ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

86 / 127
書きます。
久しぶりの戦闘回です。


焔光の夜伯編Ⅴ

霊斗が遺跡を飛び出すと、キャンプが燃えていた。

「これは……」

「チッ、派手にやられたな」

霊斗の背後の遺跡から牙城が舌打ち混じりに毒づく。

牙城が銃を構えて警戒しながら霊斗に聞く。

「やっぱり死霊術か?」

「うん、あらかじめ結界の内側に死体を埋めてあったんだと思う……」

霊斗が犯人として最も怪しい人物の名前を言おうとした瞬間、岩陰から巨躯の男が現れた。

「牙城!坊主も無事か!」

「カルーゾ、どう言うことだ?」

「襲撃者だ。今はなんとか防いだが、次にいつ襲ってくるかわからない。手伝ってくれ」

「そうだな、その前に……霊斗」

「うん……おやすみなさい、カルーゾさん」

「え? 」

カルーゾが驚いた表情を浮かべる。

だが、その目が見開かれる。

「……吸血鬼の眷獣!?」

「……僕は吸血鬼だって言いましたよ――()()()()()()()カルーゾさんにはね」

霊斗はそう言って眷獣に攻撃を命じる。

「''大国主命(オオクニヌシ)''、術式の解呪を」

眷獣が周囲に魔方陣を展開し、一帯の死霊術をすべて解呪する。

「これで、解呪された分の余剰魔力で自分が苦しいはずだよ――ゴラン・ハザーロフ」

霊斗が背後の岩陰に目を向けると、額から血を流した獣人が現れる。

「貴様……ただの吸血鬼ではないな!何者だ!」

「僕は半人半魔の出来損ないの吸血鬼だよ。世間一般では、第五真祖って呼ばれてるみたいだけどね」

「第五真祖……だと……貴様のような小僧が真祖だとォ!?」

「そうだよ、だから―――降参してくれると嬉しいな」

霊斗がそう言って眷獣の召喚を解除した。

だが、ハザーロフは口の端を吊り上げ笑うと言った。

「甘いな、第五真祖。未だ人の心を捨てられぬか。……それが命取りなのだ!」

ハザーロフはそう言うと懐から手榴弾を取りだし、投げる。

「!父さん!」

霊斗が牙城を抱えて飛び退くが、遅かった。

背後に閃光と爆音、そして身体に走る鋭い痛みを感じて、霊斗は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古城が抱えていた凪沙が微かに身じろぎし、目を開ける。

「……古城君?」

「凪沙……しばらく目を瞑ってた方がいいぞ」

古城の目の前ではリアナが眷獣を召喚し、闘っている。

「リアナさん、大丈夫ですか?」

「ええ、ゾンビは殲滅しました。凪沙さんも、大丈夫ですか?」

「はい……私、さっきの揺れでびっくりしちゃって……」

凪沙が申し訳無さそうに呟く。

だが、古城は凪沙を元気づけるように言う。

「無理もねぇよ。かなり大きな揺れだったからな」

凪沙を気遣う古城をみて頬笑むリアナだったが、その表情が急に引き締まる。

「新手です。お二人は後ろに」

遺跡の入り口から入ってきた――否、入り口を破壊して来たのは漆黒の獣人だった。

「ようやく見つけたぞ、リアナ・カルアナ」

「……ゴラン・ハザーロフ……」

「流石は貴族様、御自身は遺跡の中で震えているとはな。あの惰弱な当主にそっくりだな」

「父上の侮辱はやめろ!このケダモノ!」

リアナが怒りの叫びと共に眷獣を放つ。

だが、ハザーロフは眷獣を片手で受け止める。

「なっ!?まさか……貴様は!」

リアナの叫びとハザーロフの肉体の変化が始まるのは同時だった。

ハザーロフの身体が獣の姿に変わっていく。

一握りの上位獣人が持つ特殊能力。

神話の怪物にも匹敵する力から名付けて''神獣化''。

「くたばれ!吸血鬼風情が最強の種族に敵うと思うな!」

「獣がァーッ!」

リアナがもう一体の眷獣をハザーロフに特攻させる。

「ふ……しぶといな。だが、ひと足遅い!」

ハザーロフの声と共に死体が起き上がる。

「しまった!」

リアナが死を覚悟した次の瞬間だった。

「さらにひと足遅いのはお前だ。ハザーロフ」

冷たい声音と共に灼熱が死体を焼く。

「この眷獣は……」

リアナが入り口の方を見ると、霊斗が立っていた。

だが、雰囲気が先程までと違う。

唇の端から覗く牙は吸血鬼の物だが、瞳は黄金に染まっていた。

「ふう、少年が意識を失っているから出てきてみれば……起きて早々にスプラッタなシーンを見せられては敵わん。……疾く去ね、ケダモノ」

霊斗の声で、霊斗ではない[何か]がハザーロフに淡々と告げる。

「真祖風情が神獣に勝てるとでも思うのか!」

「つくづく救えん男よの。神獣がなんだ。我は咎神の弟を監視する為に創られた殺神兵器ぞ。獣程度、リハビリにもならん」

「ぐぅ……殺してやる!」

ハザーロフが飛びかかってくるが、霊斗はそれを回し蹴りで撃退する。

「ぐぉ……」

「眷獣を使うまでもない。それでよく獣人が最強などとほざくものだな」

「……我ばかり気にかけるとは、余裕だな、第五真祖。――やれ!動死体(リビングデッド)共よ!」

ハザーロフの号令で死体が霊斗に銃を乱射する。

「グフッ……こちらの解呪を忘れていたな……すまぬ、少年」

霊斗が倒れる。

それを見た凪沙が悲鳴をあげる。

ハザーロフはそれを一瞥すると、氷の棺を見る。

そして、再び死体に命じる。

「やれ」

次の瞬間、棺の前の少年と、氷塊は砕けた。




やっとここまで来た……。
じゃ、また次回!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。