

『一発で沈めてやるよ、覚悟は出来たかァ……?』《ワールドデストロイヤー》:ご存知、戦闘フィールド全攻撃判定を持つ一撃死技。溜めは長いが《ぺネトレイト》の存在を考えるとかなりギリギリな勝負になる。
 実は原作の《TODリメイク》では空高い場所に居るほど受けるダメージ倍率が下がり、生還する可能性があり、オールスター作品ではフィールドに端に居れば回避が可能だったりと、割と抜け道がある。
 《MUGEN》では不可避だが壊れキャラは普通に耐える(そもそも放てなかったりする)


《The OneWing Forginengel》
『身の程知らずが――――滅却してやろう/消え去れ』《八刀一閃》:堕天使ファンなら絶対知っている有名な技。作品によって攻撃方法がマチマチで、偶に最後の一撃が二ヒットして振るっているのは七回という場合もある。本作では《CCFF7》と《DDFF》を参考にしている。

『消え去れ』《神速》:一振りで六発の斬閃を飛ばす空中遠距離技。元ネタは《DDFF》。ヒットすれば追加で背後に回って斬り上げ、斬り落とす二連撃、合計で八連撃になるのだが、本作では相殺されているので追加は無かった。

『約束の地へ』《獄門》:発動時に一度上昇し、空中から下降すると共に強烈な下突きを浴びせる技。地面に突き立てれば周囲の土がめくれ上がり、途中で止めれば長刀を逆手で振り払って攻撃する技に変化する。

『覚えているか――――』:お馴染み、敵対者を串刺しにして宙づりにした時に《FF7AC》で出た台詞。実は本作でも物凄い意味がある内容となっている。

トドメとなった《ジ・イクリプス》:キリトが堕天使に対して最後に放った。元ネタは四方八方を飛び回りながら斬り裂き、最後に頂点から斬り落とす《超究武神覇斬》というFF7主人公の大技、参考は《FF7AC》。《ジ・イクリプス》の動きは《ファイティング・クライマックス》のキリトから持って来ている。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。