ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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書きます。


焔光の夜伯編Ⅹ

天音が転移した先は暁深森の研究室だった。

「『あ、いたいた。お母さん、凪沙ちゃんが』」

「あら天音ちゃん、また倒れちゃった?」

「『朝から我慢してたっぽい。多分貧血だってアスタルテちゃんは言ってたけど、念のためにね。あ、あと霊君用のブースト剤もお願いできる?』」

「はいはーい、私に任せなさい。じゃあ、二人……じゃなくて三人は待合室で古城君達を出迎えて」

「わかりました」

「『まっかせてー』」

深森は二人の返事に頷くと、凪沙を抱えて医療棟へと向かっていった。

「じゃあ、俺達も行くか」

「あ、戻ったんですね」

「ああ。ってか天音、急に入ってくんな。びっくりするだろ」

「ごめんね。代わりにほら、霊君用のブースト剤」

「……敵、か?」

「朝、霊君もわかったでしょ?」

「''奴''か……だけど、本当にこの島に?」

「まず間違いないね。ヴァトラーがやられたからね」

「そうか……念のため結界を張ってくる。二人は古城達を待っててくれ」

「霊斗さん?どういうことですか?説明を……」

「すまん、天音に聞いてくれ。急がないと手後れになるかもしれない」

「……わかりました」

「じゃ、行ってくる」

霊斗は建物の外へ走っていった。

アスタルテはそれを見送ると、天音と共に待合室に向かう。

「……霊斗さんのあんなに焦った顔、久しぶりに見ました」

「うん、そうだね……でも、霊君が負ける相手じゃないよ」

「だったら、なんであんなに……」

「確かに霊君は''あの人''には負けないよ。でも、負けないだけ。周囲を護れる保証はないの。霊君が焦ってるのは自分の為じゃない。周りの、無関係な人の為だよ」

「霊斗さん……らしいですね……でも……」

「やっぱり、霊君が傷つくのは見たくない?」

「ええ……霊斗さんは自分の命を軽く見ている傾向がありますから……」

「はは……確かにね。でも、最近はだいぶマシになってるよ」

「もっと酷かった時期が?」

アスタルテの問いに、天音が頷く。

「そう。例えば……ああ、あれが一番酷かったよ。第一真祖と戦った時」

「第一真祖……なぜ戦王領域に?」

「獅子王機関の任務でね。ちょうど二年位前かな。任務中に第一真祖が襲いかかってきたんだよ」

「結果は……?」

「結果だけで言えば''勝ち''になるんだろうけどね……なんせ世界で初めて第一真祖を殺したって言われてたからね」

「殺し……じゃあ、普通に勝ちじゃないですか」

「でも、霊君は何回も死にかけてたからね。その度に呪術で強化してたからね……最後はもう心臓が止まった状態で自分に死霊術をかけて戦ってた」

「そんなの……死んでるのと同じじゃないですか……」

「そう。どれだけ死んでも動き続ける。死んでいるのに相手を殺しに行く……そのときの通り名は……」

「通り名?」

「うん……特に使ってた眷獣が私だったから、周りからは――」

「''獄炎の死神''だろ」

天音の声を遮ったのは霊斗だった。

「霊君……」

「霊斗さん……」

二人が心配そうに呼びかけるが、霊斗は軽く笑って返す。

「気にしちゃいねーよ。あのときはまだ未熟だったってことさ」

「霊斗さん!(ガバッ)」

「な!?アスタルテ!?」

「今回は……いえ、これからは絶対に、絶対に死なないでください……もっと……もっと私を頼ってください!まだ弱いかもしれないですけど、絶対に強くなりますから!」

「アスタルテ……」

泣きながら言うアスタルテに霊斗はそっと言う。

「ありがとう、アスタルテ。でも、強くなんてならなくていい。俺は、お前を守りたいんだ。お前が戦って、傷つくのは嫌だ。だから……」

「霊斗さん……」

「だから、俺は、お前もしっかり守れるように強くなるからさ……それまで、我慢してくれないか?」

「……仕方ない人です。ちょっとだけですからね……」

「ありがとな。アスタルテ、大好――」

「なあ、取り込み中に悪いんだがな、状況を教えてくれ」

霊斗の台詞の途中で割り込む新たな声。

「こ、古城。来たか」

「ああ、少し前にな」

「そ、そうか……凪沙なら大丈夫だぞ」

「天音から聞いた。で、お前らはなんでこんな所でイチャついてんだ?」

「い、いゃぁー、なんのはなしかなぁー」

霊斗が誤魔化していると、キラとジャガンが近づいてきた。

(霊斗様、''あの御方''が周辺に居ます。自分達が交戦してきます)

(わかった。ただし、危ないと思ったらすぐに離脱しろ)

(わかりました。では)

小声でキラが告げると、二人は屋外へと向かっていった。

「で、当然のように浅葱と基樹もいるんだな」

「俺も凪沙ちゃんが心配だったからな」

「ってか、待合室でイチャつかないでよ。恥ずかしいでしょ」

「私もいるんですけどね」

「おう雪菜。いろいろ小さくて気づかなかった」

「セクハラですか?出るとこ出ますよ」

「いや、そんなに出てないと――」

「はい?(ギロッ)」

「申し訳ありません」

「わかればいいんです」

霊斗はふと、アスタルテの方を見る。

「?」

「うん、俺はそんな一部で人を判断しないからな。大丈げぶあっ!?」

「どこを見て言ってるんですか!怒りますよ!」

「殴ったから十分でしょ?」

「まだ足りません」

「わかった!お昼時でお腹が空いてるんだな!よぉーし、社員食堂に行こう!俺の奢りだ!」

「本当に!?」

「浅葱?」

「じゃ、俺も」

「も、基樹?」

「私もー」

「天音?」

「俺もいいな」

「古城?」

「私も頂きますね」

「雪菜さん?」

「もちろん私もですからね」

「ああ、わかってるよ」

「「「「「あれ、反応違くない?」」」」」

「くそっ、もういいよ!全員奢りだぁっ!」

「イェーイ」

喜ぶ浅葱の顔をみて、財布の中を確認しだす霊斗だった。




眠い。
ではまた次回。

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