ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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お久しぶりです。
えー、ここで言っておきますね。
暁の帝国編と、ヴァルキュリアの王国編は書きません。
だって覚えてないんだもん!
じゃ、本編をどうぞ。


焔光の夜伯編
焔光の夜伯編Ⅰ


彼等は揺らめく光の中に浮かんでいた。

二人の少年と、眠る一人の少女だ。

少年の一人は既に絶命した。

未だ彼の意識が残っているのはもう一人の少年の力のお陰だ。

そんな少年達に少女が問う。

『何故我を恐れぬ?』

彼等はそれぞれ答える。

「僕は君と同じ……だから」

「さあな……まだ、やることが……あるからだろうな……」

『そうか……そちらは兎も角、汝の命は尽きた。何もできぬぞ……』

少年達の答えを無表情に聞きながら少女が言う。

『此処は第四真祖の''血の記憶''だ。普通の人間には耐えられぬ』

「知ったことか!俺は……大切な物を護れるようになりたいんだ!……どんなことをしてでもな!」

瞬間、彼の身体が再生し始める。

『ほう……人の身でありながら我が''血の記憶''を喰らうか……』

「そういうやつなんだ。だから……力を貸してやってくれ」

『代償は高いぞ……』

「それでもいい。だから……俺に力を貸してくれ!」

二人の少年が声を揃えて少女の名を喚ぶ。

「「力を貸してくれ!アヴローラ!」」

それを聞いて少女が笑う。

『よかろう、受けとれ』

次の瞬間、少女が片方の少年の胸に氷槍を突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地中海、ゴゾ島。

貴重な地下墳墓の発掘現場で、一人の男が叫ぶ。

「くぅぅぅぅぅぅっ!うめぇ!」

四十代くらいの、だらしない雰囲気の男だった。

彼は朝から酒をあおっていた。

「青い空、白い雲、美味い酒と食い物、あとは………絶壁かぁ……」

「殴っても良いのでしょうか、博士」

「おおっとこわいこわい」

隣に座る女性に睨まれて肩を竦める男。

「まぁ大丈夫だ。一部の人間は『貧乳は希少価値』って言うからよぉ」

「セクハラで訴えますよ?」

「まぁまぁ。そう怒りなさんなって。怒ると冷静な判断ができなくなるぞ――」

彼がそう言った瞬間、遺跡から爆発音が響いた。

「ああ、まったく……焦るとロクな事がねぇってあれほど言っておいたんだがなぁ……」

彼は怠そうに立ちあがり、ライフルケースを取り出す。

「ほら、ミス・カルアナ。行こうぜ」

「は、はい」

男に言われて我に帰る女性――リアナ・カルアナ。

二人が遺跡の方へと歩いて行くと、屈強な男が駆け寄ってくる。

「ガホ!早く手を貸してくれ!」

男――ディマス・カルーゾが二人にそう叫ぶ。

「はぁ……俺の名前はガホじゃねぇっての……で、何の騒ぎだ?」

「ああ、ダータラム大学の調査隊が勝手に第三階層に!」

「ったく、面倒なことしやがって……」

男の視線の先にはのっぺりとした兵器があった。

「博士、あれは……」

遺跡守護像(ガーゴイル)系の兵器だ。第三次調査隊が排除したはずなんだがなぁ……」

男は兵器を写真に撮しながら言う。

「うーむ、第九メルヘルガル遺跡の古代兵器(ナラクヴェーラ)に似てんな……当たりか……」

兵器はどんな攻撃を食らっても傷一つつかない。

「ガホ!なんとかならないのか!?」

「だから、ガホじゃねぇっての。……んじゃ、こいつを使うか」

彼がライフルケースから取り出したのは、全長一・八メートルほどの対物ライフルだった。

「それは……!?」

「二十ミリ口径の対物ライフル。重かったが、やっと役立つ時が来たな……ほんとは来ない方がいいんだがな」

男はライフルを構え、兵器の方に向ける。

兵器がこちらに向かってレーザーを放とうと、レーザーの射出口を開いた瞬間――

「え!?」

リアナが驚いた声をあげる。

射出口がいきなり破壊されたのだ。

「驚くのは早いぜ、次は特別製だ」

彼はそう言ってライフルを射つ。

弾丸は兵器の胴体に直撃し、四散する。

次の瞬間、虚空に魔方陣が形成される。

「あれは……呪式弾!?」

「まあ、簡単な話だ。要は奴らの魔術回路に過剰な魔力を流し込んでやれば――ドカン!さ」

得意気に説明する男に、カルーゾが抱きついてくる。

「やったなガホ!」

「ちょ、くっつくな……つか、俺の名前はガホじゃねぇって何回言わせるんだよ」

男はカルーゾを引き剥がしながら言う。

「それはガホじゃなくてガジョウって読むんだよ」

カルーゾとそんな会話をしている彼の背中に憧れの目線を向けながら呟いた。

「ガジョウ……暁牙城……か」




今日は短めで。
では次回!

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