ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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最近書くことがない。
本編どうぞ。


錬金術師の帰還編Ⅲ

霊斗は鎖でギチギチに縛られた状態で目を覚ました。

「くそ……あいつら……」

霊斗が溜息をつき、力を入れて鎖を千切ろうとする。

「無駄だよ、霊君の力じゃ千切れないよ。ただでさえ弱ってるんだから、大人しくしてたら?」

「天音……あいつらに言われたのか?」

「違うよ。古城君とアスタルテちゃんは普通の鎖で縛っただけ。それを私が特別製のに変えただけだよ」

「離せ。今すぐにだ」

「ふふ、今の霊君が私を支配できるかな?」

「テメェ……」

「時間が無いのはわかってる。それを隠したいのも、霊君が本当の事を言えないので苦しんでるのもわかるよ」

「だったら……」

()()。お前が我の力を喰らうには優秀な従者が必要だと、強い絆が必要だと言ったはずだ。一度手に入った従者を捨て、我に喰らわれるのを望むか?」

「っ!……お前に……お前に喰らわれるなんて御免だ」

「だったらなぜ自ら捨てようとする?お前は従者を戦いに巻き込みたくないだけだろう?」

「俺は自分の大切な人が死ぬのは見たくない」

「それは''獅子王機関の剣凰''としてのお前の言葉か?それとも''第五真祖''としてのお前か?」

「それは……」

「ふん、まぁ精々考えるがいいさ。ただし、今回の件に関われば残された時間は更に減るぞ」

「構わない。あいつを守る為なら……俺は死んだっていい」

「そうか。その選択が間違っていないといいな」

「なに?」

「いや、気にするな。年寄りの戯れ言さ」

そう言って天音は消えた。

霊斗は茫然としていたが、枕元にあった携帯が光っているのを見て、画面を確認する。

「ん?師家さまから?」

内容は簡単だった。

''出張所に来い''

「拒否権は……ないだろうな」

霊斗は溜息をついて空間転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古城はもう一度雪菜に聞く。

「なあ、殺されたりしないよな?」

「さっきから……先輩は獅子王機関をなんだと思ってるんですか……」

雪菜に聞かれて、古城は正直に答える。

「国家公認ストーカー」

「殺していいですか?」

「全くだ。最低な認識だぞ」

「げっ!?霊斗!?」

「なんだその反応。殺すぞ」

「いや、すまん」

「いいさ。それより、八つ当りしちまって悪かったな」

「それならアスタルテに言ってやれ。ずっと落ち込んでたんだからな」

「わかった。じゃあ、行くか」

「霊斗さんも呼び出されたんですか?」

「ああ。メールでな」

「雑だな」

三人は雪菜を先頭にして店内に入っていく。

「いらっしゃいませ」

「ん?……き、煌坂?」

「いや、式神だな」

「師家さまの式神ですね。と、いうか先輩。胸ばかり見すぎです」

「古城は変態だなぁ(ギチュ)」

「にぎゃぁぁぁぁ!目が、目がぁぁぁぁ!」

「霊斗さん!?本気の目潰しは殺りすぎです!」

「回復するし、大丈夫だろ?」

「ぐぁぁぁっ!くそっ!目が見えねぇ!(ムニュ)ん?なんだこれ」

「先輩……」

「おー、古城、大胆だなー」

「え?だからこれなに?(ムニュムニュ)」

「ひあっ!?せ、先輩!いい加減にしてください!」

「古城のスケベー。雪菜に言ってやろー」

「それは勘弁してくれ!で、これは……お、目がやっと…………(ササッ)」

「先輩」

「はい」

「ちょっとドア側に行ってください」

「お、おう」

雪菜に言われて古城が移動する。

「先輩」

「なんでしょうか」

「歯を食い縛ってください」

「待ってくれ!暴力確定じゃねぇか!」

「歯を食い縛ってください」

「は、はい」

古城が痛みを覚悟して目を瞑ると、雪菜の手が古城にそっと触れる。

「ひ、姫柊?」

(ゆらぎ)よ――!」

「ぐぼごげがぁっ!?!?!?!?」

古城が痛みに蹲り呻いていると、新たな声が割り込んできた。

「なんだい?騒々しいねぇ……」

「師家さま!」

「雪菜に霊斗、来たかい」

「姫柊雪菜、只今参りました」

「雪菜は相変わらず固いねぇ……」

「よっす」

「こっちの馬鹿は相変わらず礼儀がなってないねぇ……」

「……誰?」

「あんたが第四真祖かい?」

「ああ。一応な」

「雪菜が世話になってるね。あと、その馬鹿は躾といてくれるかい?」

「わかった」

「わかるなよ」

つっこむ霊斗を一瞥すると、師家――式神だが――は雪菜を見る。

「雪菜、槍は?」

「はい、ここに」

雪菜が槍を差し出すと、師家は槍を見る。

「ふむ。とりあえずは合格点だね。だけど、霊視に頼りすぎるんじゃないよ」

「はい」

「霊斗。あんたは手を出しな」

「は?槍じゃねぇの?」

「敬語を使いな。あんたの侵食の進み具合を診てやるって言ってるんだよ」

「じゃあ、はい」

霊斗が手を出すと、式神は腕の上に飛び乗る。

「ふむ……だいぶ進行しちまってるね。しばらくは力を使うのは控えな」

「それは無理だ。まだ片付いてない問題があるんでな」

「そうかい……だったら、吸血鬼の力じゃなくて、槍を使いな。そっちなら大丈夫だよ」

「わかった。善処する」

霊斗がそう言った時だった。

古城の携帯が鳴り始める。

「誰だ?」

ディスプレイには浅葱の名前が表示されていた。

 

 

 

 

 

 

 

浅葱は修道院の周りを歩きながら電話を掛けていた。

『もしもし、浅葱か?』

「あ、古城?あんた今どこに居んの?」

『西地区の六号坂あたりの店だ。姫柊の知り合いが店やってるんだ』

「ふーん。じゃあ、今暇?」

『ああ。暇っちゃあ暇だな』

「じゃあさ、ちょっと頼みがあるんだけど……」

『なんだ?』

「あんたがあたしにくれたピアス、覚えてる?」

『ああ、お前の誕生日に、無理矢理買わされたやつな』

「で、それを片っ方落としちゃったみたいなのよ。今修道院の周りを探してるんだけど……」

『ば、馬鹿!なにやってんだお前!』

「はあ?なに言ってんの?」

『今日も特区警備隊がいただろ!危ないから帰れ!』

「……わかったわよ。あと一周したら帰る」

『今すぐに帰れ!』

古城が怒っているが、浅葱はピアスを探す。

すると、急に地響きが襲った。

『浅葱!?なんだ今の音!』

「わかんないけど……なにこれ……」

古城が切羽詰まった声で聞いてくるが、浅葱はとあるものを見ていた。

それは不定形のスライムのような生物だ。

「あれ?」

逃げようとした浅葱の耳に聞こえてきたのは男の声だった。

「見られちゃったか……じゃあ、死んでもらうしかないね」

「え?」

男の言葉を認識した瞬間、浅葱の身体は宙に舞っていた。

「嘘……古城……」

浅葱は最後に一人の少年の名前を呼ぶ。

彼女の指先では、赤い宝石の破片が夕日を反射していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!通じねぇ!」

「まずいな……師家さま、式神借りるぜ!」

「好きにしな」

「古城!雪菜!行くぞ!」

霊斗は空間転移で修道院跡に跳ぶ。

そこには、血塗れで倒れる浅葱が――。

「嘘……だろ」

「浅葱……」

「藍羽先輩……」

古城が浅葱を抱き抱えるが、浅葱は目を開けない。

誰が見てもわかる。

浅葱は死んでいる。

「俺のせいだ……」

「先輩?」

「俺が浅葱をここに連れてきたから!無関係の浅葱を巻き込んじまった!」

「古城!落ち着け!」

古城の身体から魔力が噴き出す。

「雪菜!下がってろ!」

「霊斗さん!?」

古城の魔力の嵐に、霊斗が飛び込んでいく。

「ぐっ……」

しかし、古城の魔力が霊斗の皮膚を切り裂いていく。

さらに古城の身体の周りの重力が強くなり、雷撃が発生する。

「ぐぁぁぁっ!」

「霊斗さん!危険です!」

「うぐっ……天……照!」

霊斗が眷獣を召喚するが、弱っている霊斗では勝てるわけがない。

「古城!目を覚ませぇぇぇぇ!」

しかし、霊斗の声は届かない。

霊斗の眷獣が消滅し、霊斗が膝をつく。

「ゲホッ!」

「霊斗さん!」

「雪菜!浅葱を連れて隠れてろ!」

霊斗が浅葱を雪菜の元に転移させる。

「でも、藍羽先輩は……」

「まだ生きてる!いいから!」

雪菜が離れたのを確認して、霊斗は吸血鬼の力をフルに解放する。

「うぐ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

霊斗の瞳が真紅に染まり、それが段々黒みがかってくる。

「ぐっ……古城!いい加減に……目を覚ませぇぇぇぇ!」

霊斗が眷獣を解放する。

「アマテラス!ツクヨミ!スサノオ!」

眷獣が古城の魔力を押さえ込んでいく。

そして霊斗は古城に近寄り――

「古城!浅葱は生きてる!だから、正気に戻れ!」

「霊……斗……」

「落ち着いたか?」

「俺は……」

「いいんだ。誰も怪我してないから」

霊斗が古城に手を貸して立ち上がらせていると、雪菜が浅葱を抱えて戻ってくる。

「先輩……」

「悪い、姫柊」

「いえ……それより……」

雪菜はそう言って振り替える。

「あれ?この前の吸血鬼二人組じゃないか」

「天塚……汞」

「どいてよ。僕は回収しなきゃいけない物があるんだよ」

「黙れ、錬金術師もどき」

「なに……?」

「その肉体。本体じゃないだろ。''賢者の霊血''でも使ってんのか?」

「へぇ……なかなか鋭いね……じゃあ、もうこの姿の意味はないね」

そう言った天塚の輪郭が崩れ、不定形のスライムになっていく。

しかし、霊斗は余裕な表情で槍を振る。

……どこからだした。

「霊斗?」

「あいつは俺がやる」

霊斗はそう言って槍を構えスライムに向かって突っ込む。

『オォォォォォ!』

「消えろ、バケモノ」

霊斗が槍を突き立てると、霊血の術式が解除され、動きが止まる。

「終わったのか?」

「……ああ」

「霊斗さん、ありがとうございます」

「ああ。いいよ」

霊斗が座り込むと、聞き慣れた声がした。

「いたた……あれ?古城?」

「浅葱?」

「どうしたのよ……ってうわ!なんであたし血塗れなの!?」

「まあ、無事で何よりだ」

「だな」

霊斗と古城は顔を見合せて笑った。

浅葱は不思議そうにしていたが、霊斗と古城は気にせずに笑った。

友人の生還を喜ぶ笑いだった。




さあ、霊斗の過去に向けて複線を張っていきます。
ではまた次回!

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