霊斗とアスタルテは中等部の校舎に来ていた。
「あれ、居ないな」
「あの男子の制服の散らかりようを見ると、今は体育の時間ですかね」
「そうか……じゃあグラウンドか体育館だな」
「どっちから行きますか?」
「うーん……あ、そうだ」
どちらから行こうか悩んでいた霊斗だったが、ふと何か思い付いたかのように空中に呼びかける。
「おーい、天音?いるだろ」
すると、突如霊斗の隣に天音が現れる。
「呼んだ~?」
「ああ。悪いけど、凪沙の位置、特定してくれ」
「うーん……どうしよっかなー」
「は?」
「だって霊君最近構ってくれないし……」
「あー……それは悪かった。じゃあ、しばらく出たままでいいから」
「しょうがないなー、それで妥協してあげる。じゃ、ちょっと待ってね……」
「妥協って……やけに偉そうだな」
「お願いしてる立場の人が文句言わないの。あ、見つけた……これは体育館だね」
「よし、じゃあ早速行くか」
道中。
「むー……」
「アスタルテ?どうした?」
「さっきから私は空気扱いでした」
「ああ、なるほど……ほら、頭撫でてやるから機嫌直せ」
「わかりました。じゃあ、早く撫でてください」
「ほれ」
「ん……」
「あー!いいないいな!私も撫でてー!」
「ほれ」
「えへへー」
(なんで俺は歩きながら二人を撫でるという高等技術を披露しなければならないのか……)
体育館。
「お、バレーボールか……」
「コートに雪菜ちゃんがいますね」
「お、ラインギリギリの球を打ち返したよ!」
「なんだ今の速さ……」
「本当に純粋な人間なのでしょうか……」
「でも今の、呪術も霊力も使ってなかったよ」
「え、未来視も?」
「うん」
「マジすか……」
「あ、チーム入れ替えですね。今度は凪沙ちゃんが」
「凪沙か……体調は大丈夫かな……」
「見た感じでは普段通りですけど……」
「天音、お前はどう思う?」
「私もバレーしたいなー……あ、なに?」
「人の話を聞け馬鹿たれ(ゴスッ)」
「痛い!ちょ、ちょっと!頭蓋骨が割れちゃうよ!」
「そのまま脳漿を撒き散らしてしまえ」
「!霊斗さん!凪沙ちゃんが!」
「なんだ!」
「相手チームのコートにボールを叩き込みましたよ!」
「紛らわしいな!」
「相手のサーブは……アウトですね」
「なに?アスタルテちゃんはスポーツ実況の人なの?」
「さあ!盛り上がって参りました!第七十八回バレーボール選手権、準決勝の試合です!」
「前の七十七回どこでやったんだよ。つかお前も乗るな」
「霊君はつれないなー」
「頭がっちがちですね」
「え、なんで俺こんな馬鹿にされてんの。理不尽でしょ」
「世界を変え、新世界の神となる!」
「もう神だろ」
「霊斗さんはカミ」
「英語でいうと?」
「hair」
「そっちかよ!ペーパーだと思ったわ!つか発音いいな!」
「霊斗さん、騒ぐと見つかりますよ」
「今更だな」
霊斗が呆れて溜息をついていると、急に体育館の中が騒がしくなった。
「なんだ?」
「霊斗さん!凪沙ちゃんが!」
「霊君!早く行かないと!」
「なっ!?クソッ、やっぱりやせ我慢してやがったか!」
霊斗は体育館の扉を開け放ち、中に駆け込む。
「凪沙!……アスタルテ!診察できるか?」
「任せてください。……ただの貧血だとは思いますが……」
「念のためMARに運ぶか……」
「笹崎せんせっ、そーいうことだから、凪沙ちゃん連れてくねー」
「あ、ああ。じゃあ霊斗坊、頼んだよ」
「任せてくださいよ、じゃ」
霊斗は凪沙を抱き上げると、空間転移でMARに跳んだ。
そしてその足で医療棟に向かった。
「多分、母さんがいるから……」
「お義母さんなら安心して預けられますね」
「ん?なんか漢字が違う……?」
「気にしないでください。こっちの都合です」
「そうか……急ぐぞ」
「霊君、空間転移は?」
「魔力がもうきつい。回復中だから」
「はぁ……仕方ないなぁ……」
急に天音が足を止める。
「天音?早く母さんを……っ!?」
「霊斗さん?」
天音に釣られて立ち止まった霊斗が、急に項垂れる。
すると、天音の身体が火の粉のような粒子になって霊斗の身体にまとわりついていく。
「『これで、大丈夫かな』」
「え、霊斗さん?」
粒子が消えると、霊斗が急に天音の口調で喋り出す。
「『ああ、違うよ。今は私が霊君の身体に''憑依''してるだけだから、呼び方は天音か初代でね』」
「は、はい。じゃあ天音ちゃん、なぜ急に''憑依''したんですか?」
「『歩きながらでいい?要は私の人格を表に出して''天照大御神''としての能力を行使出来るようにしつつ、霊斗の魔力消費を一人分にする方法だよ。緊急時だからね、こっちなら''探知''しつつ転移出来るから。じゃ、行くよ』」
天音はそう言って空間転移を行使した。
あれ、自分でなに書いてるかわかんないや。
じゃあまた次回!