ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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書くぞーッ!


霊斗の帰還

霊斗はエイジスに向かっていた。

もちろん一人でだ。

本来ならばユウの役割ではあるが、ユウはまだ黒いハンニバル――ハンニバル侵食種がリンドウであることに気付いていない。

ならば。

全てを知っていて解決法も知っている自分がやるしかない。

「……まずは、リンドウの神機をどうやって持ち出すか……」

霊斗は神機保管庫に向かいながら考える。

「……やるしかないな」

霊斗は神機保管庫に入る。

するとリッカが話しかけてくる。

「あ、霊斗君。今からミッション?」

「ああ。まぁ、武器の素材集めだ」

「頑張ってね」

「おう」

霊斗は片手を挙げて答えると、自らの神機の前に立つ。

そして、リッカの目を盗んでリンドウの神機を転移させる。

(よし、あとはエイジスに向かうだけだな)

霊斗は自身の神機を持ち、エイジスに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊斗がエイジスに着くと、ハンニバル侵食種は島の真ん中に佇んでいた。

霊斗はハンニバルの目の前に立つ。

「リンドウ、俺が……助けてやる」

霊斗はそう言い、神機を構えて斬りかかる。

「ぐっ!?」

しかし、霊斗の神機は籠手に弾かれる。

(流石元凄腕ゴッドイーター。剣筋は見抜かれるか……)

霊斗は距離を取り、神機を銃に切り替える。

「これで……どうだッ!」

霊斗はモルターのバレットを発射する。

だが、ハンニバルはまだ怯まずに突進してくる。

「ぐあっ!?」

霊斗は吹き飛ばされ、床に叩きつけられる。

「くそッ、一筋縄じゃ行かないな……なら、喰らえっ!」

霊斗は神機を剣に戻すと接近し、斬る――。

しかし、ハンニバルは素早く反応し、籠手で剣を防ごうとする。

「残念だったな!」

霊斗は笑うと、神機を補食モードに切り替え、籠手を食い千切る。

「ゴァァァッ!」

ハンニバルが咆哮し、後ろに跳ぶ。

「追撃行くぜ!」

霊斗はハンニバルの顔に剣を叩きつける。

すると角が折れる。

「よし、あとは……」

霊斗は呟きながらジャンプする。

そして、空中で神機を再び補食モードに換え、逆鱗を食い折る。

「グゴァァァ……」

そこで、ハンニバルは力尽き、倒れる。

だが、ハンニバル種には強力な再生能力がある。

霊斗がハンニバルを見ていると、背後から聞き慣れた声がした。

「霊斗!」

霊斗がふりむくと、第一部隊の面々が走りよってくる。

「……一人で倒したのか……?」

「いやまだだ。こいつは……復活する」

霊斗がそう言うのと同時にハンニバルの身体が炎に包まれ、浮き上がる。

全員が息を飲むなか、霊斗はハンニバルの胸元を見ていた。

そこには、リンドウが取り込まれかけていた。

「リンドウさん!」

コウタが叫ぶ。

すると、リンドウが目を開ける。

「よう……お前ら。……ここで何してる?」

「リンドウさんを助けに来たに決まってるじゃないですか!」

アリサが叫ぶと、リンドウが少し頬笑みながら言う。

「それは無理だな……俺の事はいいから、お前達は逃げろ」

「そんな……リンドウ……」

「早く逃げろ……そうだな、新米。こいつらを連れて逃げて――」

リンドウの言葉を霊斗が遮る。

「なに言ってやがる。あんたを見捨てたりなんかしない」

「なに……」

「こいつらの気持ちは本物だ。俺もあんたを助けたい。だったら、選ぶ選択支は一つだ」

霊斗は虚空よりリンドウの神機を取り出し、告げる。

「俺はこの身体を犠牲にしてでも助ける!」

霊斗の隣に立ったユウがリンドウに告げる。

「リンドウさん、今は俺が隊長です。だから……」

ユウは、霊斗の握るリンドウの神機を握る。

そして、侵食の痛みに耐えながら叫ぶ。

「死にそうになったら逃げろとあなたは言った!だったら……生きることから逃げるな!これは……隊長命令だ!」

リンドウは既に意識を失い、ハンニバルとして活動を再開した。

霊斗とユウはリンドウの神機を握り、駆け出す。

「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」

そして、二人で同時に跳び、ハンニバルの口に神機を突き込み、上下に割く。

すると、そこにはコアがあった。

霊斗とユウはお互いに見合って頷くと、コアに手を触れる。

(なんだ……これは……リンドウの思い出?)

(感応現象か――!)

霊斗とユウの意識は白い光に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

霊斗が目を覚ますと、そこは教会だった。

隣ではユウが倒れている。

「ユウ!起きろ!」

霊斗がユウを起こす。

「む……う、ここは……贖罪の街……?」

「いや、出入口が封鎖されている……リンドウが行方不明になった時の教会だな」

「そうか……ここはリンドウさんの記憶のなかなんだな」

「ああ……って、ユウ!あそこ!」

霊斗が指差す先には、リンドウが座り込んでいる。

「リンドウ、起きろ!」

「リンドウさん!」

霊斗とユウが呼び掛けると、リンドウがゆっくりと目を開ける。

「おう……新入りに、隊長じゃねぇか……」

「リンドウ……戦おう」

「戦う?何とだ?俺はもう負けちまったんだ」

「いや。あんたの意識が消えていない以上、まだ勝機はある」

霊斗が言うと、リンドウが目を見開く。

「リンドウさん」

ユウが差し出したのはリンドウの神機だ。

「そうだな……」

リンドウはそれを受けとり、笑う。

「じゃあ、生き残るために足掻いてみるか!」

教会の壊れた壁にハンニバル侵食種が現れる。

「行くぞ、お前ら!」

リンドウが戦陣を切り、ハンニバルに斬りかかる。

そこに霊斗が続き、ハンニバルの顔を補食モードで食らう。

そしてユウがハンニバルの足を斬る。

「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」

三人の雄たけびが教会に響き渡った。

 

 

 

 

 

数分後、ハンニバルは倒れ、黒くなって霧散した。

「終わった……」

「だな……」

すると、次の瞬間、霊斗とユウの視界が白い光に飲み込まれた。

「ありがとよ、お前ら」

リンドウのその声だけがやけに耳に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊斗達が目を覚ますと、そこはエイジスだった。

「霊斗さん!」

霊斗が起きるとアスタルテが声を掛けてくる。

「おお、アスタルテ。心配かけたな」

「いえ。心配なんてしてませんよ?」

「ほぇ?」

霊斗がすっとんきょうな声をあげる。

それを聞いたアスタルテがいたずらっぽく頬笑む。

「だって、霊斗さんなら必ず勝ってくれるって信じてましたから」

「はは……びっくりしたぁ……」

霊斗が笑いながら横を見ると、笑いあっている第一部隊の面々がいた。

「……良かった、無事に終わって」

「ですね」

霊斗とアスタルテが立ち上がると、二人の身体が光に包まれる。

「もう、あっちに戻らなきゃな」

「ええ。かなり長く空けましたからね」

「というか……イザナギのやつ……」

不思議だ。

今ならしっかりとこの世界に来た原因がわかる。

「とりあえず、戻ったらアスタルテの紅茶を飲ませてくれよ」

「はい……皆さんとは、お別れですね」

「そうだな……神機は、置いていこう」

霊斗とアスタルテは神機を床に置く。

次の瞬間、足元にゲートが開く。

二人は落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絃神島、霊斗の部屋。

「霊斗殿!戻ったかへげぶぅ」

イザナギが霊斗に駆け寄ると同時に吹き飛ぶ。

「ったく、面倒なことしやがって」

「ところで霊斗さん。いま、あれから二時間しか経ってないんですが……」

「え、マジで?」

霊斗が時計を確認すると、間違いなく時間はあれから二時間だ。

「なんだ……ははっ」

「あんなに密度の濃い二時間は始めてです」

霊斗とアスタルテは笑った。

彼等を思い出しながら。

 

 

 

 

 

 

 

エイジス。

ユウは霊斗とアスタルテの神機を見て立ち尽くした。

彼等は神機だけをおいて消えた。

「あいつら、帰ったみたいだな」

リンドウがユウの肩に手を置きながら言う。

「帰った?」

「あいつらは、異世界の住人なんだとよ」

「そうですか……なら、あの戦闘力も納得ですよ」

ユウは苦笑する。

だが、彼等の仕事はまだ終わっていない。

この世界からアラガミを滅ぼさなくてはならない。

だが、彼等は忘れないだろう。

驚異的な戦闘能力で自らを圧倒した二人の事を。

これから先も、ずっと。




あー、疲れた。
次回、焔光の夜伯編スタート!

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