どうぞ。
霊斗はアスタルテと共に自室に戻ると、ゲーム器を起動し、ついでにアスタルテのゲーム器の細かい設定をして、ソフトを起動する。
「まず、このスティックで移動、R押しながら移動でダッシュ、×でジャンプ」
「わかりました」
「あとはチュートリアルで教えてもらえるから――」
霊斗がそこまで説明した時だった。
「霊斗殿ーッ!我と遊ぼう!」
イザナギ登場。
たが、イザナギはアスタルテと霊斗がゲームをしているところを見ると、急に怒りだした。
「なんだ!ゲームばかりして!そんなにゲームが好きならゲームの世界に入ればいいぞ!」
イザナギはそんな事を言って霊斗達の足もとに手を向ける。
すると、霊斗達の足もとに異空間へのゲートが開く。
「えっ、イザナギさん!?」
「イザナギィィィ!テメェ覚えてろよーッ!」
霊斗達の意識はそこで途切れた。
イザナギが満足そうに床に座る。
「まったく霊斗殿は……せいぜい異世界でイチャコラするがいいさ」
すると、イザナギの隣にイザナミが座る。
「ナギ、あなたもメチャクチャですねぇ……」
「なんだナミ、我がまともだったことがあるか?」
「かなり昔はまともでしたよ?」
「……今は?」
「そうですね……オブラートに包んで言うと……知能が幼児レベルになっていますね」
「オブラートどこいった」
「まぁ、しばらくしたら戻してあげてくださいね?」
「う……わかった」
イザナミはその返事に満足そうに首肯くと、イザナギの肩に頭を預けた。
「ん、どうした?」
「私達も仲良くしていましょうか」
「……そうだな」
結論・神々でもイチャイチャする。
霊斗はベッドの上で目を覚ました。
「あ!目が覚めたみたいだね」
霊斗が声の方に顔を向けると、そこには一人の少女がいた。
灰色のショートカットにゴーグル、頬には機械油と、なかなかに工業系な少女である。
「あんたは……」
「ああ、自己紹介がまだだったね。私は楠リッカ」
霊斗はその名前に聞き覚えがあった。
「ああ……じゃあここは……フェンリルの極東支部か……」
まるで夢だな、と霊斗が言うと、リッカが不思議そうな表情をする。
「あ、そうだ。君さ、ゴッドイーターのパッチテストに合格して、今新しく開発された新型神機に適合したんだけど……」
霊斗はその言葉に耳を疑った。
自分がゴッドイーターに、なれる。
「ああ、適合試験、受けるよ」
「そう、わかった。じゃあ、申請しとくね」
「お願いするよ。ところで、青い髪の女の子を見なかったか?」
「ああ、その子なら君の隣にいるよ」
リッカの言葉に促されて、霊斗が隣のベッドを見ると、アスタルテが寝ていた。
「ふぅ……ぐっすりだな……」
「仲良いの?」
「ああ、こいつは俺の彼女であり、血の従者だ」
「は?血の従者?」
「え?だって、俺、吸血鬼」
「吸血鬼……?……あっははは!君は冗談が上手いね!」
リッカは信じた様子もなく笑う。
(ああ……ここは異世界だから、吸血鬼という概念もないのか…)
霊斗は諦めたように溜息をつき、アスタルテの枕元に椅子を出し座る。
リッカは手を振りながら出ていった。
そこで、現在の状況を整理してみる。
・目が覚めたらフェンリル極東支部の病室。
・リッカに遭遇。しかも自分がゴッドイーターに適合。
・因みに、アスタルテも適合。
ここまで考えて、霊斗は頭を抱える。
「まじかよ……」
明らかにあり得ない状況ではある。
しかも。
「なんでこうなったのか思い出せない……」
まず、昼メシを食べてアスタルテとゲームを起動した。
その後が思い出せない。
自分はゲームをしていたのではないのか。
「ったく、また面倒事か……」
霊斗が溜息をつくと、アスタルテが目を開ける。
「霊斗さん……ここは?」
「起きたか。ここはフェンリル極東支部だ」
「え?それってあのゲームの……」
「いまはこれが現実だ。ゲームじゃない。あ、あと、お前もゴッドイーターに適合してるから。試験受けるか?」
「……どんな試験ですか?」
「痛い」
「……霊斗さんは受けますか?」
「ああ。もちろん」
「じゃあ、受けます」
「そうか……じゃあ、申請してこないとな。……歩けるか?」
「はい。大丈夫です」
アスタルテはそう言ってベッドを降りる。
霊斗はアスタルテを連れて病室をでる。
すると、そこには二人の男の姿が。
一人が茶髪、もう一人は金髪のゴッドイーターだ。
「あ、もう大丈夫?いや~、支部の前に二人で倒れてるからビックリしたんだよ!」
茶髪の男が笑顔で話しかけてくる。
金髪の男はそれを苦笑いで見ている。
だが、霊斗はこの男達を知っている。
「あの……藤木コウタさんと、神薙ユウさんですよね?」
「え、そうだけど……なんで?」
「よくわかったね。誰かに聞いた?」
「あ、いや。診療記録とか見て……」
「そっかそっか!あ、君もゴッドイーターになるんだよね?よろしくな!」
コウタが手を差し出してくる。
霊斗はそれを握り返しながら言う。
「よろしく。俺は、暁霊斗。こっちはアスタルテ」
「へー?なんだ、二人は付き合ってるのか?」
ユウが茶化すように聞いてくる。
それに霊斗はこう答える。
「もちろん」
「「え、マジで?」」
ユウとコウタが同時に落ち込む。
「あ、俺らは適合試験もあるんで……」
「あ、それの案内は俺達がするよ」
「あ、じゃあ、お願いします」
アスタルテに目配せすると、アスタルテは小さく頷き、霊斗の手を取る。
「……よ、よし行こう」
ユウが苦笑いしながら先に歩いていく。
しばらく歩いて、試験会場に着く。
コウタ達と別れ、会場内に足を踏み入れる。
すると、上階の眼鏡をかけた男がマイク越しに話しかけてくる。
『ようこそ、人類最後の砦、フェンリルへ』
「あ、マジでそういうの要らんので、さっさと受けていいっすか?」
『う、うむ。では始めたまえ』
男――ペイラー・榊が寂しそうに告げる。
どうやら時系列的にはエイジス崩壊後ぐらいらしい。
霊斗は目の前の台に手を載せ、神機の柄を握る。
腕に腕輪が取り付けられ、神機と接続する。
「あれ、痛くない」
霊斗は首を傾げる。
少し腕にチクチクとした感覚があったが、すぐに消えた。
霊斗は神機を持ち上げ、素振りをしてみる。
こうして実際に持っていると、以外と軽い。
アスタルテも同様に不思議そうな表情で神機を見ている。
『驚いたよ……適合率百パーセント。君たちは人間じゃないみたいだよ。まぁ、なにはともあれ頑張ってくれたまえ』
試験は終了のようなので、霊斗は会場を後にする。
その後、チュートリアル的なものを挟み、ついに部隊に配属となった。
教官――雨宮ツバキが霊斗達の紹介をする。
「本日付で第一部隊に配属となった。自己紹介をしろ」
「暁霊斗だ。まだ至らぬ点は多いと思うが、努力はしたい。よろしく」
「アスタルテです。皆さんのお役に立てるように頑張ります」
「以上だ。あとは好きにしてくれ」
それだけ告げると、ツバキは去っていった。
「お二人とも始めまして。アリサ・イリーニチナ・アミエーラです。よろしくお願いしますね」
「ソーマだ。……死ぬなよ」
「俺達は説明要らないよな!」
「橘サクヤよ。二人とも頑張ってね」
霊斗はそれぞれの自己紹介を聞きながら考え事をしていた。
(胸がでかいな……)
なに考えてんだよ。
霊斗はアスタルテの睨みによって凍りつく。
そんなこんなで、一週間が過ぎた頃、霊斗達も任務に就くことになった。
「今日のメンバーはアリサ、霊斗、アスタルテ、そこに俺が入ったメンバーで出撃する」
ユウがそう告げる。
「今回の敵はコンゴウだ。最近増えてきている。ただし、白いアラガミ――ハンニバルには注意するように」
(なるほど、今はまだハンニバルへの対策は出来ていないのか)
「そして、今回の任務だが、コンゴウ以外にも多数の小型アラガミが確認されている。できる限りこちらも排除する。……以上でブリーフィングを終わる。各自、準備ができ次第集合だ」
「「「了解」」」
霊斗はターミナルを開くと、アイテムを引き出していく。
「さて、物資の申請はこれでおしまいっと」
霊斗はそのまま神機保管庫に向かう。
途中でとある神機に目が止まる。
赤いチェンソー。
未だ行方不明、戦死扱いの雨宮リンドウの武器だ。
その隣に、霊斗の武器はある。
リッカに頼んで作ってもらったもの。
リンドウと同じ剣に盾。
そして、未だ試作品段階のクロガネシリーズのブラスト。
霊斗はそれを手にとって出撃待機所に向かう。
そこには、メンバーが勢揃いしていた。
「悪い、遅くなった」
「大丈夫だ。……よし、行こう」
ユウの言葉で、全員の心が引き締まる。
そして、移動用のジープに乗り、ミッションが開始となった。
数時間後。
目的地、鎮魂の廃寺に到着。
「各自索敵開始。対象を発見し次第信号弾で合図をしてくれ」
ユウの言葉に頷き、霊斗は待機地点から降りる。
その足で山頂に向かった。
彼を――雨宮リンドウを探すために。
霊斗は山頂の寺跡につき、散策する。
すると、仏像の裏に隠し通路のようなものがあった。
「なんだ……いや、まさかな」
霊斗はその穴をくぐり、寺跡の裏にでる。
「なんだ……これ」
霊斗がみたのは小さな小屋。
だが、霊斗には見おぼえがあった。
2のリンドウの回想に出てきた場所だ。
そっと扉をあけて中に入る。
奥へと進むと、座り込む人影が。
霊斗は息を飲む。
それは、雨宮リンドウその人だった。
まだ続くぜよ!
いや、どうしても書きたかったんだよぉ……。
じゃ、また次回!