ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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しばらく更新できず申し訳ありませんでした。
心に深い傷を負ってしまってな……。
なんて茶番は置いておきまして、本編をどうぞ。


観測者の宴編ⅩⅠ

古城が船の方を見ていると、霊斗が声を掛けてきた。

「どうした古城、ホモが気になるのか?」

「ああ………いくらヴァトラーでも、龍殺し(ゲオルギウス)相手で大丈夫なのかなって思ってな……」

「大丈夫だろ、いくら龍殺しの一族とは言っても所詮は人間だ。貴族が負ける訳がない」

「そう……だよな。今は島の被害だけを気にしよう」

古城がそう言って雪菜達の方を向く。

が、雪菜は目を合わせない。

古城が困った表情で頭を掻く。

すると、そこに新たな人影が現れた。

「おうおう。だいぶ出遅れちまったなぁ」

現れたのはシュトラ・Dだった。

彼は雪菜を見ると、獰猛に唇の端をつり上げた。

「お、さっきの奴じゃねぇか。テメェには借りがあるからな!さっさとくたばれ!」

シュトラ・Dは腕を勢いよく振り下ろす。

雪菜は突然の事に反応できない。

だが、雪菜に攻撃が当たることはなかった。

「私の雪菜になにするのよ!このサイコパスチリチリ頭!」

紗矢華が''煌華麟''で不可視の斬撃を防いだのだ。

「なんだテメェは……人を斬新な悪口で散々言いやがって!先にテメェからぶっ殺してやる!」

シュトラが怒りに震えている隙に紗矢華は雪菜達に言う。

「こいつは私が殺るわ。雪菜は霊斗と一緒にサナちゃんを守って!すぐに追い付くわ」

雪菜は紗矢華に向かって首肯くと、サナの手を引いて走り去る。

それに続けて霊斗、古城も離れて行った。

しかし、アスタルテだけはその場に残っている。

「なにやってるの!?早く行って!」

「私も残ります。あなただけに任せることはできません」

「……わかったわ。バックアップをお願い」

「はい」

アスタルテは答えると、自らの手に剣を出現させる。

「……それはなに?」

「眷獣の力を一部だけ取り出して作った剣です」

「……見ためが煌華麟そっくりなのは?」

「目の前にモデルがあったので」

「あ、そう……」

そんな会話をしていると、シュトラが気の抜けた声で聞いてくる。

「なぁ、そろそろ始めていいか?」

「いいわよ、ご自由にどうぞ」

「じゃあ遠慮なく行くぜ!食らえ!」

シュトラが腕を振り、不可視の刃をいくつも生み出す。

だが、すべて煌華麟によって打ち落とされる 。

「なんだその剣!空間切断の模造品か!」

「模造品とか言うな!切り殺すわよ!このブタ!臭いから喋らないで!」

「臭くねぇだろ!?テメェ……調子に乗りやがって!」

シュトラの表情が怒りに染まり、それに呼応するように攻撃のスピードが上がる。

「くっ……」

紗矢華が防戦一方になった時だった。

「がはっ!?な、なんだ?」

シュトラが仰け反る。

その背後では、アスタルテが蹴りを放った直後の姿勢で立っていた。

「なっ……!?いつの間に!?」

「最初からこっそり移動してました」

「クソッ!テメェ……!」

「ブタ小屋に帰りなさいブタ野郎」

ゴリッ

「ぐあぁっ!腕がぁっ!?」

アスタルテの蹴りによってシュトラの右腕がへし折れる。

「クソッ!殺す!」

シュトラがアスタルテに掴みかかるが、アスタルテは吸血鬼の筋力で離脱する。

「ちょこまかと……舐めやがって!」

シュトラが叫ぶと同時に背中から新たな腕が現れる。

その力は失われた古代超人類――天部の力だった。

「天部の末裔!?」

「そうだ!驚いたか!」

「こんなサルみたいなクズが天部の生き残りなんて、正直がっかりです」

「さっきから人の事をバカにしやがって!なんなんだよテメェはぁぁ!?」

「第五真祖の血の伴侶ですが、なにか?」

「……いえ、もうなんでもいいです」

アスタルテが放った冷ややかな魔力は、シュトラですら敬語になる程の迫力だった。

「さて、暴れる悪い子にお仕置きの時間です。霊斗さんに殺っている特別コースで行きますね」

「アスタルテさん、漢字が……」

「あってます」

「あ、はい」

無表情で近づくアスタルテにビビって、後ずさるシュトラ。

だが

「逃げられると思いましたか?」

アスタルテは一瞬で接近し、シュトラにアッパーを打ち込む。

「げぼぁっ!?」

「さらに――っ!」

シュトラのボディにアスタルテの拳がめり込む。

「うぐっ!」

呻くシュトラ。

だが、アスタルテの攻撃は止まらない。

意識の飛びかけているシュトラの側頭部に掌打を叩き込み、止めに踵落としを鼻に叩き込み、K.O.。

「……霊斗は毎日これを受けてるの?」

「普段より威力は押さえました」

「あ、そう」

紗矢華が呆けていると、シュトラが鎖に縛られて虚空に消えていく。

「終わっ……た……」

紗矢華は安堵のあまりバランスを崩す。

完全に力が抜けていたため、受け身も取れずに倒れる。

「あっぶねぇ!大丈夫か、煌坂!」

しかし、古城が間一髪で抱き止める。

「あ、暁古城……」

「急いで戻ってきて正解だったな」

「え?急いで戻ってきたって……なんで?」

「こいつが原因だよ」

紗矢華の疑問に答えたのは霊斗だった。

霊斗はアスタルテを抱き上げると、紗矢華の方に近付いてくる。

「どう言うこと?」

「逃げてる最中にアスタルテがいないことに気づいてな、那月ちゃんは雪菜に任せて急いで戻ってきたんだ。 雪菜ももうすぐ来ると――っと、来たか」

「紗矢華さん!大丈夫ですか!」

「雪菜……大丈夫、少し疲れただけ。殆どアスタルテさんが殺ってくれたから……」

「アスタルテ……まさかあれを……?」

「はい。人を見下した奴だったので」

「犯罪者さん……御愁傷様です……」

霊斗は目を伏せた。

そして、霊斗に古城が聞く。

「で、サナちゃんはMARに連れていくでいいな?」

「ああ。そのほうが確実で安全だな」

だが、別の人物の声がした。

「那月を渡してもらおうか、第四真祖、第五真祖よ」

「仙夜木阿夜……」

「まだ那月ちゃんを狙ってやがんのか……」

「いや、感謝の言葉をいいに来たのだ。お前達が脱獄囚を引き付けていてくれたお陰で全ての支度が整った」

「支度……だと?」

「っ!?煌華麟が!?」

紗矢華が声を上げる。

見ると、煌華麟が機能を停止していた。

「……霊斗……さん」

「アスタルテ!?っぐ……」

アスタルテが弱々しい声を上げ、霊斗が膝をつく。

「霊斗さん!」

「大丈夫……だ……っぐ……クソッ……」

雪菜が霊斗に駆け寄る。

「仙夜木阿夜……テメェ!疾く在れ(きやがれ)!''獅子の黄金(レグルス・アウルム)''――!」

古城が眷獣を解放し、阿夜に向かって放つ。

だが、阿夜が虚空に文字を書くと、まるで最初からいなかったかのように獅子が消滅した。

「これが闇誓書の力だ、第四真祖よ。ここでは私以外の異能の力は消滅する。真祖の力もな」

阿夜はそう言うと守護者を召喚する。

そして、守護者の剣が古城の胸を貫く。

「がはっ!?……クソッ……まじかよ……」

古城が倒れると同時に、雪菜とサナが檻の中に転移させられる。

「先輩!霊斗さん!」

雪菜が叫ぶが、檻は虚空に溶け込んで行った。

「く……そ……姫柊……」

古城は、そこで意識を失った。




次回位でこの章は終わらせたい。
ではまた次回。

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