ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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書きます。


焔光の夜伯編ⅩⅤ

基樹は霊斗のアイコンタクト通り、古城たちから五百メートル程離れたところを歩いていた。

「しっかし……浅葱のやつも変わったよなぁ……」

原因は恐らく、いや、確実に古城との出会いだろう。

当事の浅葱は、お世辞にも人付き合いがうまいとは言えなかった。

それが古城に出会ってからは、何かと彼に話しかけ、裏では霊斗にまで古城の話を聞いたりしていた。

そんなことがあってから、浅葱には友人が増えた。

実質的には古城のおかげなのだろう。

だが、基樹が気にしているのは二人の関係ではない。

「登録魔族か……見た感じはまだ若いが……」

古城たちの後方二百メートル。

不審な女が彼らを着けている。

霊斗が人払いの結界を一定範囲に張っているので、例え戦闘になろうとも民間に被害はでないが、浅葱と古城が危ないのは事実だ。

しかし、女の方も霊斗がただの人間ではないことに気づいているのか、すぐに手を出す様子はない。

しかし、古城たちが歩道橋を渡りきった時、霊斗が動いた。

「あ、やばい。俺そういや那月ちゃんに呼ばれてんだった!すまんが後は二人で帰ってくれ!」

霊斗はそういうと回れ右してこちらに戻ってくる。

古城たちがある程度離れたのを確認して、霊斗と合流する。

「基樹、相手は?」

霊斗に聞かれて基樹ははっとした。

いつの間にか女が消えている。

「……すまん、見失った……」

基樹が謝ると、霊斗が首を横に振る。

「いや、基樹が捕捉できないなら答えは一つだ……吸血鬼の霧化だ。そうだろ?出てこいよ」

霊斗が基樹の背後にそう言うと、歩道橋の手すりの上に女が現れる。

「こんなに早く見破られるなんて……あなた、何者?」

女はブルネットの髪を風になびかせながら問う。

それに霊斗は余裕な表情で答える。

「そうだな……まぁ、俺も吸血鬼だ、とだけ言っておくよ。カルアナ伯爵家の生き残り、ヴェルディアナ・カルアナ嬢」

「なっ!?あなたがなぜそれを!」

基樹は女――ヴェルディアナ・カルアナに聞く。

「なぁ、あんたはなんで古城を狙ってたんだ?」

すると、女は愕然とした表情になる。

「そこまでバレているのね……本当にあなた達、何者なのよ……」

基樹が、ただの親友だと答えようとした瞬間、辺りを雷光が照らした。

それを見てヴェルディアナが息を呑み、霊斗が歯ぎしりをする。

「まずいな……予想以上に早いな。"静寂破り(ペーパーノイズ)"……」

すると、歩道橋の上に二人、新たな影が降り立つ。

「久しいですね、暁霊斗」

「……そいつ、五番目(ペンプトス)だな?なんであんたが一緒にいるんだ?"静寂破り"」

霊斗の問いに、"静寂破り"は微笑で返す。

「ああそうかよ、采配者の権限でヴェルディアナから鍵を取り返しに来たんだろ?」

霊斗がそう聞くと、"静寂破り"は頷き、口を開く。

「話が早くて助かります。暁霊斗、獅子王機関三聖の名において命じます。ヴェルディアナ・カルアナから鍵を取り返しなさい」

基樹はまずい、と本能的に直感した。

霊斗が敵に回ったら、今の絃神島には勝てる者は居ない。

しかし、次の霊斗の台詞は以外なものだった。

「はっ、下らねぇ。悪いけどな、ヴェルディアナの事はこいつの姉貴に頼まれてるんでな。あんたの命令より優先させてもらう」

不敵な笑みで霊斗が牙を剥く。

「そうですか。ならば……五番目、お願いします」

"静寂破り"がそう言うと、五番目が霊斗の前に進み出る。

「只の吸血鬼風情が……王たる我に背いたこと、後悔するがいい」

彼女はそういうと、霊斗に向かって雷撃を放った。

手加減なしの一発。

いくら霊斗が不老不死の吸血鬼といえど、耐えられるモノではない。

しかし、雷撃は明後日の方向へと飛んで行った。

「な……!?」

五番目が目を見開いている。

しかし、霊斗はつまらなさそうに一言。

「やっぱ素体程度じゃ相手にならんわ」

この一言に、その場の誰もが絶句し、戦慄した。

なぜなら、霊斗が纏っていた魔力が、真祖のそれだったからだ。

世界に三人しか存在しないはずの真祖。

その四体目の素体すらも越えた、真祖以上の化け物。

その噂は、少しだけ聞いたことがある。

なんでも、世界で最も残虐な吸血鬼だと。

その名を、"静寂破り"が静かに呟く。

「まさか……第五真祖、"亡霊の吸血鬼(ロストブラッド)"……」

その恐怖の呟きを聞いて、霊斗は酷薄な笑みを浮かべボソリと一言。

 

「正解」

 

直後、周囲を圧倒的な破壊の渦が駆け抜けた。




では次回。

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