ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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書きまーす。
本編どうぞ。


観測者の宴編ⅩⅡ

古城は耳元で鳴る異音で目を覚ました。

どうやら誰かが自分の頬を叩いているようだ。

「なんだよ……痛ぇな……」

古城は起き上がろうとするが、腹部の激痛に呻きながらまた倒れ込む。

「ぐうぅぅっ……なんだこれ、半端なく痛ぇ……」

「当たり前だ。真祖の力が消えて傷が治ってねぇんだからな」

古城が悶絶していると、幼い声が聞こえた。

「なんだ霊斗……戻っちまったのか……」

「呪いが消えた訳じゃなくて、一時的に眷獣で治っていたのが、吸血鬼の力が消えたお陰で戻っちまったんだよ」

「そうか……ここはどこだ?アスタルテは大丈夫か?」

「寝てる。血の従者の契約の為の霊的径路が途切れた影響でな……それと、ここはただのフェリーターミナルだ。それよりも、人の心配してる場合か?それ、ほっといたら死ぬぞお前」

「ああ……でもどうやって治すか……」

「血でも吸っとけよ」

「できるわけねぇだろ!?痛っ……」

「できるぞ。俺と違って、お前は完全な真祖だからな。きっかけさえあれば治せる」

「でもそのきっかけがなぁ……」

悩む古城。

そこに、紗矢華がやってくる。

「じゃ、じゃあ……興奮すればいいんじゃないの?……霊斗はあっちでアスタルテさんの看病してて!」

「お、おう」

霊斗はアスタルテのもとに行く。

「霊斗……さん……」

「大丈夫だ。すぐ治してやるからな」

「霊斗さんは……平気ですか……?」

「大丈夫だ。ただの人間になっちまってるけどな」

「そう……ですか……」

「ああ。だから今は体力の回復に努めろ」

「はい……」

弱々しく答えると、アスタルテは目を閉じた。

そして、霊斗が立ち上がるとフェリーターミナルのドアが勢いよく開いた。

「やあ霊斗。古城は無事かい?」

「優麻か。死にかけてるけど、紗矢華といちゃついてるぞ」

「そうか……じゃあボクも混ざってくるよ」

「優麻……傷は……」

「これくらいなら大丈夫。古城を復活させてくるよ」

「……優麻」

「なんだい?」

「古城とアスタルテと紗矢華のこと、頼んだぞ」

「え……?ちょ、ちょっと霊斗!?」

優麻に皆を任せると、霊斗は外に飛び出した。

「阿夜……もう一度、テメェを止めてやる……!」

霊斗は彩海学園に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

夕暮れの校舎。

雪菜はそこにいた。

とある教室の中に、三人ぶんの人影があった。

「那月、霊斗。私と共に来い」

阿夜が告げる。

だが

「嫌だ。僕は犯罪者の仲間になんかならない」

幼き日の霊斗が阿夜を睨む。

その瞳が深紅に染まる。

「私もこのガキと同意見だ。阿夜、お前が犯罪を起こすならば、力ずくでも止める」

当時高校生だった那月も、阿夜を拒絶する。

「私を拒み、この島を守るのか……」

「ああ。ここが……この島が私の居るべき場所だ」

「ならば小僧。お前は何を守る?」

「僕はこんな島はどうだっていい。那月ちゃんが守るから、僕がその手伝いをするだけ……この島に来た僕を暖かく迎えてくれだ那月ちゃんの為に!」

霊斗の言葉に阿夜の表情が歪む。

そして、阿夜が自らの守護者を召喚する。

それに対抗するように、那月も守護者を出す。

霊斗が槍を構え直すが、霊斗が手を出すまでもなかった。

一瞬で勝負が着き、阿夜は監獄結界に送られた。

これは十年前の戦いの記憶――。

 

雪菜の目の前から全ての幻影が消滅し、夕暮れの教室だけが残る。

「これは……」

新たに現れたのは教室でトランプをする皆の姿。

古城が驚くほどの引きの弱さでババを引き続けている。

そして、雪菜に気がついた紗矢華が雪菜を呼ぶ。

「雪菜ー!一緒にやらない?」

「紗矢華さん……?」

「雪菜、どうした?……ってこんな時間か。古城、部活行くぞ!」

「うわっ!やべぇ!遅れたら殺される!」

「霊斗さんに先輩……部活を……?」

「どうしたんだ姫柊?前からやってただろ?」

「雪菜さん、私達も行きましょう」

紗矢華とアスタルテが雪菜の腕を引く。

「……こんなの……違う……」

雪菜は呟く。

こんな日々を夢見たこともあった。

でも、やっぱり今までと同じ生活の方がいい。

いやらしい先輩と、頼もしいけどアスタルテに弱い霊斗。

でも、そんな皆で困難に立ち向かうほうが――。

「そのほうが、数百倍楽しいに決まってます!――雪霞狼!」

神格振動波の光が幻影を打ち消す。

そこにはサナと阿夜しかいない。

「いまの世界、それを現実にもできるぞ?」

「私は、世界最強の吸血鬼の監視役です。今更普通の生活なんて、退屈すぎてできません」

「そうか……ならば、この世界を変える瞬間を見ているがいい。歴史の観測者としてな……」

阿夜はそう言って笑った。

校舎が揺れる。

絃神島の崩壊は、目前に迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

霊斗は、彩海学園の校門前にいた。

「くそっ……結界が張られてやがる……」

阿夜の張った結界の中に入るには、吸血鬼の力か、氷牙狼が必要だ。

だが、どちらも使うことはできない。

「どうしろってんだよ……」

霊斗がなすすべもなく地面に膝をついたとき、異変に気付いた。

街が銀色の霧に包まれている。

否――

「街が……霧になってる?……ああそうか……やっと来るか」

霊斗は立ち上がると、校舎を睨む。

そして、霧を吸い込む。

「よし……」

霊斗の瞳が深紅に染まった。

疾く在れ(とくあれ)――''龍蛇の水銀(アル・メイサ・メルクーリ)''!」

霊斗が手を突き出すと、その手から小さな双頭龍が現れる。

それを使って、結界に穴を開ける。

霊斗はそこから校舎に向かって走った。

哀しき魔女の悪夢を終わらせる為に――。




あー疲れた……。
そろそろ終わりそうかな……。
ではまた次回ー。

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