インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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視点:和人、簪、明日奈(メイン)

字数:約一万三千

 サブタイトルの《地》は、天地人でいう《地獄》の地でなく、晒す意味のものです。

 ではどうぞ。




~孤高の剣士・地~

 

 

 風が吹いた。

 

 肌を風が撫でる。

 白くなった長髪が揺れた。

 僅かに透かした窓の隙間から入り込んだ文明都市のそれが、鼻と突く消毒液の刺激臭と、鼻腔を擽る花の香りを一切合切吹き飛ばしていく。

 時計を確認する。短針は南南東、長身は真南を指している。何時の間にか迎えが来る頃になっていた。

 首を巡らし、窓の外へ視線を向ける。

 

 ――脳裏を、呪詛が埋め尽くす。

 

「……っ」

 

 息を殺し、飲み下す。

 自身の裡にある負の想念。己の無力を呪い、罪を憎み、死を訴えかける幾万もの声が木霊するが、それらを全て抑え込む。

 ぐらぐらと、理性を注いだ大釜が泡を吹き零すようだ。

 脳髄に直接火ゴテを当てられるような鈍重な拍動。それが、一際強くなり、弾けた。力は抜ける。感覚も薄くなる。痺れが半身を埋め尽くした。

 痛みは無い。

 

「ふ――ん、ぅ……!」

 

 落ち着いて、全身に意識を巡らせる。

 力が戻った。

 感覚が戻った。

 痺れは消えた。

 五体満足。

 ……なるほど、確かにそうだろう。

 しかし――些か、無理を押し通し過ぎたようだ。肉も骨も問題ないというのに肝心要の脳がイカレ始めているらしい。

 ――だからこそ。

 他の誰にも任せなくて良かったと思えた。

 

「――()()()は、(つるぎ)で出来ている――――」

 

 韻を踏んだ呪文を口ずさむ。

 自己を埋没させるだけの、ただの言葉遊びに過ぎないそれは――それでも、精神(こころ)を安定させる最適な特効薬だ。暴走は己の拒絶に他ならない。故に、己を律するこの(うた)が、裡にある全てを抑制する楔になる。

 《悪》を認め、その上で《悪》を拒絶し、暴走を抑止する。

 ――――そこまでする価値が、あるものか――――

 

「……ままならないな」

 

 落としていた視線を彼方へ向ける。

 黄金から茜色に没し始めた丸い陽光が目に刺さった。

 

   ***

 

 二〇二五年五月十七日土曜日、午後四時半。

 東京都霞ヶ関防衛医大附属病院。

 自身と従者の幼馴染が通う都立女子中学校から程近い病院に到着した事を、リムジンを運転していた男性が伝えてきた声を契機に、私の意識は覚醒した。ぱちりと目を開くと、先に降りていた運転手が慇懃に扉を開いてくれる。

 短くをお礼を言って幼馴染とリムジンを降り、駐車場から一望できる病院施設を視界に収める。

 

「ねぇねぇ、早く行こうよ、かんちゃん」

「……うん」

 

 幼馴染(本音)に促され、身分証明証その他を確認しながら病院のロビーへと足を向ける。一階で面会受付を済ませ、院内パスポート証を受け取り、案内図を頼りに目的地を目指す。

 受付の事務に教えられた病室は、この病院の十三階だったのでエレベータを使った。

 

「きりきり、元気になってるかな~?」

 

 無言が辛かったのだろう。本音が沈黙を破った。

 

「……なってないと退院許可下りないと思うよ」

「それは、そうなんだけどね~。でも今回かなりヤバいって聞いてるから心配で~……」

 

 中学指定の制服でもお構いなしに余らせた袖を合わせながら、不安げな面持ちで本音が言う。

 それはそうだろうな、と私は思った。いまでこそ一般病棟に移っている“彼”だが、巷を騒がす《クラウド・ブレイン事変》の終結から数日は集中治療室で絶対安静状態にあり、面会謝絶以前に、意識不明の重体という容態だったのだ。マスコミ対策などで見舞いは今回を除き一度しか来ていなかったが、その時の容態を考えれば、全治一週間で済むものでなかった事は容易に察せる。

 それでも、医師による正式な退院許可が下りたという事は、もう入院しての加療は不要と判断されたという事だ。

 医療の専門知識を持たない身としては、その判断に従うより他は無い。

 

 エレベーターが、指定の階に辿り着いた。

 

 二人して降り、言い渡された病室を探す。程なく見つけたが、それは番号を見つけたからではなく、病室の入り口左右に置かれた椅子に座るガタイのいい黒服達の姿を認めたからだ。

 近付くとじろりと視線を向けられたが、身分証明証その他と院内パスを提示すると、外された。無言で入室を許可される。

 軽く会釈してから、扉を横にスライドさせた。

 ほぼ無音に等しくスライドし、室内が見えるにつれて、鼻腔を擽る花の匂いがした。同時に、風が吹く。室内冷暖房機のそれと違い排気ガスなどが混ざった不純な匂いのするそれにより、この風が窓を開けた事で入る風であると理解する。

 “彼”個人に宛がわれた病室はそこまで広くなかった。こじんまりとしたトイレ付きユニットバスがあるが、看護・介護サイドの管理の都合上、浴槽の方を使う事は禁止されると聞いている。その広さも畳二畳あるくらい。ベッド、個室テレビ、小さなキッチンのある病室は、ユニットバスフロアを含めて畳六畳くらいだろう。

 無論、集団病室で一人に宛がわれる畳二畳半程度のサイズを考えれば、個人で六畳分も使えるだけ広いと言えるのだが。

 

「――ああ、もう来たのか」

 

 室内から、声がした。

 病室の窓際に置かれた背凭れひじ掛け付きのウッドチェアに声の主――“彼”は腰掛けていた。

 直前まで眠っていたのか姿勢はだらりと脱力している。

 足元には、約一週間の入院で使った衣類、歯ブラシなどの整容品、売店で買ったのだろう水のペットボトルやIS関連の雑誌、新聞の束が三つの紙袋に詰められた状態で並べられていた。

 部屋のベッドも綺麗に畳まれており、見渡した限りで清掃が必要そうなところも無い。

 

「わぁ~! これ、全部きりきりが綺麗にしたの~?」

「開口一番それとは、本音は俺を何だと思っているんだ……」

 

 本音の疑問に彼は苦笑を浮かべて返した後、そうだよ、と軽く頷いた。

 さらりと白い髪が揺れ、その隙間から、左目の金色と、右目に巻かれた黒い眼帯が垣間見える。医療用の包帯などではなく他国のとあるIS部隊に近い意匠の無骨なソレは、《契約》のために学校を休学し、更識邸から出る時には無いものだった。

 

「……眼帯、したんだ」

「ああ。とは言え見えないからしてる訳じゃない、むしろ()()()()()から付けたんだ。左右の視界のギャップが酷いからな。ちなみに博士特注だぞ」

 

 にかりと、やや誇らしげに笑う。

 その表情に、昏い感情はおろか、自身の現状を苦痛に思っている節は欠片も見て取れない。

 ――その姿が、あまりにも普通過ぎて。

 却って恐ろしく思えてしまい、私は、それ以上何かを言う事も出来ず、本音と共に“彼”の退院手続きをしていった。

 

   ***

 

 エギルが経営する喫茶店兼酒場は、台東区御徒町の猥雑とした裏通りに構えられている。

 煤けたような黒い木造で、そこが店である事を示すのは小さなドアの上に作り付けられた金属製の飾り看板だけだ。看板に刻まれた店名は《Dicey Cafe》。『ダイシー』というのは、サイコロの事を指しており、店名の横にメタリックダイスが二つちょこんと並べられているのが可愛らしい。

 屈強な斧戦士と(ミド)(ルゾ)(ーン)プレイヤーの育成に売り上げの大半を費やしていた商人とを両立させていたエギルこと本名《アンドリュー・ギルバート・ミルズ》が現実世界でも店を経営していたと知った時は、非常に腑に落ちた感覚を覚えたものだ。後に馬車に敷かれる事となった商人プレイヤーの必需品《ベンダー・カーペット》をキリトから譲られた彼は、第二層という攻略最初期から商人としてフロントランナーとそれ以外の一般プレイヤー間のアイテムの流通を一手に担う橋渡しを担っていた。本人も補給面の手配は苦慮していたようで、それを目聡く察した少年に唆された事で――この言い方は語弊があるかもしれないが――商人としても身を立てる事を選んだ。

 そんな彼は、人種的には生粋のアフリカン・アメリカンではあるが、同時に親の代からの江戸っ子でもあるそうで、住み慣れた御徒町に喫茶店兼バーを開いたのが二十五歳の時らしい。客にも恵まれ、美人の奥さんも貰って、さあこれからという時にSAOの旅游となった。生還する時は店の事は殆ど諦めていたそうだが、奥さんが細腕で暖簾を護り抜いたというのは、実にいい話である。

 実際、固定客も多いのだろう。木造の店内は行き届いた手入れによって全ての丁度が見事な艶を纏い、テーブル四つにカウンターだけの狭さも、また魅力と思える居心地の良さを漂わせている。

 どこか第七十六層《アークソフィア》に構えた宿屋兼故買屋兼喫茶店の風情があるように感じるのは、この間取りを意識していたのかもしれない。

 

「わぁ、マスターのリアルのお菓子、すごくおいしいわ! 幾らでも食べれちゃいそう!」

「そうかい。そりゃあよかった」

 

 知り合いであれば全員最低一度は通いエギルの現実での《料理》スキルを堪能しているのだが、枳殻七色は初めてなので、頼んで出てきたデザートに舌鼓を打っていた。

 カウンターで食器類を洗うエギルがにんまり笑みを浮かべる。

 中々彫の深い顔で表情豊かに笑むと、それはそれで中々の凄みがあるのだが、研究者として身を立てていた頃に散々人と関わっていたからか茶髪の少女に怯んだ様子は無く、からからと笑ってまたデザートを口に運んで頬を綻ばせる。

 隣で、食べ過ぎると太るよ、と注意する姉の声もなんのその。

 今の彼女はただデザートに夢中な幼い少女でしかなかった。

 

「――いやぁ……なんというか、随分とイメージから掛け離れましたねぇ……」

 

 その様子を見ながらテーブル席に座ってフラペチーノを啜った綾野珪子が嘆息を洩らす。その左斜め前で篠崎里香がウンウンと強く頷いた。

 

「ホントね。アルンのあたしとエギルの店で勧誘してた頃と、まるっきり違うわ。最早別人?」

「アレが《七色・アルシャービン》じゃなくなったお蔭で出てきた、《素》なんだろうナー」

 

 里香の更に左――自分の右斜め前――に座る語尾に独特のイントネーションを持たせる、アルゴこと《()(さか)(とも)》が、パーカーフードの裾を弄りながら言った。

 なにか――あるいは、“だれか”と重ねるように目を眇めている。

 

「まーでも、必要に駆られたら戻るんじゃないカ?」

「必要に駆られたらって、例えば?」

 

 朋の対面――自分の左斜め前――の椅子の背凭れに腹ばいになりながら、デザートをぱくつく少女を見ていた木綿季が振り返りながら問うた。

 

「そりゃ、事変当時の映像見りゃ分かるダロ?」

「……むぅ」

 

 何かを含ませる笑みで肩を竦め朋が言った事に、頬袋を作った木綿季が視線を戻し、ぎっこんがっこんと椅子を揺らし始める。

 隣で藍子がお行儀が悪いと注意するが、右から左へ馬耳東風。

 姉妹関係になると妹は姉の注意を聞かない傾向にあるのだろうかと思った。

 ……ユイの注意を聞かないストレアの姿を見るから、割と当たっているかもしれない。

 ――その時、カラン、とベルの音を響かせ、店内に足を踏み入れる人が一人いた。

 店先には【本日貸切】と不愛想な字で書きなぐられた黙札が掛けられていたので、良識があるなら、仮令店内に人が居ても無関係であれば入って来ない。つまり入って来たのはここに招集が掛かった誰かという事になる。

 

「――よぉ、お前ぇらリアルじゃ久し振りだな!」

「クラ……壺井さん!」

 

 果たして、入店したのはスーツ姿にも関わらずバンダナを額に巻いた青年だった。リアルでは基本プレイヤーネームは避けるものというルールがあるので、クセで言いかけたそれを言い直すと、クラインで構わねぇよ、と青年が苦笑した。

 

「なんかよ、お前ぇらに『壺井さん』とか言われるとむず痒くて仕方ねぇんだよなぁ」

「そりゃ俺らが全員“あのゲーム”で関係を持ったからだろ」

「だろうなぁ」

 

 カウンターで食器を拭きながらのエギルの言葉に、クラインが笑い、革張りのスツールに腰掛けた。そのまま『バーボン、ロックで頼む』と注文する。

 

「おいおい、クライン、お前こんな時間から管巻く気か? 半分以上未成年なんだから自重しろよ」

「へっ、残業なんて呑まずにやってられるかっての」

「就業規則違反になっても知らんぞ……たっく」

 

 ぶつくさ言いながら、ロックアイスに琥珀色の液体を注いだタンブラーが滑り出た。それを手に取って青年が口に含み――眉が垂れた。

 哀しみ百パーセントとでも言えそうな面持ちで、クラインが口を開く。

 

「……エギルよぅ、これ、ウーロン茶じゃねぇか」

 

 どうやらタンブラーに注がれた液体はウーロン茶だったらしい。見事に騙されしょぼくれる青年に、にやっと、エギルが口角を釣り上げた。

 

「一人ならともかく、今日ぐらいいい大人なんだから我慢しろ。心配しなくてもその一杯はサービスしといてやる」

「ちぇ……まあいいけどよ」

 

 口を尖らせた青年は、そのままウーロン茶のタンブラーを傾け、談笑を始めた。あの切り替えの早さと気風(きっぷ)の良さは中々ない個性だと思う。

 そう思っていると、ふとクラインがスツールを回転させ、こちらに視線を向けてきた。

 

「そういやよ、この一週間ゴタゴタしてたせいで聞きそびれてたんだが、明日奈の転校の件はどうなったんだ?」

「ちょ、ば……」

「あ、それはどうにかなりました」

 

 ぎょっと目を剥き、青年を睨む里香。

 なにかを言い募ろうとする彼女を制するように、私はそう言った。すると里香がきょとんとした顔でこちらを見て来る。

 

「……そうなの?」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「……聞いてないわよ」

「あ~……ごめん、言い忘れてた」

 

 両手を合わせて謝ると、里香が、しょうがないなぁと言って相好を崩した。なんだかんだ心配してくれてたからその気持ちは純粋に嬉しかった。

 

「……それにしても、聞いた感じすごく頑固そうなお母さんだと思ったけど、よく意見を覆せたわね?」

 

 そう、やや離れたところで静かに紅茶のカップを傾けていた眼鏡少女の詩乃が、小首を傾げて言った。その言葉に周囲がうんうんと頷く。

 

「まぁ、私もちょっと思ってなかったんだけど、お父さんが賛成してくれてね。高校三年の課程修了まではそのままのペースでって」

「へぇ……いいお父さんじゃない」

「うん」

 

 微笑みを浮かべての詩乃の言葉に――私は、曖昧に頷いた。

 

 『いいお父さん』。

 

 その評価に偽りはない。自分も、ネットで散見される『毒親』と言われる人達と較べれば、非常にマトモな人だ。かつては仕事にかまけて家族を顧みず、須郷の本質も見抜けないなどの失態をしたものの、本質的には家族を愛しているし、家族の生活の為に仕事に精を出していた。それは確かであり、娘として誇りに思ってもいる。

 故にいまの同意に嘘はない。

 ただちょっと、行き過ぎるきらいがあるのが玉に(キズ)

 加えて、本当の意味では母を翻意させられていない。父・彰三すらも真っ向から意見対立を避ける程、母・京子の弁舌が鋭いというのもあるが、今回は二人の意見が合わさったため翻意が必要なかった。

 ――あの放映を見た後の事。

 進学校への編入試験概要の話をされた日に彰三が何故帰って来れなかったかを本人から語られ、その内容を知って、母が『転校させない方がいい』と考えを改めただけなのだ。

 結果的に方向性は合致した訳だが、真の意味で理解を得られた訳ではない。

 母は自分が思う『子供の将来の安泰』を持ち続けているし、父も長い目で見て『安泰だろう』と思い、私の意見を指示してくれている。

 

 ただ、利害が一致したに過ぎない。

 

 桐ヶ谷和人と懇意になれたら――あわよくば、結婚出来たら、という思惑。

 問題は、先延ばしになっただけだった。

 私は両親の意見を跳ねのけられていない。“自分”を主張出来ていない。もし、両親の考え通りにならず、彼と懇意になれなかったなら――

 

 

 

 “私”は、どうなるのだろう――?

 

 

 

「――明日奈?」

 

 耳元で、声。

 目を向ければ、何時の間にか近付いていた詩乃が、眉根を寄せて私を覗き込んでいた。

 その黒い瞳が、彼の瞳と重なる。

 

「大丈夫? 顔、ちょっと青いけど」

「……うん、大丈夫。最近あんまり眠れてないからかも」

「あー、暫くマスコミうるさかったもんね」

 

 多分顔色が悪い本当の原因は別だけど、適当に誤魔化す。実際寝不足なのは真実だった。昼も夜もマスコミがうるさくて敵わないからだ。

 いっときは学校にまで踏み込んできた事もある。

 幸い、政府直轄機関である事、教育機関である事を盾に追い返せるが、通学自体はその限りではない。SAO全体の事だったからと生還者全員を無差別に聞き回る姿には倫理や遠慮というものがない。蔑称が付けられるのも仕方ないと思ってしまう程だった。

 そうして談笑を続け、彼が来るまでの時間を過ごす。

 その間も、思考は回る。

 ――純粋に、いやだな、と思った。

 “親”を理由に近付きたくない。

 自分の意思を主張して、“親”の意見を退けられない自分にも、嫌気が差す。

 私はただ、友人として、彼の幼さを知る一人として、純粋に接したいだけなのに。他者の意志に操られ、その意志が求めるものの為に動いているようで怖気が立った。

 それを、笑顔の仮面で隠して。

 私は友人達との談笑に身を委ねた。

 

   *

 

 集まりにはSAO時代で連絡先を交わし合っていた面子――中でも、“彼”に対して敵愾心の無い人達だけが集められた。

 帰還者学校からは自分達やサチ、ケイタ達が《ダイシー・カフェ》に直行。六時を過ぎた頃から社会人として身を立てていたディアベル、シンカー、ユリーエル、サーシャ、ニシダら、大御所たる茅場晶彦、恋人だという神代凛子が集まり、混沌とした様を見せている。今回の事変に関わっていたからか、枳殻母と桐ヶ谷翠も来ていた。

 デスゲーム生還者組でないのは、神代凛子と桐ヶ谷母、枳殻母、七色の四人だけ。

 そのせいか、SAO時代の仲を見せる集団からやや離れたところで集まっていて、七色だけが居心地悪そうにしていた。

 

 カラン、とまたベルが鳴る。

 

「――お待たせ」

 

 ――鈴を転がすような音が耳朶を打った。

 スピーカーがずんずんと、《アインクラッド》第五十層主街区(アルゲード)のNPC楽団演奏曲が流す中でも、その声はよく届いて来た。

 広いとは言えない店内にぎっしりと詰まった人の視線が集まる。

 店の出入り口には、ドアを押し開いて入って来た“(シロ)”がひとつ。季節に合わせてか薄手ながら保温性のありそうな黒コートを着て、その黒によく映える白髪が風で揺れていた。

 特徴的なのは、日本人離れしたその眼だろう。

 カラーコンタクトをしている訳でも無く、澄んだ金色の瞳。四月頭の入学式と異なるのは右目を覆うように黒い眼帯を巻いている点だ。

 頬はやつれ、血色も良いとは言えない。その細い矮躯は今にも折れてしまいそうだが――

 不思議と、脆いなんて印象は浮かばなかった。

 儚くはある。けれどそれは、美しさを同居させた強い光を湛えている。

 隻眼の金色には、()()()()()があった。

 しん……と、水を打ったように静かになる。耳朶を打つのは、店内のBGMと、出入り口のドアから聞こえる外の雑音だけだ。

 

「……あー…………時間通り、だよな? 遅れてないと思うんだけど……」

「うん、別に遅れてないよ。主役の和人君だけ遅めに伝えてたから」

 

 その静けさに居心地悪くなったか、少年が店内をぐるりと見まわし、時計を見つけて言った。示された時刻は午後六時十五分。

 予定時間は六時半と伝えていたから、遅れてはいない。

 安心させるように私が言った。

 ただ、静まり返ったのは――――

 

「……無茶、したわね」

 

 私が思っていた――同時に、恐らくこの場に集う彼と親しい面々の思いを代表するように、義母の翠が言った。苦みのある顔で、絞り出すようなそれが心境を如実に表している。

 それを見て、僅かにバツの悪そうな面持ちを浮かべた少年は――けれど腕を組み、胸を張った。

 

「今回は無茶せざるを得なかった。次は、もっと上手くやるよ」

 

 その泰然とした姿に意表を突かれ眼を瞠る。以前の彼であれば、煙に巻くように論点をずらすか、あるいは後ろめたい表情を浮かべるかだったが、開き直るとは予想外だ。

 言外に、今後も厄介事に対応する気でいると言っているも同然の少年に、大多数が微妙な面持ちになった。

 

「次って、今後も色々と首を突っ込んでくつもりなの?」

「そう。今日はその辺の経緯と顛末も話すつもりで来た」

「……」

「……」

 

 苦みのある哀しい顔で義息を見詰める翠と、真っ向から胸を張る和人が、無言で見合う。BGMに紛れて時計の秒針を刻む音が数度聞こえた。

 先に音を上げたのは――やはり、翠だった。

 

「……色々、言いたい事、聞きたい事はあるけど、今はいいわ」

 

 感情を押し殺しながら努めて冷静に女性は言った。頭を振った後――彼女は、右手で手招きした。釣られるように和人がトコトコ近付く。

 その後ろから、微妙に居住まいを正しながら蒼髪の姉妹、制服の袖を余らせるのほほんとした少女が入って来た。既に顔見知りな木綿季と藍子が、新顔三人を見てすかさず手のひらサイズの三角コーンを手渡しに走る。

 その後ろでは、義母に背中を押され、少年が店の奥の小さなステージに押し上げられる一幕が。

 ドアがバターンと閉まり、BGMも突如途切れ、照明が絞られる。スポットライトが少年に落ちたところで、カウンター席を陣取っていたバンダナ青年が駆け寄り――

 

「えー、それでは皆さん! 主役も来た事ですし、早速ですがご唱和下さい! ――せーのぉ!」

 

 

 

「「「「「キリト、SAOクリア、()()()()()!!!」」」」」

 

 

 

 店内にいるほぼ全員の唱和。事前打ち合わせをしていない《更識》の三人は流石に乗り遅れたが、その後は全員がタイミングを合わせて行えた。

 懐から、あるいはテーブルの下から、ポケットから、隠せるところに忍ばせていた手のひらサイズの三角コーン――もとい、クラッカーを取り出し、糸を引く。

 空気を叩く乾いた音。

 ツンと鼻を突く、火薬の匂い。

 

「――――な」

 

 ばさぁ、と。天井からつるされたくす玉が割られ、《Congratulation!!》と書かれた垂れ幕が降りる。かつてのボス戦クリア時の金文字を再現したそれを見て、少年が絶句した。

 詰め寄られると予想していたのだろう少年が、年相応のあどけなさを晒す中で、幾つものフラッシュが浴びせられた。下手人は《MMOトゥモロー》運営者のシンカー、彼と入籍したというユリエール、そして地味にそこで記事を書く仕事を裏でしていたという――今日名刺を受け取った――アルゴの三人。

 ぱしゃぱしゃと、無遠慮に写真を撮られているのだが、彼は別の事に意識を持っていかれているようだった。

 それもその筈。今日ここに彼を呼んだのは、SAOクリアの裏の真実や《クラウド・ブレイン事変》の顛末を聞く為であり、全員の強い意志で呼び出した――という経緯がある。

 しかしそれだけではなかった。

 話は聞きたいし、必ず聞き出すという鋼の意志があるが――それよりも。

 私達は、たったひとりで頑張り続けた勇敢な少年を、労いたいと思っていた。

 現実に復帰してからも何かに追われるようにリハビリをこなし、退院しても桐ヶ谷家に戻る事は無く、仮想世界でも家族の触れ合いこそすれ心から楽しんでる風が無く――ただ、《契約》と誓約を優先し戦い続けていた少年を、労いたいと。

 お礼は言い尽くした。それはもう、感情で。

 だから今度は物理的に――精神的にでない労い方で、彼を労わりたかったのだ。

 みんなもそれは同じ思いだったようで、忙しくてALOにログインしてられないディアベル達もどうにか時間を工面し、参加を表明してくれた。

 

 ――ひとつの戦いがあった。

 

 人を憎み、悪性を怨み、己を獣へと堕とした必要悪の体現者。

 人を認め、善性を信じ、己を律すると決断した希望の求道者。

 根幹を(いつ)にしていながら、他者の存在の有無一点だけで道を違え、究極的に世界の存続を懸けた死闘を繰り広げた二人の人間がいた。

 どちらも、正しかった。

 ――どちらも間違ってなんていなかった。

 ただ、獣が目指した結末が、願ったものと違っただけ。ただ平穏を求めていただけ。

 平穏を壊す()を、排除したかっただけ。

 それを歪む光景を見てしまっては、その歪みを自ら受け容れ、昇華したという少年に対する感情が一際強くなるのは、仕方のない事だろう。

 親しいからこそ、不安になった。

 居なくなってしまうのではと。

 自分を救ってくれた勇ましく、心優しい少年が、死んでしまうのではないかと。

 あの世界で見続けた背中が、儚く砕け散る光景――それを想像し、恐れたからこそ、私達は此処に居る。少しでも彼を引き留める楔になってくれればと思って此処に居る。

 複雑に絡み合った事情と感情を、仮に一言で表すならば。

 

 “――報いたい”。

 

 それが、一番合っているだろう。

 

「おいエギル、まだ“アレ”は出来ねぇのか?」

 

 勢いの呑まれ、リアルで初めて顔を合わせた面子と簡単な自己紹介をしていく少年を他所に、音頭を取っていた青年がカウンターに立つマスターに問いを投げた。

 カフェオレ色の肌の男は、アジのある笑みを浮かべた。

 

「ちょうど出来たトコだぜ」

「おっ! 良いタイミングだな、流石だぜ。早速出せ出せ、こーいうのは流れが重要なんだ」

「分かってる。そう急かすんじゃねぇ」

 

 深みのあるバリトンボイスで応じた巨漢が、テキパキとグラスに黄金色の液体を注いでいく。

 次いで、その後ろにある奥の調理場から、ぱたぱたと足音が近づいて来た。

 

「エギルさん、厨房、貸していただいてありがとうございました」

 

 ひょっこりと奥から顔を出したのは直葉だった。義弟に感化されて伸ばしているという黒髪は肩甲骨ほどまであり、それをなびかせての登場に、少年が目聡く目を向ける。

 

「いや、気にしないでくれ。それでどうだ?」

「ええ、会心の出来です」

「そりゃよかった。こっちも丁度出来たトコだぜ」

「ナイスタイミングですね」

 

 ニカリと笑みを向け合った巨漢のマスターと剣術少女。その独特の空気に周囲が温かく見守るように距離を取る中で、未だ壇上に立ったままの少年が困惑を露わにする。

 

「和人、行っておいで」

「う、うん……?」

 

 木綿季に促され、黄金色の液体を並々注いだグラスとホカホカ湯気を上げる鍋が置かれたテーブルに少年が向かった。直葉はお玉で鍋の中身を深皿によそう。

 ――中身を見た途端、彼は目を剥き、次いで直葉を見た。

 

「コレ……ポトフ……?」

「そう。食べたいって言ったのは、ホロウのあなただったけど……でもその気持ち自体はあったんでしょう? だから、エギルさんと奥さんに厨房を借りて、作ってたの。和人の為にね」

 

 本人は、キリカにも食べてもらいたいと言い、《料理》スキルを上げる事に気炎を上げていたが、なにしろそれを言っていた頃は一週間のメンテナンス期間だったのでしたくても出来ない状態だった。キリカも仕方ないと言い、何れ食べられる日を楽しみにしてると身を引いている。

 そもそも、本当ならALOでこのパーティーを開きたかったが、今日の夜にメンテナンスが完了する事、何人かの事情でログインできない人が居る事などがあり、退院するという今日を狙って現実で開催する事が決まり、AI姉弟組はユイ、ストレアも欠席となっていた。

 今度は本当の意味でゲームを楽しめるように、という願掛けのパーティーをしたい。

 ――そう願う仲間の中で、ならばと声を上げたのが直葉であり、ポトフ調理が決まった。

 彼女曰く、“義姉のポトフ”というのは特別な意味があるらしい。それを食べる事でいい契機になるだろうと言い、彼女は多くを語らなかった。

 

「さぁ、食べて。最初のひと口はあなたに食べてもらいたい」

「う、ん……」

 

 最初の威勢は崩され、しどろもどろに席に就いた少年は、手に持った匙をポトフへ淹れた。そしてニンジンと汁を救った後、口に運んで咀嚼し……

 ぽろ、と大粒の涙を零した。

 

「――ぅ、う……あぁあああ……!」

 

 大粒の涙を流し、溢れさせ、嗚咽を堪えながら、少年は義姉が作ったポトフを口に運ぶ。わざとなのか不均等に刻まれた野菜類を見て、懐かしそうに目を眇める時もあった。

 温かく見守られる中で、彼はそれを食べ切った。

 

「これ、飲んでみて」

 

 スプーンと深皿を置いたタイミングで、直葉がグラスを差し出した。黄金色の液体が注がれたそれを口に含み、また少年は眼を瞠る。

 彼が食べている間に、エギルがみんなに配ったグラスに注がれた黄金色の液体。

 

「この味……ファンタズ、ゴマリアの……」

 

 その味は、彼が“ともだち”になると決めた時に振る舞っていた、クリスマスボスから手に入れた特別なボトルアイテムと同じもの。世間に過去を晒された中でも映らなかった(ゆう)()の証。織斑一夏(ホロウ・キリト)が罪悪感からか、あるいは憎しみからか拒絶した対象。

 それを飲んだ事がある者にしか再現し得ない故に、これを振る舞った者は、彼が心を許した相手であると逆説的に証明される。

 これは彼自身の足跡だ。彼が“人の善性を信じる”事を裏付け、証明する記録。

 故に――彼の行動は間違ってなんていなかったと示すものになる。

 ――瞠目し、固まる少年に歩み寄る二人の少女。

 綾野珪子と篠崎里香。

 どちらも、個人で“友誼の証(ファンタズゴマリア)”を振る舞われた者達。

 

「和人君。あたし、やっと言えるよ」

 

 黄金色のグラスを両手で握り、泣き笑いを浮かべて、珪子が言う。懐かしさと歓喜が同居したそれを、少年は涙を零しながら見詰めた。

 

「あの世界が本当に終わって、和人君は、自分自身の手で“織斑一夏(じぶん)”に終止符を打ったから。だから――“桐ヶ谷和人”君、あたしと、改めて友達になってください」

「――――」

 

 すっと、手を差し出し、珪子が笑った。

 ――その隣に、一回り大きな手が差し出された。

 里香の手だった。やや気恥ずかしげな面持ちで、けれどブラウン色の瞳はまっすぐ少年を捉え、真剣な眼を向けていた。

 

「あたし、さ。今思えば随分手前勝手というか、誓いなんて重いモノ背負わせてたし、助けになれる時になれなくてさ……だからね、まだ全然返せてないと思ってるの。あんた、後半期は殆どリズベット武具店頼ってなかったでしょ? それであたしの負債がとんでもないコトになってるのよね。だって何ひとつ、返せてないもの」

 

 シニカル(侮蔑的な皮肉)に近く、しかし似て非なるアイロニカル――ユーモアの為に相手の意図する事と反する皮肉――な笑みで自嘲するように言う里香は、笑みを明るいものへと一変させた。

 

「だからさ、また友達になって。現実に戻ってもあんたの心に残って支え続けるって、言ったもの。有言実行させて」

 

 太陽のような、快活な笑み。

 少年が目を眇めた。

 

「――嗚呼――――」

 

 はらりと、雫が頬を伝った。

 白い(いと)が揺らぐ。

 小さな震えは大きくなって、波及していき――――少年は、二つの手を取って、(くずお)れた。

 そこ居るのは、人々を救った英雄でも、剣を振るう戦士でもなく。

 

 ただ、ありきたりな(しあ)(わせ)を前に(むせ)び喜ぶ、こどもだけ。

 

 その場にいる人達は、グラスを傾け、()()()()()を飲み干した。

 店内に、感涙の音が小さく木霊した。

 

 






・綾野珪子
 ”ともだち”宣言での(やく)(じょう)を見事果たしてみせた少女。
 実は今までなあなあで済ませていた。和人側がそれどころじゃなかったので自重していたが、これを機に畳みかけ、友誼を改めて結んだ。
 この友誼により、和人はより人の善性を信じ、己の道が間違いでない確信を深める。
 実は作中でファンタズゴマリアを振る舞われた最初の一人だったりする。

約定
『俺の、友達の一人になってくれないかな。織斑一夏としてのキリトの、そして……織斑一夏じゃなくなった未来のキリトの、友達に』


・篠崎里香
 ”ともだち”宣言の時の約定を結び直した元鍛冶師。
 SAO時代で拒絶しない、支える、頼りなさいと言っておいて、後ろ二つをすべき時に恵まれながら出来なかった事(外周部落下前後)を心底悔やんでおり、それ故珪子と違い、関係を結び直す言葉には悔恨の色が滲んでいる。
 この友誼により、和人はより人の善性を信じ、己の道が間違いでない確信を深める。
 ファンタズゴマリア(しょう)(ばん)者第二号。

約定
1)『キリトから大切な事を学んだから。今度はあたしがそれをして、胸を張ってキリトに返していきたい』
2)『向こうの世界に戻っても、あんたの心に残って支え続けるわ。心っていうのは、繋げ、届かせるものなんだから』


・桐ヶ谷直葉
 ほぼずっと厨房に立っていた義理の姉。
 作っていたのはポトフ。SAO編第十四章~想い合い~に於いて、《桐ヶ谷和人》個人に対し振る舞われた和人にとっての思い出の品。
 それは《織斑一夏》としての研究所時代の地獄から脱却して初めて受けた(物理)(的な)(愛情)。それ故、《織斑一夏》から改めて脱却した少年に、再度契機になると振る舞われた。
 故に、《桐ヶ谷和人》として名を改めた少年に対する《愛情の根底》。
 地獄からの脱却、生還を祝し、再度『何にも縛られず平和な人生を』という祈りを込めて、敢えて当時の腕に合わせるように具を乱雑に刻み、振る舞った。


・更識簪
 憧れの存在が思った以上にヤベー(迫真)やつだった事で恐怖を抱いた少女。
 人間は誰しも理解できない存在を恐れるものだからね、仕方ないネ。
 ――ところで直葉やクライン達はそれを理解しておってじゃな?

 何かに命を懸けるほど全力で挑んだ事が無いからこそ理解不能というヤツである。

 姉の事を嫉妬しているなら、死にもの狂いで鍛錬するべしするべし!
 尚プログラミング方面でヤベー才能秘めているので、IS実機が無い限り表沙汰にならない模様。つまり専用機フラグまで簪は和人に恐怖を抱き続ける(かもしれない)


・結城明日奈
 和人の事を想っているが、両親の思惑により葛藤を抱き続ける悩める少女。
 どうやら父・彰三氏の発言が母・京子の『生還者学校に通わせる価値は無い』という考えを翻し、和人にすり寄る思考に転換したようだ。
 つまり両親が戦犯。
 本人は両親の思惑に沿って距離を詰める事に嫌忌を覚えている。実はその点が簪との対比になっていたり(簪は和人に憧れを抱き、その強さの根底を追っていた)
 ――明日奈が原作木綿季みたく決定的なモノを受け取ってないから主張出来てないのも仕方ないネ!
 幕間を待て、しかして希望せよ!クハハハハ


・桐ヶ谷和人
 覚悟キメてたトコで地を晒すコンボを受けた主人公。
 キメ過ぎて肉体が自壊を始めていたが、自力で何とかしている。しかし弊害は抑えられず右目が暴走した。元帥とドイツ兎部隊隊長殿と眼帯仲間になる。髪色、《眼》の色や状態も含めると、ほぼミニサイズ版隊長殿に。
 原作では『SAOクリア、おめでとう』だった唱和が、『ありがとう』という感謝になっており、それが最も心を赦している人達から受けたもの――と理解した瞬間キャパオーバーを起こして仮面が剥げて地を晒した。その間に怒涛の勢いで和人の過去を的確に穿つコンボが炸裂し、無事決壊。
 自分は悪だ、剣だと暗示を掛けているが、その暗示も根底には《幸福》を求める故に構築したもの。地金を晒せば平穏を求めるこどもでしかない。
 いまは幸福の絶頂期。

 ――隣に人が居なくとも。

 生きた彼らの想いがある限り。

 彼は孤独の剣士(オリムライチカ)にはなり得ない。









【予告】
 次回、《孤高の剣士》(幕間除いて)最終章。


 孤高の剣士・人



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