ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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今回で完結です!
本編どうぞ。


錬金術師の帰還編Ⅷ

アスタルテが霊斗に駆け寄ってくる。

「なんで……なんで来たんですか!」

「そりゃお前、凪沙とか中等部の皆とか助けねぇと」

「私だけで充分です!余計な事をしないでください!」

「本当に充分だったのか?」

「それはっ……」

アスタルテが反論しようとするが、返す言葉もない。

今も苦戦している最中だったのだから。

だが、霊斗が悔しそうに俯くアスタルテの頭を撫でる。

「いいんだよ、お前も、皆も、全部俺が護ってやる」

「霊斗さん……」

「だから、お前は俺の伴侶でいてくれ!」

「……はい!」

アスタルテが霊斗に抱き付く。

「うわっ!あぶなっ!?」

バランスを崩した霊斗が尻もちをつく。

「ててて……全く」

霊斗は苦笑して、アスタルテを抱き上げる。

「霊斗さん」

「なんだ?」

「あの……私も戦っていいですか?」

「何言ってんだ。むしろ、戦ってもらわないとこまる」

「でも、私の眷獣は……」

「二体でもいけるだろ?」

「は……二体?」

「うん?''薔薇の指先''と''神産巣日神''じゃ足りないか?」

「いえ……あの、''神産巣日神''の方はもう……」

「あー、なんか勘違いしてないか?俺はお前との霊的径路は切ってないぞ?」

「それはつまり――」

「お前は今でもしっかり、俺の伴侶だよ」

「……」

「アスタルテ?」

霊斗がアスタルテを見ると、アスタルテは顔を真っ赤にして俯いている。

「霊斗さん……あの、皆の前で伴侶とか言われると……恥ずかしいです」

「わ、悪い……」

そんな会話をしていると、夏音が急に叫んだ。

「古城お兄さん!霊斗お兄さん!」

その声に気付いて振り向くと、天塚が鬼のような形相でこっちを見ていた。

「なんなんだ……皆でイチャイチャしやがって……僕なんて、この身体のせいで誰ともイチャイチャできなかったんだぁーっ!」

「「「「え!?怒るのそこ!?」」」」

余りに理不尽な怒りに一斉にツッコミをする。

「リア充爆発しろぉぉぉ!」

怒りの叫びと共に天塚の触手が放たれる。

「危ねぇっ!?くそっ、降臨せよ''月夜見尊''!」

霊斗が攻撃を回避しながら眷獣を召喚する。

夜の神が顕現し、天塚の分身体を闇に飲み込んでいく。

『霊斗、こんなもんかな?』

「ああ、月人、ありがとな」

霊斗が召喚を解除し、古城達の方を見ると、向こうもちょうど片付け終わったようだった。

「さて、天塚。まだ戦うか?」

「なんで……また僕の願いは叶わないのか……」

天塚の手から黄金の髑髏が落ちる。

『カカカ、愚かな……不完全な者よ』

「貴様……''賢者(ワイズマン)''!?」

霊斗が叫び、髑髏に殴りかかる。

だが、古城には見えていた。

''賢者''の口に凄まじいエネルギーが集まっているのを。

「霊斗、避けろ!疾く在れ、''獅子の黄金''!」

古城は叫びながら眷獣を召喚する。

その声に気付いた霊斗が横に跳ぶのと、''賢者''が閃光を放つのは同時だった。

「重金属粒子砲か!」

「霊斗さん!」

古城が次の攻撃を警戒し、アスタルテが霊斗に駆け寄る。

「っぐ……」

甲板に倒れ込む霊斗の右腕は、肘の辺りからごっそりなくなっていた。

「痛ぇ……」

「霊斗さん!大丈夫ですか!」

「腕以外はな……」

霊斗は痛む身体を無理矢理起こす。

「くそっ……やるな''賢者''……」

「霊斗さん……あれは''賢者''ではありません。''賢者''の一部だけです。本体は――」

アスタルテが霊斗に言うのと、フェリーの真下から''賢者の霊血''の塊が現れるのは同時だった。

『不完全な世界よ、我が一部となれ――』

''賢者''の声と共に閃光が放たれる。

「「させるかぁぁぁっ!」」

霊斗と古城が眷獣で防御する。

そして、辺りは爆発と閃光、粉塵に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

アスタルテは意識を失った雪菜と夏音を庇いながら階下へと落ちていく。

だが、その身体は床に当たる直前に柔らかい物に当たる。

「ニーナさん?」

アスタルテはその正体に気付き、呼び掛けるが、返事がない。

不安に思いながら霊斗を探す。

それはすぐに見つかった。

「霊斗さん……?」

霊斗は、アスタルテ達からあまり離れていない所にいた。

が、その腹には大穴が空いていた。

近くには血のこびりついた鉄骨が――。

「霊斗さん!しっかりしてください!」

霊斗を揺さぶると、霊斗が薄く目を開ける。

「はは……なんだこれ、めちゃくちゃ痛ぇ……」

強がったように笑う霊斗の口から血が溢れる。

「どうすれば……」

アスタルテはここまでの傷の治療はしたことがない。

その時、吸血鬼特有の回復方を思い出す。

「霊斗さん!血を吸ってください!」

「いや……それがなぁ……身体が動かないんだわ」

力なく答える霊斗。

アスタルテは一瞬考えると、霊斗の上に馬乗りになる。

「ちょ……アスタルテ?そこ、傷口……」

「これで吸えますよね?」

「……今?」

「まだ刺激が足りませんか?」

アスタルテはそう言うと、制服のボタンを外していく。

「っ!?何をしてっ!?ムグッ」

霊斗が必死で抗議するも、それは遮られた。

アスタルテが霊斗にキスをしたのだ。

「……プハッ!あ、あうぁ……」

「興奮しました?」

「……(ガバッ)」

その問いには答えず、霊斗がアスタルテを押し倒す。

「霊斗さん?」

「ごめん……我慢できそうにない」

霊斗が牙をアスタルテの首筋に突き立てる。

「あっ……霊斗さん……」

アスタルテが霊斗に強く抱き付く。

そんな二人を夏音が見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

霊斗はふと、腕に痺れを感じて目を覚ました。

「いてて……お、腕も治ってる」

そう呟いて、自分の腕の中で眠っているアスタルテを見る。

「っ!?なんでこんな格好を……」

そこまで言って、先程起きたことを思い出す。

「霊斗さん……起きましたか」

「ああ。ありがとな」

霊斗はそう言って立ち上がる。

隣にはアスタルテが寄り添う。

そして、少し離れた所には古城と雪菜がいる。

霊斗は実感した。

自分はもっと他の人に頼るべきだと。

「……行くか」

「はい!」

霊斗はアスタルテを連れて古城達と合流する。

甲板に開いた穴からは''賢者''が見える。

その''賢者''を睨み付けて古城が言う。

「テメェみたいなやつが完璧なわけがねぇ。確かに俺達は不完全だ。でもな、皆で集まれば完璧なんかよりも、不完全な方がいいって思えるんだ!だから、俺はお前をぶっ倒す!ここから先は第四真祖(オレ)戦争(ケンカ)だ!」

古城がそう言うと、隣に雪菜が立って言う。

「いいえ、先輩。私達の聖戦(ケンカ)です!私も、あなた達を許す気はないです!」

雪菜は銀の槍を天塚に向ける。

そこに霊斗が割り込む。

「ちょっとお二人さん、俺達のことも忘れんなよ?」

「霊斗さんの言う通りです……始めましょう、私達の迎撃戦(ケンカ)を」

アスタルテが言うと、古城が眷獣を召喚する。

「''獅子の黄金''!」

雷光の獅子が''賢者''に突撃する。

それと同時に雪菜が天塚に攻撃を仕掛ける。

その光景をみた霊斗は、アスタルテの手をとる。

「行くぞ、アスタルテ」

「はい、霊斗さん」

二人で気持ちを一つにする。

亡霊の吸血鬼(ロストブラッド)の魂を宿し者、暁霊斗が汝を天界より呼び起こす!降臨せよ、五番目の眷獣、''伊邪那岐命''!」

霊斗が召喚したのは国産みの男神。

さらにアスタルテが頭上に右手を掲げる。

「亡霊の吸血鬼の魂を宿し者、暁霊斗の伴侶が汝を天界より呼び起こす!降臨せよ、六番目の眷獣、''伊邪那美命(イザナミ)''!

アスタルテが召喚したのは国産みの女神。

この二体は対となる存在。

真祖と伴侶が同時に使うことで真価を発揮するのだ。

その二体の槍が''賢者''を貫き、動きを止める。

『何故だ!何故、完全なる我の身体に傷をつけられる!?』

「わかんねーのか?テメェが人工の神でもなぁ、こっちは本物なんだよ。格が違うんだよ!やれ、古城!」

「ああ!焔光の夜伯(カレイドブラッド)の血脈を継ぎし者、暁古城が汝の枷を解き放つ!疾く在れ(きやがれ)、十一番目の眷獣、''水精の白鋼(サダルメリク・アルバス)''!」

現れた水精が''賢者''を海に引きずり込む。

『消える……完全なる我の身体が消える……』

この眷獣は物質の時間を戻す。

つまり''賢者''も、原子まで分解されるということ。

『カカカカ……は……と……めの……』

''賢者''は何かを言い残して消滅した。

これで、すべて終わったのだ。

「ふぅ……終わった……」

霊斗は座り込んだ。

「なぁ、アスタルテ」

「なんですか?」

「明日、出掛けるか。多分休みだろ」

「はい!行きましょう!」

アスタルテは霊斗の隣に座る。

二人の日常が戻って来たのだ。




この章はこれで終わりです。
ではまた次回!

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