ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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書きまーす。


錬金術師の帰還編Ⅴ

霊斗、古城、ニーナは古城の部屋で作戦会議をしていた。

何故リビングでは無いのか。

それは、凪沙が夕飯を作っている最中だからである。

「で、どうする?」

「なぁニーナ、霊血ってまた造れないのか?」

「そうだな……この身体の体重と同じだけの黄金、銀、レアメタル各種に水銀九百リットル。そこに霊能力者一四、五人ほどいれば造れるぞ」

「無理だろ!?」

「霊能力者はなんとかなるとしても各種貴金属がなぁ……」

「いや、人道的問題があるだろ」

「大丈夫だ古城、俺達は人間じゃないから」

「ああそうだったな!知ってたよ!」

「まあ、冗談だ。探すなら……那月ちゃんに頼むしかないか……」

「那月というと……あの''空隙の魔女''か」

「知ってるのか?」

「うむ、欧州で名を馳せたと聞いているぞ。確か''魔族殺しの南宮那月''と呼ばれておったか」

「ふーん……那月ちゃんも有名人だな」

霊斗がそう言うと、古城が電話の子機を持ってくる。

「霊斗、那月ちゃんの電話番号わかるか?」

「ああ……ほら、このメモに書いてある」

「サンキュ……」

「出ない気がするけどな」

「……出ねぇ」

「やっぱりな」

「じゃあ、どうする?……ニーナ?」

「すー……すー……」

「寝てんじゃねぇ!」

「ぬ……妾としたことが、ついうたた寝をしてしまったようだな」

「「嘘つくな!がっつり寝てたわ!」」

霊斗と古城が同時に叫ぶと、ドアをノックする音がして、凪沙の声がする。

「霊斗君、古城君、浅葱ちゃん、夕飯できたよ」

「ああ、今行く」

霊斗が答えると、凪沙がドアの前から離れて行く気配がした。

「よし、ニーナ。余計な事は喋るなよ。喋ったら……」

「よかろう。お主らの会話である程度はわかったからな、その成果を見せてやろう」

ニーナが胸を張りながら言う。

((この自信はどこから沸いてくるんだ……))

ますます不安になる古城と霊斗だった。

しかし、気を取り直してリビングに向かう。

「お、グラタンか」

「そうだよ!じゃんじゃん食べてね!」

「姫柊もいるのか」

「お邪魔してます」

雪菜が挨拶しながら皿を並べていく。

そこで霊斗は違和感を覚える。

「なあ、なんで皿が五枚しかないんだ?」

そう、普段の暁家に二人分足したら六枚のはずである。

「ああ、アスタルテちゃんがね、今日は南宮先生の所に泊まるって」

「なんでまた急に?」

「さぁ?あ、なんかすっごい落ち込んでたけど、霊斗君、ケンカした?」

「……」

霊斗は古城を見る。

「……(スッ)」

目を逸らされた。

次に雪菜を見る。

「……?」

まず状況を理解していなかった。

ニーナは使いものにならないのはわかっているのでスルー。

(やべぇ……俺の味方は一人もいない……)

霊斗のシャツは冷や汗でびっしょりだ。

仕方ないので、正直に言う。

「えっと……ケンカというか、俺が一方的に心無い言葉を浴びせたというか……」

「霊斗、目が泳いでるぞ」

「……今から謝ってきます」

「あ、うん。グラタン、冷蔵庫に入れとくね」

凪沙が苦笑いしながらグラタンを冷蔵庫に入れる。

「すまん……行ってくる」

霊斗は玄関に向かい、空間転移する。

 

 

 

 

 

 

 

とある高級マンションの地下駐車場。

ダクトから水銀のようなモノが落ちてくる。

それは、だんだん人の形になっていく。

「叶瀬夏音……待ってろよ……」

狂気の笑みを浮かべながら現れたのは天塚汞だった。

だが、その笑みが怪訝そうな表情に変わる。

彼の視線の先には二人分の人影があった。

「まるでター〇ネーターみたいな登場だな、天塚汞」

高圧的な口調で言ったのは那月だった。

それと同時に無数の鎖が天塚を縛る。

「へぇ……あんたは血も涙もない人だと思ってたけど……訂正するよ」

天塚はそう言うと身体を液体金属に変化させて鎖をほどく。

「またグニャグニャと……マジシャンにでもなったらどうだ?天塚汞の切れ端」

「バレてたのか……マジシャンの方は依頼を完遂したら考えてみるよ」

天塚が再びダクトに逃げようとするが、それらは結界によって弾かれる。

「残念だが退路は断ってあるぞ」

「だったら……その身体を壊すだけさ!」

天塚が胸の石を砕き、完全に液体化する。

「ふん、下らん冗談だ。―――やれ、アスタルテ」

「はい。――降臨せよ(エクスキュート)''薔薇の指先(ロドダクテュロス)''」

先程から待機していたもう一人の人影はアスタルテだ。

そのアスタルテが眷獣を召喚する。

だが、普段と違う所があった。

召喚されるゴーレムがアスタルテを体内に取り込まないのだ。

「喰ってください''薔薇の指先''」

アスタルテが命じると、ゴーレムが天塚だった液体金属を蹂躙していく。

『グオォォォォォォォ!』

液体金属が苦悶の咆哮をあげ、やがて力尽き、ただの金属に変わる。

「完了しました」

「ふん、修業の成果は出ているみたいだな」

那月はそう言うと結界を解除する。

すると、誰かが駐車場に転移してくる。

「那月ちゃん!(ボキッ)腕の骨がっ!?」

「何のようだ?霊斗」

現れた直後に腕を折られたのは霊斗だった。

「痛ってぇ……那月ちゃん、加減してよ(ゴキッ)足の骨がっ!?(ズルッ――ビタン)オグァッ!」

懲りずに那月ちゃんと言うので身体の傷が増えていく。

「でさー、那月ちゃん。アスタルテ来てない?」

「なぜそこまでの傷で普通に喋れるのかはわからんが……アスタルテならそこだ」

「え?」

霊斗が芋虫のように方向転換すると、そこには巨大なゴーレムが――

「あ、詰んだ」

「早とちりにも程があるだろう」

那月に言われてゴーレムをよく見ると、足元の影にアスタルテが隠れていた。

「アスタルテ!」

「(ビクッ――ガタガタガタガタガタガタ)……」

「え、なんであんな震えてんの?〇鬼のた〇しぐらいじゃん」

「お前のせいだろう」

「え――あ……」

霊斗がその原因を理解する。

「その……アスタルテ、朝は俺が悪かった。本当にごめん」

「霊斗さん……怒ってませんか?」

「ああ、怒ってない。折れてるけど」

「ぜんぜん上手くないです……」

アスタルテはそう言うと眷獣の召喚を解除し、霊斗の近くに行く。

「まったく……霊斗さんは仕方ない吸血鬼(ひと)ですね」

「それ、雪菜が前に言ってなかったか?」

「そうでしたか?」

霊斗とアスタルテは笑い合う。

「で、アスタルテ。本題なんだが――」

「はい、なんですか?」

アスタルテが頬笑みながら聞く。

だが、次の霊斗の一言でそれは消えた。

「もう別れよう。血の伴侶も契約を切る」

「え……霊斗さん?冗談……ですよね?」

「俺は本気だ」

「そんな……嘘……だって……嘘だって……言ってください……」

「俺なりに考えた結果だ。わかってくれないか?」

「……さんの」

「え?」

「霊斗さんの……バカ……」

アスタルテはそう言いながらマンションから走り去った。

「良かったのか?あれで」

「ああ。それがアスタルテの為……アスタルテを危険に巻き込まないためだ」

「そのわりには随分と情けない顔をしているんだな」

「はは……言わないでくれよ」

霊斗は苦笑いしながら那月に言うが、内心では別の事を考えていた。

走り去るアスタルテを見て。

走り去るアスタルテの涙を見て。

本当にこれで良かったのか。

(いいんだ……これで)

疾く在れ(とくあれ)''〇〇〇〇〇''」

霊斗は事前に過適応能力で入手していた第四真祖の眷獣で、アスタルテとの霊的径路を切断する。

「那月先生、ごめん、みっともない所を見せて」

「ふん、精々うまくやれ。私は帰る」

那月はそう言うと空間転移で姿を消す。

それを見て霊斗は、糸が切れたように座り込む。

しばらく、そのままだった。

まるで罪人である兄を異界へと追放した弟のように。




まあ、ネタバレは防ぐべきだよね。
というわけでね、途中は伏せ字になってます。
ではまた次回!

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