骨太元ギルド長は穏便に   作:月世界旅行

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 死は終わりではない。
 死者は決して黙していない。
 死は絶望ではない。
 死者は恨み言など言わない。

 不壊の王は、死を乗り越える。




三話「集結」

 センリ、ゆべし、カーマスートラ、ラージ・ボーンの四人で始めた善行ギルド『アダマス』

 ギルド長センリの「自分が他人の為に役立てる存在であることを確かめたい」という思いに、多くの人が共感し、全盛期は百人にまで膨れ上がった大組織だ。

 しかし、長が次代のラージ・ボーンに引き継がれて以降、仲間たちの結束は徐々に綻びを見せる。 それはセンリという求心性(カリスマ)を失った為だけではなく、ラージ・ボーンの心の弱さが招いた結果でもあった。 「センリの分まで戦わなければならない」という二代目ギルド長が自身にかした圧力(プレッシャー)を、見るに耐え兼ねた仲間が、ギルド解散のきっかけを作る。

 そして、皮肉にもその名に「不壊」の意味を持つギルド『アダマス』は崩壊した。

 

 

 ギルド解散後、冷静になったラージ・ボーンは自身を見つめ直し、改めて自分に出来る範囲で、身の丈にあった行動を取り始める。 センリに影響を受けた自分が善行を積むことで「彼女が、他人の役に立てると証明する」という約束を果たそうとした。

 それはユグドラシル最終日まで、そして今いる世界に転移してからも続いている。

 

 異世界で戦い続ける中、かつての仲間が自分を慕ってくれている人々を滅ぼそうとしていることを知った。

 その理由を探り、できれば阻止する為に奔走し続けた目の前に今、自分の弱さから手放してしまった友が――

 

 「カーマ…さん?」

 「しばらく見ない間に、老け込んだなぁ… 骨太」

 赤いラインの入った漆黒の外套を纏う、褐色の肌に長い白髪の男性魔術詠唱者(マジックキャスター)が笑った。 カーマスートラ、共にギルド『アダマス』を立ち上げ、ムードメーカーとしていつも楽しい雰囲気を作ってくれていた人物。 下ネタ、セクハラをくり返し女性メンバーから怒られながらも、そこにはいつも笑いと和気藹々(わきあいあい)とした雰囲気があった。

 そんな『アダマス』の副リーダー的存在が、目の前にいる。

 ラージ・ボーン自身の感覚としては、数年振りの再会だ。

 

 かつての仲間達、元『アダマス』のメンバーに対しラージ・ボーンは、解散の原因を作ってしまったという引け目があり、真っ直ぐに顔を見ることができない。 何と声をかけて良いのか、迷っていると鳩尾に激しい衝撃を感じた。

 視線を下げれば黒い神父衣装の人物が抱きついてきたことが分かる。

 

 「ほねぶとざーん! あいたがっだよー!!」

 「こ、コンスタンティン?」

 自分に抱きついてきたのは『ナイ神父』というクトゥルフ神話に登場する人物をモデルとして自身を育て上げたプレイヤー。 『アダマス』の中で一番ラージ・ボーンに懐いていた人物だ。 その能力を全て「ラージ・ボーンのサポートに振り分けた」生粋の骨太オタクとして仲間内で狂人扱いされていた。

 

 「ごめんよー! ぢゃんどれんらぐしなきゃって… おぼってだんだけど…」

 「…いや、コンスタンティン、謝らなきゃいけないのは僕の方だよ」

 ギルドの解散後、気まずさから連絡が取れなかったのはラージ・ボーンだけではなかった。 元ギルドメンバーの殆どが直接連絡を取ることができず、唯一まともに交流のあったトラバサミを介して安否や引退等、近況の情報交換が行われていた程度。

 

 「そんなことないよ、ラージくん。 もっとうちらがちゃんと話し合ってれば、あんなことにはならなかった。 誰かが悪いっていうんなら、きっと皆がイケなかったのよ」

 純白のスライム種の魔物がラージ・ボーンに近付きながら優しい声をかける。

 ギルド中、単純火力最強を誇る古き純白の粘体(エルダー・ホワイトウーズ)シーシュポス。

 メンバーの中で結婚した為に、別名「白き花嫁(ツッコミ役)」と呼ばれた女性。

 

 その後ろにも、友の姿がある。

 「ドラゴンダイン、ルバーブ、ザ・まちぇーて、キュイラッサー、ハーフブリンク、マグナード…」

 名前を呼ばれた戦士達がラージ・ボーンを囲む。

 背後にはトラバサミとスカアハ、今この場にユグドラシル時代「ギルド『アダマス』最強の一三人」と呼ばれたプレイヤーの内、ある意味で一二人が揃ったことになる。

 

 「逃がさんぞ、悪神…」

 最後の一人が憎悪を含んだ声と共に、ラージ・ボーンの背後二十メートル、「ノアが方舟」への入口があった場所に現れた。

 どれほどの血と断末魔を浴びて染まったのか、真紅の鎧は太陽の下、より赤みを増しているように感じられる。

 

 「久しぶりだなぁ、赤錆ぃ。 いや、トラの話を聞く限りじゃ、もうお前は赤錆じゃなくなってるんだよな…」

 黒き魔術詠唱者(マジックキャスター)が数歩前に出て、ノアを指差しながら告げる。

 自分より前に出た仲間の顔をラージ・ボーンは見ることができなかったが、その背中が語る。 数年間共に戦い続けた中で、一度も見たことがない程に、怒っている。

 「お前の使った世界級(ワールド)アイテム、「魔獣の神の力を手に入れる」それは、「徐々に記憶を失う」というデメリットを持っていた。 ユグドラシル時代は、よく意味のわからねぇデメリットだと思っていたが、この世界じゃとんでもない仕様じゃねぇか。 トラから聞いたよ、てめぇ… その姿で… 俺達のダチの姿で好き勝手やってくれたそうじゃねぇかよ… ぇえ?」

 怒りの感情で満たされた心から溢れ出る言葉は止まらない。 ラージ・ボーンは肩を震わせながら自分の心の内を代弁してくれている友の背中を、眼球を失ったその目に、焼き付けていた。

 

 「…確かに、あの男が使った宝具の効果はその通りだ。 …しかし、それを知るお前は何者だ? 悪神の仲間であることは先ず間違いないだろうが… その他の者共も… まあ良い、どれほどの力を有していようが、我が魔獣の強大さにひれ伏す事になるだろう」

 ノアが右手を胸の高さまで上げ、指を広げる。 見覚えのある「七曜の魔獣同時再召喚」の動きだ。

 ラージ・ボーンは仲間達の前に飛び出し両手を水平に広げた。

 世界を何度も滅ぼし得る魔力を持つワールドエネミーが七体同時に現れる。 その出現による衝撃波がどれほどのものかは未知数ではあるが、愛する友を、家族を守るべくラージ・ボーンが覚悟を決めたその時――

 

 

 ――ズズンッ!

 

 

 世界が揺れた。 そう表現しても遜色ない程の地震。 一瞬で三度、縦に揺れた大地はそれ以降揺れることはなかったが、地震から十数秒経ってもまだ揺れているような錯覚が残る。

 「た、タイミング良すぎ…」

 小さな呟きを零したラージ・ボーンの方に、この場にいた全員が視線を向ける。

 最初に口を開いたのは、ノアだ。

 「貴様… 何をした!?」

 「あ、いや… 自分が考えたわけじゃないんだよ? エヌィ・シーアが味方になってくれるって分かってから、いろいろ練って、あーしよう、こーしようって…」

 『そこから先は私が説明しよう』

 

 ――死の支配者――

 ラージ・ボーンの真横の空間が歪み、そこから姿を現した存在を見たものは、誰もがその印象を抱くだろう。

 超越者(オーバーロード)は金と紫で縁取られた、豪奢(ごうしゃ)な漆黒のアカデミックガウンを羽織っていた。

 むき出しの頭部は皮も肉もついていない骸骨。 ぽっかりと空いた空虚な眼窩には赤黒い光が灯っており、頭の後ろには黒い後光のようなものが輝いていた。

 

 「も… …もも…んがさん?」

 ラージ・ボーンが声の聞こえる方向へ視線を向けると、先程熱く勇ましい、この目にその大きな背中焼き付けた人物がぷるぷる震えながら、不自然なくらい背筋を正している。

 黒き魔術詠唱者(マジックキャスター)――カーマスートラは慌てた様子で死の支配者に近付き、その全身を見回した。

 「おお… おおおおお!! うわー! マジもんのモモンガさんだー! あーあー! あ、あの! ファンです! このキャラのコンセプトも大分寄せました! えっと、種族は最初に異形種の悪魔系選んじゃったんで、そのまんまなんですけど、職業(スキル)構成はかなり死霊系統に寄せてます! ウハー! 直接見るの初めてだわー! 興ふ――ぐぇッ!?」

 「…黙れ夫。 あ、ごめんなさいね、えっと… モモンガ…さん? コレは放っておいて、さっきの説明をお願いします」

 

 挙動不審な男は純白のスライムが放った投槍の一撃を受け、昏倒した。

 直様、黒い神官によって回復を受ける男を尻目に、モモンガと呼ばれた死の支配者こと、ナザリック地下大墳墓の絶対支配者、アインズ・ウール・ゴウンが口を開く。

 「んん、ゴホン。 …では、気を取り直して。  …先ほどの地震、私が説明しよう。 あれは、「ノアの方舟」中枢に仕掛けられた「爆弾」が爆発し、方舟が崩壊した衝撃だ。 そのまま概念炉を暴走させたままでは大陸が崩壊しかねない為、すぐに後ろにいるトリスとかいう巫女が魔法で被害を最小限に抑えた… というわけだ」

 「爆弾だと? そんなものを仕掛ける暇はなかったはずだ!」

 アインズの言葉に対し、ノアは激昂しながらも、自身の記憶を探る。 本当に、爆弾を仕掛ける「機会(タイミング)」は存在しないのか。

 「まさか… 悪神、貴様あの時、アイテムを二つ持っていたな?」

 「「正解」」

 思い通りにことが運んだ喜びを隠しきれない二つの声が重なる。

 方舟の中枢で広範囲攻撃特殊技術(スキル)を発動させる際、ラージ・ボーンは両手に一つずつアイテムを持っていた。 右手には特殊技術(スキル)の発動時間をゼロにするアイテム、そしてもう一つが問題のアイテム。

 表情の現れないはずの二つの骸骨の顔が、まるで満面の笑みを浮かべているように見えたのは錯覚ではないだろう。

 対照的に、眉間に皺を寄せ、「悔しさ」という感情を塗りたくられたような表情のノアが叫ぶ。

 「貴様らは、あの方舟に載せた数百の命をも犠牲に…」

 「するわけないだろう」

 ラージ・ボーンが冷静に答えた。 相手がその言葉を発することを予期していたかのように。

 

 ラージ・ボーンの隣、アインズと反対の場所に三人の美女が光と共に現れた。

 「ノアの方舟に乗っていた者は、全てヴァーミルナの村に転移させた。 混乱を防ぐ為にしばらく眠らせておるが… これで良いのじゃな?」

 新たに現れた三人の内の一人、緑の長髪と緑柱石(エメラルド)のような瞳が特徴の女性がラージ・ボーンに告げた。

 外見は二十代前半ぐらいに見えるが、喋り方とのギャップに大戦士は一瞬戸惑いを見せながらも、なんとか心を落ち着かせ返事をする。

 「ありがとう、ええと… クロエさん、だっけ」

 「うむ、赤錆様より命を与えられし巫女の長、バエル・ヘラー・クロエじゃ。 可愛く呼んで、クロちゃんでも良いぞ?」

 「アハハ、ありがとうございます… …クロエさん」

 「なんじゃ、ノリの悪い男よ…」

 クロエが上目遣いでラージ・ボーンに擦り寄る。 赤錆の趣味なのか、若干センリの面影がある為に心臓に悪い… ような気がした。

 「クロエ、インナ… イメオまでも… 悪神に(たぶら)かされたか!」

 神というのは精神攻撃に弱いのか、数十分程前まで大物の余裕を見せていた顔はどこ吹く風か、今や青筋を立てる程に紅潮している。

 「黙れ偽神! 我らが忠誠を誓った最愛のお方は赤錆様ただ一人! 貴様のような下郎ではないわ!! それに、貴様を滅ぼすことは赤錆様の願いでもあるのじゃ。 主人の願いを遂げることこそ、創造された者にとって至上の喜びであり、存在理由。 ならば、全身全霊を以って偽神ノアを討ち滅ぼすことは当然! 御方が完全にその魂を失われてから百十余年、この時をずっと私は… 私たちは待ちわびていた!」

 「赤錆の…願いだと?」

 「偉大なる神、赤錆様が薄汚い神をその身に降ろす際、我々に命じたことは三つ。 ヴァーミルナの心身の保護と、悪神が現れた時、共に貴様を滅ぼす事、そして三つ目は… 内緒じゃ! ヴァハハハハハハ!」

 「この…っ」

 ノアが立てた人類救済の為の「浄化(カタルシス)計画」、その要である「ノアの方舟」を破壊され、部下は敵に寝返った挙句支配者であるはずの存在を煽る始末。

 か弱い人類の救世主となるはずだった神は今、拳を握り締め、怒りに打ち震えていた。

 赤白(せきびゃく)の大戦士、ラージ・ボーンはノアに向かって一歩近付き、真剣でありながら、落ち着いた口調で話しかける。

 「正直、友人である赤錆の姿で非道を行うお前の事は嫌いだ。 しかし、方舟が無くなった今、僕たちが戦う理由は無いはずだ。 矛を収めるのなら…」

 「…やり直しだ」

 「何だって?」

 ラージ・ボーンの目に映るノアの姿は正に異様だった。 瞳孔は開き切り、言葉の節々で声にならない声を呟いていた。 本能が知らせる。 臨界、暴走、危険、最早言葉の通じる状態ではない。 ラージ・ボーンは気がつけば口を大きく開け、叫んでいた。

 「マグナード、ドラゴンダイン! 特殊技術(スキル)で味方全体を防御! カーマとルバーブで最上位の広範囲マジックバリア!!」

 その声に反応した仲間達が指示通りに動く。 数秒と経たずに今持ち得る最高の防御態勢が整う。

 直後、ノアは再び右手を胸の高さまで上げ、その指を大きく開く。

 「方舟はまた造れば良い。 しかし、我が計画の邪魔をした貴様らを生かしておくわけにはいかん… 七曜の魔獣! 我が声に応え、()でよ!」

 

 

 ――神の顕現――

 ノアの居た場所を囲うように天から落ちた七本の光条。

 眩い閃光の中で、それぞれの光の柱が徐々に個々の形を成していく。

 

 一つは全ての生命を否定する絶望の霧を纏う巨大な銀狼に

 

 一つは炎を噴き出す鉄工所のような機械要塞に

 

 一つは美しくも邪悪と混沌を結晶化させたような氷の女王に

 

 一つは雷鎚(いかづち)より生まれし闘神に

 

 一つは全高五〇メートル以上の白金(しろがね)で出来た女神像に

 

 一つは大きく(いびつ)な八本の角を頭部に生やした黒き巨神に

 

 一つは腹部に太陽を抱える赤熱の大精霊に

 

 七体の魔獣が、その姿を完全に顕現させた頃、ようやく周囲の状況を確認できるまでに閃光と衝撃波が収まった大地は、一変していた。

 

 「マジか…」

 ラージ・ボーンの聴覚に驚愕の感情を含んだ呟きが聞こえた、誰の声であるのかは、些細な事だ。

 周囲一面、見渡す限りの世界が死んでいた。

 比喩表現ではない。 死の超越者(オーバーロード)であるアインズの切り札、"あらゆる生あるものの目指すところ(The goel of all life is death)は死である"は使用者を中心とした直径二百メートルの範囲が瞬時に砂漠へと変わり、死しか無い世界へと変えるものだが、「死」の範囲が桁違い過ぎる。

 空気も大地も死に、直径数キロ以上は砂漠化していた。

 

 あまりの惨状に人間種の仲間は肩を震わせ恐怖状態に陥っていた。

 目の前に七体存在する最強の魔獣は、その一体が最高レベルのプレイヤー数十人分に匹敵するワールドエネミー。

 本来別々の場所に召喚され、各個撃破するはずの存在が一箇所に集まっている絶望的な状態だ。

 

 「滅べ、悪神どもよ…」

 自信に満ちたノアの声がラージ・ボーンとアインズに届いた。

 この場の上位者、支配者、絶対者は自分だと確信している声だ。 

 その言葉以外の結果はありえないという自負を感じる。

 

 それでも、二人の不死者(アンデッド)は、敗北など一片も感じることができない心のままに、言葉を紡ぐ。

 「「断る!!!」」

 

 

 不快。

 絶対的な勝利を手にした神であるはずのノアは、最強の魔獣七体を前にしてなお闘志衰えぬ大戦士と死の魔王を見て、そう感じていた。

 しかし、その不快感は突然の悪寒によって遮られる。 ラージ・ボーン達の後方数十メートルの空中、地上からはおよそ十五メートルの空間が歪んで見える。

 錯覚ではなく、巨大な魔力が感じ取れる為に何者かが転移魔法を使用して現れることは容易に想像できた。 ただ、その空間魔力量が際限なく膨れ上がっていることが不可解でならない。 悪神の仲間の中にはその異変に気付き、空間の歪みを見て驚愕し、腰を抜かしている者もいる程だ。

 膨らみ続けた魔力は空間限界を突破――

 

 ―ドンッ!!

 

 まるで大岩が地面に叩きつけられたかのような音と共に、ノアの目の前が漆黒に染まった。

 魔法で昼を夜に変えられたかと思ったが、天を仰げば日の光はそこにある。

 

 再び目の前に視線を向ければ――

 

 “メェェェェェェェェェェェェエエエエエエ!!”

 突然可愛らしい山羊の鳴き声のようなものが聞こえ、ようやく漆黒の正体を把握できた。

 それはあまりにも異様で、異質過ぎるものだった。 高さにして十メートルはあるだろうか。 十数本はあるだろう触手を入れると何メートルになるかはよく分からない程だ。 外見は(かぶ)に似ている。 葉の代わりにのたうつ何本もの黒い触手、太った根の部分は栗立つ肉塊、そしてそのしたには黒い(ひづめ)を持つ山羊のような足が五本ほど生えていた。

 そんなバケモノが突然ラージ・ボーンの後方に五体も現れたのだ。

 

 他にも次々と歪んだ空間から新たな存在が現れ続ける。

 真紅の鎧を身に纏う有翼の戦乙女(ワルキューレ)、全身を黒の甲冑(かっちゅう)で完全に覆った女戦士、二本歩行の青白い昆虫を思わせる異形、蛙の頭部を持つ紳士服の者、ダークエルフの双子、執事服の老人、石で出来たような二足二腕の巨大な像、ドラゴンやフェンリル、上位精霊(エレメント)種にエルダーリッチの最上位種まで―― 他にも続々この場に出現していた。

 

 「ようやくこれが使える。 〈希望のオーラ〉!」

 ラージ・ボーンは新たに現れた者達を仲間と認識した後、自身が持つ合戦用種族特殊技術(スキル)を発動させる。

 特殊技術(スキル)の効果により恐怖状態に陥っていた仲間は正気に戻る。 不死者(アンデッド)や悪魔等の闇系種族には能力減退の効果がある特殊技術(スキル)ではあるが、仲間と認識している対象に減退効果は発生しない。

 

 役者が揃ったことを確認した絶対支配者、アインズ・ウール・ゴウンが口を開く。

 

 「さて、ノアよ… 無駄な足掻きを止め、そこで大人しく横になれ。 せめてもの情けに苦痛なく殺してやる」

 

 




 「全てが終わった後、この世界級(ワールド)アイテムが上手く作動してくれれば良いんだが」

 「我々も、そう願っております」

 「いつも悪いね、お前達には辛い思いばかりさせている」

 「御方の為に尽くすことこそ、我々の至上の喜び」

 「ああ、いつもその言葉には助けられてる。 それから、あの子の事、よろしく頼む」

 「仰せのままに。 我々は永久に最愛なる貴方様のシモベ、その約束は必ずや果たされるでしょう」

 「ありがとう… クロエ」

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