翌朝。
古城は森の中にいた。
近くの泉では凪沙と霊斗が沐浴をしている。
「古城、誰もいないよね?」
「ああ。誰もいないぞ」
霊斗に答えると、古城は岩場の陰に座り込む。
古城がしばらく待つと、霊斗と凪沙が服を着替えてやって来た。
凪沙は巫女装束、霊斗は神主風の服だ。
「古城、お待たせ」
「終わったら行こうぜ」
「出発だー!」
三人は遺跡に向かう。
途中でカルーゾに会い、少し話をしてから遺跡の中に入る。
牙城達と合流し、話をしながら遺跡の最新部に向かう。
「なんか、神秘的な所だよね……」
「お、霊斗にはわかるか。まぁ、墓よりも神殿に近いモノだからな」
「神……いや、どちらかと言うと僕やリアナさんに近い気がするよ……」
「かーっ!かわいげのないガキだなぁ!なんでもお見通しってか!」
「親父、うるせぇ」
「チビは黙ってろ」
「息子相手になんつー口の聞き方だ」
「はいはい、古城も父さんもそのくらいにしてさ、凪沙に注目しようか」
霊斗の声を聞いて二人が凪沙を見ると、凪沙が無表情に石室の扉を見ていた。
「……霊との交信には成功したみたいだね」
「ああ。あとは霊斗、お前だけが頼りだ」
「うん……凪沙!もういいよ!」
霊斗が呼び掛けると、凪沙の瞳に表情が戻る。
「遺跡は起動できたから、後はよろしくね、霊斗君」
「わかってる。ゆっくりしてなよ」
霊斗は輝く扉の前に立つ。
「……第四の真祖よ、汝の兄弟、第五真祖の名のもとに貴兄に請う。扉の封印を破り我らを汝の元に導きたまえ」
霊斗がそう唱えると、扉が前触れもなく消失する。
「すごい……これが、あの獅子王機関三聖をも越えると言われる霊能力……」
リアナが感嘆の声をあげる。
霊斗が先導しながら部屋の中に入る。
「これは……」
牙城が呟く。
そこで眠っていたのは、美しい少女だった。
虹のように色を変える金髪に白い素肌。
「これが……
「……こんなに可愛い子が世界最強の吸血鬼だって……」
「むしろ、眠り姫の方が似合ってるだろ」
古城の呟きを聞いたリアナが言う。
「アヴローラ・フロレスティーナ……いい名前じゃないですか?」
「そうだな、味も素っ気もないナンバーで呼ぶよりいいじゃねぇか」
「うん、……この子もきっと喜んでるよ」
全員が首肯く。
が、霊斗が急に膝をつく。
「霊斗?」
「……また、死霊術……この魔力……父さん!古城と凪沙をお願い!」
霊斗が遺跡を飛び出していく。
「待て霊斗!……クソッ。ミス・カルアナ!二人を頼む!」
霊斗を追って牙城もライフルを持って飛び出していく。
直後、遺跡を強い揺れが襲った。
「……霊斗……親父……」
古城の呟きが石室に反響する。
バレンタインなんて嫌いだァァァァ!
……失礼、取り乱しました。
また次回!