ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

67 / 127
今回でこの章は完結です。
では本編をどうぞ。


観測者の宴編ⅩⅢ

霊斗は、夕暮れの校舎を駆けていた。

「クソッ!どこにいるんだよ!」

すると、外から強力な魔力の波動を感じた。

「っ!これは……やっと来たか!」

霊斗は窓を開けて校庭に飛び出した。

そこでは、古城が雪菜とサナを助けだし、阿夜と対峙していた。

「平然と私の世界に入ってくるとは……いや、もう少し前に別の侵入者がいたか……」

「……お前、バカだろ?」

「何……?」

「いや、だってここ、俺らの学校だからな?侵入者はお前だからな?」

「ぬぅ……」

「古城の言う通りだ。さて、古城。今の感情といつもの決め台詞をどうぞ」

「ああ。俺は――いや、俺達は猛烈に頭にきてんだ。いますぐテメェをぶっ飛ばして、楽しい祭の続きに戻ってやる!ここから先は第四真祖(オレ)戦争(ケンカ)だ!」

「いいえ、先輩。私達の反撃(ケンカ)です!」

雪菜と古城が並んで阿夜を睨む。

「姫柊……?」

「先輩は仕方ない人なので、もう許してあげます」

「雪菜も甘いなぁ」

「霊斗さんは黙ってください」

「へーいへい……で、アスタルテ。もう大丈夫か?」

「はい。でも霊斗さん……吸血鬼の力は……?」

「大丈夫だ。古城、少し任せる」

「……おう」

霊斗はアスタルテを連れて校舎内に入る。

階段を昇り、校庭に面した三階の教室に入る。

「ここならいいだろ」

「霊斗さん……?」

「アスタルテ、血を貰ってもいいよな?」

「だから、霊斗さんは吸血鬼の力が……」

「戻ってるんだよ。若い世代レベルだけどな」

「でも……どうやって……?」

「過適応能力だよ」

「霊斗さんが……過適応者(ハイパーアダプター)?」

「まあ、詳しいことはそのうち説明する」

「はぁ……。まぁ、いいですよ」

「じゃあ……ってうわぁぁっ!?」

霊斗がアスタルテを押し倒す。

同時に窓が爆砕する。

「古城……ヤロォ……」

「あの、霊斗さん……手が……」

「ん?」

アスタルテの声に霊斗が我に帰ると、霊斗は自分がアスタルテを押し倒した上、胸を触っていることに気づく。

「っっっ!?」

それに気付いた次の瞬間、霊斗をこれまでに感じたことのないくらい強い喉の渇きを覚えた。

「霊斗さん……?きゃっ!?」

吸血衝動のままに霊斗はアスタルテを抱きしめる。

「れ、霊斗さん……」

「アスタルテ、血、貰うぞ」

そう言うと、霊斗はアスタルテの首に牙を突き立てる。

すると、霊斗の体が段々と元に戻っていく――。

「霊斗さん……体が……」

「ああ。これが俺の新しい眷獣の力だ」

霊斗がアスタルテを抱き上げ、立ち上がる。

「行くぞ!」

「はい!」

霊斗は窓から身を踊らせる。

校庭には魔女の最終形態、''堕魂''となった阿夜の姿が――。

亡霊の吸血鬼(ロストブラッド)の魂を宿し者、暁霊斗が汝を天界より呼び起こす!」

霊斗の瞳が深紅に染まり、腕からは血の霧が噴き出す。

「降臨せよ!五番目の眷獣、''伊邪那岐命(イザナギ)''!」

霊斗が召喚したのは国産みの神の一柱。

「古城!合わせろ!」

「ああ!疾く在れ(きやがれ)、''獅子の黄金(レグルス・アウルム)''!」

霊斗の神の矛に、古城の災厄の雷が加わる。

「「うぉぉぉっ!いっけぇぇぇぇ!」」

二人の真祖の攻撃が悪魔の炎を弱める。

「獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る――」

そこに走り込んだのは雪菜だった。

雪菜の祝詞に反応して、槍が輝きを増す。

「破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」

雪菜の槍が悪魔の炎と阿夜の接続を断ち切る。

そこに――

「よくやった貴様ら!」

記憶が戻っていた那月が鎖を放ち、炎から阿夜を引きずり出す。

そして、悪魔の炎は消え、闇誓書の効果が消える。

「終わった……か」

「ああ……古城、眷獣戻せよ」

「そうだな……」

古城が眷獣の召喚を解除すると、島が色を取り戻していく。

そして、朝日が皆を照らし出す――

「「ぎゃあぁぁぁ!?あっちぃぃぃぃ!?」」

古城と霊斗は相変わらず焼かれていた。

いい雰囲気が台無しだが、雪菜は実感していた。

これが、自分の取り戻したかった日常なのだと。

 

 

 

 

 

霊斗とアスタルテは祭の屋台を回っていた。

「たまにはこういうのも、悪くないな」

「何を言ってるんですか。本当は楽しいんでしょう?」

「あ、バレた?」

「霊斗さんの考えくらい、わかります」

「そうか……お、金魚すくいだな。何年ぶりだろうな……」

「金魚……ですか?……小さくて可愛いですね」

「よし、俺が捕ってやるよ。おっちゃん、一回」

「あいよ」

屋台のおじさんにポイを受け取って、霊斗はしゃがむ。

「……ふぅー……」

「……(わくわく)」

「……そいっ!」

霊斗が掛声と共に、金魚をすくいあげる。

その後も何匹か捕まえ、五匹目をすくったところでポイが破れた。

「あー……」

「霊斗さん……すごいです……」

「そうか?……なんか照れるな……」

霊斗は頭をかきながら歩き出す。

アスタルテも隣についてくる。

「お、そろそろ時間だな。行くか」

「じゃあ、お願いします」

霊斗は空間転移を使って、古城達との集合場所に跳ぶ。

待ち合わせの場所に着くと、海の方で花火が上がった。

「綺麗だな……」

「本当ですね……」

すると、霊斗がアスタルテに無言で金魚の袋を渡す。

「これは……」

「捕ってやるって言ったろ」

「私に……?」

「そうだよ。可愛いって言ってたろ?」

「はい……ありがとうございます」

そう言うとアスタルテは、霊斗の腕を引いて岸壁に向かって歩き出した。

すると、次の瞬間。

「ちゃんと私の傍にいてください!」

「「……」」

「傍にいろって……花火大会が終わるまでか?」

「この先もずっとです!」

「「oh……」」

霊斗とアスタルテは衝撃のシーンを目撃した。

明らかに雪菜の告白シーンである。

隣では浅葱に紗矢華、凪沙が硬直している。

それに気付いた雪菜があたふたと言い訳をする。

「雪菜……おめでと」

「雪菜さん、ファイト!」

「だから……違うんですーっ!」

雪菜の絶叫が夜の街に響き渡った。

霊斗はそれを見て思った。

こいつら、弄り甲斐あるな。と。

これは祭最後の夜の、誰も知らない一幕である。




完・結!
霊斗の過適応については、過去編で詳しく書きます。
ではまた次回!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。